「普通の人でも回せる仕組み」を最初から作る必要はない
スタートアップは人が来ません。優秀な人なんて基本とれません。livedoorの元社長の堀江さんもおっしゃっていましたが、
- スタートアップは求職者に見つからない
- 優秀な人など来ない
- あとから入る人のほうが優秀な場合が多い
https://www.youtube.com/watch?v=4gpqfM1ZFfY&feature=youtu.be
というのは、論理的に考えても、そうなりがちです(実際は、初期からいたメンバーは視点をあげざるを得ないので、非常に成長するという面はあったりしますが一般論として)。
という面があるので、スタートアップをする人はよく「仕組みをつくろう」という考えにいきがちです。
マニュアル化、仕組み化をして、誰でも仕事をできるようにする、というのは会社を大きくする上で、非常に重要です。いつまでも属人的にやってしまっていては、その人がいなくなったら業務が回らなくなってしまうからです。経営者の仕事は、個人として仕事をこなすところから、会社としてその仕事をこなせるようにする、というのは、もっとも求められるところの一つです。
最初から仕組み化を考え過ぎない
とはいえ、とはいえですね、初期からそこを考えすぎる人が多いなあ、というのが最近思うところです。いろいろな先輩や、書籍に「仕組み化するのがとても大事」というのを言われすぎなのかもしれません。
ポール・グレアムは、
「スケールしないことをしよう」
といっています。
【翻訳】ポール・グレアムによる「スケールしないことをしよう」前編 | POSTD
なるほど、あいつ、なかなかわかっているな、と感心したのですが、最初からスケールしよう、仕組みを作り上げよう、誰でもできるようにしよう、とするのってとても無駄が多いんですね。
スタートアップ段階ではしないほうがいいと思っています。というのも、誰でも出来るようにする、仕組み化するというのは、要は、尖っているところをすべてそぎ落として、一般化する、という作業になるので、最初からすると、どの会社がやっても差がない、つまらないものになってしまうからです。
nanapiの苦い経験
僕の会社でも、nanapiというハウツーサービスをやりはじめたときに、最初はひたすら自分たち+知り合いの書ける人に頼んで書いてもらっていました。この時のPVは、1記事あたり、月に1500pvくらいありました。
しかし、拡大をしていこう、スケールするように、徹底的に仕組み化しようと考え、nanapiワークスというクラウドソーシングサービスを作って、大量に記事を審査するチームを構築したのですが、この結果、1記事あたり80pv / 月まで落ち込みました。つまりは、尖っていない、言い方悪いですが、ギリギリまで質を落とした記事だらけになってしまったのですね。
そのあとに、「仕組み化自体がダメ」ではなくて「仕組み化するのは正しいはず、つまりはいい質の記事をたくさん作れる仕組みにすればいい」と思っていろいろやってたんですが、まあうまくいかないんですね。
というのも、いい記事とは何か、質とは何か、というところが定義されないまま進んでしまうので、最初の段階でつまづいている。そのことに気付かなかった。
そこに気づいたあとは「じゃあ、いい質の記事ってなんだ?」という定義をしようとしたんですが、それをパワーポイント上で、僕がなんとか定義づけようとしても、議論がグルグルするだけなんです。無駄ですね。
結局、何がよかったかというと、社内のいい編集者に一任して、一定のコスト内であれば自分がいいと思う記事を作る、という体制にしたとたん、僕が読んでても「おもしろい!」と思う記事が増えてきたり、それを見た編集者が応募をしてくれるようになって、いい具合になってきました。
そこをやったあとに「今は1記事、合計で50時間かかっているから、それを30時間にしよう」みたいな話をしていけばいいわけですね。
というわけで
これは学びの大きい失敗でした。要は、表面的に「仕組み化をすれば会社は拡大する」みたいな思い込みからやってしまっていたのではないかと。それよりかは「ユーザーに価値あるものを届けて、それをやりきる」ほうが先にするべきなんです。そのあとに、仕組み化をしていけばいいんです。
スタートアップは優秀な人はなかなかこない、でも、できる人をなんとか捕まえたり、経営者たちが自力でがんばったりして、とにかくいいサービスを作り上げて、そこから仕組み化すればいいんじゃないかと思うこの頃です。
(書いてて当たり前すぎて泣けてきた)。