ヒップホップ界におけるホモフォビアをゲイ・ラッパーたちが語る
白人ラッパーのマックルモア(Macklemore)による同性愛や同性婚について歌った“Same Love”が2013年に大ヒットを記録し、R&Bシンガーのフランク・オーシャン(Frank Ocean)や女性ラッパーのエンジェル・ヘイズ(Angel Haze)といった若手がカミングアウトをするなど状況は変わりつつあるが、今なお根強いとされるヒップホップ界におけるホモフォビア(同性愛嫌悪)。これについて、自身の性的指向をオープンにしているラッパーたちが語っている。
アメリカでは今年1月からスタートし、9話連続視聴率アップという史上初の快挙を成し遂げている人気ドラマ『Empire 成功の代償』(日本では3月11日から放送スタート)において、テレンス・ハワード演じる主人公ルシウスの次男で、ドラマの主要人物のひとりであるジャマルが同性愛者であるという設定も話題を呼ぶ中、音楽チャンネルのVH1が、ヒップホップ界において性的指向をオープンにしているラッパー4名にインタビュー。『Empire 成功の代償』についてや、実際のヒップホップ界におけるホモフォビアについて意見を訊ねている。
2012年にComplex誌の「注目すべきニューヨークのラッパー10人」に選出され、人気ラッパーのT.I.が製作指揮を務めた女性ラッパーのリアリティ番組『Sisterhood Of Hip Hop』への出演でも知られるサイヤ(Siya)は、ホモフォビアは根強くあるとしながらも、「ヤング・サグ(Young Thug)がゲイだって噂は聞いたことある? 業界の内外に関係なくこの噂を聞いたことがあるけれど、でもネガティブな反応は耳にしなかった。『あいつゲイなんだ……それで?』みたいな感じで。でも逆にこれが10年前、エミネム(Eminem)がホモフォビックなことをラップしていた時代だったら違っただろうけど」と、最近は状況は変わりつつあるとコメント。『Empire 成功の代償』など人気ドラマにオープンリー・ゲイが登場しているのも大きな進歩だとしている。一方で、彼女の場合は、「ゲイゆえの障害というのは特になくて、自分の場合はイメージを変えようとしないことで障害ができる。レーベルとミーティングをしていても、『君は素晴らしいね!』といった後に、『ドレスを着てもらえないか?』、『もうちょっと女性っぽくできないか?』とか言ってくる」と、同性愛者であること以上に女性ラッパーであることで苦労が絶えないようだ。
また、先鋭的なサウンドを聞かせるミックステープを数々発表し高く評価されているケイクス・ダ・キラー(Cakes Da Killa)も、ホモフォビアは依然としてあると答えながら、「今は昔ほどホモフォビアはやかましくないと思う。それは、自分たちが社会を変えていき、ゲイに対する多くの偏見が取り除かれていったからじゃないかな」と回答。『Empire 成功の代償』については、「ブラック・コミュニティにとっていいと思う。あの番組は、男らしさやカミングアウトすることの別の側面を教えているから」などと語った。
話題となった“Throw That Boy Pussy”などゲイやセックスについてあからさまなリリックが議論になることもあるフライ・ヤング・レッド(Fly Young Red)は、「スタジオセッションの時に、『そう、あいつがあの曲のヤツだ』と影で話しているのを聞いたことがある」と話し、あるトラックメイカーからビートを買おうとした際にも、「自分が誰だか分かった途端、そいつは売りたくないって態度を変えたんだ。『ゲイの曲に俺の名前を載せたくない』みたいに言われたよ」と自身の体験を告白。『Empire 成功の代償』については、ゲイのキャラクターが登場していることを歓迎し、この番組をきっかけにして「ゲイの息子を持つ多くの黒人の父親たちが、これまでしてこなかった息子との対話を始めるんじゃないかな。だって彼らはどうやって、何を話せばいいか分からないから。息子たちが何を考えているか分かるようになって、お互いをより理解し合う手助けになるんじゃないかな」と、期待を寄せている。
英語、ヘブライ語、イディッシュ語など多言語で社会問題や宗教問題についてラップすることで知られるY-ラブ(Y-Love)は、「(『Empire 成功の代償』の)第一話で、なぜブラック・コミュニティではこんなにホモフォビアがあるんだとジャマルが言っていたけど、その疑問はヒップホップだけでなく、ハーレムからサウスセントラルまで、何百万人といるゲイの子供たちも共感する疑問だよ」とコメント。自身がカミングアウトした理由について「2012年にフランク・オーシャンがカミングアウトした際にゲイに対する拒絶反応があったからね。多くのラッパーが、『フランク・オーシャンはR&Bアーティストだから(カミングアウトしても)クールだけど、今後もあんな風にカミングアウトするラッパーを見ることはないだろう』って言ってたのを聞いたからだ」と振り返り、ラッパーたちの間ではやはり同性愛に対する否定的な感情が強いことを説明した。またY-ラブは、「自分たちは今になってここに現れたわけじゃない。昔からここにいたんだ」と語り、続けて、これからも性的指向をオープンにするラッパーが増えていってほしいと話している。