<大相撲春場所>◇初日◇8日◇大阪・ボディメーカーコロシアム

 ファンが楽しみにしていた一番が突然、消えた。横綱鶴竜が、まさかの休場。逸ノ城との取組がなくなった。横綱の初日不戦敗は、相撲協会に記録が残る限り、54年夏場所の吉葉山以来2度目。それほどの不名誉だった。

 あらかじめ休場を届けていれば、せめて逸ノ城の取組は見られた。だが、鶴竜は前日の土俵祭りにも出席していた。審判部副部長で師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)は「(痛みは)前々からだった。精いっぱい治療し、今日まで考えての決断。あきらめずにやってみようとした」と説明した。

 難しい決断だったろう。ただ、突発的なけがでなく、地位に重みもある。まして注目度が高い逸ノ城戦。満員札止め7200人のファンからはどよめきが起こった。楽しみを突然、失い「え~、ウソ! おもんな!」という声も出た。

 逸ノ城は昨年春場所はまだ幕下。協会あいさつの文面を変更し「遺憾と存じます」と話した北の湖理事長は「大阪の人に、逸ノ城は初めてみたいなもの。そこが残念」。春連覇が懸かった鶴竜が消え、逸ノ城の一番も、もったいなく消えた。【今村健人】