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 ネット上の百科事典「ウィキペディア」を運営するウィキメディア財団は10日、米国家安全保障局(NSA)によるインターネット上の大規模な情報収集は表現の自由やプライバシーの侵害に当たるとして、NSAと米司法省などを相手取り、情報収集活動の中止を求めてメリーランド州の連邦地裁に提訴した。

 ウィキペディア創設者のジミー・ウェールズ氏は同日、米ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン元職員が暴露した文書から「ウィキペディアがNSAの情報収集活動の標的になっていたことがわかった」と提訴の理由を説明。「自由な知識の交流という民主主義の根幹が危機にひんしている」とNSAの活動に懸念を表明した。

 さらに、1989年の天安門事件や2011年のアラブの春などの例を挙げ、「利用者には抑圧的な政府の下で暮らす人々もおり、匿名性が守られるべきだ。書き込みや閲覧内容が米国政府に監視されていると恐れるような事態にすべきではない」としている。

 訴訟には、ウィキメディア財団のほか、人権団体のアムネスティ・インターナショナルなど8団体が原告に加わっている。

 ウィキペディアは、誰もが自由に編集や書き込みができるネット上の百科事典。月に世界で約5億人が利用している。(サンフランシスコ=宮地ゆう)