若者の政治参加のきっかけにしたい。与野党6党が、選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に下げる公職選挙法の改正案を衆院に出した。

 いまの国会で成立する見通しだ。早ければ来年夏の参院選から始まる。年齢の引き下げは終戦の年以来、70年ぶりだ。

 高齢化のなか、若者が有権者に占める割合はお年寄りに比べて小さい。投票率も低い。

 財政赤字や年金の負担を背負う世代の声こそ、政治に反映させる必要がある。人生で最初の選挙の機会に投票所に行けば、後々の習慣づけにもなる。

 カギを握るのは教育である。

 「いまの18歳は判断力が不十分」との慎重論がある。だとしたら、学校をもっと民主主義の経験の場にするべきだ。

 学校や教育委員会はこれまで「政治的中立」を気にし、現実の政治に距離を置いてきた。選挙に合わせた模擬投票を止めたり、架空の党名や人名で投票させたりした例がある。これでは生の政治を学べまい。

 駅前の自転車対策から原発再稼働まで、意見の対立するテーマはあふれている。先生が自由な発想で授業できるよう、保護者や地域、教育委員会は後押ししてほしい。

 クラスに有権者とそうでない生徒が交じる場合、どう対応するか。先生の指導の注意点は何か。選挙の候補者と、どんな関係であるべきか。生徒による選挙運動は、どうあるべきか。安心して取り組むために、文部科学省は整理を急いでほしい。

 児童会や生徒会も活性化させたい。どうすればよい学校になるかを考え、先生に意見を言う場をつくってはどうか。

 地域に出ることも重要だ。議員のつもりで議会で市の当局と議論した小中学校がある。自治体の合併問題で地元とシンポジウムを開いた高校もある。

 「私が選挙に行かないと日本がメチャクチャになると思うので今後も参加したい」。模擬投票を経験した高校生の声だ。子ども自身が自分に政治を変えられると実感する意味は大きい。

 現実の問題を考え、議論し、行動することは、「受験のために余計なことを考えるな」と勉強に向かわせてきた教育を見直すことにもつながるだろう。

 中央教育審議会は次の高校の学習指導要領で、行動規範や社会に参画する力を身につける新科目を検討中だ。ルールに従うだけでなく、権利を行使し新しい社会をつくる人を育てたい。

 政治を考える教育は、次の民主主義をつくりだす営みである。積極的に進めたい。