山村美紗サスペンス「不倫調査員片山由美7 京都・檜家一族・骨肉の争い」 2015.03.11


(ため息)
(片山由美)13回目!
(岡島乃梨子)え…?ノリちゃんのため息。
どないしたん?健太のことなんです。
この頃ろくに口もきいてくれへんで…。
反抗期かしらねぇ。
やっぱり父親が必要なんかなぁ。
由美さん私…離婚せえへんかったらよかったんやろか?けど浮気ばっかりしてるひどい旦那さんだったんでしょ?確かに…。
けど今頃立派に更生してたりしてな。
…そやね。
あ!彼女出てきた。
まぁ昨日と全然違う男の人。
あの奥さん毎日男の人取っ替え引っ替えようやるわ!どないしたん?あれ…別れた亭主なんです。
え〜っ!?ノリちゃんちょっと待って!
(乃梨子)あんた!
(英一朗)乃梨子!?こんな女と何してるの!この女はな浮気の常習犯なんやで!ほんま女見る目ないなぁ!そんなこと別れたお前に言われる筋合いはない!なんやて!待ち!〜ノリちゃん!あ〜あ…行っちゃった。
フフフ…。
(茶をたてる音)〜
(檜佑作)本日はお越しいただきありがとうございます。
(政治家)家元の姿が見えないが?間もなく参ります。
体調が芳しくないそうだね。
時節柄夏の疲れが出ているようです。
あっ参りました。
〜お家元顔色がよくないわね。
肝臓を患っているという噂は本当だったんだね。
引退も時間の問題だな。
いよいよ跡目争いね…。
(男性)付き添っているのが次期家元本命の檜美智子か…。
(女性)本妻の娘よね?
(男性)横にいるのが対抗馬愛人の娘の石田洋子。
その後ろは?一番弟子の富永康之。
腕はいいが欲のない男だ。
彼を次期家元に推す声もあるが本人にはまったくその気がないようだ。
(檜鉄心)うっ!うう…。
(石田洋子)お父様!
(檜美智子)お父様!大丈夫ですか!しっかりしてください!お父様。
お父様…。
(富永康之)事務局長!先生を呼んでください!はい。
(富永)大丈夫ですから。
ご心配なく…。
(ざわめき)おはようございま〜す。
所長!?何してるんですか?
(坂巻平太郎)おはよ〜!
(横田栄子)電動サウナスーツ。
特売で買ったんですって。
フゥ…。
ダイエットのためだよ。
体感温度100℃。
コレステロールと中性脂肪と血圧の数値が高いから要注意って言われてね。
(小宮山渚)叔父さんジョギングとかウォーキングのほうがいいと思うけど。
渚ちゃんここでは「叔父さん」じゃなくて「所長」でそれから目上の人には敬語!ね!はいはい。
宇宙服みたい!あ〜もうダメ!暑い!あ〜!すごい汗!やっぱいいね体感温度100℃!いいねぇ!いや!ダメダメ!ダイエットダイエット!あダイエットっていったらノリちゃんどうした?さっき電話ありました東京の浅草にいるって。
東京!?あの人あのままご主人を追っかけてったのかしら!?
(栄子)そうみたいですよものすごい執念。
(渚)大変ですよね東京広いから。
そこまでやるってことは乃梨子さん別れた旦那にまだ未練があったのかな。
心配ですか?何言ってんだね!何で私がそんなこと心配しなきゃいかんのだ!失礼しました…。
健太君の父親があれじゃ情けないから「捕まえて更生させる!」とか言ってましたけどね。
フーンあその健太君は?今朝も元気に学校に行きましたよ。
親がああだから子供はしっかりしてるよ。
ご苦労さまです。
(チャイム)は〜い。
(チャイム)調査を依頼したいのですが…。
檜家朱雀会事務局長の檜佑作と申します。
檜家というと全国的に有名ですよね?朱雀会は世界各国に25の支局がございます。
あ…全世界的でしたね。
こりゃ失礼しました。
でどういった調査のご依頼で?この女性の素行を調べていただけますか?檜家師範石田洋子。
「若き檜家の家元候補」ですか。
何の根拠もない憶測の記事です!でこの女性の素行を調べればよろしいんで…?彼女が既婚者と交際しているという噂が流れています。
その真偽を確かめていただきたい。
檜家の師範が不貞行為を働いているとしたら大問題ですからね。
事務局長として放っておくわけにはいきません。
なるほどわかりました。
では早速調査に入りますので費用についてご説明させていただきます。
(門の開閉音)
(美智子)どう?よっぽど仕事がないのかすんなり引き受けたよ。
でも大丈夫なのかね?こんな小さな探偵事務所で。
あの女の不貞の証拠さえ掴めればそれでオッケー。
この程度の事務所のほうが後腐れもないでしょ。
そういうもんかね…。
あなたは私の言うとおりに動いていればいいの。
(栄子)じゃあさっきの人は次期家元最有力候補の旦那ってこと?うん。
檜美智子さんの夫。
婿養子よ。
フーン…その檜美智子さんとこの石田洋子さんが次期家元の座を争ってるってことだ。
そういうことやね。
檜美智子さんっていうのは家元檜鉄心の正妻の子。
石田洋子さんっていうのは元芸者の愛人に産ませた子かな。
そやから2人は犬猿の仲よ。
今や檜家は美智子派と洋子派と真っ二つに分かれて家元争いの真っ最中。
詳しいね!こんなん有名ですよ!「檜家の骨肉の争い」って…。
そこまでしてなりたいほど家元って魅力あるんですか?何を言うてんの!踊りの世界もお花の世界もお茶の世界もお金が動くのよ!檜家だけで公称40万人のお弟子さんかな。
例えば1人1万円の寄付もろたらなんぼになる?40億円!?そういうこと。
うわ〜そりゃ足の引っ張り合いどころか殺し合いだってしかねないな〜。
で今家元の檜鉄心が病気で引退間近って言われてるからいよいよ跡目争いもクライマックス!はぁ〜!
(ため息)山鹿亭の特製弁当を買ってきなさい。
聞こえないのか!
(下柳早苗)お願いです…。
無理をおっしゃらないでください。
早苗!お前はいつから私に口答えができる立場になったんだ?山鹿亭へ。
…わかりました。
行ってまいります。
ずいぶん荒れてるみたいね。
山鹿亭の特製弁当ねぇ…フフフ。
母さんも…よく買いに行かされてたわ。
洋子の母:すぐに帰ってくるからね。
母さん早く帰ってきてね!
(雨音)
(三味線)おいで
(洋子)子供心に…何度か弁当に毒盛ってやろうかと思ったわ。
早苗さんにはそんなふうに思う子供がいなくて…よかったわねぇ。
(賛美歌)お母様ほら見て!コスモス!うわ〜きれいね。
(檜華代)頼みごとがあるんじゃないの?え…?あなたが私にこんなふうに気を遣うのは頼みごとがあるときだけ。
そういうところ父親にそっくりねあなた。
お母様…。
お父様のところにお見舞いに行ってほしいんだけど。
見舞いに行ってあとをあなたに譲るように進言しろってことかしら?そういうときだけあなたは私を利用するのね。
そういうところも父親にそっくり!お義母様…すべては檜流のため。
檜家のためです。
檜家を守れるのは美智子だけです。
石田洋子は家元になれるような人間ではありませんよ。
そんなことわかってます!あれは妾の子ですからね。
はい。
私はお母様のためにも家元になろうとしてるの。
お母様を捨てたお父様への復讐でもあるのよ!あんな女に負けるわけにいかないでしょう!こんな体になった私の力を借りなければあなた妹に勝てないんですか!情けない人ね!あなたって人は。
(片山俊介)ただいま。
お帰りなさい。
何やってんの?茶道のお勉強。
茶道!?そう。
和の心を学ぼうと思ってね。
和の心を学ぶやつがなんで和菓子ばっかり見てんだ?だって難しいんやもん。
だからまずは柔らかくて甘〜いところから。
濃茶はこの主菓子。
薄茶はこの干菓子ってね。
太るぞ。
干菓子なぁ…。
東はあっちか。
太るかぁ…。
でもなこの誘惑には勝てまへん。
う〜んおいし!5年前に亡くなったお母さんのお墓やね。
母さん…。
私は母さんと違うからね。
日陰の身で終わったりなんかしない。
こんなところで1人で寂しく眠ったりなんかしない。
檜家を…私のものにしてみせるから。
必ず…。
こわ〜。
(栄子)誰かと待ち合わせですかね?ちゃんと周り気にしてなさい。
あ…あの男の人あの男の人。
ほな後でねバイバイ。
(シャッター音)
(シャッター音)
(シャッター音)
(ノック)
(ドアの開く音)
(シャッター音)ただいま。
お帰りなさいご苦労さま。
わかりましたよ男の身元。
そう。
藤村吾郎41歳。
伏見でメッキ工場を経営してます。
既婚者?はい。
工場で経理を任されてる奥さんが…。
(藤村みどり)私が何も知らないとでも思ってんの!いい気になるんじゃないわよ!何とか言ったらどうなのよ!いつも黙ってばっかりで!あの…お忙しいとこすみません。
若葉保険の者ですが。
ちょっとどこ行くんですか!あの〜若葉保険です。
加入してすぐに自殺しても保険金がおりるのがあったら入ってあげる。
え…あ…。
主人に死んでもらうのよ!
(栄子)親から受け継いだ工場もずさんな経営で業績は悪化する一方でほとんど休業状態でした。
借金もかなりあるようですよ。
絵に描いたようなダメ男やね。
石田洋子はそんな男とどうしてつきあっとるんだ?まぁ見た目はいいですし嘘もうまいみたいですよ。
彼女の前では羽振りもいいみたいだし。
彼の目的は檜家の財産かな…。
たぶんそうですよ。
奥さんとの仲は最悪みたいだしこれでもし石田洋子が家元にでもなったらすぐに乗り換えるんじゃないですか。
(佑作)わかりました。
では明日お待ちしております。
探偵?ああ動かぬ証拠を掴んだらしい。
明日の3時にここへ報告に来る。
計画どおりね。
〜どうも。
お待ちしてました。
茶室に妻の美智子がおります。
話はそちらで伺いましょう。
はい。
どうぞ。
〜どうかしましたか?
(洋子)美智子さんが…。
美智子さんが…死んでます。
なんだって!?美智子…。
美智子!
(佑作)美智子!
(富永)どうしたんですか?あの…。
(サイレン)
(カメラのシャッター音)ご苦労さん。
(所芳之)ご苦労さんです。
ん?トコさんこのにおい…。
ええ甘酸っぱい杏子のにおい。
青酸カリですね。
自殺かしらねぇ?いやそうと断定するには…。
由美…。
はい。
何してんだ?ここで。
何してんの?って私第1…いや第2発見者やから。
なに!?呼ばれてきたら檜美智子さん亡くなってたの。
第1発見者はこちらの師範の石田洋子さんです。
あっ被害者のご主人です。
課長の奥さんをここへ連れてきたのも彼です。
(島崎正夫)警察に通報してくれたのはこの方です。
どうぞ。
富永と申します。
騒ぎを聞きつけて来てみたら…。
このようなことに…。
何か?いえ…。
なんだ?騒々しい…。
美智子さんが…亡くなられました。
えぇ!?檜佑作さん。
奥さんが茶室に行ったのは何時ですか?1時頃です。
いつもだいたいその時間には1人で茶室に行っていましたから。
奥さんは午後3時に来客があることはご存じだったんですか?はい。
それは私がゆうべ伝えました。
明日の3時にここへ報告に来る
(咳払い)で…あなたが…。
片山由美です。
はい…片山さん。
あなたは3時ちょうどにここを訪ねてきたわけですね?はい。
それで檜さんと一緒に茶室に行かれた。
はい。
すると茶室から石田洋子さんが飛び出してきた。
はい。
(佑作)お前だよ!お前が美智子を殺したんだよ!!落ち着いてください。
この女はね刑事さんそういう女なんですよ。
家元の座を手に入れるためにはどんなことでもする女なんだ!!何言ってんの!?私がそんなことするわけないでしょ?それに自殺かもしれないんでしょ?自殺!?どうして美智子が自殺なんかするんだ?美智子さん何かのインタビューで言ってたじゃない。
死ぬときには静かに茶を飲んで死にたいって。
それを実行にうつしただけなんじゃないの?そんなこと言ってたんですか?
(洋子)ええ。
そういうことか!
(佑作)わかったよ。
お前は美智子のその言葉を利用して自殺に見せかけて殺したんだ!!何を言ってんのよ。
お前は美智子を殺さなきゃならなかったんだよ。
跡目争いの勝負がついた以上お前にはそうするしかなかったんだよ!!勝負がついたってどういうことかしら?
(笑い声)ここでみんなに暴露してもいいのか?すべてを。
え?この探偵さんが調べたお前の秘密を暴露してもいいのか?片山さん!はい。
何調べてたんですか?いいや…あのそれは今ここでは…。
守秘義務っていうのがありますから…。
まぁ依頼主からの許可が出れば別ですけど…。
かまいませんよ。
えっ…。
どうぞ!いやその…。
不倫ですよ!不倫!!この女はね女房持ちの男とできてたんですよ!そうでしょ?写真があるんなら見せてやってくださいよ。
ええ…。
こんな女に家元が務まりますか!ええっ!石田さんあなた何をしに茶室に行ったんですか?2時過ぎに電話があったんです。
あなたも終わりよ。
もうすぐ楽しい知らせがここにやってくるの。
どういうことなの?すぐにわかるわ。
じゃあ…
(笑い声)私その言葉が気になって問い詰めようと思ってそれで来たんです。
すると檜美智子さんが亡くなっていた…。
はい。
そんな嘘が通ると思ってるのか!?
(亀田浩二)檜さん落ち着いてください。
楽しい知らせというのは…探偵さんの調査結果のことでしょうね。
た多分…。
私は殺してない。
解剖の結果出ました。
ご苦労さん。
死亡推定時刻は午後2時から3時の間…。
体内から検出された青酸カリの量0.2g。
お茶ひと口分だな。
やはり自殺じゃありませんね。
そうだな。
どうしてわかるんですか?青酸カリを飲んだ場合他殺ではひと口がせいぜいだが自殺の場合は思いっきり飲んでるもんなんだよ。
檜美智子はひと口しか飲んでいないんだから他殺の可能性が高いとみるべきだ。
あっそういうことか…。
(所)何者かがお茶を点てていた檜美智子を自殺に見せかけて殺したとみるべきでしょうね。
でも犯人はどうやってお茶に毒を入れたんですかね?檜美智子と親しい人物や顔見知りなら簡単なことだろう。
(所)茶室に同席していたってことですか?うん…。
じゃあ半金もらえてないの?ええ…あの奥さん亡くしたばっかりだしそれにあの…資料警察に取られちゃいましたから。
半金なしってことは後半ただ働きってこと?経費はかかってるから大赤字ですね。
ちょっと勘弁してよ〜。
勘弁してよ〜。
・はい坂巻探偵事務所です。
乃梨子さん!今どこですか?それが話せば長いんやけど東京からあの人追いかけてきて気がついたら仙台やってん。
ええっ!?あっ!あ〜っ…。
もう2〜3日帰れへんさかいに健太のこと所長によろしゅう頼んどってね!もしもし乃梨子さん?
(電話の切れる音)何やて?今仙台だからあと2〜3日健太君お願いしますって所長に伝えてくれって…。
はぁ…もう勝手にしてくれ。
僕も行きたいなぁ仙台。
ただいま〜。
はいおかえり。
う〜ん…いいにおい。
はぁ…わぁ〜おいしそう〜!!ウチは俊さんといられて幸せやわぁ…。
俺も由美といられて幸せだよ。
ありがと!でもそれは家の中でのこと。
仕事場で会いたいとは思わないよ。
あぁ…同感。
二度とこういうことがないようにしましょうね。
はい。
今度の事件のことは忘れてくれるね?もちろん!だってウチの仕事もう終わったしね!!ならいいんだけど…!でもねなんかウチの調査のせいでこんな事件になったのかと思うとちょっと気になるんやけどね。
気にしなくていい!はい。
返事だけじゃないよな?もちろんです…いただきます。
(藤村)そうか…それは大変だったね。
でもお義姉さんがいなくなった以上君が跡を継ぐしかないんだよね?そのためにはね…しばらく会わないほうがいいと思うのよね。
どうして?あなたとのことがバレてんのよ。
そう…だったらこの際だから公表してもいいんじゃないかな?僕は君と生きてくつもりだからね。
公表なんかできるわけないでしょう?今そんなことしたら父の怒りを買うだけよ!!お願いだからあたしの言うとおりにしてよ。
わかったよ。
また連絡するから…。
(電話を切る音)
(チャイム)
(チャイム)
(富永)家元はどんなご様子でしたか?美智子さんの死を知ったときはかなり取り乱して家へ帰りたいと言って暴れました。
その後しばらく泣いていましたがついさっき眠りました。
そうですか…。
葬儀には必ず参列すると言ってました。
しかしあの体では…。
私が付き添います。
わかりました。
葬儀の日程が決まりしだいまたご連絡します。
お願いします。
(写真の落ちる音)
(華代の泣き声)〜
(所)この藤村ですが親から譲り受けた工場が倒産寸前。
借金は銀行サラ金ヤミ金合わせて3,000万円以上。
おまけにいい格好しいの浪費家ですよ。
そうですか…。
奥さんからお借りした資料のおかげでずいぶん手間が省けましたよ。
勘弁してくださいよ。
メッキ工場…。
そうか…メッキ工場なら簡単に手に入りますね青酸カリ。
この檜美智子と佑作夫婦によって自分の不倫が暴かれようとしていた石田洋子がその不倫相手の藤村吾郎と共謀して檜美智子を殺害した。
そんなところじゃありませんかねぇ…。
それちょっとタイミングがよすぎませんか?タイミング?不倫が発覚すれば確かに石田洋子にとっちゃ致命的なダメージになる。
が発覚する直前に殺害するというのは…自分が疑われるのは当たり前ですからね。
あっご苦労さん。
檜美智子の夫についていくつかわかったことあります。
この夫婦の関係…あんまりよくなかったみたいですね。
どういうことだ?
(亀田)婿養子の佑作はわがままで気の強い美智子にずいぶんとひどい目にあっていたようです。
事務局長というのは名ばかり…。
美智子の秘書兼運転手みたいなもんだったそうです。
檜流朱雀会のパーティーの席で大勢いる前で美智子に罵倒されたこともあるそうです。
じゃこの檜佑作にも美智子を殺害する動機が十分にあったということか…。
ええ。
はい。
それはないでしょう。
佑作は婿養子だ。
檜美智子がいなくなったら何の力もなくなる。
そうですよねこれで石田洋子が家元にでもなれば間違いなく檜家から追い出されますよ。
うん。
探偵使って不倫調査までしちゃったんですからね。
おいこら!あ〜…すみません。
残金を支払えって言うんですか?いやあの今すぐにとは申しませんけど。
それより私が気になっているのは…。
奥様が亡くなられたのは…。
ウチらの調査が原因になってるんやないかと思いまして。
どういうことですか?いえあの…具体的にはわかりませんけど。
石田洋子さんを調べたことが今回の事件のきっかけになってるんやないかと…。
それはありえませんね。
え?
(佑作)あんなでたらめだらけのいい加減な調査が事件に関係しているとは思えません。
でたらめってどういう意味です?
(佑作)あなたの調査結果には信憑性がありません。
ですからあの調査結果に関してはなかったことにします。
あなたも忘れてください。
信憑性がないってねたしかに石田洋子さんと藤村吾郎さんはですね…。
守秘義務があるんじゃないんですか!石田洋子さんに関してこれ以上妙な発言をすると名誉棄損で訴えますよ。
個人情報保護法の全面施行であなた方の仕事もやりにくくなっているんじゃありませんか?十分注意したほうがいい。
まあ調査結果はどうであれ残金はすぐに振り込みますよ。
では通夜の準備がありますんでこれで…。
ちょちょっと〜え〜?どういうこと…だって。
(お経)美智子…。
美智子…。
(鉄心の泣き声)
(お経)
(佑作)この前のお話考えていただけましたか?
(洋子)あなた自分の奥さんの通夜の席なのよ。
恥ずかしくないの?
(佑作)死んだ人間は帰ってきませんからね。
(洋子)最低ね。
どうですか?その最低の男と手を組んでみませんか?美智子が死んだ今次期家元はあなたになる可能性が高い。
(洋子)そうね。
そうなった暁には真っ先に事務局長の首飛ばしてあげる。
それだけは避けたいんですよね〜私としては…。
私のことを追いやろうとしたから当然でしょ。
過去のことは忘れてこれからのことだけを考えませんか?お互いの利益最優先で。
あなたが家元になるためには二つの問題点がありますよね。
一つはあなたの反対勢力つまり美智子派の人間たちだ。
あなたが家元になるとなったら黙っちゃいませんよ。
下手をすると脱退分裂もありうる。
いやもしかしたら人望の篤い富永あたりを家元候補に立てる可能性もある。
富永は強敵になりますよ。
家元も1番弟子の富永をかわいがっていますしね。
まあ失礼ですが…腕もあなたよりは上だ。
しかし美智子派の人間たちを私がすべて懐柔しその全員をあなた側にまとめれば何の問題もない。
もう一つの問題点は?あなたと藤村吾郎の不倫関係ですね。
あれはなかったことにしましょう。
そんなことできるの?公表するしないは私の腹一つです。
〜藤村という男の目的はあなたの金と地位だけですよ。
3,000万円以上の借金があることをご存知でしたか?本当なの?はい。
少なくとも家元になるあなたにふさわしい男ではありませんよ。
これからは私があなたのパートナーになります。
いいように使ってください。
プライドのかけらもないのね。
はい。
それが私の取り柄です。
あなた私が美智子を殺したとは思わないの?過去のことはもうどうでもいいんですよ。

(洋子の笑い声)ただいま。
お帰りなさい。
あれ?起きてたのか?うん。
何かあったのか?ううん別に…。
言いたいけど言うと叱られるって顔だな。
事件絡みか?昼間会った檜佑作と何かあったのか?何でそんなこと知ってんの?君のやることは何でもお見通しだ。
警察なめんなよ。
ねっ!そやったら聞いて。
檜佑作はね私の調査が全部でたらめだって言うのよ。
何だ?それ。
石田洋子と藤村吾郎の間には何もなかったって言うの。
檜佑作がそう言うのか?そう!所長に話したらねもう調査終わって振り込まれてるんだから何も問題ないって言うし乃梨子さんはどっかにいなくなっちゃうしもうやだぁ。
ははぁそういうことか…。
どういうこと?あの男風見鶏だ。
風見鶏って…檜佑作が?え〜!ちょっと石田洋子にのりかえたってこと?そう考えれば君につけたイチャモンだってつじつま合うだろ?そうね!いやぁなんて男やろ!ねぇ檜佑作って怪しくない?奥さん殺しかねないわよ。
君に言われるまでもなくもう目はつけてます。
さすが俊さん!檜佑作は婿養子で檜美智子に虐げられていた。
それが原因で檜美智子を殺害した。
で石田洋子にのりかえたか!推理は君の仕事じゃない。
でもさ石田洋子も藤村吾郎も怪しくない?いい加減にしろ!そもそも何で君は檜佑作と会ってるんだ?もう事件には首突っ込まないと約束したろう!?
(しゃっくり)
(所)おはようございます!京都中央署の所と申します。
あの〜ご存知かどうかわかりませんが先日青酸カリを使った殺人事件が起きたんですよ。
この工場から青酸カリが盗まれたなんてことはありませんか?ありませんね。
ちゃんと気をつけて保管してますので。
そうですか。
ちょっと拝見してもよろしいですか?あ!ああ…どうぞ。
(洋子)何度も言ってますけど私は人殺しなんかしてないわ。
それに彼女は自殺だったんじゃないの?
(亀田)それはまだなんとも。
任意の同行だって言うから来てやったらなんなの?これ。
取り調べじゃない。
帰らせてもらうわ。
ちょっとお待ちください。
これ見てくださいよ。
腹違いとはいえあなたのお姉さんでしょ?何でもいいんです。
心当たりありませんか?あなたにちょっと聞きたいことがあるんだけど。
今警察で美智子が殺された現場の写真見せてもらったんだけど…あることに気がついたのよ。
そのことでちょっと話したいんだけど。

(ノック)失礼します。
(鉄心)富永おまえに聞きたいことがある。
(富永)なんでしょうか。
佑作が美智子側についていた人間を懐柔して家元候補を洋子1本に絞っていると聞いたが本当か?見舞いに来た客がみんな口を揃えて言っておる。
おまえの耳に入っていないわけはないだろう。
たしかにそういった動きがないわけではありません。
あの2人は私をないがしろにしてそんな真似をしているんだな。
家元のお体を気遣ってのことと思います。
たわけたことを言うな!
(鉄心のうめき声)
(早苗)大丈夫ですか?
(鉄心のうめき声)
(早苗)しっかりしてください。
(鉄心のうめき声)〜洋子さんや佑作さんのことなんて庇う必要はありませんよ。
あの2人を庇っているわけではありません。
じゃあ何を守ろうとしてるんですか?いちばん大切なものです。
檜流ですね。
〜それなら富永さん…あなたが家元になるべきです。
それを願っている人は大勢いらっしゃるはずです。
私はその器ではありません。
夕方から東京で関東支部の懇親会がありますのでこれで失礼します。
家元のことよろしくお願いします。
〜おまえたちが何をしようとしているのか私にはすべてお見通しだ。
こざかしい真似をしおって…。
(佑作)私はこれからの檜家のためを思って…。
おまえには事務局長をやめてもらう。
そんな…!洋子おまえに家元は譲らん。
警察は美智子を殺したのはおまえだと疑ってるそうじゃないか。
私が…私が姉さんを殺すなんてそんな…。
疑いをかけられることじたいを恥だと思え!2人とも当分の間謹慎しろ。
檜家への出入りも許さん!謹慎か。
ちょうどよかった。
ちょっと遠出したかったんだ。
どうするんだ?このままじゃ2人ともおしまいだ。
あなたはおしまいだろうけど私は平気。
だって私は檜鉄心の娘なんですもの。
赤の他人のあなたとは違うの。
私を裏切るのか?裏切るって何?私あなたと組むなんて言ったつもりないわよ。
美智子派への工作だってあなたが勝手にやったこと。
私には関係ないから。
騙したのか!?あなたよりずっとすてきな人見つけちゃった。
そっちと組むつもり。
じゃあね。
(洋子の車の発進音)
(喫茶店の音楽)
(喫茶店の音楽)今日警察が工場に来たんだ。
青酸カリのことを聞かれた。
まさか俺が疑われてるんじゃないよな。
疑われてるんじゃないの?あなたと私の関係警察は知ってるもん。
そうなのか…。
だからもう会わないようにしましょうよ。
なに?あなた借金3,000万円以上あるそうじゃない?それじゃ警察に疑われてもしようがないわね。
私まで共犯扱いされちゃう。
迷惑。
何言ってんだよ!俺はおまえと結婚するつもりでいるんだぞ。
私の地位と財産が目当てなんでしょ?そんなんじゃ…。
まあ今となってはどうでもいいことなんだけどね。
ここは…払っといてあげる。
ちょっと待ってくれよ…な!さようなら。
ちょっと待ってくれよ!
(コーヒーカップが割れる音)
(ウエイター)あ〜やっちゃったよ。
(藤村)洋子!ちょっと待ってくれ…な!
(洋子)離して!
(藤村)話を聞いてくれよ!
(ウエイター)やめろよ!いい加減にやめろって!ちょっと待って…!警察呼ぶぞ!ああ…警察だけは勘弁してくれ。
やめろっ!〜
(チャイム)〜どうしたの?
(犬の鳴き声)
(犬の吠え声)はいおいしいコーヒーが入りました〜。
ごめん俊さん出てくれる?電話。
・はいよ。
・・はい片山です。
大変です!石田洋子の遺体が発見されました!石田洋子が!?で場所は?下鴨神社裏。
よしわかったすぐ行く!何やってんの?君は出かけなくていいの。
えっ?あぁ…あのけど…なんで石田洋子さんがね…。
君は考えなくていいの。
そう?考えなくていいの!ハンカチ。
あぁハンカチ…。
ハンカチハンカチ…。
ハンカチはあるの。
あっちょっと…俊さん待って!ちょっと待って!あっ!痛っ!痛っ…痛いわもう〜。
〜紐のようなもので絞められたようですね。
凶器は?車内には見当たりません。
〜これなんですかね?
(鑑識課員)何かの糸みたいですが…。
調べてみますね。
(亀田)お願いします。

(亀田)溶けてる…。
えっ!?今朝…ご遺体で発見されました。
(亀田)失礼します。
刑事さん!
(亀田)どうしました?あのう…昨日洋子さんがここから帰るときに佑作さんと何かもめていたような感じがして…。
風見鶏の佑作が石田洋子に裏切られて逆上したってことか…。
えぇ。
逆上ならもう1人。
(所)昨日の昼過ぎ河原町の喫茶店で藤村吾郎が洋子ともめてたようです。
2人とも怪しいですよね?
(所)檜華代さんにも石田洋子を殺害する動機はありますね。
どんな動機ですか?娘の美智子を石田洋子が殺したと思い込んでいたらどうだ?あぁ…娘の復讐ですか…。
でもこの人は車椅子ですよ?犯行は不可能だと思いますけどね…。
人に頼むっていう方法だってある。
あぁ…そっか。
富永康之はどうかな?
(所)動機はまったくないわけじゃありませんよね?檜美智子と石田洋子がいなくなった今…跡目を継ぐのはおそらく富永康之さんでしょうからね。
でも富永さんの評判を聞くかぎり跡目欲しさに人を殺すような人には思えませんけどね…。
解剖の結果出ました。
死亡推定時刻は昨夜の10時前後。
死因は窒息死。
凶器は限定できません。
よしじゃあ檜佑作藤村吾郎檜華代富永康之の昨夜の10時前後のアリバイと現場周辺の聞き込みだ。
(亀田/島崎)はい。

(亀田)じゃあ昨日はここから一歩も外に出ていないってことですね?…えぇ。
(所)あなた…石田洋子さんに裏切られてかなりご立腹だったそうじゃありませんか?アッハハハ!腹なんか立てていませんよ。
あの女はしょせんその程度の女だって最初からわかってましたからね。
そうですか。
こういう言い方はなんですけどね殺されてもしかたのないような生き方をしてきたんですよあの女は。
あなたは檜家からも追い出されることになってしまったそうじゃありませんか?これからどうなさるんですか?フッ…檜家がなんだっていうんですか?跡目争いで2人も死んだんですよ?イメージダウンは必至だ。
私はさっさと見切りをつけさせてもらいますよ。
あ〜石田洋子が殺されたのはゆうべの10時頃だって言いましたね?
(所)はい。
その時間なら祗園のクラブで飲んでましたよ。
私の手腕を買ってくれる企業がありましてねその担当者と会っていたんです。
ヘッドハンティングってやつですか。
ゆうべは…家で1人で酒飲んで寝てました。
(所)奥さんは?女房は…おとといから実家のほうに帰ってます。
事件の目撃者は見つかりませんでしたが昨夜の深夜2時頃にはあの場所に車が止まっていなかったことが確認されてます。
地元の住民の証言です。
つまり犯人は石田洋子を夜10時頃殺害しその遺体を彼女の車にのせて深夜2時から朝方6時までの間に下鴨神社の裏に運んできたというわけだな…。
でもどうしてあんな場所に車ごと遺体を放置したんですかね?関係者のアリバイはどうなってる?
(所)檜佑作は祗園のクラブにいたことが確認されてます。
(所)9時から深夜0時頃まで飲んでいたようです。
藤村吾郎は?
(所)酒を飲んで自宅で寝ていたって言うんですが証拠はありません。
富永康之は?
(島崎)彼のアリバイは完璧です。
昨日の昼過ぎから今朝までずっと東京へ出張していました。
関東支部の懇親会です。
夕方懇親会が終わったあと夜の8時頃にホテルに入り今朝の10時にチェックアウトしています。
東京のホテルにいたんじゃ石田洋子を京都で殺害するのは不可能ですね…。
いや…夜の8時から翌朝の10時までホテルにいたということはその間14時間。
彼のホテルでのアリバイを証言する人間はいないということだ。
まさか…いったん京都に戻って石田洋子を殺害したってことですか?いやそれはありえません。
富永氏は夜の9時頃から11時頃までホテルのラウンジで1人で酒を飲んでいます。
(島崎)従業員が覚えていました。
(所)やはり富永さんは除外ですね。
(亀田)あっそれから鑑識からの報告なんですが車内で発見された青い糸のようなものはセラミックの繊維だったそうです。
セラミックって断熱材や陶器なんかに使われるやつだろ?はい。
そんな繊維がなんで車の中にあったんだろうな?
(2人のため息)さっきから何考えてんだ?ううん別に…。
俊さんこそ?別に…。
あ…もしかして事件のこと?やっぱりそうなんだ!なんで君がムキになるの?ムキ?いや…ムキになんかなってませんよ。
ムキになんかなってませ〜ん。
家の中に2人刑事はいらないでしょ…。
なんか言った?何も言わない。
なんか言った?いいや!すみません…。

(早苗)どうして家元になることを拒む必要があるんですか?私は…家元にはなれません。
何を言ってるんですか?あなたはこのために10年間も耐えてきたんじゃありませんか。
私だって同じですよ。
この時のためだけに生きてきた。
わかってる!〜
(亀田)これ見てください!
(亀田)ミネラルウォーター1本とキャラメル1箱。
東名高速道路上り線牧之原サービスエリアのレシートです。
そのレシートがどうしたんだ?
(亀田)日付と時刻が書いてあります。
石田洋子が殺された日か。
はい!このレシートが石田洋子の車の中から発見されたんです!車内は鑑識が調べたはずだぞ?
(亀田)シートとメディカルボックスの隙間に挟まってたんですよ。
あの日石田洋子は車で東京方面に向かっていたってことですね?そして東京近辺で殺されてそのまま京都まで運ばれたってことですかね?うん…。
東京ってことは…まさか富永が!?いやそれにしても富永にはアリバイがある。
死亡推定時刻の午後10時頃にはホテルのラウンジにいたんだ。
この2人が東京近郊にいたとしても犯行は不可能だ。
確かにそうですよね。
なぁ?富永が東京にいるときに石田洋子が東京に向かったというのは偶然かな?石田洋子は富永に会うために東京方面に向かったってことですか!?そう考えるのが普通だろう…。
会ってどうしようとしたんですかね?…うん。

(亀田)あ〜暑い。
(所)ご苦労さまです。
めちゃくちゃ暑い!
(亀田)うわっ!なんだこれ!?なんだよ?チョコだ!ポケットの中に入れといたから溶けちゃったんっすよ〜!この残暑で聞き込みしたら当然だろ!あんまり暑いんで栄養つけようと思ったんっすよ〜。
うわ〜彼女からもらったハンカチなのに…。
あのキャラメル…。
亀田:溶けてる…富永に犯行は可能だ。
(2人)えっ!?死亡推定時刻を狂わせたんですよ。
富永は東京のホテルにチェックインする前に石田洋子を殺害した。
そしてなんらかの方法で彼女の遺体を温め隠しておいた。
温めるって…どうしてですか?直腸内温度をできるだけ下げないようにして死亡推定時刻を狂わせるためだ。
死亡推定時刻を実際の殺害時刻より大幅に狂わせるためだ。
そしてその死亡推定時刻午後10時頃にホテルのラウンジにいることで自分のアリバイを成立させた。
なるほど!あっ…。
そのあと11時にラウンジを出て遺体を京都に運んだんですね!?おそらくヒーターをガンガンにかけた車に遺体をのせて京都まで走ったんだろう。
東京から京都までは6時間前後。
朝方京都に着いた富永は洋子の遺体と車を放置し自分は新幹線に乗って東京まで帰ってきた。
そして午前10時に何食わぬ顔でチェックアウトをした。
これなら犯行は可能だろ。
それだけ遺体を温め続ければ死亡推定時刻に3時間くらいの誤差は生じるかもしれませんね。
実際は7時前に殺しても10時頃に殺したようにごまかせるってことか。
しかしこれはあくまでも推測に過ぎない。
実験してみる必要がありますね。
科捜研に連絡します。
実験を行った結果腸内温度の下降を抑え死亡推定時刻に3時間の誤差を生じさせるのは非常に困難なことだった。
午後7時に石田洋子を殺害し遺体を車に隠し朝方放置するまでヒーターで50℃まで車内の温度を上げて温め続けても生じる誤差は約1時間。
私の推測は外れていたのかも…
(係員)100℃近い温度で温めないかぎり3時間の誤差は出ませんよ。
そうですか。
100℃…100℃100℃…。
お百度参りにでも行くの?熱いほう!あっ温泉?いや温泉行きたいわぁ。
そやけど俊さん忙しいしねぇ。
私もダイエットしたいんだけど…。
サウナ…サウナええよね!でもサウナ代かかるのよね。
あっ知ってる?社長がねサウナスーツ買ったの。
電動でね動かなくてもこうやって汗ダクダクになるやつ。
体感温度100℃なんだって。
あれええよね。
あれやったらダイエットになるもんね。
あれ買おうかなぁ。
ねぇ買ってくれる?ちょっと出かけてくる!どこ行くの?サウナ!?ちょっと待って!私も行くから!俊さ〜ん!
(ドアが閉まる音)おい!あれ?課長どうしたんですか?あぁ食い終わってからでいいからもうひと仕事してくれ。
亀田!石田洋子の車からセラミックの繊維見つかったな?えぇ。
鑑識行ってそのデータもらってきてくれ。
はい。
島崎!電動のサウナスーツ至急手配してくれ。
(島崎)サウナスーツ?電動だぞ!電動?サウナスーツ?
(亀田)おぉ〜!課長がおっしゃったとおりでした。
このサウナスーツに使われている断熱材のセラミックと石田洋子の車の中から発見されたセラミックはまったく同じ素材のものでした。
このサウナスーツを遺体に着せれば遺体の腸内温度が下がるのは遅くなり死亡推定時刻に3時間の誤差は作れるはずだ。
(亀田)なるほど…こんなの使ったのか。
・はい刑事課。
あぁトコさん。
…え?箱根は雨?ご苦労さまです。
課長。
はい片山です。
課長…石田洋子の東京近郊の殺害現場絞り込めてきました。
今檜家が持ってる箱根の別荘に来てるんですけど犯行があった晩石田洋子のものと思われる車が夜7時過ぎ猛スピードでこの別荘から走り去ったそうです。
恐らく運転していたのは犯人でしょうね。
あぁトコさん…あの〜家の中で調べてもらいたいもんがあるんだが…。
なんですか?電動サウナスーツの空き箱や説明書があるかどうか…。

(所)2階頼みます。
はい。
〜あった!あなたは夕方東京での懇親会が終わるとすぐに箱根の別荘へ向かった。
(亀田)そこで石田洋子を殺害し室内にあった電動サウナスーツを使って死亡推定時刻をごまかすために遺体を温めた。
(亀田)そしてすぐに東京に戻り8時過ぎにホテルにチェックインして9時から11時までラウンジにいることでアリバイを作った。
11時過ぎにラウンジを出ると遺体をのせた車を京都まで走らせた。
違いますか?…そのとおりです。
申し訳ありませんでした。
石田洋子だけでなく…檜美智子を殺したのも私です。
なぜそんなことをしたんですか?家元の座が欲しかったからです。
あなた…なぜ箱根の別荘へ行ったんですか?石田洋子に…呼ばれたからです。
用件は?会ってから話すと言われましたが…。
恐らく跡目を放棄しろとかそういうことだったと思います。
使ったサウナスーツはどうしました?あぁ…焼き捨てました。
残った灰は水で流しました。
これ見てください。
あなた…この現場見たときに表情変えましたよね?あれ何だったんですか?何のことでしょうか?覚えてませんか?はい。

(店主)まぁ私に言わせればひどい話でしたよ。
若い2人を引き裂いたんですから。
2人は納得してその道を選んだんですか?私には信じられませんでしたが利口な生き方といえば利口な生き方ですよねぇ。
〜これか…。
〜茶筅はこの数穂と荒穂に分けられる…そうですね?この数穂は穂先が細かく薄茶用。
この荒穂は割った穂先が太く濃茶用。
そうですね?…はい。
あなたのような名人がこの2つを間違って使うことはありえますか?ありえませんよね。
でもこれは…変じゃありませんか?お茶は薄茶なのに使った茶筅は荒穂だ。
あなたのような茶道家がこんな初歩的なミスを犯すはずがありません。
これは茶道をまったく知らない人間が犯した初歩的なミスです。
つまり茶道家であるあなたは犯人ではない。
犯人はあなたが庇っている誰かだ。
ちょっと失礼。
はい片山。
(所)所です。
ご苦労さん。
石田洋子が殺された晩小田原駅から箱根の別荘近くまで中年の女性をのせたタクシーがありました。
その運転手さんに関係者の写真を見せたところそっくりな女性がいました。
わかりました。
お願いします。
〜小田原から箱根まで…下柳早苗さんをのせたタクシーが見つかりました。
やっとあなたのところに行けるわ。
(足音)早苗さん…あなた死ぬつもりね?なんで?あなたの代わりに富永さんが罪を被ってるから?真相を綴った遺書を残して死のうとしてる…。
あなたも富永さんも間違ってる!お互いを思いやることがどういうことかちっともわかってへん!うちねあなたのこと調べさせてもらいました。
今から10年前檜家に出入りしてた和菓子屋さんで働いてましたよね?
(早苗)私の家は貧しく…男手ひとつで育ててくれた飾り職人の父親は病床の身で多額の借金を抱えていました。
仕事は忘れて。
ほらほら…ね。
今は体を治すことがいちばんなんだから
(早苗)そんな私の心の支えは誠実な富永さんの笑顔でした。
ご苦労さま。
はい。
…わっ!結構重いですねこれ!懲りずにまた来てくださいね。
…はい必ず来ます!私たちはすぐに愛し合うようになった。
でもその幸せもすぐに壊れたわ。
2人の仲は引き裂かれたの…檜鉄心に。
借金は私が肩代わりしよう。
本当ですか?その代わり…
(早苗)鉄心は私が富永さんと愛し合ってるというのを知りながら借金を肩代わりするという条件で自分の愛人にしたんです。
私は鉄心の言いなりになるしかなかった。
病気の父のことや富永さんの将来のことを考えると言うとおりにするしかなかったんです。
富永さんもそれは同じでした。
茶道家になりたての彼にとって鉄心は神のような存在…。
早くに両親を亡くしてからずっと鉄心に面倒を見てもらってきた富永さんはどうしても逆らうことができなかったんです。

(早苗)一度は死のうとしたんです…飾り職人だった父が持っていた青酸カリを飲んで…。

(早苗)でも死ねなかった…!私は富永さんと別れて鉄心の愛人になりました。
9年前のことも聞きました。
私は9年前に鉄心の子供を宿しました。
この子だけは悲しい思いをさせたくない…私はそう心に誓いました。
でも檜美智子も石田洋子も私の妊娠を許さなかった。
檜家に男の跡取りができれば自分たちの未来がなくなるからよ。
あの2人何をしたと思う?事故に見せかけて私を石段から突き落としたのよ。
〜早苗:うっ…あぁっ…!救急車…!救急車呼んでください…!お…お願い…!
(早苗)その結果私は流産してしまった。
(早苗)許せなかった…。
あの2人だけはどうしても許せなかった。
そやから…そやからあの2人を…。
(早苗)私はあの2人を憎み続けていた。
でも美智子と洋子の2人は互いの足を引っ張るだけではなく富永さんまで追い出そうとしたのよ。
富永さんには家元を継いでもらいたい…その思いだけで私は10年間鉄心の愛人として生きてきたのに…。
鉄心の病状を報告すると言って私は茶室に美智子を訪ねた。
正式に学んだわけじゃないけど「私が点てましょう」と言って美智子にお茶を点てました。
あなたも終わりね。
もうすぐ楽しい知らせがここにやってくるの。
どういうことなの?すぐにわかるわ。
(美智子)じゃあ〜そのとき使った青酸カリは10年前私が自殺しようとしたときからずっと持ち続けていたものよ。
(早苗)洋子は茶筅がおかしいことに写真を見て気づいた。
そして富永さんにそのことを話した。
洋子:殺された現場の写真見せてもらったんだけどあることに気がついたのよ洋子は富永さんを恐れていた。
だから富永さんが誰かをかばっていると気づいたとき彼を脅すことにしたんでしょうね。
そして富永さんが東京へ出張だと聞いたとき話をするために箱根の別荘へ行った。
その別荘にあなたも行ったのね。
私は新幹線とタクシーで洋子を追いかけた。
洋子:うぅ…!〜
(早苗)殺した後で私気がついたんです。
東京にいる富永さんが疑われるんじゃないかって。
だから死んだ時間をごまかすことにしました。
遺体を温めれば死んだ時間を大きく遅らせることができると本に書いてあったのを思い出したの。
だからできるだけ温めてみた。
そしてそのまま京都に運んだ。
(早苗)京都に向かう途中で私は東京のホテルにいる富永さんに電話をした。
私今東京にいるんです。
これからすぐ会いたいんですけどそっちのホテルに行くからラウンジで待ってて彼はホテルのラウンジでずっと私を待ってた。
あなたは富永さんの姿をホテルの従業員に目撃させることで富永さんのアリバイを作った。
11時過ぎにもう一度電話をして「やっぱり行けなくなった」って言ったけど彼は私の嘘に気づいた。
早苗君は何をしてるんだ?何もしてないわ。
お願いだ。
本当のことを言ってくれ。
あなたには関係ないの。
あなたには関係ないのよ!〜
(早苗)富永さんは何もしてません。
みんな私が1人で…。
今お話ししたことすべてここに書いてあります。
早苗さん。
あなた…復讐する相手間違ってんのと違う?あなた復讐する相手間違ってる。
あなたがほんまに憎まなければならないのは檜鉄心でしょ。
あなたと富永さんの人生をぼろぼろにしたのは全部彼やろう?けどね…ほんま一番悪いのは自分自身え。
そやろ?そんなに愛し合ってたんやったらなんで一緒に2人して逃げへんかったの?何もかも失っても愛を貫き通したらこんな悲劇は起こらへんかったと違う?あなたたち2人の純愛を汚したのはあなた自身え。
そうね。
そうかもしれない。

(早苗の泣き声)下柳早苗さんの身柄を拘束しました。
すべての罪を認めて死ぬ気だったようです。
あなたには家元になりたい野心があった。
それを責めるつもりはありません。
ただ…早苗さんに救いの手を差し伸べるのが少し遅すぎた。
(鉄心)華代。
今まですまなかった。
こんなことになってお前の大切さがよくわかった。
これからはお互いに助け合って生きていこう。
私あなたの助けなど要りません。
お前歩けるのか?この日のために歩けるように努力してきました。
華代…。
人を愛さずに生きてきた人間は誰からも愛されないのよ。
〜は…華代。
(戸の閉まる音)はぁ…。
もし早苗さんの子供が産まれてたら今回の事件は起きひんかったかもしれへんね。
そうですかぁ?だって大切に子供を育てて家元にしちゃうでしょ…ん?憎い鉄心の子でもですか?女ってそういうもんやんか。
(坂巻)愛と欲と紙一重か。
(3人)わかったふうなこと言わないで!
(坂巻)すいません。
・はいもしもし坂巻探偵…。
ノリちゃん!今どこ?えりも岬です!とうとう北の果てまで来ちゃいました。
えっ!!えりも岬?当分帰れそうにないんで健太のことよろしくお願いします。
(乃梨子)こんにちは!絶対に逃がさへんからね!いいかげんにしてくれよぉ!絶対逃がさへんからねぇ!
(3人)何考えてんのまったく!所長がかわいそう。
いや…。
彼女が元気ならそれでいい。
(泣き声)泣かせる…!別れた乃梨子さんの亭主っていうのは板前だったのか…。
いや板前っていうか調理師っていうかラーメンの…。
あ〜。
それであちこち回ってんの?…っていうか乃梨子さんから逃げ回ってるのと違う?しかしタフだな乃梨子さんも。
うんいろんな男と女がいるもんやなぁ。
う〜ん。
つくづく男と女って難しいなぁ。
そうかなウチなんか全然難しくないじゃないか。
あせやね!ウチらは言葉なくてもわかり合えるもんね〜。
言葉なしでわかり合っちゃう?やっだぁ昼間っから!だめ?はっそっち!?あらやだ。
2015/03/11(水) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
山村美紗サスペンス「不倫調査員片山由美7 京都・檜家一族・骨肉の争い」[字]

京都が血で染まる茶道家元檀家の陰謀。茶道名門檜家一族、骨肉の跡継ぎ争い!

詳細情報
番組内容
茶道で有名な檜流総本家の家元・檜鉄心が病に倒れた。後継ぎの候補とされたのは本妻の娘・檜美智子とかつての愛人の子・石田洋子。美智子の夫・檜佑作は洋子の不倫調査を由美の事務所に依頼する。だが、美智子は自宅茶室で何者かに毒殺されてしまう。事件現場の写真を見た弟子・富永は犯人のある致命的なミスに気づく。やがて洋子も絞殺体で発見され…。由美は警察官の夫・俊介に内緒で一人調査を続ける。
出演者
片山由美…池上季実子
片山俊介…神田正輝
岡島乃梨子…山村紅葉
坂巻平太郎…丹古母鬼馬二
横田栄子…大塚ちか
小宮山渚…鈴木美妃
檜鉄心…寺田農
檜華代…宇都宮雅代
檜美智子…田中美奈子
檜佑作…梨本謙次郎   ほか
原作脚本
【脚本】深沢正樹
監督・演出
【監督】長尾啓司

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32118(0x7D76)
TransportStreamID:32118(0x7D76)
ServiceID:41008(0xA030)
EventID:35100(0x891C)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: