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【社説】

北陸新幹線 個性ある「かがやき」を

 北陸新幹線の金沢開業(十四日)が迫る。高度経済成長の象徴だった東海道新幹線から半世紀、人口減時代を迎えた今、東京一極集中の是正と地方再生のシンボルと位置付けたい。

 一九六五年九月、金沢市で開かれた一日内閣で、富山県の砺波(となみ)商工会議所会頭が東京から北陸を経由して大阪に至る「北回り新幹線」の必要性を説くと、壇上の佐藤栄作首相(当時)が思わずひざを打った。それから苦難に満ちた五十年をたどる。

 東海道、山陽に次ぐ新幹線は上越、東北に先を越された。政治力の差とも言われた。旧国鉄の累積赤字や石油危機で、北陸は先送り、凍結の憂き目に遭う。ようやく地元負担が入る公共事業方式の整備新幹線として動きだす。新幹線と縁遠い人たちも血税を注いでいることを忘れてはいけない。

 先発の新幹線駅はほぼ画一的な造りだ。停車駅を持つ自治体は開業当時、夢あふれる計画を描いたのだろう。しかし、大半がすでに人口減となった。かたや、成熟期を走る北陸新幹線。後発ゆえの戦略を練ってほしい。

 北陸の四駅舎はそれぞれ個性を生かした。伝統工芸に飾られた金沢、ガラス工芸で演出する富山。新高岡、黒部宇奈月温泉も地元のこだわりがあり、評価したい。

 しかし駅前には全国チェーンの居酒屋、商業施設、ホテルが並ぶ。ますます中央資本が進出するだろう。ミニ東京化は絶対に避けてほしい。駅を、新幹線を、地方創生戦略の大きな武器として活用してもらいたい。

 試乗会に参加し時間距離の短縮を実感した。人、モノ、カネが首都圏に吸い取られるストロー現象を予測せざるを得ない。北陸観光と両刃(もろは)の剣だ。首都圏の人口は莫大(ばくだい)。その一部を逆ストローすればいい。そのためにもミニ東京をつくってはいけない。

 大阪へつないでこそ南海トラフ巨大地震時の代替ルートになる。敦賀開業前倒しや福井先行開業が検討中。なぜそれが優先かを説明するためにも、新幹線を生かした国土ビジョンを描くのが先だ。

 

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