ライサの随筆集
萃夢想
「卒業」の寒波と桜が交じり合うこの時期に、「別れ」についてのエッセイ。
これは受けると信じよう。
「萃まる想い、この手に集え、共に追ったあの夢」
これはゲーム「東方萃夢想」に出てくる鬼「伊吹 萃香」のテーマ曲「砕月」のボーカルアレンジ「萃夢想歌」の一節である。
私はこの一節に様々な思いを馳せた。
今、私は受験を終え、こうして原稿を作り上げているのである。
その受験にあたって、勿論進学塾に通塾した。公立狙いではなく、私立狙いのコースであったため、別の学校の人と勉強することになった。
だが、そこは私にとってはなんと素晴らしい所であっただろうか。
周りの人間に迷惑をかけることしか出来ない猿どもの巣窟である公立学校とは全く違い、学問の道を歩むという同じ志を持った仲間たちに囲まれた環境は素晴らしい。
何の目標もなくただなんとなく生きているだけの人間に対面することもなく、そこはまさしく理想郷であった。
つまり、「萃まる想いで、共に夢を追える」環境は快い。
だが、受験が終わり、受験前日以来、同志達に会う機会がなかった。
これからも、ずっと。天王寺行きの電車で遭遇しない限り。
そして私の心は色褪せた。
哀しく、寂しい、凍てつくような気持ちだ。
萃香も、同志と別れるという私と似た経験を持つ。
作中の舞台である幻想郷から、鬼がいなくなり、萃香だけが取り残された。それが何十年も、何百年と続き、幻想郷から鬼は忘れられた。
ゲーム中の会話から、これは萃香にとっては嫌な思い出であったと分かる。
ちなみに、「東方萃夢想」では萃香は人目につかず、能力を使って幻想郷の住民に三日おきの宴会をさせて楽しむのだが、ここではそのことはどうでもいい。
また、「萃夢想歌」ではこのようなことも述べられている。
「記憶のカケラ、この手に集え、純粋たる願いは、時を越えて輝きだし、この胸を焦がすよ」
要するに「昔の記憶が時を越えてこの胸を焦がす」ということだろう。
私も、同志達との日々を思い出すと、クスッと笑ってしまう。
でも、「そんな日々はもう来ないのだな……」という失望の念がそれを追う。
なので、出来るだけ受験前の記憶を思い出そうとしていない。そうすると、本当に悲しいからだ。
萃香の場合は、鬼と居た記憶のことを言えるだろう。
でも、幻想郷から鬼が居なくなる程だから、何百年と、記憶は彼方へ去っているだろう。
それでも、思い出せる。そして、胸が焦がされる。
なんと、素敵な事であろうか。
更には、「何年先もその先までも、絆だけは消せない、終わり知らぬあの想いが、この胸を叩くよ」ともあった。
ここで私はやっと気が付いた。
同志と別れただけで、絆が消える訳がない。
そう、交差点でバッタリ遭ったら、いつものように馬鹿げた話をすればいい。
天王寺行きの電車で会ったら、お互いに違うテキストを広げて比べ合える事だってできる。
ここで私は、萃香の本当の力を感じた。
「密と疎を操る程度の能力」といった物理的な力でも無く、「また幻想郷で、鬼と会え、そしてまた笑え合える」ことをいつまでも信じられることが出来るチカラだ。
別れなど、人生の中で廻るように繰り返される。
なんとも思わない別れと、凍てつくような哀しい別れもあるだろう。
でも、その別れは永遠の別れであるとは限らない。
だが、他界といった別れこそは永遠だ。
でも、そのような別れでも、その人といた記憶は貴方の胸を焦がしてくれるだろう。
ちなみに、この後、「東方地霊殿」で萃香は同じ鬼である勇儀と出会います。
めでたしめでたし。
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