TEL | 外来 | 外来診療棟3階 | 027-220-8248 |
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消化器外科では、消化器系の各種がんをはじめとするさまざまな病気に対する外科治療を行っております。外来では日本消化器外科学会の指導医・専門医および日本外科学会の指導医・専門医が責任を持って診察させて頂き、手術が必要な患者さんには外来診察時および入院後に病状や治療法などについて詳しく説明させて頂き、安心して治療が受けられるような体制作りを心がけております。また、日本内視鏡外科学会の技術認定を取得した医師を中心に、腹腔鏡や胸腔鏡を用いた鏡視下手術を可能な限り提供し、手術による患者さんへの負担の軽減に努めております。消化器外科の医師は日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本食道学会、日本胃癌学会、日本肝臓学会、日本内視鏡外科学会、日本肝胆膵外科学会、日本消化器内視鏡学会などに所属しており、学会出席と発表を責務とし、常に最新の医療水準を保てるよう努力しております。研究面でも遺伝子解析などによる新しいがん治療法の開発に努力しております。外来および入院を通して我々が責任を持って治療させて頂きますので、不安な点やご不明の点がありましたら、お気軽に御相談ください。
呼吸器外科(2)では肺癌を中心に縦隔腫瘍、胸膜・胸壁腫瘍、転移性肺腫瘍、気胸、膿胸など、悪性腫瘍から良性疾患まで幅広く診療を行っています。
1)診断・治療方針の決定
現在の肺癌を中心とした呼吸器悪性腫瘍の治療は、外科的治療ばかりでなく、放射線治療や抗癌剤治療などを組み合わせて行う集学的治療が治療法の中心になっています。したがって診断はもちろん、治療方針の決定も一つの診療科のみで行う時代ではありません。当診療科では呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科、画像診断部の専門家を交えたカンファレンスを毎週行い、患者さん一人一人の病状や体力に適した治療方針を選択し、必要に応じて各科合同で治療(集学的治療)を行っています。また、常にカンファレンス(各科合同での話し合い)を行っておりますので、外科から内科、放射線科などへ診療の流れもスムーズで、病状に応じた適切な治療が迅速に行われています。またセカンドオピニオンも積極的に受け付けております。診断においても核医学科・画像診断部と協力して術前診断に最新のPET-CTを積極的に取り入れ、より正確な病期(病期の進み具合)の診断を行い治療に反映しております。
2)治療
A)安全性と根治性(完全に取りきる・治す)を大切にした手術
手術面では安全性と根治性(完全に取りきる・治す)を最重要に考える一方、患者さんの体力や希望にも応じて、拡大手術から低侵襲(体への負担が少ない)な胸腔鏡下手術までを幅広く行っております。病理医が常時診断できるという大学の環境を生かし、手術中の病理診断を積極的に行い、より正確な手術に努めています。また、手術中に病理診断を行うことで、肺癌の根治性を損なわずに(病気を取り残さずに)肺の機能を温存する縮小手術(肺区域切除など)も行い、良好な成績を得ています。肺良性腫瘍、縦隔腫瘍に対しても胸腔鏡を用いた低侵襲な手術を行い短い入院期間での治療を実現しています。
B) 美容を考慮した手術創(手術の傷)
どのような手術創についても美容上の理由を考慮し、手術創の場所の選択や、縫合法などに最新の技術と最大限の努力を行っております。特に創部の縫合では溶ける糸を用いて埋没(皮膚の内側に埋める)縫合を行っています。この方法では抜糸は一切不要で、退院までには院内での入浴、シャワーが可能です。
C)「痛み」を感じさせない手術と術後管理
患者さんが最も心配していることの一つである術後の「痛み」に関しても特に力をいれて診療しております。麻酔科と協力して硬膜外麻酔などを用いて、手術後にも痛みのない医療を提供できるように努力しております。患者さんに痛みを我慢させることは一切ありません。
3)入院生活
A)呼吸器リハビリテーションによる呼吸機能の回復の促進
患者さんが肺の手術をすると呼吸が苦しくなり、手術後の生活の質が落ちるのではないかと心配されるのは当然です。当診療科では他の施設に先駆けて専門家による手術前後の呼吸器リハビリテーションを積極的に取り入れております。その結果、手術後の合併症の発生率を減らすことができ、肺癌の患者さんでも術後平均約7日程度の入院期間で元気に退院し一般生活に適応なさっています。また、術前の呼吸機能が悪い患者さんでも積極的な呼吸器リハビリテーションを行うことで手術が可能になる場合があります。
B)クリニカルパス
入院中も患者さんに不安がないようにクリニカルパスと、それをサポートする冊子等をもちいて手術、退院までの一連の流れを説明し、医療スタッフと知識を共有し、不安を軽減できるような体制で診療を進めております
乳腺・内分泌外科では乳がんをはじめとする乳腺疾患、甲状腺疾患、上皮小体疾患および副腎疾患の診断治療をしています。外来では、乳腺専門医・日本乳癌学会の認定医、および日本外科学会の指導医・専門医が責任を持って診察させて頂き、手術の必要な患者さんには外来で病状や治療法などについて説明させて頂きます。入院後には再度主治医から治療法について詳細に説明があり、安心して手術が受けられる体制が整えられています。乳腺・内分泌外科担当医は日本乳癌学会、日本内分泌外科学会に所属しており、学会出席と発表を責務としており、常に最新の医療水準を保てるよう努力しています。研究面でも患者さんに役立てるような治療法の開発に努力しています。また、定期的に女性医師を中心とした患者さんとの会を開催し、患者さんの悩みの相談にも応じています。
心臓血管外科手術は生命に直接かかわる、患者さんの負担の大きい領域です。しかし、近年手術方法の進歩によって手術の安全性は格段に向上しています。当科では、外来・入院を通して日本胸部外科学会の指導医・認定医、心臓血管外科学会の専門医、および日本外科学会の指導医・認定医が責任を持って診察・治療をさせて頂いております。また、急患に対しても24時間体制で対応し、必要とあれば院内各科の協力が可能な状態です。常に最新の医療水準を保ち、患者さんに最善の医療が提供できるよう、臨床・研究の両面で日々努力しております。
移植外科外来では、日本消化器外科学会の指導医・専門医および日本外科学会の指導医・専門医が責任を持って診察させて頂き、手術が必要な患者さんには外来で病状や治療法などについて説明させて頂き、必要があれば当院で入院治療を行うか、あるいは適切な施設に紹介するなどしております。
消化器疾患 | 食道・胃・大腸・肛門・肝・胆・膵疾患 |
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肺・縦隔・胸壁疾患 | 肺癌、肺良性腫瘍、気道狭窄、縦隔腫瘍(胸腺腫、神経原性腫瘍、胚細胞腫瘍等)、重症筋無力症、胸壁腫瘍、胸膜腫瘍(悪性中皮腫・孤立性線維腫等)、横隔膜腫瘍、気胸、膿胸、胸部外傷 |
乳腺・内分泌疾患 | 乳腺・甲状腺・上皮小体・副腎疾患 |
心臓疾患 | 先天性心疾患、心臓弁膜症、虚血性心疾患 |
血管疾患 | 胸部および腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、静脈疾患 |
移植外科 | 生体肝移植 |
教授(診療科長) Professor(Director) |
竹吉 泉 Izumi TAKEYOSHI |
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准教授 Associate Professor |
堀口 淳 Jun HORIGUCHI |
講 師 Associate Professor |
高橋 徹 Toru TAKAHASHI |
清水 公裕 Kimihiro SHIMIZU | |
助 教 Assistant Professor |
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須納瀬 豊 Yutaka SUNOSE | |
茂原 淳 Jun MOHARA | |
吉成 大介 Daisuke YOSHINARI | |
小池 則匡 Norimasa KOIKE | |
高他 大輔 Daisuke TAKATA | |
六反田 奈和 Nana ROKUTANDA | |
長岡 りん Rin NAGAOKA | |
塚越 浩志 Hiroshi TSUKAGOSHI | |
時庭 英彰 Hideaki TOKINIWA | |
平井 圭太郎 Keitaro HIRAI | |
永島 宗晃 Toshiteru NAGASHIMA | |
高橋 憲史 Norifumi TAKAHASHI | |
宮前 洋平 Yohei MIYAMAE | |
材料部 副部長 | 小川 博臣 Hiroomi OGAWA |
臨床研修センター 講師 | 菊地 麻美 Mami KIKUCHI |
臨床研修センター 助教 | 佐藤 亜矢子 Ayako SATO |
日本外科学会 | 日本消化器 外科学会 |
日本 内視鏡 外科 学会 |
肝胆 膵外 科学会 |
日本 肝臓 学会 |
日本 臨床 腫瘍 学会 |
日本 がん治療 認定医 機構 |
日本 消化器 内視鏡 学会 |
日本 消化器病 学会 |
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指導医 | 専門医 | 指導医 | 専門医 | 技術 認定 |
高度技能 指導医 |
専門医 | 暫定 指導医 |
がん治療 認定医 |
専門医 | 専門医 | ||
竹吉 泉 | 教授 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
須納瀬 豊 | 助教 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
吉成 大介 | 助教 | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||
小川 博臣 | 助教 | ○ | ○ | ○ | ||||||||
平井圭太郎 | 助教 | ○ | ||||||||||
塚越 浩志 | 助教 | ○ | ○ | |||||||||
高橋 憲史 | 助教 | ○ | ||||||||||
宮前 洋平 | 助教 | ○ | ||||||||||
田中 和美 | 医員 | ○ | ||||||||||
五十嵐 隆通 | 医員 | ○ | ||||||||||
高橋 研吾 | 医員 |
日本外科学会 | 日本呼吸器 外科学会 |
日本臨床 腫瘍学会 |
日本がん治療 認定医機構 |
肺がんCT検診 認定医機構 |
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指導医 | 専門医 | 専門医 | 暫定 指導医 |
暫定 教育医 |
がん治療 認定医 |
肺がん CT検診認定医 |
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清水 公裕 | 講師 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
永島 宗晃 | 助教 | ○ | ||||||
大滝 容一 | 医員 | ○ |
日本 外科学会 |
日本 乳癌学会 |
日本臨床 腫瘍学会 |
日本内分泌 外科学会 |
日本がん治療 認定医機構 |
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指導医 | 専門医 | 乳腺専門医 | 認定医 | 暫定 指導医 |
内分泌甲状腺 外科専門医 |
がん治療 認定医 |
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堀口 淳 | 准教授 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
狩野 貴之 | 非常勤医 | ○ | ○ | ○ | ||||
菊地 麻美 | 助教 | ○ | ○ | |||||
高他 大輔 | 助教 | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
長岡 りん | 助教 | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
六反田 奈和 | 助教 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
佐藤 亜矢子 | 助教 | ○ | ○ | ○ | ||||
時庭 英彰 | 助教 | ○ | ○ | ○ | ||||
内田 沙弥香 | 医員 | ○ | ○ |
日本外科学会 | 日本胸部外科学会 | 日本心臓血管外科学会 | ||||
指導医 | 専門医 | 認定医 | 指導医 | 専門医 | ||
高橋 徹 | 講師 | ○ | ○ | ○ | ○ | |
茂原 淳 | 助教 | ○ | ○ | ○ | ○ | |
小池 則匡 | 助教 | ○ | ○ | ○ |
鈴木 政夫 | 日本心臓血管外科学会・会長賞(1999年) |
大谷 嘉己 | 北関東医学会奨励賞(1998年)日本肺癌学会総会 優秀演題賞(第46回) |
堀口 淳 | 北関東医学会奨励賞(1999年) |
鯉淵 幸生 | 北関東医学会奨励賞(2000年) |
川手 進 | 北関東医学会奨励賞(2002年) |
上吉原 光宏 | 北関東医学会奨励賞(2006年) |
須納瀬 豊 | アメリカ移植学会若手研究者賞北関東医学会奨励賞(2004年) |
茂原 淳 | アジア移植学会研究者賞北関東医学会奨励賞(2003年) |
清水 公裕 | 北関東医学会奨励賞(2005年) |
佐藤 亜矢子 | 日本外科学会定期学術集会 iPos賞(第107回) |
小田原 宏樹 | Global Breast Cancer Conference Best presentation award(2009年) |
高瀬 貴章 | 日本消化器外科学会総会 ポスター優秀演題賞(第65回) |
2010年 | 開腹(胸)手術 | 腹(胸)腔鏡下手術 | 合計 |
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食道切除術 | 6(6/0) | 3(3/0) | 9(9/0) |
胃切除術 | 25(24/1) | 52(51/1) | 77(75/2) |
大腸切除術 | 34(30/4) | 48(48/0) | 82(78/4) |
肝切除 | 38(38/0) | 0(0/0) | 38(38/0) |
膵切除術 | 17(17/0) | 0(0/0) | 17(17/0) |
後腹膜腫瘍切除術 | 6(6/0) | 0(0/0) | 6(6/0) |
虫垂切除術 | 0 | 5 | 5 |
胆嚢摘出術 | 1 | 17 | 18 |
脾臓摘出術 | 0 | 1 | 1 |
ヘルニア根治術 | 34 | 1 | 35 |
その他 | 34(11/23) | 11(3/8) | 45(14/31) |
合計 | 195 | 138 | 333 |
疾患名 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 |
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肺癌 | 43 | 54 | 59 | 59 | 65 | 78 | 81 |
転移性肺腫瘍 | 5 | 9 | 10 | 15 | 12 | 13 | 27 |
肺良性腫瘍 | 6 | 9 | 6 | 8 | 4 | 2 | 5 |
炎症性肺疾患 | 3 | 3 | 2 | 3 | 13 | 12 | 10 |
縦隔腫瘍 | 23 | 13 | 16 | 15 | 21 | 22 | 21 |
胸膜・胸壁腫瘍 | 6 | 3 | 1 | 2 | 2 | 2 | 1 |
気胸・肺嚢胞性疾患 | 3 | 2 | 10 | 6 | 10 | 8 | 8 |
その他 | 7 | 19 | 20 | 23 | 18 | 15 | 19 |
合計 | 96 | 112 | 124 | 131 | 145 | 152 | 172 |
2010年 | 症例数 |
---|---|
乳癌 | 233 |
乳房温存術 | 169 |
乳房切除術 | 43 |
乳頭温存乳腺全切除術 | 20 |
局所麻酔下乳癌手術(部分切除) | 1 |
良性乳腺腫瘍 | 8 |
甲状腺癌 | 41 |
良性甲状腺腫 | 17 |
バセドウ病 | 11 |
原発性上皮小体機能亢進症 | 12 |
続発性上皮小体機能亢進症 | 7 |
副腎腫瘍 (腹腔鏡) | 11(9) |
その他 | 10 |
合計 | 350 |
手術 | 2009年 | 2010年 |
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弁膜症 | 16 | 23 |
虚血性心疾患 | 3 | 4 |
胸部大動脈瘤 | 4 | 5 |
先天性心疾患 他 | 5 | 9 |
腹部大動脈瘤 | 29 | 20 |
末梢動脈・静脈疾患 | 16 | 18 |
合計 | 73 | 79 |
2006年 | 手術 |
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生体肝移植 | 2 |
<胃がん>
早期胃がんが、胃がん全体の約半数を占めるようになり、胃カメラによるがん切除症例が増えた今日においても、リンパ節転移の可能性のある胃がんに対しては、手術が第一選択となります。胃がんの手術は、病巣を含めた胃切除、周辺のリンパ節の切除(リンパ節郭清)、食べ物の通り道を作る再建からなっています。
当科では、高度に進行した胃がんに対しては、他臓器合併切除を含めた徹底的ながん根治術を行っています。また、抗癌剤治療を併用することで、治療成績の向上に努めております(トピック参照)。
一方で、早期胃がんに対しては、噴門や幽門といった胃にとって大事な機能を有する部分を温存する縮小手術を行っています。
また、胃カメラでは切除できない早期胃がんと、進行胃がんの一部には、積極的に腹腔鏡下胃切除術を行っており、2006年の導入以降これまでに、日本内視鏡外科学会の技術認定を受けた医師を中心に、160症例以上に施行しました。当科では現在、胃切除・リンパ節郭清・再建の全てを腹腔鏡下に行う完全腹腔鏡下胃切除術(トピック参照)を基本的に行っており、小開腹創は傷の目立たない臍部に最小で3.5cm程おくだけですみ、手術に伴う患者様の負担の軽減に寄与しております。最新の胃がん取扱い規約第14版および胃がん治療ガイドライン第3版に則って、定型的なD2リンパ節郭清またはD1+リンパ節郭清を行い、進行癌にも十分対応しうる手術を行っております。Stage IA、Stage IB、Stage IIAでの無再発生存率は98%と、開腹手術と遜色ありません(2010年12月現在)。
<大腸がん>
現在、早期の大腸がんの中には、大腸ファイバーによって切除し、治癒可能な症例が増えていますが、胃がん同様に、リンパ節の転移の可能性がある大腸がんでは、手術療法によって、病巣を含めた大腸の切除、周辺リンパ節の切除が必用となります。当科では、一部の進行大腸がんを除く大腸がんの多くに、腹腔鏡下手術を行い、開腹創を3~5cm程度に小さくして、患者さんの負担軽減に努めています。日本内視鏡外科学会の技術認定を受けたスタッフを中心に、腹腔鏡下手術においてもリンパ節郭清は開腹手術同様に行い、根治性に留意しています。また、高度進行がんに対しては、周囲臓器の合併切除を含めた拡大手術によって、病巣の徹底切除に努めております。
<食道がん>
わが国では毎年10,000人以上の方が食道がんにかかります。現在、粘膜にとどまるがんの多くには内視鏡的に粘膜を切除する内視鏡的粘膜切除術が可能ですが、それ以上進行したがんでは、手術療法、放射線療法、化学療法を組み合わせて、これらの特徴を生かした集学的治療を行います。食道がん手術は、右胸部を切開(開胸)し胸部食道周囲の手術を行い、腹部を切開(開腹)して腹部食道周囲の手術を行い、頚部を切開して食道の代わりに吊り上げた消化管を吻合するといった、消化管の手術の中では患者さんに最も負担の大きい手術です。当科では、根治性に留意しつつ、胸部の手術には完全胸腔鏡下手術(穴だけを開けて、開胸しない手術)を導入し、腹部の手術にも腹腔鏡補助下手術を導入して開腹創を7cm程度に小さくし、患者さんの術後の負担軽減、合併症の減少に努めています。
<肝細胞がん>
肝細胞癌の患者さんの多くはC型あるいはB型のウィルス性肝炎を併発しており、元々の肝機能が良くないという問題を抱えておられます。治療には肝切除、肝動脈塞栓、ラジオ波焼灼療法などがあり、患者さんの年齢や肝機能などを考慮しこれらを組み合わせて治療を行っています。特に肝切除においては2010年より腹腔鏡下肝切除術を導入しています。現在では一定の施設基準を満たす施設として、保険診療で治療を行っています。腹腔鏡下肝切除では腫瘍の大きさによって手術創が3~10cm程度と非常に小さく済むため、創痛の軽減、鎮痛剤の減量、入院期間の短縮など、体にかかる負担が少なく回復が早いことが示されています。現在では肝臓癌の患者さんの約60~70%で腹腔鏡下肝切除を行っており、胃癌・大腸癌の手術と同様に大きな効果をあげられています。
<胆管がん、膵がん>
膵臓はインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌する臓器で、右側1/3を膵頭部、左側2/3と膵体尾部と呼んでいます。一方、胆管は肝臓で作られた胆汁を十二指腸に導く導管で下流(十二指腸側)では膵頭部内を貫通しています。このように膵頭部と胆管は近接する臓器であるため、膵頭部癌や胆管癌に対する治療として、一般的には膵頭十二指腸切除という手術が行われています。当科では膵頭十二指腸切除を基本として、悪性度の低い腫瘍の場合は低侵襲手術として十二指腸を温存する手術などを行っています。また、高度に進行した癌では、術前に抗癌剤治療を行って癌を小さくした上で、確実に切除を行うような治療も行っています。
また、膵体尾部の癌では膵体尾部・脾臓合併切除を行うのが一般的ですが、悪性度の低い腫瘍の場合は低侵襲手術として脾臓を温存した膵体尾部切除を行っているほか、腹腔鏡下手術も行っています。高度に進行した癌では、膵頭部癌と同様に術前に抗癌剤治療を行った上で、切除を行っており、初期に切除できない癌が切除できるようになった患者さんもおられます。
手術による治療が困難な場合は、抗癌剤治療を中心に、状況により放射線治療を組み合わせて有効性を上げる努力をしています。
<肺癌>
現在、肺癌は死亡率、罹患率(病気に患る比率)ともに上昇の一途をたどっています。当診療科では安全で根治性の高い手術をモットーに治療を行っています。技術面では、胸腔鏡を用いた低侵襲(体に負担の少ない)手術から、循環器、消化器、内分泌外科を併設する当診療科の特色を生かした拡大手術まで、患者さんの病状や体力、希望に応じた手術を行っています。また、肺癌の根治性(取り残しが無い)を損ねずに肺の機能を温存する縮小手術(肺区域切除など)も行っており、良好な成績を得ています。 さらに、近年、病期(病気の進み具合)によっては手術後の補助化学療法が有効であることが分かってきました。当診療科では術後の補助化学療法も積極的に行っており、患者さんの病期(病気の進み具合)や体力、ライフスタイルに合わせて、外来通院での治療か入院での治療かの選択や、点滴による抗癌剤を用いた治療か、内服による抗癌剤を用いた治療かの選択も可能です。また、再発の治療にも特に力を入れて取り組み、患者さんの同意のもとに遺伝子変異を解析してテーラーメード治療としてのイレッサ治療も行い良好な成績を得ております。外来では紹介患者さんから、検診後の精査、肺癌が気になるという初診患者さんまで幅広く受け付けています。また、他院よりのセカンドオピニオンも積極的に受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。
<転移性肺腫瘍>
現在、大腸癌や乳癌、腎癌などの疾患が増えております。これらの腫瘍は高率に肺への転移をおこします。しかし、それぞれの原発巣(もとの腫瘍)が完全に治療されている場合、この肺に転移した腫瘍を切除することにより完治できる可能性があります。また、転移性腫瘍と肺癌の鑑別は難しく、腫瘍部分を切除(肺部分切除)することが一番確実な鑑別診断になります。転移性肺腫瘍であれば肺部分切除そのものが治療になりますし、肺癌であった場合でも手術中に病理診断を行い、その場で肺癌の根治手術を行うことも可能です。基本的に転移性肺腫瘍に対する肺部分切除は胸腔鏡下に行いますので、術後約2-4日程度で退院が可能です。また、切除する肺への転移腫瘍の個数にもよりますが、肺部分切除ではほとんど呼吸機能が損なわれることはありません。診断や治療法に苦慮している患者さんは是非ご相談ください。
<肺良性腫瘍>
肺良性腫瘍に関しては、まずその腫瘍が良性か悪性かの診断が最も大切です。当診療科では画像(CT、MRI、FDG-PET)による診断、また気管支鏡やCTガイド下針生検で実際に細胞を取ってくる質的診断を積極的に行っています。さらには、胸腔鏡を用いて腫瘍部分を切除し、手術中に診断する術中迅速診断を積極的に行っており、診断と治療とを同時に行うことにより、患者さんの負担をより少なくするように心がけています。良性と診断されている場合は、腫瘍部分だけを切除することで良好な予後が得られますので、胸腔鏡を用いて低侵襲で痛みも少なく、美容面にも考慮した手術を行うことをモットーにしております。
<肺炎症性疾患>
肺炎症性疾患に対しても、呼吸器内科とのカンファレンスで外科手術の適応があると判断したものに関しては積極的に手術を行っています。間質性肺炎に対する胸腔鏡下肺生検、肺アスペルギルフ症・非定型抗酸菌症などに対する肺切除術、肺分画症に対する胸腔鏡下肺切除術、膿胸、肺膿瘍に対する肺葉切除ドレナージ術などがあげられます。どの疾患においても、術前・術後において呼吸器外科と呼吸器内科が協力して診療を進める体制を整えています。
<縦隔悪性腫瘍>
縦隔とは、両側の肺にはさまれた、心臓や大血管、食道、気管、胸腺などの重要臓器が集まった空間のことを言います。この場所に発生した悪性腫瘍(縦隔悪性腫瘍)は周囲臓器への浸潤傾向が強く、特に大血管や肺などに浸潤しながら増殖します。一方では、遠隔転移やリンパ節転移などは肺癌などに比べれば少ないという性格を持っています。したがって、完全に外科的切除ができれば、良い予後が期待できるため、肺の合併切除はもちろん、循環器外科が併設されている当診療科の利点を生かした大血管浸潤例に対する大血管合併切除・置換術などの拡大手術も積極的に行い良好な成績を得ています。又、最近では周囲臓器に浸潤が無い非浸潤性の縦隔腫瘍の場合には胸腔鏡下の切除も積極的に行っています。
<縦隔良性腫瘍>
縦隔良性腫瘍は完全切除により、極めて良い予後が得られるため手術の良い適応となります。縦隔悪性腫瘍とは異なり周囲への浸潤傾向は少ないため、なるべく低侵襲で手術を行うことを基本方針としています。胸腔鏡を積極的に使用し、術後2-3日での退院を可能にしています。従来の胸骨縦割りアプローチから、より侵襲(体への負担)の少ない胸骨J字切開、胸骨吊り上げ法(胸骨を切らずに持ち上げる)による鏡視下手術まで患者さんの病状とご希望に即した手術を行っております。
<重症筋無力症>
重症筋無力症では、外科治療として胸腺の摘出を行うことがあります。当診療科では、重症筋無力症の外科治療に関しても積極的に取り組んでいます。手術としては胸骨正中切開による拡大胸腺全摘術を基本術式としています。また、美容的側面を考え希望者には小さい正中創での手術を行っています。術後のクリーゼ(急性憎悪)に備えて、原則として術後1-2日は集中治療室で治療をさせていただきます。また、神経内科医との術前・術後の協調した診療体制を整えております。
<胸壁腫瘍>
胸壁、胸膜原発腫瘍、肋骨腫瘍など胸壁腫瘍の手術も積極的に行っています。胸腔鏡を利用できる手術に関しては積極的に使用し、術後2-3日での退院を可能にさせています。胸壁再建が必要な症例に関しては、胸壁再建術を併用した拡大手術も行っています。
<胸膜生検・縦隔鏡下生検>
原因不明の胸水に対しても積極的に、胸腔鏡下胸膜生検を行っています。不明胸水の原因の一つである胸膜中皮腫が近年増加傾向にあります。本疾患の存在を踏まえつつ難治性(なかなか治り難くなる)になる前に、胸腔鏡を用いた胸膜生検を行い迅速な診断を行っています。又,縦隔リンパ節など、胸の奥にあるリンパ節や腫瘍などの生検 もビデオ縦隔鏡という特殊な器具を用いて生検を行っています。これらの診断結果を基に呼吸器カンファレンスで患者さん個人・個人に適した治療法を検討し他科と連携して施行しています。
<乳がん>
乳がんは年々増加傾向にあり、現在は女性のがん罹患率の第一位となっています。乳がんの治療には手術療法、放射線療法、内分泌療法、化学療法などがありますが、病気の進行程度や広がり具合に応じて各治療法を組み合わせて治癒向上に努めています。乳がんの手術には大きく分けて乳房温存術と乳房切除術があります。術前の超音波検査、マンモグラフィ検査やMRI(磁気共鳴画像)検査などにより適切な手術術式を検討し、患者の皆様の希望も取り入れて治療法を決定致します。外来および入院を通じて、乳腺専門医と日本乳癌学会の認定医が責任をもって治療させて頂きますので、ご不明の点はお気軽にご相談下さい。
<良性乳腺腫瘍>
乳腺には、乳がんとまぎらわしい良性の疾患ができます。乳腺症、線維腺腫や葉状腫瘍では乳がんと同じように硬いしこりをつくることがあります。視診・触診、マンモグラフィ検査、超音波検査などでも乳がんと鑑別がつかない場合には、しこりを針生検(細い針で組織の一部を取る)して、確定診断をつけます。乳腺症や線維腺腫と診断されればそれ以上の治療は必要ありませんが、葉状腫瘍の場合には急速に増大したり、一部に悪性に変化するものが含まれるため、 手術による摘出が必要になります。腫瘤が小さい場合には外来での手術が可能ですのでご相談下さい。
<甲状腺がん>
甲状腺は前頚部にある臓器で、甲状腺ホルモン(体の代謝を調節している)を産生しています。甲状腺がんは甲状腺にしこりができることにより発見されます。また、近くに声を出す筋肉を調節する神経が通っているので、声がかすれるという症状で発見されることもあります。甲状腺がんの約70から80%が予後の良い乳頭がんなので、手術を行えばほとんどの患者さんが治癒します。進行して発見されて手術で切除できない場合でも、気管が閉塞しないようにステント(気管内に入れるチューブ)を挿入したり、しこりにアルコール注入したりして治療することができます。
<バセドウ病>
甲状腺が腫れて機能が亢進する病気です。前頚部が腫れる、眼球突出(眼が大きくなって飛び出す)、脈拍数が増加する(ドキドキする)、汗をかきやすくなる、疲れやすいなどの症状が出現します。血液検査で甲状腺機能を調べれば、容易に診断がつきます。内科での治療(抗甲状腺剤)が優先されますので、薬にアレルギーのある方、薬で甲状腺機能が落ち着かない方、または妊娠・出産希望の患者さんが手術の適応となります。内科と外科の専門医が治療法の相談に応じます。
<副腎腫瘍>
副腎は腎臓の近くにあるある臓器で、皮質と髄質からできています。最近は、人間ドックなどで超音波検査やCTを行うため、無症状の副腎腫瘍が発見されます。ホルモンの分泌が正常である小さな副腎腫瘍では手術適応とならずに、経過観察となることもあります。皮質腫瘍で多いのはアルドステロンやコルチゾールというホルモンを産生するものです。手術は小さな腫瘍では腹腔鏡下(小さな0。7cm-2cmの傷を3-4ヶ所におく)に切除します。髄質からはカテコールアミンという血圧を上昇させる神経伝達物質を産生する腫瘍です。この腫瘍の場合は悪性のものが約10%存在します。手術は開腹するか後腹膜アプローチで行います。内科および外科の専門医が手術を含めた治療法の相談に応じます。
<心臓弁膜症>
心臓弁膜症は息切れなどの心不全症状や不整脈で発症することが多い病気です。手術方法は、人工心肺を用いて自分の弁を人工弁に置換する方法が一般的でしたが、最近では自分の弁を残して修復する手術(弁形成術)を積極的に行っています。また、不整脈、特に心房細動に対しては、弁の手術と同時に外科的な治療を行います。
<虚血性心疾患>
虚血性心疾患は主に胸痛で発症することが多く、アメリカでは以前より死因の第一位にあります。その危険因子は、年齢、高血圧、肥満、高脂血症、喫煙、糖尿病などで、日本においても食生活の欧米化に伴って年々増加傾向にあります。治療としては、心臓カテーテルを用いた経皮的冠動脈形成術(PCI)が循環器内科医によって近年積極的に行われていますが、冠動脈の狭窄・閉塞の部位や数によっては手術が必要となります。冠動脈バイパス手術は、狭窄・閉塞の部位の末梢の冠動脈に自己の動脈または静脈を吻合して、血行を再建する方法です。手術には人工心肺を用いますが、最近では人工心肺を用いない心拍動下手術も行っています。
<胸部大動脈瘤>
大動脈瘤は、血管の一部が瘤状に膨らむ病気で、動脈硬化が原因の真性動脈瘤と動脈の壁が縦方向に裂けて生じる解離性大動脈瘤の2種類があります。真性動脈瘤は慢性の病気で徐々に大きくなってきますが、ある一定の大きさを超えると破裂して救命が困難となります。そのため破裂前の手術が必要です。解離性大動脈瘤は、突然の胸部痛や背部痛で発症しますが、心臓や脳に障害を起こすことがあるため緊急手術が必要な場合があります。予防には、日常からの血圧管理が重要です。手術は人工心肺を用いて大動脈瘤の部分を人工血管に置換します。
また当院では、適応のある患者さんに対し低侵襲血管内治療であるステントグラフト内挿術を積極的におこなっております(トピックス参照)。
<腹部大動脈瘤>
腹部大動脈瘤は、通常は無症状ですが胸部大動脈瘤と同様にある一定の大きさを超えると破裂する場合があります。破裂前に手術した場合の死亡率1%以下ですが、破裂後の手術の死亡率は50%前後ときわめて不良です。そのため、破裂前の手術が必須です。
また当院では、適応のある患者さんに対し低侵襲血管内治療であるステントグラフト内挿術を積極的におこなっております(トピックス参照)。
<末梢血管疾患>
閉塞性動脈硬化症は動脈硬化によって主に下肢の動脈が狭窄・閉塞する病気です。症状は歩行時の足の疲れや安静時の足の痛みです。手術では、人工血管や自分の静脈を用いて血行を再建します。一方静脈瘤は心臓に戻る血液が逆流し、足の静脈がふくらんで血行障害を起こす病気です。外来での硬化療法や入院しての静脈瘤抜去、切除術を行っています。
<肝移植>
肝移植は肝硬変を初めとした肝疾患の終末的な状態に対する唯一の治療法であります。
外国では米国を中心に40年以上前から行なわれており、特に最近の10年間は移植数が飛躍的に増え、末期肝障害患者に対する一般的治療法とし、その治療成績も向上しています。我が国では、2004年までに約3、200名の患者さんが生体部分肝移植手術を受けております。日本肝移植研究会の2005年の報告では生体肝移植の1年生存率は81。5%、3年生存率は78。1%、5年生存率は76。1%となっています。
<胆嚢癌>
進行胆嚢癌に対しては、胆嚢周囲の肝切除および肝外胆管切除を基本術式としてリンパ節転移や癌浸潤の程度により拡大肝切除や膵頭十二指腸切除の付加を行っています。当科の手術症例の全生存率は1年生存率、2年生存率、5年生存率がそれぞれ78%、51%、47%であり全国的にみても遜色ない成績です。
<肺癌のデータ>
5年生存率(治療後、5年経って生存している人の割合:癌以外の死亡も含む)
(2000年1月~2008年3月)
Stage | IA | IB | IIA | IIB | IIIA | IIIB | IV | 全体 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
症例数 | 144 | 79 | 15 | 32 | 50 | 15 | 4 | 339 |
5年生存率 | 85.7 | 72.5 | (66.0) | 53.2 | 33.5 | 58.2 | 0 | 71.2 |
全国平均 | 83.3 | 66.4 | 60.1 | 47.2 | 32.8 | 30.4 | 23.2 | 61.6 |
肺癌の生存率はstage(病期)のみで決まるのではありません。肺の腺癌の中には予後が非常に良い癌もあります。当診療科では癌の病期ばかりではなく、癌の性質や個人個人の体質にも考慮したテーラーメード治療を実地臨床に取り入れております。
<乳がんの治療法と成績>
当院で乳がんと診断され手術されるうちの約80%が病期IまたはIIの早期の乳がんです。しこりの大きさと周囲の乳管内へのがんの広がりを調べ、乳房温存術か乳房切除術のいづれが適切な手術かを決めます。早期の乳がんの約50%が乳房温存術の対象となります。乳腺・内分泌外科(第二外科)では、1991年から早期乳がん患者に対して乳房温存療法を開始し、現在までに約500人に対して本治療を行ってきました。同じ時期で検討した早期乳がんの成績は、乳房切除術と乳房温存療法ともに5年生存率が90%(5年経過した時点で10人中9人が生存している)と両者に差がないことを確認しております。
<心臓血管外科疾患の治療法と成績>
心臓血管外科疾患の多くは患者さんの生命に直接かかわる病気です。手術成績は、病気の進行程度と患者さんの手術前の状態によって左右されます。特に、大動脈瘤破裂を含む緊急手術の死亡率は不良でここ数年20-30%です。当科における待機手術例の手術死亡率は2-3 %です。
高度医療として
1.「胃癌腹膜播種症例に対する腹腔内投与療法の検討」を申請中で24年から開始予定。
2.「ラジオ波焼灼システムを用いた腹腔鏡補助下肝切除術」を現在申請中。
<完全腹腔鏡下胃切除>
先にも「専門外来の紹介」の項で述べましたが、胃がんの手術は、病巣を含めた胃切除、周辺のリンパ節の切除(リンパ節郭清)、食べ物の通り道をつくる再建からなっています。
胃がんに対する腹腔鏡下手術には、5~6cmの小開腹をおいて手術の一部(胃の切離、再建など)を小開腹創から直視下に行う腹腔鏡補助下胃切除術と、胃切除・リンパ節郭清から再建までの全てを腹腔鏡下に行う完全腹腔鏡下胃切除術があります(図A)。
腹腔鏡補助下胃切除では、開腹手術と同様の手技で直視下に胃十二指腸吻合などの再建を行えるために、腹腔鏡下胃切除導入時の困難さを軽減できます。しかし、胃切除後の再建では、十二指腸や食道といった腹腔内の背中側に固定されている臓器を扱う必要があるため、肥満で腹壁が厚いなどの患者様の体型によっては困難が生じやすく、小開腹創をある程度大きくする必要が生じたり、無理に十二指腸や食道を引っ張ったために縫合不全(縫い合わせた腸管が後で離開してしまう)などの合併症の危険性が高くなったりします。また、十二指腸や食道に最も近い心窩部(上腹部)に小開腹創をおく必要があるため、術後の疼痛が強く、傷跡も目立ちがちです。
一方、完全腹腔鏡下胃切除では、胃切除・リンパ節郭清・再建の全てを腹腔鏡下に行うために、腹壁の厚さや体型による影響を受けにくいといえます。しかしながら、完全腹腔鏡下での再建にはある程度の技量が要求されるのも事実です。当科では2009年以降、完全腹腔鏡下胃切除を70例以上に行っていますが、縫合不全は0例と良好な成績を得ています。また、完全腹腔鏡下胃切除では、小開腹創は切除する胃・リンパ節を取り出すためだけに用いますので、腹部のどこを切開してもよいうえに、小さくて済みます。当科では、傷跡が残りにくく、上腹部の小開腹創に比べて痛みも少ない、臍部を縦に切開しています。また、傷の大きさも、標準的な体型の患者様なら3-4cm程で済みます。
<胃がんに対する化学療法>
切除不能進行胃癌や再発胃癌において積極的治療を行わない (best supportive care) 場合、生存期間中央値が3-4ヶ月と言われています。われわれは関連病院と協同で、新規抗癌剤であるパクリタキセルにドキシフルリジンを併用した化学療法の第I相、第II相試験を行い奏効率 (腫瘍が50%以下になる率) 約33.3%、生存期間中央値約10ヶ月という比較的良好な成績を得ています。この治療法の特徴は、嘔気や食欲不振という副作用が非常に少なく、1ヶ月に3回程度の外来通院で治療が可能です。副作用のために入院が必要になることはほとんどありません。この治療法は国内外の学会でも発表して、国内外の腫瘍医にも注目されてきましたが2011年1月のAnticancer Research誌に掲載されました。
<腹腔鏡下肝切除>
「専門外来の紹介」の項で触れたとおり、腹腔鏡下肝切除は2010年に一定の施設基準を満たすことを条件に、保険診療として認められるようになりました。従来、肝切除は逆T時切開あるいはJ字切開といって40~60cmの創で手術が行われてきました。それにより一定の安全性を担保していましたが、器具や技術の進歩によって、腹腔鏡用の約1cmの小さな創が3~4カ所(トロカールという腹腔鏡用の器具を挿入します)と3~10cm小さな切開創によって切除可能となっています(図B)。当初は肝臓の部分切除や外側区域切除が中心で行われていましたが、最近では、内側区域、前区域、後区域、左葉切除、右葉切除も行われるようになってきました。術後合併症としては胆汁漏、膿瘍、肝不全などが知られていますが、腹腔鏡下手術における合併症の頻度は開腹手術とほぼ同等とされています。一方、創が小さいことによるメリットは非常に大きく、創痛が少なく回復が早いため、早期の離床や、速やかな社会復帰に繋がっているようです。当科では2010年より腹腔鏡下手術を導入して、当初は腹腔鏡補助下手術(腹腔鏡下に肝臓を周囲組織から遊離して、7~10cmの小開腹創から肝臓を切除する)で行っていましたが、最近では完全腹腔鏡下手術(腹腔鏡下に肝臓を周囲組織から遊離してそのまま腹腔鏡下に肝臓を切除する)を中心に行っています。後者の場合は切除した肝臓を取り出す創が有れば良いので、切除肝の大きさに応じてより小さな創になります。また、腹腔鏡下肝切除は、肝臓癌だけでなく、転移性肝癌や胆管細胞癌、あるいは肝嚢胞や嚢胞腺癌にも適用可能です。
<図B>
<十二指腸温存膵切除、脾蔵温存膵切除>
「専門外来の紹介」の項で触れましたが、膵腫瘍の治療は、以前は膵頭十二指腸切除(膵頭部+胆管+胆嚢+十二指腸を同時に切除)ないし膵体尾部・脾蔵合併切除(膵体尾部+脾蔵切除)が行われていました。しかし、最近では機能温存の立場から縮小手術として、十二指腸温存膵頭部切除や脾臓温存膵体尾部切除を行っています。それらの臓器の温存によって、十二指腸のホルモン分泌が維持されたり、脾蔵による免疫機能が保持されやすくなるため、長期的にみたメリットは大きいものと考えられています。最近は臓器温存手術を行う割合が多く、術後合併症としては膵液漏、腹腔内膿瘍、胃内容うっ滞などありますが定型的な膵切除とほぼ同等です。また、肝切除と同様、膵切除も腹腔鏡下手術を行うようになり、膵体尾部・脾蔵合併切除や脾臓温存膵尾部切除などを中心に導入しています。
<胸腔鏡手術>
当診療科では肺癌、縦隔腫瘍等の患者さんに対して積極的に胸腔鏡下手術を行っており(図1、図2)、その割合は年々増加しています(図3)。胸腔鏡下手術の場合は筋肉や骨を切らずに2-3cm程度の小さな傷と0.5-1cm程度の穴数個(図1)で手術を行いますので、術後の痛みも少なく、多くの方が術後3-7日で退院しています。また、特定の条件を満たした2cm以下の肺癌の場合には、根治性(取り残しが無い)を損なわずに肺機能を温存する肺区域切除術(図4)を胸腔鏡下に行っています。さらに、安全に胸腔鏡手術を行うためには、患者さん一人ひとりの解剖学的な特徴(血管の亜型など)を正確に把握することが大事であると考えておりますので、手術前には3DCTを作成し、安全かつ正確な胸腔鏡手術が行えるように努力しています(図5)。(尚、3DCTは造影剤を用いた通常のCT検査と変わりありません)。さらに、小さな傷に対しても抜糸がいらない埋没縫合を行っていますので、退院までにシャワーが浴びられ、傷も目立たずに美容上も優れています。
<図1>
<図2>
<図3>
<図4>
<図5>
<進行肺癌に対する肺機能温存手術(気管支形成、血管形成術)>
検診の普及や画像診断の進歩に伴い、早期で発見される肺癌患者さんの割合が多くなってきていますが、依然として進行してから発見される肺癌患者さんも少なくありません。進行肺癌では、手術適応となった場合でも気管支や肺動脈など、肺の付け根の重要な構造物に浸潤していることが多いため、肺の根元から左右どちらかの肺を全部摘出する肺全摘術という手術を行わなければならない場合が多くあります。肺全摘術は、体への負担が大きいために術後の合併症率が高く、肺の機能も大幅に低下するため退院後の生活も著しく制限されます。そこで、当科においては、このような進行肺癌においても肺全摘術を可能な限り行わずに、かつ肺癌を取りきる 肺機能温存手術を積極的に行っています。具体的には前述した3DCTを用いて血管や気管支、腫瘍の関係を3D画像に描出し、その画像を手術前に解析します。その結果と手術中の所見をもとに病変部のみを取り残しが無いように切除します。その後、病変より中枢(肺の付け根)の正常な肺と、末梢の肺をつなげて(気管支どうし:気管支形成、血管どうし:血管形成)、心肺機能を温存する手術を行っています(図6)。
<図6>
<肺癌の術後再発に対するテーラーメイド治療>
近年、肺癌に対して有効な多くの分子標的薬が開発され、実際の臨床の場で使われるようになってきています。これまでの研究から、これらの分子標的薬の効果は、肺癌の持つ遺伝子異常を調べることで予測できることが分かりました。現在までに、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異の有無と、EGFRをブロックする分子標的薬{イレッサ(ゲフィチニブ)やタルセバ(エルロチニブ)}の関連が明らかになり、EGFR遺伝子に変異がある患者さんではイレッサやタルセバが70-80%の確率で効果が期待できるのに対して、EGFR変異が無い患者さんでは、その効果は、ほとんど期待でき無いことが知られています。さらにALK融合遺伝子という一部の肺癌の原因になる新たな遺伝子も発見され、このALK融合遺伝子を持つ肺癌では、ALK阻害剤であるザーコリ(クリゾチニブ)が、イレッサやタルセバと同様に70-80%の確率で効果が期待できることが分りました。しかし、これらの遺伝子を調べるためには腫瘍組織が無くてはなりません。その点、手術をした患者さんにおいては、摘出した肺から多くの腫瘍組織(注1)が採取できます。これらの組織を利用して当科では、再発などが起こった場合、患者さんの同意のもとにEGFRやALKなどの遺伝子の変化を解析し、それらの解析結果をもとに患者さん1人ひとりに合わせたテーラーメイド再発治療を行っています。
注1:組織が1㎝未満など小さい場合は遺伝子の解析ができない場合もあります。
<実績>
平成20年2月:「手術数でわかるいい病院 2008」 肺がんランキング関東第21位(朝日新聞社)
平成20年4月:「47都道府県別・病気別」病院ランキング 肺がん部門第21位(関東編)(プレジデント社)
平成20、22年:清水公裕医師(講師)が医師同士の評価によって選ばれるThe Best Doctors in Japan? 2008-2009、2010-2011として選出されました(ベストドクターズについてはwww.bestdoctors-j.com)
視診・触診、マンモグラフィ(乳房のレントゲン写真)、超音波などの検査法で乳がんの正確な特徴を術前に把握することはもとより、MRI(磁気共鳴画像)を使って小さな多発癌(腫瘤として触れる以外の小さな病変)や乳管内進展(腫瘍周囲の乳管に癌の広がりがあるか否か)を調べ、乳がん病変の広がりの範囲に応じて切除範囲を決定しています。早期乳がんでも乳管内に癌細胞が広範囲にある場合や放射線治療を希望しない場合には、乳頭と皮膚を温存し乳腺のみを全切除する乳頭温存乳腺全切除術も行えます。乳頭と皮膚の下に筋肉を充填し、外見を考慮した乳房再建術も可能です。乳がんの手術では、腫瘍だけでなくリンパ節の切除も必要です。我々は、腋窩(脇の下)リンパ節においても不必要な切除を行わないように努めています。色素や放射性物質で標識した腋窩のセンチネルリンパ節(見張りリンパ節)だけを切除し、手術中の病理検査でがんのリンパ節転移がなければ、リンパ節の切除を最小限にとどめ、患者さんの侵襲を少なくしています。
近年、心臓血管外科の領域では手術の低侵襲化が積極的にはかられています。その理由は、手術の安全性を高めることはもちろんですが、術後の早期回復や社会復帰を目指したものです。当科では各疾患に対する新しい手術方法を積極的に導入し、手術の低侵襲化と成績の向上に努めています。一方で、内科的治療が無効な重症な心疾患患者さんに対しては、左心室形成術など積極的な治療による救命を目指しています。
<胸部・腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術>
ステントグラフトとは、ステントといわれる金属を縫い付けた新しいタイプの人工血管です。患者さんの太ももの付け根を数cm切開したところから小さく圧縮した状態で動脈内に挿入します。動脈瘤のある部位まで進めたところで、収納してあったステントグラフトを血管内に開放し固定します。血流がステントグラフト内にのみ通ることにより動脈瘤内に血液が流れ込まないようにし、将来的な動脈瘤の破裂を予防します。
ステントグラフト内挿術は基本的に胸やお腹を切らないため、従来の手術に比べて術後の痛みが軽く手術翌日には食事摂取が可能であり、身体への負担が少ない低侵襲血管内治療といわれています。また医療費については健康保険で認められている治療法です。
ただし、全ての動脈瘤の患者さんにステントグラフト内挿術が適応されているわけではありません。また本治療は比較的新しい手術であり長期間にわたる充分な追跡調査の実績がないため、治療後は定期的な経過観察(ときに追加治療)を必要とします。当院は胸部および腹部大動脈ステントグラフト実施施設であり、放射線診断核医学・画像診療部と協力して治療にあたっております。このような治療を希望する方はお気軽に御相談下さい。
リンクもっと詳しい情報…準公式サイト外科学第二講座が管理ページへ http://2surg.med.gunma-u.ac.jp/( 準公式サイトは、病院の管理からはずれ、各講座の管理に移ります ) |