アップル:「EV開発タイタン計画」自動車業界は戦々恐々

毎日新聞 2015年03月12日 21時40分(最終更新 03月12日 23時23分)

アップルは革新的な製品を生み出してきた
アップルは革新的な製品を生み出してきた

 米アップルが自動車産業に進出する−−。こんな情報が欧米メディアを騒がせている。ライバルの米グーグルが自動運転車を開発中なのに加え、アップルは1800億ドル(約21兆円)もの資金を抱えて新たな事業を探っているからだ。アップルは沈黙を守っており、結局は市販には至らず実験車にとどまるとの見方もあるが、得意の情報技術とデザイン力で、既存メーカーからクルマ作りの主導権を奪い、業界地図を変える可能性を秘める。

 きっかけは、2月中旬の英紙フィナンシャル・タイムズと米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道。「アップルの極秘研究所に、自動車技術の専門家が雇い入れられた」と報じた。数百人規模で進める暗号名「タイタン(巨人)」計画の下、2020年ごろの電気自動車(EV)の自前開発を目指すとの内容だ。

 クルマ作りには、巨大な工場設備や数万点に及ぶ部品の供給体制を整える必要があり、新規参入は難しい。しかし、米EVベンチャーのテスラ・モーターズが一定の成功を収めるなど、部品同士の組み合わせに特殊な技術の必要がないEVなら、参入障壁はそれほど高くなくなったとされる。ライバルのグーグルは1月、5年以内の自動運転車の実用化を宣言。アップルが10日開いた株主総会では、株主から「テスラを買収してもらいたい」との要望が飛び出すほど、臆測に拍車がかかっている。

 自動車メーカーにも警戒感が広がる。伊フィアットや米クライスラーを率いるマルキオーネ最高経営責任者(CEO)は今月15日まで開催中のスイス・ジュネーブ国際自動車ショーで、アップルやグーグルが進出すれば「自動車メーカーにとって破壊的だ」と述べた。

 既存メーカーが警戒するのは、両社が既に、車を運転しながらでもスマートフォンを通じて音声でメールに応答したり、音楽プレーヤーやナビゲーションシステムを操作できたりするクルマ向けソフトの開発に乗り出しているからだ。トヨタ自動車やホンダなど主要メーカーも、アップルやグーグルのソフトを搭載した車を開発している。

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