記者同士が集まれば、「あいつは記事が書けない」と陰口をたたくこともあるが、そうは書けない。自分のことを棚に上げたような言いぐさだからだ。しかし、タブーを一つ犯そうと思う。
朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の名誉を毀損したとして起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が昨年8月3日に書いた「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と題するコラムを何度か読んでみた。いったい何を言いたいのか。翻訳文を読んだためにそうなのかと思い、読める部分は日本語でも読んでみた。後輩記者が書いたならば、「お前は入社何年目だ」と尋ねたであろう内容だった。
言うならばこんな感じだ。
「あの話聞いた?朴(パク)部長っているでしょ」
「何の話?」
「あ、知らないならいいや」
「なら最初から言うなよ。いったい何の話だよ」
「それがさ、朴部長が前にさ…」
誹謗(ひぼう)には「5W1H」を明記しない。雰囲気だけを漂わせ、実体は明かさない。―加藤前支局長の記事はまさにそんな感じだった。韓国の大統領をめぐるうわさを日本の読者に伝えたいのだが、それでは飽きたらず、「ジャンプ技法」を使って、読者の想像力を刺激した。
整理すると▲朴槿恵大統領の動静が7時間確認できない▲チョン・ユンフェ氏という人物と男女関係のうわさがある▲チョン・ユンフェ氏には離婚歴がある▲離婚合意書は結婚生活に対する「秘密保持」が条件になっている―という無関係なファクトを集め、「ストーリー」に仕立てた。安っぽいドラマ台本の書き方であって、ニュースの書き方ではない。ニュース報道ではないコラムであっても、こんな書き方をしてはならない。