2015年3月12日02時03分
日本人の子どもが国内で生まれると、日本国籍を当然持ち続けられる。しかし、海外で生まれて外国籍も得た場合、生後3カ月内に日本国籍を保つ意思を親が届けなければ失われる。
この国籍法の規定について、最高裁が合憲だと判断した。
立法した国会の裁量権を重んじての判決だが、そもそもこの時代に合った規定なのか、国会は再考すべきである。
原告はフィリピンで結婚した日本人の父とフィリピン人の母から生まれた子どもたち。規定を知らなかった親が意思表示をせず、日本国籍をなくした。
手続きしていれば、日本国籍か、フィリピン国籍かを22歳までに本人が選べたはずだった。同じ事情で各国で日本国籍を失った子たちのごく一部だろう。
規定は大正時代にできた。海外に新天地を求めた日系移民2世を念頭に、日本に戻らず移住先と強く結びついていく人たちが形ばかりの日本国籍をもつのを防ぐ狙いがあったという。
しかし、今や海外で生まれ育ちながら日本人としての自己認識をもち、いずれ日本で暮らしたり、日本と育った国とを行き来したりする人たちが、当たり前にいる時代である。
海外暮らしが長引いても日本語を話し、日本の事情に通じていて、日本人として生きたいと思う人がいて不思議はない。
日本人の親をもつ子どもから日本国籍の選択肢をあえて奪うしくみを維持する必要性は、もはや見いだしにくい。規定の見直しや、当事者の救済を考えるのが現実的ではないか。
いったん日本国籍を失っても、その子が20歳になるまでは日本国籍の再取得もできる。最高裁はこれを不合理な区別といえない理由の一つに挙げるが、国内で暮らしていることが条件で、子どもが海外で教育を受けている場合、実現は難しい。
国籍法にはかつて別の問題もあった。結婚していない日本人の父と外国人の母の間に生まれた子について、たとえ父が認知しても日本国籍を認めない規定があった。それについては最高裁が7年前に違憲と判断し、規定は改正された。
その結果、父母の結婚前に生まれた子が父の認知で日本国籍を得た一方、結婚後にできた子は生後3カ月内の手続きがなかったため日本国籍を失うという不公平なケースもありえる。
日本人を親に持つことが明らかなら、子に国籍を選ぶ幅を広く残すのが人権上も望ましい。さまざまな生い立ちや背景の日本人がいることは、社会を豊かにするうえでも有益だろう。
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