EVベンチャー、テスラが特許を開放する狙い

カリスマ起業家が仕掛けた大胆な戦略

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テスラのイーロン・マスクCEO(撮影:Paul Sakuma)

ガソリンスタンド並みにEV向けの充電スタンドを全米各地に設置するには、莫大な投資が必要。テスラのスーパーチャージャー設置コストは1台5000万円前後といわれる。

「このまま自社だけで充電スタンドなどのインフラ投資が続ければ、経営が成り立たたない。だから、イーロン・マスクは特許を開放したのではないか」と、セビン・ローゼンファンドのベンチャーキャピタリスト、スティーブ・ドミニク氏は言う。

他のEVメーカーは、テスラの特許を使うことで研究開発などのコストを抑えてEVを生産することができる。生産が増加すれば、スーパーチャージャーの技術を使った充電スタンドの設置などのインフラ整備も加速する、という戦略だ。

過熱する就職人気

米国内では、今回の特許開放について、マスク氏が地球環境保護のため、EV産業をさらに誠実に支援したいという姿勢の表れ、と考える人も少なくない。そこから優秀な人材の確保へとつながる効果もありそうだ。

シリコンバレーでモデルSを保有する、クラウドサービス大手エバーノート・ジャパンの外村仁会長は「シリコンバレーの景気は非常に良く、どの企業も人手不足だ。エンジニアたちは次世代のイノベーションを担うリーダーのところで働き、世界を変えたいと思っている。スティーブ・ジョブズ亡き後、カリスマ性のあるイーロン・マスクの下で働きたいと、優秀な技術者が集まることは必至だろう」と予測する。

現在6000人以上の社員数を誇るテスラだが、年内にカリフォルニア州だけで500人以上を新規採用する方針を打ち出している。テスラ・モーターズの技術職に最近応募したグプタ氏(仮名)は、私立大学の名門USC(ユニバーシティ・オブ・サザンカリフォルニア)の修士号を持つエンジニア。「テスラ内に知り合いがいるので、彼を通して数週間前に応募したが、まったく連絡が無い。テスラには毎日履歴書が山のように届くと、その友人は言っていた。テスラは優秀な人材を選び放題だ」と話す。

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徹底的な敗戦から70年。これまで日本は幸いにも戦争をせずに来た。だが、今や隣国との緊張関係に加え、テロの脅威が日本人の安全を揺るがす。テロと戦争の境目があいまいになる世界で、気がつけばその日本も当事者になっていた。今、そこにある危機を真剣に考える。

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