福岡県宗像市のロボット開発ベンチャー、テムザックの事業が軌道に乗ってきた。これまで小型から大型まで様々な生活支援ロボットを開発してきたが、高齢者向けに車体の後方から乗り込むタイプの車いす型ロボットをデンマークで2015年秋にも発売する。歯の治療の習得に使う歯科患者シミュレーション・ロボットはサウジアラビアの大学などで使われ始めている。実証実験もままならず、売れない時代に同社の苦境を救ったのは、日本の地方の病院や企業だった。
■サウジに研究開発拠点
近く、サウジには研究開発拠点も開設する。14年末には香港に子会社を設立し、財務機能を集約した。事業認可や規制の象徴でもある東京・霞が関から距離を置きながら、日本よりむしろ世界で注目されそうな事業体制が整いつつある。
玄界灘を見渡すテムザック本社の玄関に足を踏み入れると、3台の大きなレスキューロボットが出迎えてくれた。中に入ると今度は小さな受付ロボットや留守番ロボットが立ち並んでいる。パワーアシストスーツや自走式ロボット一筋のようなベンチャーとはひと味違う。同社が開発したロボットは「民生用ロボットの百貨店」と言えるほど多彩なのだ。
宗像にいる社員は約10人だが、旧玄海町役場だった本社はかなり広い。住民窓口だった受付テーブルが長く伸びるオフィスは役所の当時そのままの面影がある。本社では今、歯科治療の習得に使う「デンタロイド」の製作の真っ最中だ。
これは女性の全身を精巧に再現したロボットで、眼球や舌が動き、歯科の学生が無理な治療をすると「痛い!」と反応したり、口が疲れて次第に閉じたりするなど患者の動きをシミュレーションできる。日本の大学と共同開発したが、最近は中東や北米などからの引き合いが多い。
だから高本陽一社長が日本、ましてや宗像にいる時間は少ない。先週はデンマークで昨秋から始めた車いす型ロボット「ロデム」の実証実験のデータ解析をしていた。データから改良点を見つけ、市販する実機を開発、欧州で販売可能になるCEマークの適合証明を受けて今秋にも発売する計画だ。
ロデムについて高本社長は地元の九州大学医学部の先生から「介助者が高齢者や患者をベッドから抱えて乗り移らせるのが大変。何とかしてくれ」という声を聞いていた。「自力で乗り移りやすくすればいい」とも考えていたが、なかなか解決策が思いつかなかったという。ある日、椅子に逆にまたがり、背もたれに肘をついてテレビの漫才番組を見ていると「これだ」と大声を上げ、娘に驚かれた。椅子に座るのではなく、おんぶしてもらう形だ。すぐに椅子の座面に自転車のサドルを付けた試作品を大学に持ち込んだ。座り方そのものを変える発想だけに先生に驚かれたが、特許も取得した。
テムザックは開発型ベンチャーだが、ロデムのケースのように発想の広がりを重視するため、技術者オンリーの集団ではない。要所には証券会社やコンサルティング会社出身の文系人材が配置されている。「技術者は決められたテーマを掘り下げる能力はすごいが、発想の転換は事務屋の方がいい」と考えるからだ。
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