くらし☆解説「原発避難者 多様化する現実」 2015.03.11


生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
「くらしきらり解説」です。
東日本大震災からきょうで4年です。
原発事故の影響でふるさとを離れて避難した人たちは今どうしているのでしょうか。
避難している人たちから継続して聞き取り調査をしている早川信夫解説委員に聞きます。
この時間では、これまでも原発事故から避難した人たちのことを取り上げてきました。
今回はどういう傾向が見えてきましたか。
早川⇒時間の経過による多様化の現実が浮かび上がっています。
避難先から元の家に戻った人もいれば元住んでいた家の近くに住まいを求めて移動した人がいます。
避難先で生活をしている人の中には自治体が借り上げているアパートに住んでいる人もいれば家を買ったりして定住を決意した人もいます。
避難先に定住ですね。
経済力や賠償の有無によって家庭ごとに格差が広がってきているなと感じます。
早川さんは新潟県を中心に聞き取り調査を続けていますよね。
そうです。
原発事故の影響を心配して福島県から県外に避難している人は4万7000人余りに上ります。
隣の新潟県は震災直後に全国で最も多くの人たちが避難したところなんです。
今はおよそ4000人が生活しています。
もともと原発周辺の避難区域に住んでいた人たちとそれ以外の自主的に避難している人の数はほぼ半数だったんですが経済的な理由などから自主的に避難している人の割合が減り始めているのがこのところの傾向です。
そんな中、民間の311被災者支援研究会と新潟を中心に、同じ人たちに継続的に聞き取り調査を行ってきました。
今回が13回目。
先月末から今月初めにかけて面接と電話の2つの方法で126人の方からお話を伺いました。
どんなことが浮かび上がってきましたか?3つ挙げたいと思います。
1つ目の今の生活になじんできたけれど、とはどういうことでしょうか?今の暮らしをどう感じているのか尋ねました。
それなりに満足という方が4割を超えまして日常的な暮らしのリズムができてきて、今の生活にかなりなじんできていることがうかがえます。
新居に移り住んで快適に過ごしているという人がいる一方でそれなりに満足なんだけれどよくよく話を聞くともう4年にもなるのに文句は言ってられないとか後ろ向きに考えても気がめいるだけと話す人もいて本当に今の生活になじんでいるというよりはそう言い聞かせている部分も大きいように感じます。
実際のところ精神的なストレスが解消されるまでには至っていないという感じです。
ストレスは実際にどうなんでしょうか?ストレスを感じるという人は合わせて6割です。
とても感じるという人は1年前と比べて減ってはきています。
しかし解消にはほど遠い感じです。
お母さんと子どもだけで避難している場合の中には子どもが周囲の環境に慣れて日常的にはそれほどストレスを感じなくなっているんだけれど、ふとした瞬間に何でふるさとを離れてここにいなければいけないのかと思い出して言いようのないストレスを感じると話す人もいました。
私と同年代のいわば年金世代なんですが周りから無理して何かをしなくてもいいと言われるんだけれど何もすることがないのがかえって苦痛だと話す人もいました。
生きがいがないということですね。
つとめて何もない顔をするように心がけてはいるものの心の中まではもとに戻れていないという現実があります。
2つ目のふるさとの復興と除染はどういうことでしょうか。
今の生活に不足を感じているのは何かということを複数回答で答えてもらいました。
4割近くの人が除染を挙げているのが今回の特徴です。
1年前は住宅支援や健康面への支援を挙げているのが上回っていたんですがふるさとの復興の遅れは除染が進んでいないせいだと感じる人が多くなっていることが示されています。
ふるさとの復興の進み具合についても7割の人たちが遅いと感じています。
原発周辺の人たちは時折自宅周辺に戻ったりしていますが一時は下がったはずの線量が再び上がっていることに気付いてどうしてなんだと心配する声が聞かれました。
原発への不信も根強いんでしょうか。
原発再稼働については絶対にすべきではないもしくはしないでほしいと答えた人が74%にも上りました。
4人に3人ということです。
まだ避難生活を送っているのにそれを忘れたかのように再稼働論議が行われることに怒りを覚えるとか子どもの健康不安を考えると再稼働はありえないという声が聞かれました。
一方でしてもよいという意見もあるんですね。
そうですね。
そうした人の中には原発で働いている家族がいるので原発がなくなると困るんだと苦しい胸の内は明かす人もいました。
3つ目の先行きの見えない不安の中で、というのはどういうことでしょうか。
先行きが見えない中でそれぞれの経済力に応じて生活拠点をどうするのか決断を迫られています。
調査を始めて以来今後の生活拠点をどうするのかを聞いています。
できるだけ早く元の自宅に戻りたいという人は震災直後から大幅に減ってきました。
今は4%にすぎません。
また、決めかねているという人も前回は3割ぐらいいましたがだいぶ減りまして今回は23%です。
この一方で、新しい生活を考えたいという人は横ばいですが高い割合です。
3割くらいあります。
避難先であるとかふるさと以外の場所で定住化が進んでいるということを示しているような感じがします。
4年という時間の経過に伴ってこの先のことを考えなくてはという思いが高まっているんではないかなと思います。
新たな動きになっているように思いますね。
今後はどういうことが課題になりますか?最良の決断ができる環境が必要です。
避難者に対して国や地元自治体がいつまでどのような形で支援を続けるのかその見通しを示す時期にきていると思います。
支援の行きつく先が見えていないことが不安感につながっています。
すべての避難地区が解消されるまでなのかある年限を区切るのか。
疑心暗鬼を生まない対応が求められます。
もう1つは避難者カルテの作成をということです。
賠償を受けているのかどうか家計に余裕があるのかとか家族が分かれて暮らしているのかどうかなど避難者の現状は多様化しています。
この4年で生活が安定してきた家庭もあれば重い負担にあえいでいる家庭もあります。
だからこそ一人一人に見合った支援策が必要ですね。
まずは避難先でどのような思いで過ごしているのかその先に何を望んでいるのか孤立を防ぐために避難者カルテを作ることを提案したいと思います。
一人一人の状況を記録しておくカルテなんですね。
自治体はすでに努力をしているということかもしれませんが避難している方からは行政の担当者が来るたびに一から話をしなくてはならないという声も聞かれます。
仕事を増やすことになってしまいますがそうした意向を集約することが住民の絆を結び直すきっかけになるように思います。
早川信夫解説委員でした。
2015/03/11(水) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「原発避難者 多様化する現実」[字]

NHK解説委員…早川信夫,【司会】岩渕梢

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【出演】NHK解説委員…早川信夫,【司会】岩渕梢

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ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療

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