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東京大空襲70年が問うもの

2015/3/10付
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 70年前のきょう、東京の下町一帯は米軍機による猛爆を受け、わずか一晩で10万人余の死者をだした。被災家屋約27万戸。太平洋戦争における民間人の犠牲のなかでも、沖縄戦や広島・長崎への原爆投下とならぶ最悪の被害だ。

 戦争というものは、最後には前線も銃後も隔てがなくなる。東京大空襲は当時の日本人に、そんな現実をまざまざと見せつける出来事であった。あの大戦末期の不条理の象徴といえる。

 だからこそ、悲劇は戦後ながく語り継がれてきた。節目の今年はとりわけ証言の掘り起こしなどが盛んだ。惨禍を風化させないためにも、こうした機会に被害の実相に触れる意義は大きい。

 もっともその際に、忘れてはならない視点がある。ことここに至る前に、なぜ戦争をやめられなかったか、という問いかけだ。

 1944年7月、日本軍は「絶対国防圏」のサイパンを失い、米軍はここを拠点に日本本土空襲への態勢を整える。この時点で日本の敗北はほぼ決定づけられたにもかかわらず、当時の戦争指導者たちは泥沼に突き進んだ。10月にはレイテ沖海戦で大敗、翌年には硫黄島で将兵が玉砕した。

 本土への間断なき空襲や沖縄での地上戦は、こうした経緯によって必然的にもたらされた事態だった。終戦があと1年早ければどれだけ多くの人命が救えたか。その決断ができないまま本土決戦を叫んだ指導層の罪は深い。

 「国民の無気魂」が敗戦を招いた――。ポツダム宣言受諾が決まったときに東条英機元首相がしたためた手記には、こんなくだりがある。このような認識を持つ指導者のもとで、多くの国民やアジアの人々が苦しんだ。そんな過去を直視しなければなるまい。

 あの戦争はもはや歴史の領域に入り、ときには伝説的で悲壮な物語が私たちの胸を打つ。しかしその背景の事実、とりわけ失敗の連鎖にも目を向けたい。悲劇から学ぶべきことは、歳月を重ねてなお少なくないはずだ。

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