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 【G7の重点課題】

 そして、G7もまた、世界の課題に挑戦しています。G7は、共通の価値観と確信に基づいて行動しています。日本は来年、G7の議長国をドイツから引き継ぎます。だから、両国は手に手を携えて、緊密に協力していきます。

 ドイツが、議長国としてとくに重点を置くのは地球温暖化防止問題です。この問題をあえてあげるのは、15年が温暖化防止への重要な年になるからです。12月にはパリで開かれる国連の会議で、野心的ともいえる防止策を20年から拘束力のある形で発効させられるかどうかが問われます。だから、G7では、低炭素社会の開発に向けて参加各国が主導的な役割を果たしていくように取り組んでいくことを考えています。なおかつ、それが豊かな暮らしを犠牲にするものではないことをはっきりと示すつもりです。豊かな暮らしは、これまでとは違う方法でもたらされねばなりませんが、放棄すべきものではありません。そのための技術革新を世界中で推し進め、とくに途上国を支援していきます。いずれにしても、私はドイツで6月に開かれるG7で、パリの温暖化防止会議で大きな成果があがるように強力な発信をしたいと思っています。

 この温暖化防止問題と緊密に関係しているのは、いかにしてできるだけ持続可能なエネルギーを確保するかという問題です。従って、私たちはG7としてのエネルギー安全保障をもっと発展させていきたいと思います。エネルギー市場の透明性と機能をできるだけ高めることが重要です。とくに、エネルギーの効率を高めることで、そのコストを下げることができます。

 G7の他のテーマには、保健に関わる問題もあります。例えば、エボラ出血熱の問題から私たちが学んだことをどうするかです。さらには、女性をめぐる問題も取り上げたいと思います。とくに途上国における女性の自立と職業教育に関わる問題です。

 【ドイツと日本、共通の挑戦】

 多国間の枠組みでのドイツと日本の協力は重要な側面を持ちますが、二国間のパートナーシップももちろん、重要な側面になります。私ども両国は同じような挑戦に直面しています。それゆえ私たちは向かい合って互いに多くの事柄を学ぶことができるのです。顕著な例としては、私たちの社会の人口統計学的な変化に対し、どんな答えを見いだすのか、ということが挙げられます。

 私たちには似通った課題があります。若い世代に過剰な要求をせずに社会保障制度をいかに安定的に維持できるのか、人口流出が著しい地方の生活条件をどう改善するのか、高齢化社会の中で活力と創造的な力をどうやって保持するか。

 私はつい先ほど、独日研究に深く関わっている研究者の方々と、このようなことを話しました。私たちの豊かさを維持するために必要な専門家の基盤をどう守っていくか、も大切です。

 ドイツでは連邦政府の人口動態に関する戦略の枠組みの中で、私たちはこうした様々な課題に取り組んでいます。

 たとえば、女性の就労の改善や仕事と家庭の両立、ライフワークを長く持つことに加え、私たちは外国からの熟練労働力にも重きを置いています。欧州域内には移動の自由があり、私たちは、欧州諸国からドイツへの労働力を手に入れることができます。欧州以外の国からの労働力についても関心は高いので、私たちは移住の条件を改善していきます。

 日本では、「Let Women Shine」のスローガンのもと、政府が女性の就労を推進しています。一連の法案によると、企業や行政機関で女性のクオータ(割り当て)制の導入を検討しているということですが、先週、長い討議の末に、ドイツの連邦議会でも同様の法案が可決されました。

 統計を見ると、企業の幹部の地位にある女性は、まだまだ少ない状態です。明日(10日)は日本の女性リーダーたちと意見交換する機会があり、大変楽しみです。

 【人口減と経済・社会・教育上の課題】

 人口動態の変化に直面している今、専門家の確保を促進することは、私たち両国の経済が将来的に成功するのに中心的な要素になります。それによって私たちの高い生活水準も維持できます。日本もドイツも長い間、経済的に成功しています。そういった背景からも、独日の協力は大変に意味が大きい。独日の企業はすでに、多くの協力をしていますが、同行の経済代表団は新たな協力が始まることを期待しています。

 私たちの現在の経済活動を今後も維持していくためには、非関税障壁など、貿易の障害になるようなものを取り除かなければなりません。日本と欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)は、経済に価値ある貢献ができるので、可能な限り早く交渉を進め、調印する必要があります。そのことで、多くの雇用を創出することもできます。

 両国での高度な技術分野での協力は揺るがないでしょう。たとえばデジタル化の分野には多くの可能性があります。また、技術革新力と経済的な成功は、教育や科学、研究に密接に関わっています。今後、この分野での交流も深めていきたいと思います。これに関しては、今日の午前中に研究者とも意見交換することができました。

 また、日本の周りには韓国、中国、ベトナムなどのダイナミックに発展している国々があります。私たちは、この地域だけで研究、教育などの協力をするのではなくて、周りの地域にも交流を広げていく可能性があるのではないかと思います。現在、独日の交流は非常に良い状態にありますが、良いものもさらに良くすることもできます。

 特に再生可能エネルギーや海洋、地球科学、環境の研究などで今後もさらに可能性があるでしょう。ドイツは外国の学生に、留学先として人気がある国ですが、もっと日本の学生や研究者がドイツに来てくれたらうれしいし、そのような学生のために、英語で勉強できるような環境を拡充しようと思っています。そして日本の経済界の方々が、日本の学生や、仕事を始めたばかりの若い人々をドイツまたは外国にもっと送り出してくれるような、そういう態勢をつくってもらえるようにお願いしたいと思います。

 そのことによって、キャリアにプラスになるように、つまり、外国にいたからといってキャリアにマイナスにならない環境づくりが必要です。EUの中には、「エラスムス」というシステムがあって、学生に教育期間の一部を外国で過ごすよう促しています。外国で過ごした時間は無駄ではなくポジティブな時間です。

 日本の学生、研究者をドイツで心から歓迎したいと思います。1873年に岩倉使節団がドイツに来た時と同様、皆さんを歓迎したいと思います。両国は当時のように互いに、そして世界に対して、好奇心を持ち続けたいと思います。本日は皆さんにお話しできただけでなく、今から意見交換ができることを喜ばしく思います。お招きに心から感謝します。