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看板などの落下事故5年で35件 半数超でけが
3月12日 17時47分

看板などの落下事故5年で35件 半数超でけが
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老朽化したビルの看板や外壁などが突然、落下する事故が去年3月末までの5年間で全国で少なくとも35件に上り、このうち半数以上の18件で歩行者がけがをしていたことが国土交通省のまとめで分かりました。
中には重体や死亡に至るケースもあり、専門家は事故を確実に防ぐための抜本的な対策が必要だと指摘しています。
先月、札幌市と東京・新宿で看板やビルの外壁が落下する事故が相次ぎ、このうち札幌市の事故では、重さ25キロの看板が歩道を歩いていた21歳の女性に当たり、意識不明の重体となっています。
こうした落下事故について、国土交通省が全国の自治体を通じてまとめたところ、去年3月末までの5年間で全国で少なくとも35件の落下事故が起き、このうち半数以上の18件で歩行者などに当たり、けがをしていたことが分かりました。
このうち大阪・浪速区ではおととし6月に高さ8メートル余りのビルの3階部分からコンクリート製の外壁が剥がれ落ち、下にいた男性の頭に当たり、男性はおよそ1週間後に死亡しました。
先月、ビルの外壁の落下事故が起きた東京・新宿区では、おととしと3年前にも、看板が落下する事故が相次ぎ、合わせて3人がけがをしています。
国土交通省によりますと、ビルの看板や外壁については、法律や条例で所有者に定期的な検査が義務づけられていますが、検査の方法については具体的な規定がないということで札幌市の事故でも目視による検査で問題がないとされていたということです。
建物の構造に詳しい東京大学・川口健一教授は「看板や外壁は高い所にあって点検しにくいうえ、目視やハンマーでたたいても発見できない劣化はたくさんある。あらかじめ耐用年数を決めて、時期が来たら取り替えたり、ネットで落下防止を図ったりするなど、事故を確実に防ぐ抜本的な対策を行う必要がある」と話しています。

事故を受け緊急点検も課題

落下事故をきっかけに、自治体の中には緊急の点検を始めたところもあります。
先月10日、東京・新宿区では歌舞伎町の繁華街のビルで、およそ70センチの長さの外壁の一部が20メートルの高さから落下しました。
けがをした人はいませんでした。
事故を受けて、新宿区では繁華街を対象にした緊急点検を行い、看板や外壁に亀裂や変形がないか1日20人体制で調査を行っています。
新宿区によりますと、これまでに点検を終えた679のビルのうち全体の37%、249棟でさびや亀裂などが確認されたということです。
落下するおそれがあるかどうかはさらに詳しい調査が必要で、建築基準法では危険性が明らかでなければ、一定の大きさのビルなどを除いて所有者にさらに詳しい点検を命じることはできないということです。
新宿区建築調整課の金子修課長は「建物すべての点検を区の職員がすることは現実的ではなく、われわれもなかなか手を出しきれない。もどかしいようだが、それが1つの自治体の限界と考えている」と話しています。

業界も点検のルール作り検討

国土交通省によりますと、建物の看板や外壁については建築基準法や各自治体が定める屋外広告物条例などで、所有者に対して定期的な点検と報告が義務づけられていますが、点検の方法については具体的には決められていません。
看板などの設置や点検を行う施工業者で作る団体によりますと、看板の点検は地上からの目視による確認が一般的で、高い場所にある看板の状態や壁との接合部分などについては、さびや腐食がないかなど検査が難しいケースも少なくないということです。
このため団体では国や自治体と連携して具体的な点検方法などについて、新たなルール作りの検討を行っているほか、ビルの所有者に対しても、安全管理のガイドブックを作成するなどして、安全に対する意識を働きかけることにしています。
日本屋外広告業団体連合会の北山誉至宗さんは「業界全体としてもこれまで自分たちが作った看板を安全に維持するという認識が薄かった。これからは適切な安全管理ができるよう積極的に働きかけていきたい」と話しています。

専門家「抜本的な対策検討を」

ビルの看板や外壁などが突然、落下する事故が各地で起きていることについて、専門家は従来の方法の点検だけに頼った方法では安全を確保できないとして、抜本的な対策を行う必要性を指摘しています。
建築が専門の東京大学の川口健一教授によりますと、看板や外壁は、強度や施工に法律で厳しい基準が設けられている建物の骨組みと異なって設置の施工方法などについて詳しい規定がないということで、高度経済成長期やバブル経済期に建てられた建物の看板や外壁には、古くなって劣化したものが数多くあるのではないかとしています。
そのうえで川口教授は、「看板などは建物と同じ年数使い続けられるわけではないが、高いところにあるので点検しにくいうえ、目視やハンマーでたたいても劣化が発見できない状態はたくさんある。重いものが高いところから落ちれば、確実に大きな事故となるため、あらかじめ耐用年数を決めて、時期が来たら取り替えたり、仮に落ちたとしてもネットで落下防止を図ったりするなど、事故を確実に防ぐという考え方に基づいた制度に抜本的に変えていく必要がある」と指摘しています。

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