社説:東日本大震災4年 復興に関わり続けよう
毎日新聞 2015年03月11日 02時30分(最終更新 03月11日 02時45分)
東日本大震災の発生からきょうで4年を迎えた。約23万人がなお避難生活を送り、そのうち8万1730人はプレハブ仮設住宅での暮らしが続く。家族らが犠牲となり、住居を失った多くの人たちにとって、時計の針は止まったままだ。
集団移転や復興住宅の建設は時間との闘いが続く。住まいの整備を急ぐとともに、被災した人たちの生活を安定させ、暮らしを再建することがこれからは一層、大切な段階に入る。力を合わせ、岐路に立つ復興を支えたい。
◇生活再建の正念場に
JR石巻駅からバスで1時間の沿岸にある宮城県石巻市桃浦(もものうら)地区。早春の午後、作業場でパートの主婦たちが手際よくカキの殻むきを進めていた。一見、他の漁村と変わらぬ光景だが、漁師が漁協に漁場使用料を払ってカキを取り、漁協に販売を委託する通常のシステムと大きく異なる。15人の地元漁師は震災後に設立した合同会社(代表社員・大山勝幸さん)の社員となり「サラリーマン漁師」として給与で収入を得ている。
震災で桃浦地区はカキ養殖施設を失った。沿岸はがれきで埋もれ、漁師の大山さんらは漁業をあきらめかけた。だが、普通なら漁協が独占する漁業権を企業が取得して生産から販売まで行える復興特区制度ができると聞き、思い切って手を挙げた。
漁業権取得への県漁協の反発を受けながら五里霧中の船出だったが、品質を評価した流通業界の反応は早かった。水揚げは今シーズンから本格化しており、大手外食チェーンと提携するなど販路を拡大している。「震災前からカキ養殖業は値崩れで疲弊していた。漁協を通さず流通できるから桃浦ブランドで勝負できる」と大山さんは手ごたえを語る。
地域主導の取り組みはむろん、産業分野に限らない。高台や内陸部などに被災者が集団移転するいくつかの自治体では移住する人たちが行政と連携し、まちづくりを計画段階から何度も話し合い、合意形成を進めてきた。さまざまな試みが芽生え、育ち始めている。
一方で、生活再建の土台となる住居建設が全体的に遅れている厳しい現実がある。高台などに集団移転するための住宅や、賃貸の復興住宅の完成率は来春時点でそれぞれ48%、65%にとどまる。用地買収が難航したり、資材や人件費の高騰で入札が難しくなったりしているためだ。
中心市街地が津波で壊滅した岩手県陸前高田市や大槌町などいくつかの自治体の住まい再建はこれから本格化する。高台移転の予定が被災地全体で当初より7000戸も減ったのは、事業が長期化し、住宅再建をあきらめた人が多い実態を物語る。