ドイツのメルケル首相が7年ぶりに来日し、安倍晋三首相と会談した。6月にドイツで開く主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)の議長として、次期議長国である日本と、ウクライナや中東問題への対応で連携を深めることで一致した。世界秩序に揺らぎも見られる中で、日独には一層の協力強化が求められている。
地域紛争が世界経済に影を落とし、国際秩序も不安定になっている。だが、マクロ経済政策での協調や紛争の解決策を探るG7の枠組みも、金融危機を経て米国の内向き姿勢が強まったことなどで、十分な役割を果たせなくなっている。その代役を期待された20カ国・地域(G20)首脳会合も求められる機能を発揮できていない。
日独は秩序安定に主導的役割を期待されているが、十分に力を出せていないのが実情だ。ドイツは経済力で存在感を増すものの、ギリシャの債務問題の解決や欧州のデフレ回避策を巡ってまとめ役になれず、むしろ国益優先の姿勢が目立つ。日本も経済再生で手いっぱいで、国際的なリーダーシップの発揮とはほど遠い状態にある。
だが、両国が政治、経済面で連携を深めれば、ともに主導的な役割を果たせる可能性も高まる。両首脳は、停戦合意後もにらみあいが続くウクライナ情勢についても協力を深めることで一致した。
メルケル氏はロシアのプーチン大統領と頻繁に会談。安倍氏も比較的良好な関係を保っている。両首脳はそれぞれのパイプを生かすため、緊密に連絡を取り、和平の実現を働きかけてほしい。
日独の外交戦略や経済関係には違いがあるが、互いの距離を縮める意味は大きい。日米が軸の環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉は終盤を迎えているが、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉は遅々として進んでいない。域内最大の経済大国であるドイツの推進力に期待したい。
対中国外交では、日本は中国軍の海洋進出にさらされ安全保障上の懸念が強い。ドイツは地理的に遠く、切迫した安保問題がないため、巨大市場に関心が向きがちで、メルケル氏も毎年のように中国を訪問してきた。
こうしたずれはある程度は仕方ないが、中国が責任ある大国になるのを促す点では、日独は一致できるはずだ。首脳会談を機に、胸襟を開いて、対中政策も協議できる関係を築いてほしい。