ドイツのメルケル首相は10年間の在任期間に絶えず反省と謝罪を通じ、過去の歴史による因果を振り払った。イスラエルとナチスの強制収容所まで訪ね、「歴史の反省に終わりはない」を強調した。そんな姿は周囲の人々はもちろん、世界の人々の心をも動かした。戦犯国出身の首相であるメルケル首相は、欧州のリーダーのみならず、世界のリーダーとなった。
一方、安倍首相は在任4年間、歴史の因果を増幅し続けた。歴史否定を繰り返しながら、韓国や中国など過去の被害国の反発をエスカレートさせた。そんな姿は第2次世界大戦での日本の侵略行為による悪夢を記憶する世界の人々をも不安にさせた。メルケル首相と安倍首相のこれまでを比較した。
■「ナチスの蛮行、ドイツに永遠の責任」
2005年に就任したメルケル首相は、在任10年間でドイツを欧州の覇権国に押し上げた。欧州を荒廃させた戦犯国が覇権国として浮上したにもかかわらず、被害国との摩擦を起こさないのは、ドイツ政界が絶えず歴史を反省してきたからだ。メルケル首相は今年初め、アウシュビッツ解放70周年の演説で 「ナチスの残虐行為を忘れないことはドイツ人の永遠の責任だ」と指摘した。
メルケルは野党党首時代から歴史問題に断固とした立場を示した。03年にキリスト教民主同盟(CDU)所属のマルティン・ホーマン連邦議会議員を除名したのが代表例だ。ホーマン議員が当時、「(歴史からみて)ユダヤ人も加害者」などと反ユダヤ主義的な発言を行うと、メルケル首相は「歴史を認めたからこそ、私たちは自由と主権を語ることができる」とし、除名処分を下した。
07年に行った国連総会演説は、西ドイツのブラント元首相が1970年にワルシャワにあるゲットー蜂起記念碑の前でひざまずいて以降始まったドイツの懺悔(ざんげ)を今後も続けていくという誓いだった。当時メルケル首相は「歴代のドイツ首相がイスラエルに対するドイツの特別な責任を義務と考えてきたように、私も歴史が残したこの責任に忠実でありたい」と述べた。
「鉄の女」メルケルの歴史問題をめぐる談話には、被害者を中心に置くという特徴がある。ドイツ首相として初めて2008年にイスラエル議会で演説した際、メルケル首相は「ショアー(ヘブライ語で「大災難」という意味で、ホロコーストを意味する)は、ドイツ人にとって最大の恥だ。イスラエルの安全保障はドイツという国の行動原理だ」と述べた。
「ショアー」というなじみのない言葉を使ったのは、ユダヤ人が「動物を丸焼きにして神前に供える犠牲」という意味に由来する「ホロコースト」という単語に反感を持っていることを理解したためだ。09年9月にポーランドで行われた第2次大戦開戦70周年の記念式典でも「きょうはナチスドイツの罪を忘れない日だ。ドイツが始めた戦争は、何年も多くの市民に権利剥奪、破壊、侮辱など言葉にできない苦痛をもたらした。犠牲者に謝罪する」と述べた。欧州20カ国の首脳が見守る中での発言だった。
普段慎重な言動で知られているメルケル首相は、歴史問題には聖域を設けない。09年にローマ法王庁がホロコーストを否定した司教を復権させようとした際、ドイツ出身で当時のローマ法王だったベネディクト16世に対し、「ホロコーストを否定することに反対すると明確に表明すべきだ」と求めた。
メルケル首相自身もドイツ首相として初めて、同年8月に同国南部のダッハウ強制収容所を訪れ、「収容者たちの運命を思い浮かべると、深い悲しみと恥ずかしさでいっぱいだ」と述べ、献花を行い、黙とうをささげた。
メルケル首相による歴史への反省は、主にナチスドイツに対象が限られていたが、最近は東アジアにまで拡大している。昨年7月に中国・清華大で行った講演では、「ドイツの歴史への反省過程は苦痛だったが正しかった。歴史を繰り返さないことが重要だ」と指摘した。