メルケル首相はなぜこういう行動を取ったのか。朝日新聞は慰安婦報道の一部が誤報だったことが分かり、守勢に追い込まれたが、依然として日本の知識人や中産階級に強い影響力を持っている。神戸大の木村幹教授は「最近の欧州社会では安倍政権の歴史認識とメディア観に深い不信感が形成されている。メルケル首相は基本的に保守の指導者だが、歴史認識は安倍首相とは全く異なるため、ドイツの知識人やメディアの提案を受け入れ、朝日新聞を支持しようとした可能性が高い」と指摘した。同日の講演は朝日新聞社とベルリン日独センターが共催した。
ドイツメディアもそうした解釈を裏付けた。有力メディアの南ドイツ新聞は8日、「安倍首相は歴史問題に対する批判にアレルギーに近い反応を示してきた。(そのため)メルケル首相は日本の戦争犯罪を批判的に報じてきた朝日新聞社での講演を望んだのではないか」と報じた。
日本社会では「中国と日本が激しく争う東アジアでドイツが結局中国を選んだのではないか」という反応も聞かれる。メルケル首相は欧州でも代表的な親中派リーダーとして知られる。就任初期に一時的にダライ・ラマに対する弾圧に抗議し、中国政府とぎくしゃくしたこともあったが、すぐに関係を修復した。その後、昨年まで貿易代表団を率い、7回も中国を訪問した。一方、訪日は3回にとどまっている。前回訪問は08年だった。
日本の外交専門家は「メルケル首相は今回の講演を通じ、日本の知識人社会と大衆に対し、自身の所信を明らかにし、同時に北京に向かって、『私は安倍首相とは意見が異なる。日本よりも中国を重視している』というメッセージを送ったとみている」と語った。中国外務省の洪磊副報道局長は同日の記者会見で、「戦後70年を迎え、日本の当局者が(メルケル首相の言葉のように)正しい選択をすることを望んでいる」と述べた。