アンマン=渡辺淳基、渡辺丘、カイロ=翁長忠雄
2015年1月31日23時56分
過激派組織「イスラム国」による人質事件は、拘束されたパイロットの生存確認を求めるヨルダン政府に対し、「イスラム国」側の公式な反応はないとみられ、31日も膠着(こうちゃく)状態が続く。ヨルダン政府は国内外の複数の部族を通じて交渉を模索している模様だ。
「イスラム国」が拘束中のフリージャーナリストの後藤健二さん(47)と、ヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚の交換を求めた期限から31日夕、丸2日が経過した。ヨルダン政府はヨルダン軍パイロット、ムアーズ・カサースベ中尉の生存が確認できないとして、死刑囚の釈放に応じていない。
ヨルダン政府関係者は31日、朝日新聞に「新しい情報は無い」と語った。
日本ヨルダン友好議員連盟の会長を務めるアリ・ベニアタ議員は31日、朝日新聞の取材に応じ、ヨルダン政府がヨルダン、イラク、シリアの複数の部族を通じて「イスラム国」側と交渉していることを明らかにした。「ボールはすでに『イスラム国』側にある。中尉生存の情報を示すために時間がかかっている可能性もある」と語った。同氏はまた、各国の情報機関が事件をめぐる情報収集・分析にあたっていると指摘した。
31日には、「ヨルダンのスパイ」とされる男性を殺害する動画がインターネットに投稿された。過激派組織「イスラム国」が公開した可能性がある。
動画は1分45秒。捕らえられた男性はシリア反体制派とされ、「私はヨルダンの情報機関に通じている。背教者として死刑を宣告された」と語った後、殺害を示唆する複数の場面が続く。記された暦では、1月下旬の撮影とみられる。
一方、日本政府の現地対策本部で指揮をとる中山泰秀外務副大臣は、30日夜(日本時間31日未明)、記者団の取材に「膠着状態という形になっている」と語り、事態の進展がないことを明らかにした。ヨルダン政府と「イスラム国」との交渉の行方などを注視している模様だ。後藤さんの安否については「事態は推移しているので、一切お答えできない」と述べた。(アンマン=渡辺淳基、渡辺丘、カイロ=翁長忠雄)
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