渋谷区を皮切りとして、同性パートナーシップ制度にまつわる議論が高まっています。
……なんていう一文で何かを書き始められる日が本当に来るなんて。私もう、それだけで感慨深くてたまらないわ。本当に、本当に、本当にこんな日が来たんだ。嬉しいとも悲しいともつかない涙が、目を閉じるとただただあふれ出てきます。
まぶたの裏に浮かぶのよ。
老いた彼と引き離され、葬儀に出ることすら拒絶された男性たち。
女は男に養われる他なかった時代、手をとりあって心中した女学生たち。
本当の気持ちを押し殺して結婚した異性パートナーへの罪悪感に苦しむ人たち。
それから、「日本に帰りたいけど私に婚姻ビザは下りないね」と言った、私のフランス人の妻のことが。
でもね、ポエムってる場合じゃないのよね!
現実問題、考えなくちゃいけないことがまだまだたくさんあるわけです。
たとえば、カミングアウトの問題。
今後日本で、仮に何らかの同性パートナーシップ制度ができたとします。ですがそれを利用するということは、同時に「私のパートナーは同性です」と宣言することに他なりません。
そこで親兄弟や同僚から「同性愛者だったんだ……」という目で見られることを恐れ、制度を利用したくてもできない人が、今の日本の社会状況ではまだまだ少なくないでしょう。
私にもそういう経験があります。cakesで連載中のノンフィクション「ルネおじいちゃんと世界大戦」冒頭でもふれていますが、私の妻の祖父は90歳を超える高齢で、心臓を患っています。そんな祖父に「同性と結婚します」と言ったらショックで命に関わるかもしれないが、かといって祖父に黙って結婚することもできない。ということで、フランスでの同性婚法制化を前に、妻と私はずいぶん悩みました。
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