シェフ 三ツ星フードトラック始めましたChef/監督:ジョン・ファブロー/2014年/アメリカ
ジョン・ファブローは映画に対して誠実でありたいのだなあ
TOHOシネマズシャンテ スクリーン2、F-10で鑑賞。まったくチェックしていませんでしたが、評判がすごく良かったので見に行きました。監督がジョン・ファブローだというのも見に行く直前に知ったくらい。
あらすじ:一流シェフが移動屋台でキャッキャします。
有名レストランの総料理長カール(ジョン・ファブロー)は、新しいメニューを試そうとしたらオーナー(ダスティン・ホフマン)に勝手なことすんなって言われ、批評家(オリバー・プラット)にはボロカス書かれてキーッてなってTwitterが炎上して移動屋台を始めました。
※ネタバレはありません。ないと思います。あるかな。あるかもしれない。ストーリーの内容についてより、映画を作ることについて書いています。
- おすすめ
ポイント - ちょくちょくすごい珍妙なシーン(特にロバート・ダウニーJrとの)があって面白いです。ジョン・レグイザモいいよなあ。面白いです、おすすめ。おなかすく。
ジョン・ファブローが『アイアンマン3』の監督を断ってこれを撮ったのだというのが本当なんだとしたら、すごく納得がいくように思いました。
オーナーは『客はうちの定番メニューを期待しているんだから新しいことすんな、アートならよそでやれ。あと、金出してんの俺だから』と言う。彼の言うことには一理あって、ビジネスであるから仕方ないんですよね。マンネリでも、望まれるものを提供するのが仕事だと。
雇われているから好きなものを作れない。勝負をかけるときでも、自分の意見を通せない。それで彼にとって『つまらない』ものを提供したら、批評家にボロカス言われてしまう。つまらないとわかっていても責任を取る立場として名前が出るのは自分だから仕方ない。
ここまででもう、あーこれ、ジョン・ファブローが映画作りに対してどう考えているのかっていう話なのかな……と思ったんですよね。
で、好き勝手やる、自由にやるには、メジャーの舞台を降りて4ドルや7ドルで売るものを作ることになるんだけれども、それでも、客が喜ぶことが一番大切だと。
焦げたサンドイッチを出さないシーンに、それが一番良く現れているなあと思いました。いいものを作ろうとしたら妥協は出来ないんですよね。
SNSで炎上してそのままSNSで宣伝というのは大変現代的で、カールが最後でいちど息子の話を断ったのは、こういうツールを使っての大繁盛がそんなに長く続くものではないとわかっているからでしょう。
ゆえに落としどころもああなるわけで、好きなように良いものを作り、ビジネスとして成り立たせつつ、嫌な奴とも和解したいという、ここはファブローの理想を描いているのだと思いますね。
2012年に堤幸彦が、本当に撮りたかった映画として『MY HOUSE』(ホームレス主人公のモノクロ映画・原作付き)ってのを作ってるんですけど、まー見ていないので内容についてはなんとも言えないが、ヒットはしませんでした。
んで彼は同年『エイトレンジャー』やってるんですね。当然これはヒットする。内容については知りません。
ヒットするための土台があるから売れる。売れるものが必ずしも悪いわけではない。繰り返しになりますがビジネスですからね。ただ、やりたいことがやれているかどうか、っていうことになると、ちょっと話は変わってくる。堤幸彦にも、映画についてのいろいろな葛藤があるのかもしれないと思いますよ。あるでしょうよ。
紀里谷和明はまたちょっと違った感じになってるなと思っていて、わたし『CASSHERN』だけ見ているのですが原作知らないのでそれなりに楽しめたんですね、あと、なんだかんだ言って紀里谷色みたいなのはあると思ってるんです。で、今年公開予定の『The Last Knights』、クライブ・オーウェンとかモーガン・フリーマンとか出ているのですが、ちょっとトレーラー置きますね。
これ見た時、紀里谷色ぜんぜんないな、って思ったんです。彼はきっとやりたいことがあったんだと思うんですが、通らなかったのかなと。モーガン・フリーマンを使えるような立場になりながらも、自分の色は出せないのか、もしくは色を変えてきたのか、ともかくこのトレーラーだけ見たら紀里谷監督作だとわからない。紀里谷監督に聞きたい。これ、本当に自分が作りたいように作れたと思う? って。
好きな映画を好きなように撮って評価もされて観客にも愛されるっていうの、もしかしたら今はクエンティン・タランティーノくらいなんじゃないかなって思う時あります。彼は映画に愛されている。もっと大御所になってくると話は違うと思いますが、わたしがパッと思いついたのは彼くらいだなあって。あ、ジェームズ・ガンが追い上げてきてるかなあ。
さて長くなりましたので切り上げます。
ひとつ思ったのは、わたし料理がメインの映画ほとんど見ないのですが、ほぼすべての料理シーンの手元が少しだけ薄暗いのは意図的なものか、これがスタンダードなのかどちらなのでしょう? 食べ物を撮るってなったらライトがんがん当てたくなりそうなのに、いいかんじにちょっと薄暗いんだよね。