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» 2015年03月09日 20時00分 UPDATE

鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:Windows 10世代のPC/タブレット/スマホは「USB 3.1」でどう変わるか? (1/2)

Windows 10世代のスマートデバイスやPCでは、より高速で高機能化したUSB規格「USB 3.1」をサポートしていく見込みだ。USB 3.1によって使い勝手がどう変わるのか、現状での情報をまとめた。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 2015年後半のリリースに向けて開発が進められている「Windows 10」。2015年1月末には、初の日本語対応プレビュー版となる「Windows 10 Technical Preview(TP) Build 9926」がリリースされた。Microsoftは最初のWindows 10 TPをリリースした2014年10月以来、毎月最新アップデートを配布していたが、結局2015年2月には最新アップデートを提供しなかった。おそらく3月中には次のアップデートが行われるだろう。

すべてのデバイスをケーブル1本で接続できる「USB 3.1」&「Type-C」

 スペインのバルセロナで開催されたMobile World Congress(MWC) 2015において3月2日(現地時間)、Microsoftのプレスカンファレンスが行われ、「Windows 10 for phone and tablets」に関するアップデートや「Lumia 640」「Lumia 640 XL」のWindows Phone新製品2機種が発表された。同カンファレンスの詳細は別のリポートをご覧いただくとして、同社のスマートフォン戦略について少し新しい情報が出てきたので紹介する。

 以前にIntel Developer Forum 2014のセッションに関する記事で「USB 3.1」と「Type-C」について少し紹介したが、Intelなどのハードウェア実装側だけでなく、MicrosoftもまたWindows 10世代のOSやソフトウェアにおいて、これら新規格を本格的にサポートすべく乗り出している。

 USB 3.1は最大10Gbpsの転送速度に対応して「SuperSpeed 10」(もしくはSuperSpeed+)のような名称で呼ばれているが、同時に裏表リバーシブルな新コネクタ規格「Type-C」の採用や、「Power Delivery(PD)」「AV Class」といった新しいプロファイルの定義など、USBという有線接続の使い勝手を大きく変化させる仕組みが用意されている。

tm_1403_win10J_1_01.jpg 裏表どちらからでも接続できるリバーシブルな新コネクタ「Type-C」。これでUSBコネクタの上下を間違えて、なかなか装着できないといったよくあるミスも防げることになる
tm_1403_win10J_1_02.jpg USB 3.1の転送速度を計測するデモ。800Mバイト/秒強ということで、理論値の10Gbpsの半分程度だが、USB 3.0規格の最大5Gbpsに比べると、十分に高速だ
tm_1403_win10J_1_03.jpg USB 3.1のType-Cケーブルを使ってストレージ間転送のデモを行っているところ

 Microsoftは3月18日より中国の深センで開催されるWinHECにおいて、「Enabling New USB Connectivity Scenarios in Windows 10」というセッションの実施を予告しており、ここでWindows 10におけるUSB 3.1への取り組みが語られる見込みだ。

 筆者もWinHECの参加を試みたものの、中国国内の報道関係者のみ参加が可能ということで、残念ながら今回は現地取材を断念した。詳細は後ほどフォローするが、セッションの説明は以下のように記されており、Windows 10のUSB 3.1サポートにおいて重要なポイントがいくつか語られている。

Windows 10 introduces support for USB Dual Role and Type-C, which will enable new wired connectivity scenarios such a phone interacting with USB peripherals, or laptops connecting to an external display using the USB Type-C connector. This session will go into detail on how Windows supports these technologies and what you need to do to enable them. Topics include: Overview of the new use cases introduced with USB Dual Role and Type-C, What scenarios are and aren’t supported for Dual Role devices, Using Alternate Modes (e.g. DisplayPort, Thunderbolt, or MHL) over Type-C, Support for Power Delivery, enabling devices to provide/consume up to 100W over USB, Hardware and software architecture changes for Dual Role and Type-C, and Building a Windows system with Dual Role and/or Type-C support. Intended Audience: OEMs, ODMs, IDHs, IHVs, Peripheral Manufacturers, Driver Developers.

 まず重要なキーワードが「USB Dual Role」だ。「USB On-The-Go(OTG)」とも呼ばれ、通常であれば「マスター」「スレーブ」という主従関係が存在するUSBの機器間接続において、対向の両者がマスターにもスレーブにもなれる仕組みを指している。

 一般にマスターの頂点にはPCが存在し、ここにスレーブとして複数の周辺機器がツリー構造でぶら下がることで、USB接続のネットワークを形成する。例えば、このネットワークにスマートフォンやタブレットを接続する場合、頂点にはPCが存在するため、これらデバイスはスレーブとして接続されることになる。

 だが逆に、スマートフォンやタブレットにUSB接続が可能な周辺機器(プリンタや外部ストレージなど)をつなごうと思ったとき、スマートフォンやタブレットのUSBはスレーブとなっており、同じスレーブの周辺機器とでは「マスターになるためのコントローラ」が存在しないことから、互いに接続できない。

 そのため、最近登場しているスマートフォンやタブレットでは、内蔵のUSBポートがマスターにもスレーブにもなれる「デュアルモード」に対応したものが存在し、こうしたUSB周辺機器の接続を可能にしている。この双方向接続に対応した仕組みをUSB Dual Roleと呼ぶ。

 これを100ワット給電が可能な「USB Power Delivery(USB PD)」、音声信号を含めたディスプレイ出力の情報転送が可能な「USB AV」やDisplayPortのサポートと組み合わせることにより、USB 3.1とType-Cコネクタで面白いことが可能になる。USBハブのようなものを用意して、すべての周辺機器やPC、スマートフォン、タブレットを接続することで、それぞれが双方向に通信できるようになるのだ。

 つまり1本のUSBケーブルを通して、PCへの充電とディスプレイ出力、プリンタの印刷、ストレージやスマートフォンとの間のデータ送受信がすべて賄える。スマートフォンはUSBポートを充電やPCとの通信だけでなく、外部ディスプレイ出力やプリンタの印刷、ストレージへのアクセスと、幅広い用途で利用することが可能だ。

 MicrosoftがWindows 10(for phones and tablets)での対応をうたうことで、少なくともWindows Phoneではこうした仕組みが公式にサポートされ、アプリから利用できる環境が整うとみられる。

tm_1403_win10J_1_04.jpg USB 3.1では10Gbps対応の高速化だけでなく、Power DeliveryやAV Classといった仕組みの導入によって、ケーブル1本を通してすべてのデータ通信や給電をカバーする(IDF2014の資料より)
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