プレイバック!FRIDAY 1985年6月21日号 頼近美津子&鹿内春雄 「華麗なる転身の果てに」
2014.06.14
あざやかな真紅のドレスに身を包んだ美女は、「第1回東京国際映画祭」記念パーティという華やかな会場の中でもひときわ目を引いていた。女子アナブームの草分けとされる頼近美津子(当時29)の在りし日の姿だ。その歩みはまばゆいばかりだった。東京外国語大を卒業して’78年にNHKに入局。その才色兼備ぶりで脚光を浴び、わずか3年でフジテレビに引き抜かれると、時を経ずしてフジサンケイグループの御曹司に見初められた。夫・鹿内春雄(当時40)に寄り添う姿は、幸福感と誇りに満ちあふれていた。
ここ数年、凋落の一途をたどるフジだが、’80年代は業界を引っ張る存在だった。その大立て者こそジュニアと呼ばれた春雄氏だ。35歳で副社長に就任して以来、「おニャン子」「ひょうきん族」などの"軽チャー路線"を推進。低迷していた同局を一気に躍進させ、現在に至るフジテレビ文化の礎を築いた。そしてこのパーティの直後、グループのドンである父・信隆氏の跡を継ぐことになる。
一介のアナウンサーから巨大メディアグループ総帥夫人へ。だが、華麗なる転身には大どんでん返しがあった。結婚からわずか4年後、得意の絶頂にあった夫が42歳という若さで急死したのだ。ここから、彼女は鹿内家との関係に翻弄されていく。一時は、夫が保有する株を相続することで、彼女が総帥の座を継ぐともウワサされた。だが、義父が3代目として娘婿を養子に迎えたことで、本来なら手にするはずの株も「総領が持つべき」と取り上げられてしまう。結局、彼女に遺されたものは、幼い子どもと豪邸購入に費やした数億円もの借金だけだった。
信隆氏の死後、鹿内家は泥沼の内紛劇を展開したが、蚊帳の外に置かれた彼女は喧騒を避けるように忘れ形見を抱えて渡米。’93年に帰国すると、薄幸のイメージが重なるとして、大河ドラマでお市の方を演じたこともあった。後年はコンサートプランナーとして自立した道を歩んでいたが、’09年に食道がんで急逝。羨望の「玉の輿婚」から一転、悲劇の未亡人へ……53年の数奇な人生だった。
豊田商事会長刺殺事件
’85年6月18日、大阪市北区にある豊田商事会長・永野一男の自宅マンションに男2人が侵入し、マスコミの目の前で永野を刺殺した。豊田商事は数万人から大金をダマし取った悪徳詐欺業者として注目されており、この日は永野逮捕の情報を聞きつけた30人あまりの取材陣が張りこんでいた。男らの凶行は居合わせたテレビクルーによって中継され、大騒ぎとなった。
投資ジャーナル事件
豊田商事同様、巨額の詐欺容疑によってマークされていた投資ジャーナル社の中江滋樹会長が逮捕された。豊田商事会長刺殺事件の翌日、’85年6月19日のことであった。中江は証券関連雑誌で「絶対に儲かる」と投資家たちに呼びかけ、約1万人から600億円近くの現金を詐取。懲役6年の実刑判決を受けた。服役後の’06年には、自宅放火未遂の現行犯で再度逮捕されている。
1985年6月の音楽ランキング
1 デビュー/マンハッタン・ジョーク 河合奈保子
2 SAND BEIGE―砂漠へ― 中森明菜
3 今だから 松任谷由実、小田和正、財津和夫
4 Bye Bye My Love サザンオールスターズ
5 サイレンスがいっぱい 杉山清貴&オメガトライブ
6 翼の折れたエンジェル 中村あゆみ
7 BOYのテーマ 菊池桃子
8 夢絆 近藤真彦
9 ボーイの季節 松田聖子
10 白い炎 斉藤由貴
2 SAND BEIGE―砂漠へ― 中森明菜
3 今だから 松任谷由実、小田和正、財津和夫
4 Bye Bye My Love サザンオールスターズ
5 サイレンスがいっぱい 杉山清貴&オメガトライブ
6 翼の折れたエンジェル 中村あゆみ
7 BOYのテーマ 菊池桃子
8 夢絆 近藤真彦
9 ボーイの季節 松田聖子
10 白い炎 斉藤由貴
1位は河合奈保子の両A面シングル。自身のデビュー5周年を記念してリリースされた『デビュー』は、夏の爽やかさをイメージした一曲。『マンハッタン・ジョーク』は映画『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』の主題歌となった (C)レコード特信出版社