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EC・決済の新モデル
システム利用料の無料化など、大胆な戦略を打ち出し、急速に拡大しているヤフーのEC事業。改革を牽引するキーパーソン、小澤隆生氏がECの未来を語る。
―ヤフーは、2013年10月に「eコマース革命」を掲げ、Yahoo!ショッピングの出店料の無料化、システム利用料の無料化を行うなど、抜本的な改革を打ち出しました。その成果をどう見ていますか。
小澤 eコマース革命には、いくつかの段階があると考えています。スタート段階で基本となるのは、売り手と商品数を増やすこと。そしてもう一つ、売り場を改善することです。売り手・商品数を増やすために出店料とシステム利用料を無料化し、売り場の改善はエンジニアを増やして対応しました。
直近の決算(2014年度第3四半期)では、流通総額(「Yahoo!ショッピング」と日用品通販サイト「LOHACO」の取扱高合計)が前年比11.5%増、ストア数は1年で約8倍の24.3万に増加するなど、それぞれ数字でも成果が出ています。
―ストア数の増加に比べて、流通総額の伸びは小さく、出店者にとっては競争激化の状況にもなっています。
小澤 やはり、そこにはタイムラグが生じます。ヤフーとしては、いかに多くのお客様をYahoo!ショッピングに送り込むか、そして送り込まれたお客様に、一人でも多く買っていただけるようにするかが重要です。
買い手を増やすのは、簡単なことではありません。多くのユーザーにとって、ヤフーは検索する場所であり、ものを買う場所としては認知されていません。
とはいえ、ヤフーに数多くのユーザーが来ているのは確かです。ヤフーにも素晴らしい商品があることを知ってもらい、1度はここで購入していただいて、だんだんと習慣化してもらうしかありません。
グローバルに見ても、検索を主体とする会社が、eコマースでも成功した事例はありません。難易度が高い課題ですが、やりがいがあります。
―ECのモールを主力事業とする楽天は、出店者に対する販売支援にも力を入れて成長してきました。ヤフーでは、どのようなサポートを行っているのですか。
小澤 ほぼ毎日、出店希望者に向けて、Yahoo!ショッピングの魅力や売り方のノウハウなどを伝えるセミナーを行っています。
ただ、もちろん、競合からは見劣りする部分が大きいと思います。
Yahoo!ショッピングは1999年にスタートしましたが、eコマース革命以前の13年間は、正直、手を抜いていたと言っても過言ではない状況でした。1年で、その13年間が取り返せるとは思っていません。
インターネット・ユーザーがもっとも多いヤフーが、取り組むべきことはたくさんあります。失敗することも出てくると思いますが、どんどん挑戦していきます。
―昨年、指定エリア内で2時間以内に配送するサービス「すぐつく」の実証実験を行い、約半年で実験は終了しました。
小澤 終了したのは、取りたいデータが取れたことと、継続するだけの収益を見込めないからです。
取りたいデータとは、何が、誰に、どれだけ売れ、どれくらいのコストがかかるのかという情報です。実験の結果、ものすごく高い頻度で使っていただけるお客様がいることがわかりました。また、飲料やお米など、重いものがよく売れました。ただ、配送の人件費を賄えるほどの収益をあげるのは難しいのが現実です。
ピザの宅配のように、商品自体の粗利で配送費が賄えるのであれば、ビジネスとして成立します。しかし、「すぐつく」は近隣の店舗から商品を配送するサービスで、我々は商品を持っていないので、そこから粗利をあげることはできません。現状では、ヤフー主体でやるのは難しいと考えています。
ただ、どのような形で他社と組み、どう運営すれば成功できるのかについて、仮説は立てています。必要なデータは取れているので、今後、それを活かして再び「すぐつく」を始める可能性は十分にあります。
―「ご当地eコマース」を展開するなど、ヤフーは地方での取り組みにも力を入れています。地方におけるeコマースの可能性を、どう見ていますか。
小澤 eコマースのメリットの一つに、今まで現地でしか買えなかったものが買えるようになることがあります。商品の数、クオリティともに地方の特産品はとても魅力的です。
購入者の住所を見ると、現状では、Yahoo!ショッピングの利用者は都市圏が多く、地方に行けば行くほど、利用率は下がっています。これは、トレンドが都市から地方に広がっていくのと同じで、少しの時差があるだけで、地方でも利用は進むと思います。
また、「クロスボーダー」もキーワードの一つです。海外のものを国内に、国内のものを海外に販売することが増えていくでしょう。言語のハードルが下がっているので、そうしたことが、だいぶやりやすくなっています。
―サービスECでは「予約革命」を進めています。システム利用料を無料にして直接契約の宿泊施設を拡充し、飲食店の開拓にも力を入れています。
小澤 飲食店の予約には、今も電話が使われています。行きたい日時が決まっているとき、飲食店を検索した結果、空席がない飲食店が表示されても意味がありません。
宿泊施設や航空便の空き状況がオンラインでわかるように、今後、インターネット予約に対応した飲食店も増えていきます。
IoT(あらゆるものがインターネットでつながる技術)の発展などで、今まで取れなかったデータがリアルタイムで取れるようになり、世の中はどんどん便利になります。
例えば、医療機関の非常に長い待ち時間であるとか、ディズニーランドの駐車場が空いているかどうかなど、データが不足しているために、あらゆるところでムダが発生しています。ベースとなるデータがあれば、ムダは解消され、大きな変革が起こります。
サービスECには、残された領域がたくさんあります。この2月に、私が取締役を務めるYJキャピタルは、宅配クリーニングのホワイトプラスに投資しました。クリーニングもインターネット化されていない分野です。そうした領域はいたるところにあり、ビジネスチャンスだらけです。
―現在、EC化されていない領域におけるEC化として、どういった分野があると見ていますか。
小澤 高単価商品である不動産、自動車が考えられます。特に不動産については、対面販売ではなくインターネット販売を可能にする法改正も検討されています。実際には、リアルで物件を内見したうえで契約に至るケースが多いと思いますが、不動産投資はインターネット経由が増えていくでしょう。
また、「ヤフオク!」では、日本有数の中古車オークション会場との連携をスタートさせます。これによって、リアルのオークション会場に登場する中古自動車が、毎月数千台の規模で「ヤフオク!」に出品されます。BtoBであれば、実車を見なくても、一定の情報で取引は成立します。
こうした高単価商品の取引は着実に増加し、eコマースの流通総額を飛躍的に押し上げるでしょう。
―動画の可能性については、どう見ていますか。
小澤 ユーザーに対して、購買につながるような動画をどう見せるか、そのタッチポイントの設計をどうするかが課題です。
今、YouTuber(YouTubeで独自制作の動画を公開している人)経由で、モノやコンテンツが売れたりします。「面白い動画が見たい」ではなく「その人の動画が見たい」という視聴行動が生まれたことで、そこにeコマースを組み合わせられるようになりました。その変化には、注目しています。
―海外のeコマースで、注目しているサービスはありますか。
小澤 売りたいものがあるときにだけ販売するページをすぐに用意できる「FlipCart」や、誰でも圧倒的にキレイなネットショップがつくり出せる「Bigcommerce」には注目しています。よく見たら、「Bigcommerce」にはソフトバンク・キャピタルがすでに投資していました(笑)。
また、犬の散歩など、ちょっとしたお手伝いで人のマッチングを行う「TaskRabbit」も面白い。これは、いわば「人」のシェアリングです。
シェアリングとサービスECを組み合わせると、まだまだ面白いものができます。
アメリカには、別荘版Airbnbとも言える「HomeAway」という別荘の貸し借りを行うサービスがあり、そういったものも魅力的だと思います。
―eコマース革命では、目標として「201X年までに、商品数ナンバー1、国内EC流通総額ナンバー1」を掲げています。
小澤 商品数ナンバー1は、2015年中に達成すると思います。流通総額は、2019年までかかるかもしれません。
ただ、時間がかかり過ぎてもいけないので、どこかのタイミングで、無料化に匹敵するような、地殻変動を起こすような施策を打つことも考えられます。
そして目指すのは、インターネットで買えないものはない世界、予約できないお店や宿がない世界です。
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