(喜八の鼻歌)
(三味線)
(柏手)
(喜八)無病息災家内安全商売繁盛あっちむいてホイ!今日もよいしょで頑張りましょう!おはようございます!喜八でございます!!
(神無月小春)走水のオオアジに松輪のサバ?あらいいわね。
やっぱり東京湾で獲れた活きのいいのはひと味違うから。
あっでも両方ともお刺身じゃなんだから…。
じゃあねサバは酢でしめてちょうだい。
えぇえぇ…あとは板長の見繕いで。
はいじゃよろしく!女将さん!毎度ご贔屓に!!あっ喜八ちゃんご苦労さん。
相変わらずのご繁盛何よりです。
おかげさまで…喜八ちゃんも忙しいんじゃないのかい?いえいえこちとら相変わらずちょぼちょぼで何よりです。
女将さん廣川さんのお座敷…。
あっ梅の間よ。
へい!あっ私も一緒にご挨拶に…。
へい。
(お囃子)
(芸者衆)ありがとうございました!
(拍手)
(笈川虎松)いよいよっ!
(輝之)さぁさぁさぁさぁ!!
(輝之)いやぁお見事お見事!
(芸者衆)ありがとうございました!
(輝之)よしみんな今日は無礼講だ!
(歓声)いやいやたいしたもんだよなぁ。
ふだんの福豆たちを見慣れてるせいか見違えちまったよ!
(福豆)おっ大将惚れ直したんじゃないの?
(桃千代)なんだか大将に褒められるなんてこそばゆい!こんばんは!いらっしゃいませ!どうもご贔屓に…。
よっ小春姐さん!喜八!!今日は盛大にいこう!廣川さんのお座敷はいつだって盛大じゃありませんか。
いや今日は特別だ。
ってことは何かおめでたいことが?
(茂一)金賞だよ金賞。
(加代)和菓子展の金賞をいただいたんですのよ。
まぁそれはそれは…。
おめでとうございます。
(芸者衆)おめでとうございます。
それを早くおっしゃってもらわないと…。
若旦那どうもおめでとうございます。
(貴子)私もさっき主人から聞いたばかりでもうビックリしちゃって…。
いやしかし金賞っていやお菓子のノーベル賞みたいなものじゃないですか!
(美鈴)いくら何でもノーベル賞はオーバーだけど…。
輝之兄さん和菓子業界では最高の栄誉ですわよね。
あぁまぁうちにとっちゃノーベル賞みたいなもんだ。
先代の大旦那もあっちのほうじゃさぞや喜んでらっしゃるでしょうね。
(辰平)これでやっと先代にも顔向けできます。
なんといっても辰平さんの腕前ですわよ。
うん!ひろ川のあんこを練って一筋。
これも辰平さんの職人技の賜物だな。
よし乾杯するか!叔父様乾杯はさっきも…。
(茂一)いやぁこういうことは何度でもいい。
えぇ…ではでは改めて乾杯!乾杯!
(一同)乾杯!!あっそうそう!こういうときにとっておきのお神酒が…。
私から差し入れさせていただきますわ。
(輝之)そいつは嬉しいな。
じゃあ若旦那!あっしはあのこれで…。
(輝之)おいおい!まだいいだろう!!へぇ…何しろその人手がねえもんでして。
また呼んでください!大将大将!ぜひ一度今度虎ノ湯の番台にあっしを…。
おぅおぅ冗談は顔だけにしとけ。
(笑い声)それじゃひとつ景気のいいところで始めますか!
(お囃子)いやしかしいいもんだなぁ。
芸者衆もすっかり腕上げてよ。
やっぱりお座敷遊びってのはおつなもんだね。
あっお発ちよ!は〜い。
虎ちゃん…。
ん?虎ちゃんがひろ川の若旦那のお座敷に呼ばれるとはね。
うんいやあそこの大旦那にはいろいろ世話になったからな。
ふぅん…。
うん。
あっありがとう。
(七重)女将さん!女将さん!!おぉ七重ちゃん!どうした?相変わらず晩飯は塩大福か?馬鹿言ってんじゃないよ!女将さん…喜八さんがまた始めちゃった!
(お囃子)
(笑い声)
(お囃子)たいこもちっていうのはあそこまでやるかねぇ。
旦那のためならたとえ火の中水の中…ってね。
はぁしかしなんだね…。
あいつの芸ってのはうめえのかまずいのかわかんねえな。
上手からず下手からず…なぁんだ馬鹿ばかしいってそう思わせるのがたいこもちの本来の芸なのよ。
幇間…俗にたいこもちといわれております。
全盛期には400人もおりましたが今では浅草の見番に4人しかいなくなりました。
東家喜八…喜八ちゃんは最後のたいこもちといったところでしょうか
(日出子)ありがとうございました!おやすみね!おやすみなさい!!しかしねまさかおめえがたいこもちやるとはな…。
はっ!おい喜八!!お前覚えてるか?はっ?いやよ女湯を覗いてるませたガキがいやがってよ。
その野郎ひっ捕まえてみたらビックリ仰天驚いた!おめえだ!ハハハッ!!なに言ってんですか!あのとき覗いてたでしょ大将一緒に。
馬鹿なこと言ってんじゃねえ!俺はなこの風呂屋のせがれだよ。
そんなことするわけねえじゃねえか!あれはね…。
俺はな見張ってたの。
(小春の歌声)いいねぇ…。
いいですねぇ小春さん。
(小春の歌声)よ〜おおいっとな!おいっとな!!よいよい!よいよい!!虎ちゃん!喜八ちゃんの弟子入りしようってのかい?いやよぉ忘年会のかくし芸しようと思ってよ。
まぁもうちっと若きゃ本気で考えたけどな!
(日出子)大将今からでも遅くないですよ。
喜八さんの弟子になんなさいよ。
しかしいくら何でも喜八の弟子ってのはな!ガキの頃はよ俺がさんざん面倒みてやったんだからよ。
(喜八)はいはい。
(喜八)向島小学校の頃が懐かしいですね。
そうそうあれは3年生のときだったかしらね。
学校帰りに私が悪ガキにいじめられてるとこ小春ちゃんに何すんだって勇ましく助けてくれてさ!そうなんですとっちめてやろうと出かけたんですけどね逆にボコボコにされちまいました。
(笑い声)二枚目ぶってもよ結局最後は三枚目なんだよな。
そこは喜八ちゃんのいいとこよ。
女将さんにそう言っていただくと…。
女将さん大将!俺はこれで!!あいよ!お疲れさん!喜八ちゃん!!へい!うちのお座敷もまた頼むね。
こちらこそお頼み申します…じゃあ大将!しかしあいつもよくわかんねえ野郎だな。
ん?えぇ?いやさ…。
高校出たと思ったらぷいといなくなっちまってなひょっこり帰ってきたと思ったら浅草でたいこもちやってやがった!顔で笑って心で泣いて…。
あぁ見えても小さいときからいろいろ苦労してんのよ。
墨田堤の桜の葉も散り紅葉がめっきり色づくと私たちの商売はかき入れどきを迎えます
〜
(芸者衆)おかあさんいってまいります!
(芸者)いってまいります!おかあさんいってまいります!早く早く急いで!!〜
花乃屋三代の守り神お稲荷様のおかげでしょうか。
今年も皆平穏無事に年が送れますようにと思ったのですが…
(鼻歌)
(玄関チャイム)若旦那!虎です!!おかしいな…。
(チャイム)若旦那!若旦那!!あの虎ですけど!若旦那!うわぁ!
(犬の吠え声)
(園子)あっ…あらごめんなさい。
大丈夫よジョン。
シッ!シッ!!もう!まあ!なんて男!あっ奥さま!福富さんこんにちは。
今お宅にね怪しい男の人が…。
えっ!?〜ただいま。
あなた…あなた!!
(岡部)被害者は廣川輝之42歳。
和菓子の「ひろ川」の13代目にあたるそうです。
(矢崎)ほう…13代目…。
背中から心臓をひと突きです。
鑑識さんによると死亡推定時刻は昨夜の9時から12時の間です。
(木下)主任こちら廣川輝之さんの奥さんです。
帰宅されて発見されたそうです。
どちらかにお出かけでしたか。
はい。
どちらへ?昨日から千葉の実家に…母が病気なもので。
お昼に会食があるのでそれまでに戻ってくるように言われて。
主人は何で…。
(美鈴)お兄さん!!
(加代)輝之!!
(南)ガイシャの妹さんと叔母夫婦です。
あなたは?妹の美鈴です。
あなたは?叔母の加代です。
あなたは?
(茂一)夫の茂一です。
向こうへ逃げていったんです!逃げていった!?あぁはいはいあのねドキっとした顔して顔を隠すようにして。
あっちへ逃げていったんです。
私怪しいと思いましたのよ。
ジョンお前も怪しいと思ったのよね?でどんな男でした?え?ええとええと。
あの…あの50代くらいで髪の毛が短くて人相が悪くて。
(木下)主任。
俺か?こちらお隣の山村さんです。
(山村)山村です。
昨夜男を見かけたと。
えぇ。
何時ごろ?そう雨戸を閉めたときだから。
9時ごろだったか。
9時!どんなやつでした?急に追加のお客さまが増えちゃってね。
4人様分何とか増やしてもらえないかしら?板長にはさほんとに悪いと思うんだけど。
この埋め合わせはちゃんとするから。
また一緒に飲もうよあそう何とかなる?助かるわぁじゃあよろしくお願いします。
私仲居長としても急のお客様いちばん困るんですよね。
予定狂っちゃって。
(福豆)おかあさん!おかあさん!もう騒々しいわね。
ひろ川さんで何かあったらしいですよ。
(若菜)事件があったみたい。
外に警察やパトカーがいっぱい!へぇひろ川さんち?
(鼻歌)
(日出子)大将!ああ大将大将!なんだボイラーの故障かい?刑事さんが…。
あん?大将また何かやらかしたんですか?タコ!なに言ってんだバカヤロウ!築地中央署の矢崎ですが。
新富町の廣川さんのお宅に行かれましたね。
あん?雨は大丈夫か。
なんの用で?えっ?いやちょっとね。
用件は?いやだからちょっと何かあったんですか?それはあんたがいちばんよく知ってるはずだ。
はぁ?ちょっ!何すんだよおい!廣川輝之さんが殺されました。
はぁ?勘弁してくれよなに言ってるんだよ。
あの男ですわ!間違いありませんか?間違えるわけないでしょうちのジョンにシッシって言ったのよ。
失礼だと思いません?どうでしょうか?よく見てください。
うんあの男でした。
よしわかった!笈川署までこい!やめろ!オメエら!いいからきなさい!大将…大将…!日出子ちゃんどうしたの?大将大将が!大将…大将…。
大将がどうしたの?だから落ち着いて。
ちょっと誰かお水持ってきて!大将がどうしたの?日出子さんどうしたっていうのよ。
(七重)女将さん!女将さん!ちょっと通して!た大将が築地中央署にひっぱられたって!ひっぱられた!?どうしてわかったの?八百屋の女将さんが見ててすぐに連絡くれたの。
女将さん虎さん何か事件に巻き込まれたみたい。
そうかもしれない。
刑事さんがダーッときて大将がナーッと連れていかれて。
女将さん!日出子さんお水お水です!はいどうぞ。
お水…。
バカなこと言うんじゃないよ!かわいそうに何でやっちまったんだ?なにっ!?冗談じゃねえよ!!座れ!!まあまあまあまあ。
犬の散歩してたご婦人があんたを目撃してるんだよ。
俺は昔から犬がキライなんだよ!!その点猫はかわいいけど。
余計なことはいい!!廣川に借金があるんだな。
(木下)廣川家の金庫にあった借用書だ。
600万円平成16年9月。
ここにあんたのハンコが押してある!いやだからこれはその先代の輝正の大旦那から。
返済は?滞ってたわけだ。
なに言ってるんだよ毎月10日にきっちり…。
昨日の10日が返済日だったわけか。
で廣川家へ行った。
だからそのついうっかりしちまってそんで1日だけ延ばしてもらおうと。
昨夜はそれを言いに。
そこで何があった?はぁ?何がって?お前さんの指紋だ。
え?廣川家の応接間輝之が殺されていた現場からもこれが採取された。
だからね?1日だけ返済を待ってもらおうと。
何度言ったらわかるんだい!何かの間違いに決まってるじゃありませんか。
たいがいそう言うんです。
あっ主任向島の花乃屋の女将さんです。
笈川虎松が何をしたというんでしょうか。
ひろ川の若旦那が殺されたのは昨夜のことなんでしょ?だったらおかしいじゃありませんか。
虎ちゃんが廣川さんを訪ねたのは今朝のことなんですよ。
昨夜も訪問してるんですよ。
えっ…。
それに目撃者もいるんです。
犯行時間と重なっていますアリバイは成立しません。
現場から本人の指紋も採れてます。
ですからお引き取りください。
潔白事実無根濡れ衣冤罪!何回言ったらわかるんだよ!!こっちはねもう少しかかるから任せたわよ。
はい大丈夫ですわかりました。
虎ちゃん!小春ちゃん!疑いは晴れたんですね。
証拠不十分です。
証拠不十分!?勘違いするなよ!とりあえず今日は帰すけど無罪放免ってわけじゃないからな。
まだそんなこと言ってるのかよ!!虎ちゃん。
何が証拠不十分だよ!甘く見るなよ。
何だこの海坊主!〜大将!どえらい目に遭っちまった。
でもよかったじゃないですか。
こうやって帰ってこれたんだから。
それがね証拠不十分なんですってよ。
え?女将さんどういうことですか?まだ虎ちゃんの容疑が晴れたってわけじゃないのよ。
そんな…。
銭湯の経営が難しいのはわかるけど正直借金があったっていうのはまずいわよね。
あのその借金のことなんだけど大将をひろ川の大旦那に紹介したのは俺なんですよ。
どういうこと?虎ちゃん…。
実は3年前にボイラーが壊れちまってよ。
水回りもボロボロで。
そしたら信用金庫のやつが担保だのなんだのって。
おまけに融資してやるからマンションに建て替えろなんてぬかしやがってよ。
それでひろ川の先代に用立ててもらったのね。
うん…喜八の紹介でね将棋好きの先代の相手をしてくれって。
これがまた江戸前のなんとも粋な御仁でね。
俺が勝って先代が負けたらカネを都合してやろうって…。
あんときはわざと負けてくれたんだ。
きっとそうに違えねえよ。
それで返済は?先代が亡くなってからも毎月10日にはきっちり返したんだけどね今回ばっかりはうっかりしちまって…。
そんで1日だけ延ばしてもらいにいったのよ。
いつもはずぼらだけどそういうとこは律儀な虎ちゃんなのよね。
しかしついてねえよなぁもう!ご先祖さんに何て言やいいんだよ。
大将ほんとえらい目に遭っちゃったわね。
大将もうこの町内じゃ犯人になっちゃってるわよ!借金返せないでやっちゃったって!あぁそうかい!どうせお前たちはな俺が犯人ならおもしれえって思ってんだろ!どいつもこいつも人のことおもしろがりやがってよ!あぁ俺はなしょせんそんなもんだよクソ!虎ちゃんすねてる場合じゃないだろ。
それともなにかい?このまま犯人にされちまってもいいってのかい?小春ちゃん何てこと言うんだよ…。
だったらすねてなんかいないで降りかかった火の粉自分でふりはらえばいいじゃない。
男虎松の名がすたるよ!大将女将さんの言うとおりだわよ!
(福豆たち)そうよ大将!まず10日の夜9時5分前に訪ねたのね?ん?部屋には上がった?あっいや若旦那はさ酒でも飲んでけって言ってくれたけどね俺は明日必ず届けるからってすぐに帰った。
奥さんの貴子さんはいらっしゃらなかったのね?うん千葉の実家のほうに行ってるって。
事件当夜輝之さんは一人だった。
じゃあ輝之さんが被害に遭ったのは虎ちゃんが帰ったあとのことね。
あのあとに殺された…。
翌日虎ちゃんが訪ねたときには死体になってた。
あんときは死体になってた…。
お兄さん…。
輝之…。
(茂一)どうぞ。
すみません。
帰って!返してよ…私の兄を返してよ!虎松さんどういう神経なのかしら。
よくここに来られたものね!先代の恩を仇で返すとはこのことだな。
いやあの…それは誤解ですよ。
なにが誤解よ。
まだ証拠不十分なだけなんでしょ。
警察からちゃんと聞いているのよ。
いやだからそれはその…。
虎ちゃんもじもじしないで。
しっかりしなさい。
うん。
あのこの笈川虎松神に誓って何も!そのことは若旦那がいちばん…。
ねぇ若旦那あっしじゃねえですよね!若旦那!あのう清乃さんがお見えになりましたけど。
清乃が?もう関係ないのに…。
美鈴さん!小春さん虎松さんどうか今日のところはお引き取りください。
いや俺は…。
虎ちゃんあの人清乃さん?うん確か次女だと…。
先代には娘さんが二人いるとか言ってたから。
美鈴さんの妹さん…どういうことよ…。
え?関係ないって。
清乃これはどういうこと?あなたとはもう…。
美鈴さんせっかく来てくれたんですから。
貴子姉さんこういうことはきちんとさせておかないと。
美鈴ちゃんの言うとおりかもしれないわね。
事情が事情なんですから。
清乃あなたはもうこの廣川の家の人間じゃないのよ。
(清乃)美鈴姉さん私はただお線香をあげに…。
お姉さんだなんて呼ばないでほしいわね。
私はもうあなたの姉だとは思ってないわ。
ああの清乃さんですよね?先代の輝正の大旦那の次女の清乃さんですよね?はい。
あのう実はねお兄さんの輝之さんの事件のことでちょっと話が…。
すみませんちょっと予定が。
ちょちょっと待ってよ。
あのう実はさ俺が疑われちまってね。
どうしてもそいつを晴らさねえと。
お兄さんのことで何か思い当たることなんかねえかな?どんなことでもいいんだけど。
失礼します。
いやちょっと…。
なんでえ冷てえなぁ。
輝之さんのれっきとした妹さんでしょ。
薄情すぎる。
そう言われりゃ確かに。
家族の一員なんだからなぁ。
ねぇ虎ちゃん。
え?あの廣川家に何かもめ事のようなことなかったの?
(岡部)主任墨田信用金庫の笈川虎松の口座です。
11日の9時3分に10万円を引き下ろしてますね。
1日遅れの返済か…。
あの笈川虎松の供述は一応の辻褄は合ってますね。
おぉこれが創業350年の老舗和菓子屋のもなかか!ガイシャの家族構成は?ひろ川十二代目の輝正と妻の紫乃。
長男で十三代目の輝之と妻の貴子。
長女で華道家の美鈴。
次女の清乃。
六人家族でしたがこの輝正と紫乃は2年前に事故死してますね。
事故死…。
それと専務の加代と茂一。
主任!ガイシャにはあちこち愛人がいたようです。
愛人?浅草柳橋の芸者それに銀座のホステス。
えらくお盛んだったようですね。
物盗りの犯行でないとすると怨恨か痴情関係でしょうね。
しかもガイシャは犯人をすんなり部屋に通してる。
顔見知りの犯行と見て間違いないだろうな。
しかし!このあんこうまいよ。
(店員)辰平さんお客さまですよ。
おう。
ひょっとしてお休みじゃないかと思ったんですが…。
そうですねぇ何があっても休んでなんかいられませんものね。
ご祝儀菓子の予約があるんでこればっかしは…。
で何か?亡くなった若旦那のことなんですがね。
ずいぶん浮いた噂もあったようで。
えぇまぁいろいろと…。
特になじみの深い方っていうとやっぱりどっかの芸者かしら?えぇ…。
女性関係でもめたようなことなかったんでしょうか?あったんですか?いや水商売の方とは何も…。
でもあんときだけはねぇ。
(加代)辰平さん!
(加代)小春さんどういうことかしら?廣川の家のことはあなたには何の関係もないことよ。
いえ廣川社長にはいつも花乃屋をご贔屓いただいて。
だったら変な詮索しないでちょうだい。
大きなお世話ですわよ。
お言葉ですけど容疑をかけられた虎ノ湯の大将の身にもなってやってください。
世間からは疑いの目で見られて私じっとしていられないんです。
若旦那の浮気相手が水商売の人じゃなかった。
それでおおごとになったんですね?別れるのどうのこうのって話にまで発展したようで。
で相手の女性というのは?それがなんとまぁうちの経理を担当していた税理士と。
税理士さん?どうもお仕事中おじゃましてすみませんでした。
あっ…次女の清乃さんなんですけどご本家を出られて独立なさってるんですね。
はぁ。
上山田で芸者をやっとるそうで。
えっ…上山田で芸者?どうしてまた…。
まぁいろいろと…。
なにしろ清乃さん腹違いの妹なもんで。
ということは清乃さんのお母さんは後妻さん?先代は前の奥様を病気で亡くしちまいましてねそのあとに紫乃さんと再婚されたんです。
じゃあその紫乃さんとの間に産まれたお子さんが清乃さんなのね?長男の輝之さんと長女の美鈴さんとは腹違いで歳が違うからまぁどうしても折り合いがねぇ。
小春さんなんでそんなことを?若旦那の事件と何か…?いえ…。
どうもありがとうございました。
(礼子)失礼ね!私のことを疑ってらっしゃるんですか?ごめんなさい。
でも経理を担当していたあなたなら廣川家のことはよくご存じかと思って。
でも若旦那とはとっくに別れたし廣川家とはもうこりごりよ。
こりごり?老舗の和菓子屋さんにも裏と表がねぇ…。
先代が生きていた間は波風を立てず誰もが表向きは従順に振る舞っていたのよ。
でもねぇ…後妻の紫乃さんへの反発はそりゃもう…。
次女の清乃さんに対してはどうだったんですか?そう彼女は廣川家から追い出されたようなものよ。
追い出された?それいつ頃?2年前先代が亡くなってから。
それまでだって嫌がらせや陰湿ないじめばかりで特にひどかったのは長女の美鈴さんのいじめよ。
いくら後妻さんの子だからってそれほど…。
他に何か理由があったのかしら?〜
(玄関チャイム)もしもし?美鈴さん?朝早くすみません。
虎ノ湯の虎ですけどね。
しかしさ次女の清乃さんが追い出されたってそんなことは世間にはゴロゴロある話じゃねえの?それがさ…なんか引っかかるのよね。
お留守かしら?おはようございます!美鈴さん虎ですけどね。
あら?虎ちゃん。
明かりがついてる。
ほんとだ。
〜あっちょちょっと…!何だよ?え?何?あっ!これは…。
(岡部)廣川美鈴37歳。
職業は華道家です。
(矢崎)廣川輝之の妹だな。
えぇ。
死亡推定時刻は昨夜の10時前後だと。
(矢崎)絞殺…。
兄妹が相次いで…。
犯行状況からも同一犯の可能性が…?うん…。
今度は第一発見者ねぇ…。
ここにはどうして?え!?いやだからそのあれだよ。
美鈴さんから確かめたいことがあったからだ。
何を確かめようと?随分この事件にご熱心ですなぁ。
当然じゃねえか!いいか俺はな犯人にされかかったんだぞ!犯人にされかかったんじゃなくてあんたはまだ有力な容疑者の一人なんだよ!なんだと!?昨夜の10時どこで何やってた!?それはあのあれだよ…。
ちょっとこっちこい!私とずうっと一緒にいました。
ほぉ〜。
この虎ちゃんを引っ張ろうっていうならついでに私も引っ張ってもらいましょうか?美鈴さん…かわいそうに。
刑事さん遺体はいつ返ってくるんですか?これから検死を行いますんでまぁ明日には。
ところで美鈴さんは独り暮らしをしていたんですね?はい。
お花を生けていたときに殺害されたようですが…。
お花の展覧会があるというので張り切っていたのに。
かわいそうに…。
刑事さんいったい誰が?美鈴さんにはあまり抵抗した痕が見られません。
顔見知りの犯行だと思われますが何か心当たりありませんか?そう言われても…。
輝之の葬儀が終わったばかりだというのに美鈴ちゃんまで…。
叔母さま…。
許さない…絶対に許すもんですか!犯人が目の前にいたらこの手で…。
(泣き声)先妻は随分前に亡くなりましたけどとても優しいお母様だったと…。
輝之さんも美鈴さんもそれは悲しまれて。
でその後再婚されて次女の清乃さんが産まれた。
若旦那も美鈴さんもその再婚には反対されたんですか?前のお母様への思いがどうしても…。
お優しくて…そうどちらかというと地味な方で。
再婚相手の紫乃さんは芸者でしたから。
芸者?どちらの?浅草だと…。
小春さんこの廣川の家のことで何か?今度の事件と何か関係が?あっ…ごめんなさい差し出たことを。
ひと事と思えないんですもの。
若旦那には長年花乃屋にご贔屓いただきまして皆様で金賞受賞のお祝いをしていただいたのもついこの間のことなんですもの。
老舗の和菓子屋さんに嫁いで正直戸惑うことばかりで。
でも義父も義母もよくしてくれてなんとかここまで。
その両親も亡くなって主人とはひろ川の暖簾だけはどんなことをしてでも守ろうって。
小春さんなんで…なんだってこんなことに…。
紫乃さんはこちらの見番に籍を置いていたんですね?
(駒子)はぁ。
でも元は上山田にね。
上山田?えぇ。
評判の美人芸者でうちが引き抜いたんですよ。
それでこちらに移ってお座敷に出るようになってそれでもってひろ川の輝正の大旦那に…。
えぇいい人に見初められたけど…。
でもねぇ…。
何か?昔のことだからよしましょう。
そうおっしゃらずに話してください。
興味本位で伺ってるわけじゃないんです。
廣川さんの事件のことで…。
じゃあちょいとこっちへ。
たいこもち?それどういうことですか?それがよりによって紫乃さんうちの見番のたいこもちとね…。
え?こちらの見番のたいこもちって…。
あの…ひょっとすると喜八さん?あら…やだ外に洩れないようにしてたのによく知ってるわねぇ。
小春ちゃん!つっとおし?花柳界にはね「つっとおし」って言葉があるのよ。
幇間と芸者が色恋の関係をもつことは何よりも厳しく禁じられてるの。
禁じられてるって…。
まかり間違ってよ芸者に手を出そうものなら全国の見番におふれがまわってどこへ行っても仕事ができなくなるわ。
それが花柳界のしきたりなの。
へぇ…知らなかったけどそんな厳しいもんなのか。
しかもよ…しかも…紫乃さんと旦那の輝正さんとの関係を承知のうえだったとしたら喜八ちゃん二重の禁を犯したことになるわ。
旦那命旦那あっての商売の幇間がその大事な旦那の芸者に手を出しちまった!?ここを曲がったとこだよ。
小春ちゃんここだよ。
おい喜八!喜八!あれ!?女将さん…あら大将も!こんなむさくるしいとこへ…。
どうぞどうぞ!
(喜八)女将さんどうぞ!汚いなぁおい…。
あらあら…。
おい掃除くらいしろよ。
お茶にしますか?コーヒー?いい!女将さんどうぞお座りになって。
汚いですけど…。
カフェラテカフェオレ…。
何がカフェラテだよ。
喜八ちゃん浅草の見番で一緒だった紫乃さんのことだけどさ…。
喜八…お前芸者に手を出しちまったっていうじゃないか。
芸者との色恋はどうあったって許されない花柳界のしきたり。
憲法のようなもんだっていうじゃないか。
お前その憲法破っちまったのか?なんだってお前そんなバカなことしちまったんだい?喜八ちゃん…ねぇちゃんと話して。
〜
(喜八)ずいぶんといろんな芸者衆を見てきたけどあんな気立てのいい娘は初めてだった。
(喜八)紫乃は家族の愛情に恵まれずに育ってそんな不幸な生い立ちがなんか似たもの同士のようで…。
まぁ似たもの同士お前も親に捨てられちまった身の上だからなぁ。
紫乃さんにひろ川の旦那がいたことは初めから承知だったのね?えぇ。
いけねえいけねえと思ううちに逆にどんどん惚れちまって。
バカだねぇ…。
旦那と喜八ちゃんとの狭間でその紫乃さんずいぶんつらい思いしたんだろうねぇ。
紫乃に申し訳なくて…。
結局あきらめて身を引いて。
お前から身を引いたのか?ひろ川の旦那に詫び入れてなんとか許してもらって。
だけどよくたいこもちが続けられたわね。
それはひろ川の先代のおかげです。
その先代さんは2年前に亡くなったんでしょう?別荘がある信州の上田湖で釣りをしていて水の事故で。
水の事故?先代の輝正さんと紫乃さん。
夫婦二人で乗ってたボートから転落したってことだけど今度の事件とは…。
輝正さんと紫乃さん…。
それに輝之さんに美鈴さん…。
変よねぇこんなに次々と亡くなるなんて。
(日出子)大将!ご飯。
うん。
不動産屋が来てましたよ。
マンションに建て替えるのならいくらでも融資するって。
塩撒いて追い返せ。
塩!タコ!本気じゃ…シャレだろシャレ!散れ!四人…。
え?この2年間に家族が四人死んでる。
事故死と殺人…。
事故死と殺人ねぇ…。
今いるのは清乃さん一人。
確かに血のつながった家族のなかで生き残ってるのは次女の清乃一人…。
〜清乃さん…2年前に東京の廣川の家を出たそうね。
どういう事情があったのか何があったのかよかったら話してもらえないかしら?お母さんの紫乃さんが亡くなってそれで廣川の家にはいられなくなっちまったのかい?このことなんですけど…。
ご家族で上田湖の別荘にいらしたときのことだったんですね?はい…。
ってことは清乃さんあんたも行ってたんだな?はい。
で他には誰と誰?兄と姉と叔父と叔母ですけどそれが何か?いやだからつまりその…。
今度の事件とどこかでつながってるんじゃないかと思って。
そのことでしたら何も。
ちょっとちょっと待ちなよ!いったい誰が殺されたんだよ?あんたの兄さんと姉さんじゃねえのか?ちょっと冷たすぎねえか?清乃さん…どんなことでもどんな秘密でも口外しない。
約束するわ。
失礼します。
小春ちゃんやっぱりおかしいよ。
何か隠してるに違いねえけど…。
(徳子)子供の頃から紫乃さんに芸事を仕込まれていたというからねそりゃあ清乃の筋はなかなかのもんだわよ。
お母さんの紫乃さんもこちらの置屋さんにいらしたんですよね?そう。
おかあさんいってまいります。
頼んだよ。
紫乃さんは売れっ子だったしずっとうちにいてくれたらと…。
でも見る目ある人は放っておかないわよね。
浅草の置屋に引き抜かれちまった…?その…娘の清乃さんはなんでこちらに?やっぱり母親の紫乃さんとの関係からですかね?もちろんそれもあってのことでしょうけど上田に恋人がいるのよ。
ほうどういう方と?草木染めをやってるわよ。
清乃はそれを経済的に支えてやって今度の3日の大安吉日に二人の結婚式があるんですよ。
結婚式?こうやって煮込んで色素を…。
この染料の植物は何なんですか?
(拓馬)それはアカネですけど植物であればある程度は染まります。
道端の雑草でもね。
あら雑草でも!あのう清乃さんとご結婚なさるそうですね。
はい。
いやおめでとうございます。
〜あのう清乃さんとはどういうご縁で?2年前に僕の草木染めを見てここに訪ねて来たんです。
形見?
(清乃)呉服屋さんで見つけてこちらの草木染めだと聞いてきました。
そんな感じに染めてもらえないかと思って。
それでわざわざ?母との思い出が詰まってるんです。
これだって思える人に染めてもらいたくて。
どうかやってもらえないでしょうか?お母さんの思い出の詰まってるその形見を染めて差し上げたんですね。
あんなことは初めてだったけど彼女は気に入ってくれました。
それで交際が始まって清乃さんは東京からこちらに移ったんですね。
はい。
じゃあ2年前のご両親の事故のこともよくご存じなんですよね?清乃はあまり話したがらないんです。
でも疑問は持っていたようですけど。
疑問?というと?お母さんが溺れて死ぬなんて考えられない。
お母さんは中学高校と水泳の選手だったって。
あのう清乃が何か…?しかしよう水泳が上手かったからったってなまじ泳ぎの上手いやつほど溺れるっていうからなぁ。
清乃さんの思い込みってこともあるし小春ちゃん無駄足だったんじゃねえのかい?虎ちゃんなんなら帰ってもいいのよ。
いやそんなこと言わねえでよね?俺だってよドブん中這いずってでも犯人とっ捕まえてえんだからさ。
(矢崎)またあんたたちか!そういう言い方はねえだろうよ!
(岡部)こんなところまで何…。
(矢崎)待て待て!ところで何しに来た?ここに。
そっちこそ何しに来たんだよ!?虎ちゃん!刑事さん2年前の上田湖の水死事故なんですけど。
水死事故?刑事さんたちもそのことを調べに来られたんでしょ?ちょうどよかったわ!あのうどうせなら私たちもご一緒させていただけませんかしら?はぁ?お車…虎ちゃんこっちこっち。
これじゃないし。
ヘヘヘ!あっちだ小春ちゃん。
事件性はなかったんですね?肺と胃から大量の水が。
死因は溺死です。
プランクトンから見てもこの上田湖の水に間違いありません。
しかしなんでまた…そんな簡単に転落なんかしねえと。
(岡部)解剖の結果から廣川輝正さんの脳溢血の症状が認められてます。
どういうこと!?推測の域を出ませんがおそらく廣川輝正はボートで釣りをしてる最中に脳溢血の発作を起こし湖に落ちたと思われます。
〜
(矢崎)発作のなかで輝正が湖に落ちた。
ボートが酷く揺れ助けようとして妻の紫乃も落ちた。
いずれにしても突然のパニックのなかで起こったことじゃないですかね。
どのへんでしょうか?お二人が発見されたのは。
(岡部)廣川輝正さんの水死体が発見されたのは…ちょうどあの辺りです。
で奥さまの紫乃さんは?輝正さんが発見された所からちょうど300mほど向こうですね。
〜別々の場所…。
別荘にいたご家族が発見されたんですか?そうですけどもういいでしょ!奥さまを発見したのはどなただったんですか?輝之と美鈴です。
(矢崎)とにかくあなたたち素人はもうこれ以上首を突っ込まないでください!あなたたちの身に何かあっても知りませんからね!いいですね!輝之さんと美鈴さん二人が紫乃さんを発見…。
その二人が殺された。
他には誰と誰?
(清乃)兄と姉と叔父と叔母ですけどどういうことよ!?小春ちゃん。
〜紫乃さんが見つかったのはこの岩場…。
発見した輝之さんと美鈴さんその二人が殺されちまった。
〜小春ちゃん…。
虎ちゃん。
え?もしもしもよ。
うん。
溺死したのは輝正さん一人だったとしたら。
なに言ってるの!?だからもしもよ。
息子の輝之さんたちが駆けつけたとき紫乃さんがまだ生きてたとしたら…。
生きてた!?だったら輝正さんの財産の半分は紫乃さんのものになる。
でも…。
でも輝正さんと紫乃さんが二人一緒に死んでれば…。
紫乃さんの遺産相続分はすべて子供たちにいくわ。
そのためにまだ生きてたかもしれない紫乃さんを殺したと言うのかい?しかしそんなこと…。
そんなこと…あるはずないわよね。
いや小春ちゃんそりゃしかし…。
20分の誤差?廣川輝正が14時16分妻紫乃は14時37分救急車の出動要請時間には約20分の時間差がありました。
しかし同時死亡で処理されてる。
こういうケースの場合そう処理されるのが通例だが。
(木下)主任廣川家の遺産相続です。
預貯金本店支店の店舗土地家屋株券すべて輝之と美鈴が相続してます。
次女の清乃は?輝正の財産は相続してません。
ん?相続してない?権利を放棄したようです。
どういうことだ…主任。
発見時の20分の誤差…この20分の間に何かあったとしたら…。
2年前の水死事故。
事件の根っこはここか…。
思い出すのもつらいでしょうけどご両親の事故のこと話してもらえないかしら?まずそのお父さんの輝正さんの死体が発見された。
それで今度はお母さんの紫乃さんの死体が発見された。
〜清乃さんあなたもお母さんのところに駆けつけたんでしょ?お母さん!お母さん!救急車…救急車を呼べ!お母さん!あなたが駆けつけたときそのときの輝之さんたちの様子は?何か不審なことはなかったの?お母さんが溺れて死ぬなんて考えられないってあなたずっと疑問に思ってたのよね?あの黙ってないで清乃さん頼むからなんとか答えてくれよ。
清乃さん。
そっとしてやってくれませんか。
清乃はもう廣川の家とは関係ないんですよ。
芸者の仕事をして僕の草木染めを援助してくれて清乃にはどんなに感謝してるか。
これから二人で新しい人生をつくっていこうとしてるんです。
どうかそっとしておいてください。
紫乃さんの死因は明らかに溺死…。
でもその死が人為的なものとしたら…。
つまりその…溺死に見せかけてうまいこと殺した…。
そういうことか?それが可能なのは…最初に発見した二人…。
輝之さんと美鈴さん…。
清乃さんはその二人に復讐した!?しかし…しかしだよ。
清乃さんにとってはあの二人は兄と姉だよ。
小春ちゃん…。
腹違いとはいえいくらなんでもそこまで…。
そうよね…。
兄妹ならいくらなんでも…。
虎ちゃん…。
んっ?血のつながりが…なかったら…?えっ!?もしあの清乃さんが…輝正さんの実の子でなかったら…。
なに言ってんの!?後妻に入った紫乃さんの連れ子だったら…。
兄妹の確執も…。
清乃さんが実家を出たことも…。
相続に関与してないのもそういうことなら…納得できるんじゃない?いや…ちょっと待ってよ…。
それじゃあその清乃さんの実の父親ってのはいったい誰なの?浅草の芸者時代の紫乃さんから考えられるのは…。
毎度。
邪魔邪魔〜。
おかえり〜。
おぉっ!おかえり〜。
女将さん…。
喜八ちゃん…鍵もかけないで不用心だわねえ。
あっいや…盗られるものも何もねえ…。
きれい…!喜八ちゃんなかなか帰ってこないんだもん。
はいたこ焼き〜。
ありがてえ。
腹減ってた。
(笑い声)あんたほんとに好きだったもんね。
あっこれパチンコ。
喜八ちゃんさ…。
廣川清乃さんのことだけど…。
父親は廣川輝正さんじゃなかったんだ?そうなのよね?もう私が何を言おうとしてるかわかってるわよね?でも私…喜八ちゃんの口から聞きたいのよ。
秘密は守るからさ…。
その胸の中にあるもの話してくれないかい?紫乃も俺もまだ20代だ…。
あの時俺は紫乃をずいぶん追い詰めちまった…。
ひろ川の旦那か…。
俺を取るか…。
どっちなんだ…?紫乃はっきりしろよ!喜八ちゃん…ごめんね…。
私に覚悟が足りなくて…。
このままだったら喜八ちゃん「つっとおし」でこの世界にいられなくなっちゃう…。
私さえ…芸者をやめる覚悟ができれば…。
でも…でもどうしてもその覚悟が…。
喜八ちゃん…私がいけなかったの。
ごめんなさい!
(喜八)なんであんなひどいことを言っちまったのか…。
なんであんなに紫乃を追い詰めちまったのか…。
あの晩紫乃は薬を飲んで…。
〜
(喜八)幸い大事には至らなかったけど…俺はなんてことをしちまったんだって…。
このままじゃ紫乃はほんとに死んでしまう…。
あれ以来紫乃とはきっぱりと…。
〜
(喜八)ひろ川の旦那に土下座して謝って…どうか紫乃を助けてやってくれって…。
で…ひろ川の旦那さんは紫乃さんを迎えてくれたのね?へい…。
でもあの時…紫乃のお腹には子供が…。
それが…清乃さん…。
清乃さんはそのことを知ってるの?清乃が二十歳になったとき紫乃が話したそうです。
でもそのことは秘密に…。
女将さん…俺…。
俺のことを捨てた親ずっと恨んでました…。
喜八ちゃん…。
親の顔を知らねえ子供がどんなみじめな思いか…。
でも俺同じことをやっちまった…。
あれ以来俺…親を恨むのはやめました…。
〜
自分を捨てた親と同じことをしてしまった…。
親を恨むのはよそう…か…
2年前の上田湖での紫乃さんの水死…。
もしあれが事故ではなくあれが殺人だったら…。
清乃さんの最愛の母紫乃さんが殺される…。
清乃さんの実の父親喜八ちゃん…
〜
娘と父…。
動機はどちらにも十分すぎるほど…
〜
復讐…?清乃さん…。
喜八ちゃん…
〜
(福豆)はっけよいのこった〜!のこったのこった〜!
(騒ぎ声)
(七重)ほらほらほらほら!
(七重)花乃屋はいつから相撲部屋になったの!
(福豆)ストレス発散にいいかなぁと思って…。
言い訳するんじゃないの!うりゃ〜!ほらほらほらほら!時間よ!みんな支度して。
七重さんお料理のほう大丈夫ね?お任せください。
この私にミスという二文字はございませんから。
(七重)あらあら倒しちゃって…。
ユリの花粉ってのは厄介なんだから…。
もう…。
(七重)ほんとにもうしようがないわね…。
〜どうしたんですか?ユリ…。
おかあさんどうしたんですか?〜花粉?あっいらっしゃい。
ユリ花粉は成分が特に強くてなかなか落ちないのよ。
うん…。
毎度!落ちねえ?ユリを生けるときには注意しなさい。
着物についたら大変って母によく言われたわ。
つまりその…殺されたあの美鈴の部屋にあったユリが…?美鈴さんはユリを生けていたところを殺された。
犯人の着ていたものにまず間違いなくついたわね。
つまり花粉が決め手?小春ちゃんそういうことか?〜よぉ!喜八!あれ!大将!あんた今日どうして…?えぇ?あぁ…。
おぉ〜器用なもんじゃねえか!器用貧乏とはよく言ったもんですね。
おい!これひろ川のだ。
あっこれはありがてえ…。
お茶入れましょう。
いや大将…今日またどうして?おぉ!実はよ今度俺披露宴があるんでな。
それでおめえの着物を貸してもらおうと思って…。
お安い御用で…。
これどうぞ…。
おぉすまねえな…。
おい…そういやあの…上山田の清乃ちゃんの結婚式もじきだな?どうすんだい?行くのか?行かねえのか?いやこれはありがたい。
しばらく食ってなかったんだごっつぁんです。
〜小春ちゃん…。
分析の結果だよ。
ユリ花粉の成分が検出された。
洗濯しても落ちねえ。
通常2年間は残るんだってよ。
清乃さんじゃなく…あの喜八が…。
でもなんだって…?どうなっちまったんだい小春ちゃん!〜・喜八ちゃん。
清乃さん若い頃の紫乃さんにそっくりじゃないのかい?「つっとおし」。
花柳界では決して許されないこと…。
好きになっちゃいけない相手に惚れて…それ故子供まで手放してしまって…。
でもそれは愛する人と我が子の幸せを思ってこそのことだったんだねぇ。
なぁ喜八…。
オメエのあの着物からユリの花粉が採れてんだよ。
どういうことだかわかるよな?〜喜八ちゃん…私たちにはほんとのこと話しておくれよ。
アンタを責めようなんてこれっぽっちも思っちゃいないよ。
喜八ちゃんの身の上を思うと胸がじんとしちまってさ…。
陰ながらいつも応援してたんだよ。
喜八ちゃん…。
〜女将さん…どうかこれだけは…。
清乃は関係ありません。
親族だけの廣川の先代の三回法要のあとに清乃が訪ねてきました。
清乃のほうから俺のとこ訪ねてきたのはあのときが初めてでした。
喜八:何言ってんだ?お前…。
私ずっと疑問をもって…。
だからってめったなこと言うもんじゃねえよ。
聞いたのよ…この耳ではっきり美鈴:怖いのよ…お兄さん…。
私怖いの…。
(輝之)何言ってるんだ。
すべてうまくいったじゃないか!だって夢に出てくるのよあの顔が…。
あの顔…。
水に沈めたお義母さんの……あのときのあの顔が!清乃:あのときお母さんはまだ生きてたのよ。
助かっていたのよ。
それを…。
…お母さんは殺されたのよ!許さない…絶対に許さない清乃から知らされた俺は胸が張り裂けそうになって確かめずにはいられなかった。
美鈴さん…悪い夢にうなされてるそうじゃないですか。
あのとき紫乃が生きてたなんて…。
紫乃…そうかそうだったのか。
清乃の父親は…。
一生名乗るつもりはありませんでした。
でもそんなこと言ってられません。
紫乃は殺されたんですからね。
何言ってるの?
(喜八)夢に出てくるんですよね?あのとき水に沈めた紫乃の顔が…。
どんな顔でどんだけ苦しんだか…。
何が目的なんだ?
(輝之)何が欲しいんだ?
(喜八)輝之も美鈴も紫乃の亡霊に脅かされてた。
でその翌日…。
若旦那…なんの真似ですか?いいからとっとけ。
だからどういう意味ですか?足りなかったらなんとかするよ。
喜八…わかるよな?わかってくれるよな?俺のような男は金でどうにでもなる…金で紫乃を殺したことを黙らせようとした。
〜お兄さん…〜手を差し伸べれば紫乃は助かってた。
あのとき心配だったのは清乃のことです。
あの子が何考えてるか…。
お母さんの復讐。
(喜八)それだけは…娘に罪を犯させることは絶対にできない。
清乃に連絡がとれなくなって恋人の拓馬君に問いただしたら東京の廣川家へ行ったと…。
馬鹿野郎…行け!とっとと消えろ
(喜八)清乃からナイフを奪い取ってその場から追い返した。
そして…。
先代の大旦那にはほんとに世話になりっぱなしで。
その恩返しにと思って若旦那とは特別なお付き合いをさせていただいてきたんですがね。
それを若旦那…ひどいじゃありませんか。
若旦那…。
(輝之)喜八!
(うめき声)喜八ちゃんのやってしまったことは清乃さんにはすべてわかっていた…。
でも誰にも言わず胸にしまいこんで…。
その思いは娘と父…。
同じ思い…。
同じ思い…。
もう一人…。
(うめき声)〜お前は何も…。
いいな?お父さん…〜お父さんって初めてそう呼んでくれたのね…。
俺は金輪際父親を名乗る気はありません。
喜八…。
俺は娘を捨てたんですから。
バカなやつだって笑ってください。
でもたいこもちなんだからあいつの前で祝いのかっぽれ踊って思いきり笑わせてやりてえ…。
俺はたいこもちの東家喜八です。
小春ちゃん…。
女将さん…。
喜八ちゃん思いきってやりなよ。
たいこもちなら思いきり笑わせてやりなよ!なにしてんだい早く!あぁ…うん!ほら喜八いこう!早く!東家喜八はどこにいます?あら…誰のことかしら?とぼけて…。
逮捕状が出てるんですよ。
逮捕状…。
逃がしたりかくまったりしたらあなたたちも罪になりますからね。
この小春喜んでその罪受けようじゃありませんか。
(喜八)おめでとうございます。
(お囃子)お面で見分けがつかなかったということで…。
ちょいと楽しませてもらいますか。
(お囃子)〜清乃さん…。
これから築地中央署に…。
面会の許可が下りたので伝えにいこうと思って…。
私の父の名前は東家喜八…。
職業はたいこもち。
帰りを待ってるって伝えにいってきます。
そう…喜八ちゃん喜ぶわ…。
小春さんありがとうございました。
〜ほらほら…いい芸者がなに立ってるの!〜2015/03/13(金) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス「芸者小春姐さん奮闘記5 別れ舞 殺人事件」[字][解]
たいこもちが犯した花柳界の掟!?美人芸者出生の秘密と老舗銘菓の黒い血縁…。
詳細情報
番組内容
老舗銘菓の若旦那・廣川輝之が刺殺体で発見された。現場周辺の目撃情報から、銭湯『虎ノ屋』主人・虎松に容疑がかかる。虎松は潔白を訴えたが、廣川の先代から数百万円の借金をしている点や、事件現場から指紋が発見され不利な状況に陥る。老舗料亭『花乃屋』女将・小春は、虎松の濡れ衣を晴らすため事件を調べる中、廣川家の人々から邪険にされている次女・清乃の存在を知る。
出演者
神無月小春…十朱幸代
笈川虎松…石倉三郎
清乃…笛木優子
東家喜八…火野正平
七重…磯野貴理子
紫乃…芦川よしみ
矢崎警部…六平直政
廣川輝之…井上純一
福豆…渋谷琴乃
安藤日出子…大島蓉子 ほか
原作脚本
【脚本】峯尾基三
監督・演出
【監督】吉川一義
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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2/0モード(ステレオ)
解説放送あり
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