ライフハッカー編集部 - こころ,キーパーソン,メンタル,仕事術 09:00 PM
NASAのベテラン宇宙飛行士が教える、ストレスに潰されないための準備と心得
Popular Science:日々のさまざまな出来事は大変なストレスです。しかし、それを地球の軌道上に持っていったらどうなるでしょう。地上から430キロメートルの場所では? それを確かめるために米誌『Popular Science』はNASAのベテラン宇宙飛行士で、ミール計画や国際宇宙ステーションにも従事した宇宙医療専門家のMichael Barratt氏に取材しました。この記事では、仕事上のストレスは、外宇宙でも同じということが伝えられています。操作が難しいロボット・アームや、宇宙遊泳中の事故、宇宙ステーションに積載されている膨大な量のロケット燃料や爆発物のほうが大きなストレスになると思うかもしれませんが、実際はどうなのでしょう?
── 宇宙まで旅をし、仕事をするとはどんなものなのでしょう。 その中で、よりストレスになることは何ですか。というのも、宇宙にいること自体がストレスなのでしょうか。 私には相当ストレスが強いもののように思えます。
Michael Barratt氏:私たちはストレスに対応できるよう十分に訓練されています。たとえ運悪く先端に宇宙飛行士を乗せたロボットアームを操作するその時にアームが凍りついたとしてもです(これは私の身に起きたことです)。それは誰もが経験し、解決法を知っているストレスと同じもので、宇宙飛行士であれば実際に経験する前にモジュールでトレーニングできるものです。ですから準備によってストレスを予防し、宇宙へ旅立つのです。
それよりも、国際宇宙ステーションでの最も大きなストレス源はおそらく、任務を作業計画に間に合わせることです。やるべきことはたくさんあり、モニターのタイムラインで管理しています。朝起きると赤い線が表示されていて、予定の作業に対して今残された時間がわかるようになっています。そして赤い線はどんどん右に進んでいきます。大抵の乗組員は自分のミッションが遅れることにもっとも大きなストレスを感じます。ああ、神様、私たちは50,000トンのロケット燃料の上に座っていて、空に放出されようとしているのだ、といったことよりもね。
── 地球上で感じるストレスに似ていますね。私たちがいつもやらなければいけない仕事のようです。
Michael Barratt氏:私たちはこう言って乗組員を励まします。「いいかい、君たちは2つのバランスを取らなければいけない。君たちは1000億ドルの国際的な資産に関わる任務に就いている。それを忘れてはいけないが、同時に、そのことで自分を追い詰めてはいけない」
── どんな時に一番動揺しましたか?
Michael Barratt氏:私はそんなに動揺することはありませんでした。しかし、予期せぬ失敗をすることはありました。CO2浄化装置が停止して、修理しなければ数日でステーションにいられなくなるという状況になりました。でも、なんとか修理が出来ました。降りて装置を外し、熱交換機を分離させるために色付きのワイヤーを正確に切ったのです。
── それはハラハラしますね。映画の中で爆弾を処理する場面のようです。
Michael Barratt氏:まさにその通りです! 私がワイヤーを切ったとき、相棒が冗談で濡れた布を持ってきて私の額に当ててくれました。写真を撮るためにね。しかし、普通は乗組員のストレスを和らげるには、夕食の時に一緒に集まって、音楽を聴いたり、冗談を言ったり、経営陣の愚痴を言ったり、地上基地のことやお互いのことをからかって笑ったりするのがいいのです。そういうことで結局のところ緊張をほぐしていました。そうやって乗組員たちと笑いあっていろいろなことをやり過ごしたのです。そういうことはいつもやってきたことです。仲間のロシア人の指揮官はカントリー・ウェスタンがすっかり気に入って、彼がTim McGrawを歌うのを見るのは爆笑ものでした。航空機関士はヘビー・メタルに夢中でした。
── 訓練の最中にストレスに対処する能力はテストされましたか? うまく対処できるかどうかを見るために。
Michael Barratt氏:もちろんです。宇宙に出る前には普通、水中にある居住場所で1週間過ごします。それはフロリダのキーラーゴの沖にあって、ミッションのシミュレーションを行います。それに、1、2週間を本当に寒い気候のなか、屋外でバックパッキングの旅をします。仲間と一緒に基本的なサバイバルの訓練を受けるのです。そして私たちのようなケースでは、サルジニアの洞穴の真っ暗闇の中で1週間過ごします。
── 面白そうですが、とてもストレスがかかりそうですね。
Michael Barratt氏:刺激的な体験でした。それから高度順応訓練、飛行訓練、高性能航空機、仲間と飛行する前に、一緒に低酸素症になったり、寒さ、水、惨めさを一緒に味わい、一緒に疲労困憊し、一緒に精神的に辛い場面を味わいます。そうすることでお互いを知るのです。お互いの反応を知り、お互いに必要なものを知るのです。
言いたいのは、自分と同時にチームのことも気にかけられるようにならなければいけないということです。だからいつも内面も外面もよく見て評価するようにしています。そこにいるすべての人々がそうしていれば、物事はうまくいくのです。
IN SPACE, NO ONE CAN HEAR YOU STRESS|Popular Science
Brooke Borel(訳:コニャック)
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