ネットコミュニティの新たな姿を目指してーー有料オンラインサロン「Synapse」がプライマルキャピタル、DeNAから資金調達を実施
左から:プライマルキャピタル代表パートナー佐々木浩史氏、シナプス代表取締役田村健太郎氏、DeNA 戦略投資推進室室長 原田明典氏
有料オンラインサロンプラットフォーム「Synapse」を運営するモバキッズが、プライマルキャピタルとディー・エヌ・エーの2社を引き受け先とする第三者割当増資を実施した。金額は非公開となっている。またモバキッズは、今回の資金調達に合わせて社名もシナプスへと変更している。
苦労を重ねながら成長してきたサービス
「Synapse」が立ち上がったのは2012年2月。当時はまだオンラインサロンプラットフォームになる前で、「Gumroad」のような単発でコンテンツが販売できるプラットフォームだった。この時期にサムライインキュベートから出資を受け、同年5月に現状のオンラインサロンモデルへとピボットした。
その後、「ちゅうもえサロン」という人気サロンが誕生し、サービスを成長させていこうというタイミングでトラブルが起こった。
田村氏「当時は受託をしながらサービスの開発をしていたのですが、2013年2月ごろにメインの取引先に納品直後に逃亡されてしまってキャッシュアウトしてしまいました。個人のお金をつぎ込んで当時の社員の給料は出せたんですが、給料を払い続けることが厳しくなったため辞めてもらい、1人になっていました」
そうシナプス代表取締役の田村健太郎氏は当時のことを振り返る。1人分の収益くらいはあったため、受託の仕事をしながら借り入れも行ってサービスを継続してきたという。転機となったのは、2014年8月。「Synapse」に堀江貴文氏のオンラインサロンが開設されて以降、サービスが順調に成長し始めた。
田村氏「この時期から申し込みの質と会員費の相場観に変化がありました。堀江さんのサロンが開設されてから、月の会員費が数千円のサロンがいくつも生まれました。また、より広い範囲で有名人の方が参加したり、サロンを開設にするのに向いている人、たとえば専門知識を持っていたり、コミュニティ運営に長けている人などからの申し込みが多くなりました」
2014年10月にはインキュベーションプログラムの「IncubateCamp 7th」に参加。今回出資した投資家たちとの関係を深め、サービスについて議論を重ねて今回の出資に至った。最近では、2015年2月23日には元サッカー日本代表監督の岡田武史氏のサロンがスタートして、3日間で定員100名が埋まるなどコアなファンの支持を集める人物のサロンも増えて来ているという。
新しいインターネットカルチャーを作る挑戦
DeNA 戦略投資推進室室長 原田明典氏は、インターネットでのコミュニティに関してこのように語った。
原田氏「無料で参加できるコミュニティは数多く登場していますが、どれも深さは同じくらい。無料だと、奥行きと深さに限界が生じます。お金を支払ってもらう部分も含めて、インターネットだからこそ可能な深いコミュニティを作るという挑戦に果敢にトライしている姿勢に共感しました。
コミュニティなので、熱量をどう保存するかがとても重要だと思います。現状では月額定額課金のモデルですが、将来的には深くコミュニティにハマっているときは多く支払い、あまりハマらなかった月は支払う額も少ない、というような重量課金制のような仕組みが実現できると面白いですよね。
インターネットは、オープンで、フラットで、数秒で理解できるものだけではないと思います。深く、奥行きがあるような部分がインターネット上に生み出していくことがこれからのミッションではないでしょうか。シナプスにはずっと人が触っているスマホだからこそ可能な深いオンライン・コミュニティの世界を実現してもらいたいと思います」
今回調達した資金は、サロン開設・運営におけるサロン主宰者へのサポート体制の強化と、独自プラットフォームとするためのスマートフォンアプリの開発に充てる。加えて、コミュニティを盛り上げるために必要な編集部的な機能の仕組み化にも取り組んでいくという。
田村氏「短期的には既存のファンクラブ仕組みを代替をしていくサービスになると考えています。ユーザには、同じものが好きな人たちとライブ、書籍等のパッケージコンテンツ、音楽や映像などのコンテンツを共有できる環境を提供していきます」
短期的にはファンクラブシステムのリプレイスを図りつつ、長期的にはサロンからコンテンツが生まれていくようなパブリッシングの仕組みに切り込んでいくことも視野に入れているそうだ。
原田氏が語ったような新しいインターネットの文化を生み出していく挑戦でもあると捉えると、「Synapse」の取り組みはとても興味深い。プライマルキャピタル代表パートナーの佐々木浩史氏は、
佐々木氏「田村さんが見ている世界観には共感しているので、それを実現するための手段を一緒に考えていくサポートをしていければと思います。田村さんの頭の中を一緒に紐解いていくイメージですね」
と今回の出資に関してコメントしている。田村氏自身、まだ正解が完全に見えているわけではないと語っているが、これまでの苦労を乗り越えてきた彼であれば、正解を見つけるまで諦めずに挑戦し続けるのではないだろうか。
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