【春場所】宇良、居反りを「封印」裏かいて正攻法で白星デビュー!
◆大相撲春場所2日日 ○宇良(突き落とし)高田●(9日、大阪・ボディメーカーコロシアム)
前相撲が始まり、関学大初の力士で居反りなどアクロバチックな技を得意とする宇良(22)=木瀬=が高田(15)=藤島=を押し込んでから突き落とし、正攻法の取り口で白星デビューを飾った。幕内では自身の最多記録を更新する34回目の優勝を狙う東横綱・白鵬(29)=宮城野=は連勝発進。取組後には報道陣に背を向けた。東大関・稀勢の里(28)=田子ノ浦=は連敗となった。
注目の業師のデビュー戦は、わずか3秒足らずだった。この日初土俵を踏んだ宇良は高田に頭から当たり、最後は右からの突き落としで白星。172センチ、113キロの小兵は入門前からテレビ番組で取り上げられた居反りなどのアクロバチックではなく、正攻法で勝ち名乗りを受け「基本に忠実な相撲を取ろうと思った。いい流れで相撲を取れた」とうなずいた。
伝家の宝刀はあえて出さない。「今は基本の練習しかしていない。足取り、居反りで勝ってきたと言われているけど、しばらくは封印」。朝8時30分開始の前相撲では異例となる300人の観客が足を運び、30人を超える報道陣が集まる注目の高さだったが「緊張はしなかった」と己を貫いた。
関学大2年の夏。宇良は体重別大会に出場するため68キロから3キロの減量が必要だったため、寮近くの兵庫・宝塚市の山へランニングで向かった。しかし「試験期間だったので頭が回らなかった」。帰り道が分からなく遭難しかけた。かすかに見えた下山中の登山者を見つけて難を逃れたが「山の水を飲んでしまった」と減量は失敗。こんな愚直さが今後の伸びしろの大きさだ。
この日、館内で声援を送った母・岩崎信子さん(48)は「よく頑張った。勝って安心した」。京都・鳥羽高時代の恩師・田中英一先生(42)も「よくここまで成長したなと思った」と感慨深げ。就職希望だった高校3年の春先までは弱く、体が小さかったため行司や床山などの裏方を勧められていた宇良。「強くて心優しい力士になりたい」。無限の可能性を秘めた“新・技のデパート”の力士人生の幕が上がった。(安藤 宏太)