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〈本音のコラム〉 がん放置療法 看護師 宮子あずさ

(2015年3月9日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

 『医者に殺されない47の心得』『がんより怖いがん治療』など、現在のがん治療を批判する近藤誠医師の著書が広く読まれている。このところマスコミへの登場も増えていて、影響力が増しているようだ。

 近藤氏は、(1)手術や抗がん剤は無意味(2)がん検診は無効(3)がんに早期発見・早期治療のメリットなし−とし、「がん放置療法」を勧める。長年大学病院の放射線科医だった近藤氏は、1996年出版の『患者よ、がんと闘うな』でブレークした。ここで書かれた「がんの中には放置しても悪くならない『がんもどき』が混ざっている」というがんもどき論が、自説の主な根拠である。

 私は近藤氏の考え方にくみしない。近藤氏の説は検証しようがなく、すべてが結果論に聞こえてしまう。例えば、手術後亡くなった人の死を「手術のせい」と決めつける。しかし、それが、手術しなければ助かった証明になるだろうか。

 信頼できる医師は、不確定要素を認めつつ責任を引き受ける柔らかさを持っている。近藤氏の言葉にはそれがない。近藤氏は早期がんでも放置を勧める。それで手遅れになったら、とちゅうちょを感じないのだろうか。

 人気の背景には、既存の医療への不信が感じられる。だからといって容認はできない。最近ようやく出てきた臨床医からの反論にぜひ耳を傾けてください。 

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