東京都江東区の私立中村高校で10日、卒業式があった。東京大空襲で校舎が全焼し、生徒らも犠牲となった。あの惨事を忘れまいと半世紀近く前から、空襲があった10日に式を催す。今年は、空襲の様子を記した当時の執務日誌も刊行。風化を防ぐ取り組みが続く。

 「終戦から70年。あのようなことをしてはいけないし、させてもいけない。そんな思いを過去から現在へと受け継いできました」

 午前11時、同校体育館。「次は、みなさんが、未来へと受け渡す番です」。中高一貫のこの女子校に6年間通った卒業生150人を前に、梅沢辰也校長(55)が語りかけた。

 9日、生徒らに1冊の本が渡された。「東京大空襲をくぐりぬけて 中村高等女学校執務日誌」(銀の鈴社)。空襲前日の1945年3月9日から2年半、596日分の、前身の高等女学校の記録だ。一般には10日に発売された。

 原本は茶色くすすけ、所々破れた2冊のノート。小林和夫理事長(67)が87年、1ページ目を書いた当時の教員から渡され、保管してきた。「これ以上の教科書はない」と、空襲70年に合わせ、刊行を決めた。