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話題商品の舞台ウラ

アパレル VOL3 Prev Next
加藤崇宏 2007年入社
日本のみならず世界中で愛されるコンテンツに。キャラクター×ファッションが持つ無限の可能性

バンダイのアパレル事業は、オリジナルブランドのSPA展開に力をいれており、商品の企画から製造、小売りまでを一貫して行っています。「機動戦士ガンダム」のメンズアパレルブランド「STRICT-G(ストリクト ジー)」の企画と仕入れを担当するアパレル事業部 SPAチームの加藤崇宏は、生産メーカーなどのさまざまな協力会社と折衝を重ねながら年間約150もの商品を企画しています。キャラクターの魅力や世界観を、最適な形で商品に落とし込む“キャラクターマーチャンダイジング”の可能性について聞きました。

プロジェクトの流れ

立案背景

加藤:「キャラクターを使用したアパレル商品と言えば、以前は子ども服かコアなファンが着るものというイメージで、カッコいいや可愛いという言葉がイコールで結ばれにくい状況でした。しかしここ数年、アニメのモチーフやアイコンをファッションとして落とし込んだものを評価していただけるシーンが出てきました。ちょうどクールジャパンという言葉が出始めた時期ですね。時代が変わりつつあるなかで、バンダイならではの新しい世界観を生み出すにはどうすればいいのだろう? と考えたとき、“機動戦士ガンダムをファッショナルブルなブランドとして立ち上げる”という方向性が見えてきました。それが『STRICT-G』の立案背景です」

オリジナルの商品に加え、マスターマインド様や吉田カバン様、ジャムホームメイド様など、豪華なブランドとコラボレーションした商品をリリースすることで、常に新鮮な話題を市場に提供することに成功している「STRICT-G」。その商品展開の方向性には、「STRICT-G」のコンセプトを象徴する、強いこだわりがありました。

加藤:「『機動戦士ガンダム』自体が日本を代表するキャラクターコンテンツなので、より大きな相乗効果を出せるように、日本を代表するブランドとコラボレーションさせていただいています。商品展開は幅広く、実はかまわぬ様というブランドとコラボし、てぬぐいなども作っています。もう一つこだわっているのが、メイドインジャパン、フロムジャパンという部分です。将来の海外進出を見据えたとき、『日本発のモノづくり』というキーワードは必ず強みになると思っています」

NEXT PHASE

実行

今でこそよく耳にするコラボレーションという言葉ですが、斬新なアイデアや、キャラクターへの愛着、ファッションに対する思い入れだけでは成功させることはできません。お互いにwin-winの関係を構築するためには、事業領域が違う会社同士が、それぞれの本質を理解し合う必要があり、それには多くの時間と苦労が伴います。

加藤:「それぞれのブランドもバンダイも、新しいお客様との出会いや話題性をつくり出し、事業の可能性を拡げていくのが目的、という部分は共通しています。ただ、それを成功させるには、キャラクターを扱う私たちの価値観や強みを正確に理解していただくと同時に、私たち自身もコラボするブランドについての理解を深め、魅力を引き出せるようにしなければなりません。ほとんどの企画が『そもそも、このキャラクターとブランドを掛け合わせることで何が生まれるの?』という部分からスタートします。商品の仕掛け方や売り方、話題性の演出方法などのアプローチは、ブランドや商品ごとに変わってきますので、同じアイデアを流用することはできません。過去の事例やトレンドなどももちろん考慮しますが、基本的には、キャラクターがアパレルになるからこそ可能になる、という新鮮な提案が必要とされます」

ファッション業界の常識をそのまま受け入れるだけでは、キャラクターを使用したアパレル事業で成功を収めることはできません。アイデア次第で通常では考えられない商品を生み出すことができる。それが、バンダイのアパレル事業のおもしろさや醍醐味といえます。

加藤:「例えば、白、黒、グレー、赤という色展開のTシャツの場合、一般的には赤を売るのが一番難しいですよね。それがガンダムのアパレルとして、登場人物の “赤い彗星” という異名をもつシャアの世界観を反映したものにすると、赤の人気がググッと上がります。こういった意外性はキャラクターマーチャンダイジングならではのおもしろさだと思います。バンダイのアパレル事業の商品開発やコラボレーションにおいては、通常のファッション業界の常識にとらわれすぎず、キャラクター側の軸から考えることも大切なのです。また、キャラクターの価値が最大限に活きる時期はどこなのかを見極め、的確なタイミングで商品をリリースするのも、好調なセールスを導くためには非常に重要となります」

NEXT PHASE

商品化

加藤の仕事は「STRICT-G」や商品企画だけにとどまりません。2014年に話題となった『美少女戦士セーラームーン』と伊勢丹のコラボレーション企画では、商品のみならず売り場全体をプロデュース。一週間でイベントスペースの過去最高の売り上げを樹立し、成功に導きました。

加藤:「伊勢丹様では、常に様々な催事が開催されているのですが、あるときキャラクターを用いたレディース向けの企画をやりたいという話をいただきました。企画案を考えるなかで、『美少女戦士セーラームーン』を起用する、というところまでは辿りついたものの、既存の商品を伊勢丹様で売るだけでは、どうしても魅力的な売り場になるとは思えませんでした。『美少女戦士セーラームーン』の魅力は活かしつつも、普段キャラクターに馴染みのないお客様に響く切り口が必要だったのです。そして、何度も企画を練り直した結果、バンダイ、伊勢丹様、サマンサグループ様の3ブランドのコラボレーションとしてオリジナル商品を企画し、販売する形を取ったのです」

企画のスタートから発売までの期間が約2カ月半という嵐のような過密スケジュールの中、深いコミュニケーションを続けることで、質の高い商品を完成させることができました。

加藤:「まず、バンダイが『美少女戦士セーラームーン』に対してお客様が求めるものを具体的に伝えました。それを、ファッショントレンドの視点からどのように見せていくかを伊勢丹様が企画し、最終的にサマンサグループ様がそれぞれのいい部分をすくい上げて形にする、というスタイルで、何度も話し合いを重ねました。キャラクターの変身時の魔法の言葉がデザインされたバッグや、胸元に着脱可能なリボンがついたカーディガンなど、『美少女戦士セーラームーン』らしさとファッションのトレンドが絶妙にマッチした商品をつくることができました。売り場作りにおいても、思わず写真を撮りたくなったり、SNSにアップしてもらえるよう、様々な工夫を凝らしました。例えばルナというネコのキャラクターのぬいぐるみを毎日違う場所に置き『今日はここにいるよ!』というメッセージを発信しました。毎日来ても新しい発見がある仕掛けに、お客様からも大変好評をいただきました。実現までには多くの苦労がありましたが、商品のみならず、売り場全体でキャラクターの持つ世界観を表現できた催事になったと思います」

NEXT PHASE

今後の展開

メディアによる2015年の流行予測では、「2.5次元ファッション」(アニメやキャラクターの世界観をファッションに落とし込んだもの)という言葉がピックアップされており、バンダイが取り組んでいるアパレル事業への注目度は、今後より一層高まりそうです。この流れを一過性のもので終わらせないためにも、加藤の挑戦は続きます。

加藤:「メディアツールや商品の購入手段は日々進化を遂げていますし、トレンドも日々変わっていきますので、キャラクターとファッションのコラボレーションは、まだまだ色々なものを生み出せると思っています。また、もう一つの目標が海外への事業展開です。学生時代に海外留学をしたとき、一番驚いたのがキャラクター人気の高さでした。『機動戦士ガンダム』や『ワンピース』、『美少女戦士セーラームーン』などのキャラクターは特に知名度が高く、日本を代表するコンテンツの一つなんだということを実感しました。将来的には、アパレル事業を通じて、日本ならではの商品を世界中の人に楽しんでもらいたいと思っています。日本で、そして世界で、キャラクターを用いたファッションアイテムを街中で目にすることができる、そんな光景を作っていきたいですね」

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