比喩を考えるよりも素敵なこと

僕は本屋で何気なく手にした『1Q84』を読んでから村上春樹さんのファンになり、春樹さんの本をたくさん読んでいます。読んでいる時いつも、僕も春樹さんのような比喩ができるようになりたいな、と思います。春樹さんはどのようにあの比喩を考えているのか教えてください。あるいは、比喩のアドバイスをください。よろしくお願いします。
(けい、男性、15歳、中学生)

こんにちは。十五歳で比喩を考えるというのは、なかなかむずかしいです。比喩というのは、人生経験の中から自然に出てくるものだからです。地面から泉が染み出すみたいな感じで。そうするためには、自分の足元に水脈を貯めておかなくてはなりません。十五歳だとそういうストックがまだ不足しているのではないかと思います。

平凡な答えになって申し訳ないのですが、たくさん本を読んで、いろんな体験をすると良いと思います。そして自分の水脈を足元に少しずつ貯めこんでいくんです。そしてそのたびに「お、こういうのはゆくゆく比喩になるかもな」とか意識していけばいい。そのうちにいろんな言葉やイメージが自然に浮かんでくるようになります。僕自身は十五歳のころ、比喩のことなんて考えもしませんでしたが。

じゃあ、何のことを考えていたか? 女の子のことに決まっているじゃないですか。比喩なんかよりずっと素敵だと思うんだけどね。

村上春樹拝