街なかにあふれる看板。
突然、落下し命を脅かす事態が起きています。
先月、札幌市の中心部で重さ25キロの看板が落下。
歩いていた女性の頭に当たりました。
女性は、今も意識不明の重体です。
こうした看板の事故が全国各地で起きています。
調査を進めると、さびたり腐食したりした看板が、数多くあることが分かってきました。
さらに、安全を守るための業者の点検や自治体のチェックが十分に機能していない実態も見えてきました。
歩行者を突然襲う落下物。
安全をどう守ればいいのか考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
色とりどりの看板は街の風景の一部。
不特定多数の人や車が行き交う道沿いに、その多くが取り付けられていますが安全性について十分な注意が払われていない実態が相次ぐ落下事故から浮かび上がっています。
こちらは、ビルの外壁に取り付けられた看板や外壁の一部が落下し通行人などがけがをした主な事故です。
看板を固定する部品の腐食や外壁の亀裂、破損が見過ごされることで通行していた人の命が奪われたり重傷を負う大事故につながっています。
昨年度までの5年間で国に報告があったものだけで35件起きています。
老朽化したビルや看板は法律に基づいて点検が義務づけられていますが点検が実質的に目による確認・目視にとどまり十分に行われていないのが現実です。
加えて、無許可の看板が非常に多いと見られ行政によるチェックも不十分です。
老朽化したビルが増える中地震や強風などに見舞われることで、看板などが落下するリスクが高まります。
安全管理の責任を原則として負っているビルのオーナー。
点検を行う業者。
そしてチェックする行政。
看板が落下するリスクをどうやって減らしていくのか。
まず初めに、札幌市で起きた看板の落下事故の実態に迫ります。
札幌市中心部の繁華街。
先月中旬、高さ15メートルから金属製の看板が突然落下しました。
重さ25キロの看板が通りがかった21歳の女性を直撃。
女性は、頭と首の骨を折り1か月近くたった今も意識は戻っていません。
被害に遭った女性の中学校時代からの友人です。
女性は看護師を目指して、市内の病院で働いていたといいます。
事故前の看板の写真です。
落ちたのは一番上の部分。
落下の衝撃はどれほどのものだったのか。
重さ5.5キロの板を高さ10メートルから落としたときの衝撃を調べた実験です。
3、2、1。
ぶつかった際の衝撃は重さにして100キロ相当。
札幌の事故の場合この10倍以上の衝撃があったのではないかと見られています。
事故が起きた看板は設置から30年たっていました。
根元には、さびのようなものが見られます。
ビルとの接合部分で腐食が進んでいたと見られています。
事故の直前すぐ下の小さな部品が落下。
1時間半後に看板が落下しました。
看板の腐食に、事前に気付くことはできなかったのか。
3年前、市の条例に基づいて行われた定期点検の報告書を入手しました。
鉄骨の腐食や変形ボルトの緩みがないかなど検査項目は合わせて18。
すべての項目で異常なしとされています。
事故につながった取り付け部分の溶接も劣化はないとされていました。
点検を行った業者が取材に応じました。
点検の際に撮影された写真。
看板の状態は下から目視で確認していました。
条例で具体的な方法が定められておらずそれ以上の詳しい点検は必要ないと考えたといいます。
報告書を受け取った札幌市です。
原則、報告書の内容は書面で確認するだけだといいます。
今回の点検報告書にも特に問題が見られなかったためそれ以上は調べませんでした。
看板を所有する飲食チェーンです。
建築基準法で年に1回義務づけられた点検の報告を今年度行っていなかったことも明らかになりました。
本当におわび申し上げたいと思います。
看板などが落下する事故は全国で起きています。
金沢ではおととしビルの2階から古くなった看板が落下。
長崎では3年前幅5メートルの看板が落ちました。
さらに先月には新宿・歌舞伎町で築40年近いビルの外壁の一部が20メートルの高さから落下しました。
街なかに、見過ごされてきたリスクがあるのではないか。
新宿区では、看板や外壁の緊急調査に乗り出しました。
調査の対象は特に人通りの多い新宿駅周辺のビル1320棟。
調査を始めたところ金属のさびや腐食が次々と見つかりました。
新宿区もこれまで業者が行った点検については書面で内容を確認するのが原則でした。
今回の区の調査で、これまでに金属のさびや腐食などが見つかったビルは249棟。
調査を終えたビルの3分の1に上っています。
今夜のゲストは、建築学がご専門で、屋外広告物の規制にお詳しい、東北芸術工科大学教授の山畑信博さんです。
新宿区が行った、研究調査では、これまで調べられた建物の3分の1に、さびや腐食、そういうものがあったと。
怖いですね。
屋外広告物は特に出来た当初、非常にしっかりしたものであったとしても、経年変化による劣化というのが、非常に大きいものですので、危険なものというのは、全国にもかなりあるんではないかと思っております。
点検が主に目視によって行われているということですけれども、その目視によって、どこまで腐食の実態、あるいは危険な実態というのは分かるんですか?
屋外広告物の看板は、やはり見栄えを重視しておりますので、接合部であるとか、細かい部分を隠すようなデザインになっていますので、そこがおかしくなっているところを見つけるのは難しくて、目視で外にさびが出ているような状態であると、かなり危険な状態に進んでいるのではないかと思います。
看板や外壁がさらされる状況というのは、かなり過酷なものではありませんか?
そうですね。
風に吹かれる、それから太陽の熱に当たる、素材そのものが伸び縮みをする、それこそ、自動車の振動を受ける。
かなり過酷な状況にさらされている、工作物ではありますね。
そうすると、金属劣化などが、いずれ起きてくる?
そうですね。
非常に進みやすいものだと思います。
本来なら、目視ではなくて、きちんと、高い所に上がって、検査をすべきではないかと思うんですけれども、なぜそれが、ほとんどされてないんですか?
コスト面が一番大きいんですけれども、下から、双眼鏡で目視をする、1万円程度のコストですけれども。
1万程度?
高所作業車であれば、10万円以上のコストがかかってしまって、なかなか1つの、それだけお金をかけるってことは、難しいっていうのが現実です。
さらに、点検の対象にすらなっていないものがかなりあると?
そうですね。
屋外広告物、許可制なんですけれども、それの無許可のものが、7割を超えているというような報告もされておりますので、そういったものの実態がなかなかつかみにくいというところもございます。
そして今のリポートを見ますと、行政側も点検の業者が目視などで点検して、問題がないというような報告書は、そのまま信用して受け取っている?
そうですね。
行政の中での屋外広告物を担当する部署の人数もかなり限られておりますし、かなり少ないのが実態ですので、その報告が上がってきたものを、そのまま信用して、確認をするというだけにとどまっておりますね。
今も、新宿の担当者の方が、実際に自分たちで調べてみると、かなり問題があるものが多くて、驚いたというふうにおっしゃっていたのが印象的なんですけれども、かなり老朽化したビルも増えていますし、設置されたときの看板が20年、30年とたっているものが、かなり多いでしょうけれども、安全管理というものが、いわばおろそかにされてきた背景というのは、どうご覧になりますか?
高度経済成長のときに、インフラ、かなりのものが急速に増えました。
その造るだけで精いっぱいで、それを点検していくまで手が回らなかったと。
トンネルの天井落下事故も含めて、これから建物、工作物、そういったものの点検ということが、いかに重要な段階になってきているかということが言えると思いますね。
ということは、作られたときが一番安全な状態だった?
そうですね。
そこからは、安全性がいわば、ずっと劣化をして。
劣化をしてきてますね。
ですから、その劣化をどの段階で除却するのか、あるいは更新していくのか、そこの判断というのが、今まで行われてこなかったということですね。
でも、こうした事故が相次いでいますと、もう待ったなしですよね。
もう本当に、安全第一で考えていかなければいけない時期だと思っております。
さあ、このように仕組みの限界が見えてきた中で、今、新たに安全性を高めるための模索を始めた自治体も出てきています。
建物の所有者に直接働きかけ安全を確保しようとしている自治体があります。
福岡市です。
福岡市でも5年前高さ4メートルの看板が倒れ女性がけがをする事故が起きました。
根元が腐食していたこの看板。
市の許可を得ずに30年以上設置されたままでした。
無許可の看板はどれほどあるのか。
福岡市は、実態調査に乗り出しました。
360度撮影できる特殊なカメラが搭載された車を使い、1億2000万円をかけて調査を実施。
市内の延べ1500キロの道路を走り、周辺の看板を撮影しました。
GPSの位置情報をもとに看板が許可を得ているかどうか一つ一つ確認していきました。
その結果です。
許可が必要と確認された看板は、1万2000余り。
このうち8000近く全体の64%が無許可のものだったのです。
調査結果を受け、福岡市は新たに区ごとに担当者を配置。
所有者に直接、連絡を取り指導しています。
改善が見られない場合は繰り返し電話をかけ直接、出向くこともあるといいます。
看板そのものの撤去を進め安全の確保につなげた自治体もあります。
京都市です。
厳しい景観保護を進めてきた市では、平成19年に屋外広告物条例を全面的に改正しました。
表示できる位置について。
人通りの多い中心部などで歩道にはみ出す看板をすべて禁止したのです。
これは、条例が改正される前の四条通の写真です。
看板がずらりと並んでいます。
それが一変。
今は、ほとんどの看板が撤去されました。
条例の改正後市は嘱託職員を80人以上採用。
専門の部署を立ち上げ規制に取り組んできました。
看板の調査を進める中で景観保護が安全にもつながることが分かってきました。
看板の中に、危険な状態のものが相次いで見つかったのです。
担当者は直接、所有者のもとを訪ね交渉を重ねてきました。
撤去の費用は、すべてビルの所有者に負担を求めています。
すみません、市役所です。
点検のほうよろしくお願いしたいと。
この日、訪ねたのは市内に13棟のビルを所有する会社です。
ビルの壁に残されている古い看板の枠組みを撤去するよう要請しました。
この会社はこれまで12棟のビルの看板を合わせて3000万円かけて撤去しました。
この7年間に、京都市で撤去されるなどした看板は合わせて2万4000余りに上ります。
今の福岡、そして京都の取り組みをどのようにご覧になられました?
特に福岡のように、総点検をするというのは、非常に重要なことだと思います。
まず、そこから始まるのかなと。
いわゆる危険なものと、そうでないもの、それを見極める、それはやっぱり、総点検があって、初めて次に続けていけることだと思います。
調べてみると、全体の64%が無許可だったという実態が見えてきたわけですけれども、国の対応ですけれども、国は、過去に調査を行った全国7万5000のビルの所有者に対して、建築基準法に基づく点検報告を求めているんですけれども、この国の対応で十分でしょうか?
国の対応は、やっぱり建築基準法で定められた点検の義務ですとか、そういったものだけを扱っておりますので、屋外広告物の総量としてはまだまだ足りないのが現状ですね。
しかも、過去に調査を行ったビルだけを対象にすると、恐らく無許可のものは?
かなり、それ以上にあるというのが実態です。
では、なんかやすやす看板の下を歩けない状況になっているのかなという気もするのですけれども、その安全性を高めていくうえで、今後、どうすればいいと思われますか?
屋外広告の業者、設置業者たちも、いろいろと、官民含めて検討をしております。
その安全性をどう確保するか、そういう業者らの中でも、登録をしてあっても、そういう情報が伝わらない方たちもおりますので、そういった方たちも含めて、抜本的な改革、安全性を得るための方策を考えていくことが必要だと思いますし、国は安全の基準、それを作っていくことも大事だと思います。
業者の中には、そうした安全についての情報が伝わらない方々もいらっしゃるので、すべての人に伝わるような仕組みを作るべきだということですか?
そうですね、そういうことも必要ですし、そういう情報が伝わる組合ですとか、そういったところへの加盟ですとか、そういった所が、広く、安全に対する一人一人の業者の意識というものが、高めていかなければならないことだと思っております。
しかし、喫緊の問題として、不特定多数が歩く公道の上の、いわば構造物が危険なものになっている。
ここへの対応、どうすべきですか?
これは、まず今、あるものに関しましては、3年の更新だとか、そういう時期があります。
その時期に対して、一定の時期にきたら、目視だけではなくて、実際に中を見るような、費用はかかりますけれども、今もう、そこまでやらなければならない段階だと思っておりますので、そういうことも含めて、進めていかなければいけない。
それから、新しいものに関しては、工作物としての安全基準、それが少しあいまいになっている部分もありますので、それもしっかりと、なんらかの枠組みを作っていかなければいけないと思っております。
規制の強化ということでしょうけれども、あまり不安が高まりますと、看板、どんどん撤去すべきだという流れにもなりかねないですよね。
そうですね。
屋外広告物、看板はですね、その地域固有の文化でありますし、歴史もあります。
その中で、街のにぎわいをつくっていくうえで、これから景観をつくっていく、いろんな人々が、地域の街づくりの中でのいろいろな重要な要素だと思っておりますので、そこを損ねてはいけないと思っております。
それを損ねないためには、まずは安全性を。
第一になるということですね。
ありがとうございました。
これで失礼します。
2015/03/13(金) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「看板が頭上から落ちてくる〜歩行者を襲う危険〜」[字][再]
ビルの看板や外壁などが突然落下、歩行者を襲う事故が相次いでいる。設置申請がされていない物も多数あると分かってきた。都市に潜むリスク、外装材落下をどう防ぐか考える
詳細情報
番組内容
【ゲスト】東北芸術工科大学教授…山畑信博,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東北芸術工科大学教授…山畑信博,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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