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 ――メルケル首相はイランの核開発に言及されました。北東アジアには、北朝鮮の核問題があります。ご存じの通り、北朝鮮と日米韓中ロによる6カ国協議は、イランの核問題のようには機能していません。私は、この6カ国協議が将来的には多国間の安保枠組みになると述べてきましたが、メルケル首相から見て、北朝鮮の核を防ぐために、この6カ国協議は有効な枠組みでしょうか。動かす場合、日韓がより協力する必要があると思いますが、協力には何が必要でしょうか。

 「基本的にはこの6者協議には成功のチャンスがあると思います。たとえば、そこにさらに6カ国を加えてもさらにチャンスが増えるというわけではないと思う。北朝鮮を含めた6カ国が、国際社会とともに取る対応策に強くかかっていると思う。こうした問題には、やはり息の長さが重要です。イランを見ても決定的な段階に入っている。そこから何かプラスの方向性が見いだせればうれしいと思うが、やはり何年も何年もかかり、何回も何回も試みがあった」

 「イランへの広く、迅速な制裁が求められた時もあった。ですから、あきらめてはいけません。そこで停止してはいけない。もしイランとの対話が何か成果を見いだすのであれば、もしかすると、それが北朝鮮の問題にも何らかの影響を及ぼすかもしれない。私は6者協議という枠組みはいいと思う。そして、国際社会も支援します。日本がイランと(核問題で交渉する米英独仏中ロ)の対話をサポートしてくれているように、我々も、日本と北朝鮮、あるいは6者協議の対話を支援します」

 「韓国との協力ですが、欧州から来ている私としては、もちろん韓国と日本がよき関係を結ぶことを願ってます。ドイツは、日本とも韓国とも良い関係を築いています。私は、韓国と日本には共通点もたくさんあると思います。価値観、テクノロジー、技術力においてもやはり共通点があるので、もっと、絆を深める可能性はあると思います。G20という枠組みの中で、これは非常に経済政策上重要なフォーラムですが、多国間組織を超えたところで、こういったフォーラムでも可能性があると思います」

 ――表現の自由にメルケル首相は関心を持っていると思います。言論の自由が政府にとってどのような脅威になり得るでしょうか。

 「それはあらゆる政府にとってという質問でしょうか? 私は言論の自由は政府にとっての脅威ではないと思います。民主主義の社会で生きていれば、言論の自由というのはそこに当然加わっているものであり、そこでは自分の意見を述べることができます。法律と憲法が与えている枠組みのなかで、自由に表現することができるということです。ドイツでは基本法の中で言論の自由が保障されておりますが、その(行使の)際には、人間の尊厳を尊重しなければいけません。それは大切なことです。ですが、言論の自由は政権にとって、政府にとっては脅威ではありません」

 「34~35年間、私は言論の自由のない国(東ドイツ)で育ちました。それは多くの側面において大変難しい、厳しいことでした。その国で暮らす人々は常に不安におびえ、もしかすると逮捕されるのではないか、何か不利益を被るのではないか、家族全体に何か影響があるのではないかと心配しなければならなかったのです。そしてそれは国全体にとっても悪いことでした。人々が自由に意見を述べられないところから革新的なことは生まれないし、社会的な議論というものも生まれません。社会全体が先に進むことができなくなるのです。最終的には競争力がなくなり、人々の生活の安定を保障することができなくなります」

 「もし市民が何を考えているのかわからなかったら、それは政府にとって何もいいことはありません。ですから、言論の自由は政府にとって何の脅威でもないし、問題でもありせん。私はさまざまな意見に耳を傾けなければならないと思います。それはとても大切なことです。多くのケースにおいて、異なる意見から、たくさんのことを学ぶことができます」