コドなび VOL2 Prev Next
坂田理恵 2001年入社 | 大木亜希 2010年入社
初の試みとなる「こども専用のデジタル玩具」バンダイが提案した「新しいまなびの形」とは?

幼少時からパソコンやインターネットの環境が身近にある「デジタルネイティブ世代」。この言葉が世の中に定着するのと時を同じくして、子育てにスマートフォンやタブレットを利用する親御さんが増えてきています。しかし育児におけるデジタル機器の活用について、世間の賛否は真っ二つに分かれています。そんな中バンダイは、新しい時代のまなびの形として「コドなび!」という商品を通してひとつの答えを出しました。商品企画とプロモーション、それぞれの立場で「コドなび!」に携わったプレイトイ事業部の坂田理恵と大木亜希の二人に、完成までの道のりや商品の魅力について聞きました。

プロジェクトの流れ

立案背景

「コドなび!」とは、子どもが遊びながら学べるアプリを150メニュー以上プリインストールした、「それいけ!アンパンパン」の本格Android 端末です。プレイしたアプリやそのクリア回数による子どものタイプ診断など、子どものまなびの記録を統計的に表示する機能も搭載しており、子どもが使用するだけでなく、親御さんも子どもの成長を見守ることができるのです。“親子で楽しむリビング学習”をテーマに、まさに新しいまなびの形を提案しています。

坂田:「もともとバンダイではアンパンマンカラーパソコンとかカラーパッドという子どもが親の真似事をできる玩具を発売していて、非常に好調だという実績がありました。また、子育てにスマートフォンやタブレットが使われているという現実がある中で、親のタブレットを使うのではなくて、子ども専用に考えられたものを商品にできれば面白いのではないか、というところが企画立案の背景です」

誰もが考えもしなかったアイデアと技術、そして自身が体験した感動をこの小さな箱の中に凝縮させるべく、チャレンジが始まりました。

大木:「デジタル機器には、子どもが依存してしまうとか、目が悪くなるといった、否定的な考えもあるのですが、今の時代、まったく触れさせないのは難しいという現実もあります。ただ、商品として受け入れていただくためには、きちんと子どものために考えられたものを製作し、それを活用した子育ての形までを提案することが重要だと考えました。そこからスマートフォンやタブレットとの新しい付き合い方が生まれれば素晴らしい、という思いは商品作りの過程で常に持っていました」

“子どもにとってよい商品とはどんなものか?”、“どうすれは親子に受け入れられるのか?”。これまでにない高い専門性が求められる企画のため、バンダイ内部だけで企画を進めるには難しい面が多くありました。そこで、タッグを組んだのが東京学芸大学様と東京学芸大こども未来研究所様でした。教育について深い知見を持つパートナーへの期待と商品開発への不安が交錯する中、プロジェクトがスタートしました。

NEXT PHASE

実行

坂田:「パートナーとして組んでいただける方を探していく中で、東京学芸大こども未来研究所様が“遊びが最高の学びになる”というお考えを持っていることを知りました。まさに私たちが展開していきたいものとマッチングしていると感じ、まずはお話を聞きに行ったというのが最初です」

そのようにして足を運んだ東京学芸大学で、2人は立案した150を超えるメニュー一つひとつに対してコンテを起こして説明し、企画に対する熱い気持ちを教授陣にぶつけました。

大木:「パートナー様とは最初から最後まですべてを一緒に作りたいという思いがあったので、とにかく『全部見てください!』という気持ちで飛び込んでいきました。これに関してはさすがに教授もびっくりされていましたね(笑)。メニュー自体の監修はもちろん、デザイン面でも美術系の教授にご協力いただけることになりました」

知育玩具の開発に携わる“子どもの遊びのプロ”にとって、“教育の最高峰”である東京学芸大学の教授たちとの共同作業は刺激や発見の連続でした。

大木:「商品の核となるメニューの製作にあたっては、色々とお考えを伺いながら本当に長い時間をかけてつくり上げていきました。さまざまな角度からご意見をいただけて、毎回打ち合わせをする度に勉強になりました。特に印象に残っているのが『応用から基礎への逆転の発想をしなさい』という言葉です。例えば言葉を覚える時は、あいうえお表から入るのではなくて、生活の中でりんごを見ながら“りんご”と分かった上であいうえお表を見た方が身に付くというのです。今までの玩具ではあいうえお表から入り、モノの名前につなげていくというステップを踏んでいたのです。そうした固定概念が一つひとつ取り払われていくことに、とても新鮮さを感じたと同時に、これは今までにない商品にすることができるという期待も大きくなりました」

坂田:「勉強を教えるプロですので、教授陣からいただく指摘や意見は非常に分かりやすいんです。打ち合わせを重ね、商品ができ上がっていくのと同時に自分の頭の中のいろいろな考えがクリアに整理されていった感じでした」

NEXT PHASE

商品化

教授陣と何度も打ち合わせを重ね、「コドなび!」には、知育玩具と教育、それぞれのプロフェッショナルのこだわりが凝縮されていきました。

大木:「一貫してこだわったのはリアルとバーチャルの融合。子どもが世界に視線を向けるきっかけになるような、そして好奇心を刺激できるような遊びをつめ込みました。例えば写真を撮ったあと、その色を抜いてぬり絵ができるといった、遊びから実体験につながる機能を多く取り入れたのがポイントです。また、設定時間を超えると『アンパンマンがパトロールに行かなきゃいけないからおしまい』と表示されるなど、親御さんがタブレットに持つ懸念点を払拭できるような機能にもこだわっています」

子どもにとってアンパンマンは永遠のヒーロー。タブレットという最先端機器とのコラボレーションは一見、最強のタッグに見えますが、実はそこにも多くの苦労がありました。

坂田:「アニメの中のアンパンマンの世界観を守りつつ、リアルな体験を通して学べるという部分にもこだわっていく。そこを擦り合わせていく作業は非常に大変でしたね。例えば、歯磨きを学ばせたくてもアンパンマンには歯がなく、歯があるキャラクターを見渡すとバイキンマンやホラーマンだったり…、といったこともありました。そのように次々に出てくる問題や課題を一つひとつ解決していったのです」

大木:「新しい発想からスタートしているだけに、とにかく試行錯誤の連続でした。それだけに完成したときは本当に充実感がありました。東京学芸大学様と東京学芸大こども未来研究所様をはじめ、様々な方にご協力いただくことで自分たちだけでは絶対に思いつかなかった発想も生まれ、まさに商品開発担当ならではの醍醐味を味わえたと思っています」

NEXT PHASE

今後の展開

坂田と大木が中心となって完成させた“育児・教育とデジタル機器の新たな関係”と“まなびの新しい形”。時代の変化に伴って、これからもその形は多様に変化していきます。その変化の足音と歩調を合わせるように、二人と子どもたちの行進は未来へと続いていきます。

坂田:「当初企画していた時、すべての親御さんが母子手帳と同じ感覚で、子どもが小学生にあがるまで必ず『コドなび!』を一台持っていてくれたらうれしいよねって話をしていました。そういった意味では、今回の『コドなび!』の発売はチャレンジへの最初の一歩を踏み出せただけだと思っています。今後の展開に向けてまだまだ大きな野望を持っているんです(笑)」

大木:「今後は『コドなび!』を起点として、色々な“まなびの新しい形”を送り出したいと思っています。キャラクターというバンダイならではの切り口を使い、今までにない企画を考えたいですね」

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