目撃!日本列島「猟場(やま)が呼んでいる〜石川県 片野鴨池〜」 2015.03.08


ここは石川県加賀市にある料亭。
客の目当ては地元で捕れたカモ肉を使った料理。
冬に欠かせないふるさとの味だ。
その食文化を守ってきた男たちがいる。
身の丈の2倍以上もある巨大な網。
飛んでくるカモに目がけて投げる。
(カモの鳴き声)この地で300年以上続く坂網猟だ。
(網を起こす音)よし準備OK。
この道54年名人と呼ばれた猟師。
この冬カモが網に入らない日が続いていた。
避けては通れない老い。
突然襲ってきた病。
それでも猟へ向かう。
78歳ベテラン猟師の一冬を見つめる。
うっそうとした森に囲まれた小さな池。
石川県加賀市にある片野鴨池。
毎年冬になると5,000羽のカモが海を渡ってやって来る。
マガモやヒシクイなど20種類以上にも上る。
池の周辺には柵が張り巡らされている。
人けを嫌うカモのためだ。
その起源は江戸時代に武士が始めたカモ猟に遡る。
当時から密猟や乱獲は固く禁じられ人とカモの調和が守られてきた。
22年前には国際的にも重要な湿地としてラムサール条約に登録されている。
池のほとりには見張り小屋がある。
通称番小屋。
お疲れさまで〜す。
冬の間池の周りに足を踏み入れる事を許された男たちが集う。
この地に代々伝わるカモ猟坂網猟の猟師たち28人。
サラリーマン自営業料理人など職業はさまざまだ。
番小屋の管理人…猟師歴54年の大ベテランだ。
山本さんはその日の天候や風向きからカモの動きを見定める。
池の周りには8か所の猟場がある。
猟師たちはカモが飛び立つ方向を予測し猟場を決める。
その選択が猟の明暗を分ける。
猟は11月から2月にかけて行われる。
例年300羽ほどのマガモが網に入る。
その期間毎日誰よりも早く番小屋に来て池の様子を観察する山本さん。
仲間たちから厚い信頼を集めている。
日没30分前。
それぞれが選んだ猟場へと向かう。
おい。
頑張れ!おう行ってきま〜す!猟場は池周辺の高台にある。
猟師たちはそこを猟場と呼ぶ。
警戒心の強いカモがいる池からは死角になる場所だ。
猟に使うのは長さ3.5メートルの巨大な網。
これを頭上に飛んでくるカモに目がけて投げ上げる。
よし準備OK。
(網を起こす音)ね?この音で。
だから…日中餌を食べに出ていたガンが池に戻ってきた。
間もなく日没。
カモが飛び立つ時間だ。
カモはタカやワシに狙われないよう日が暮れてから餌を求めて近くの田んぼへ向かう。
勝負は僅か15分。
猟師たちは息を潜めてその時を待つ。
網に掛かる直前カモが舞い上がった。
もう一度羽の音に神経を集中し狙いを定める。
しかし…。
思ってもいない方向から飛んできた。
ベテランの山本さんでもカモの動きを読み切る事は容易ではない。
まあそういう事やな。
山本さんが坂網猟を始めたのは24歳の時。
猟師だった兄に誘われたのがきっかけだった。
結婚して家族が出来たあとも冬場は家業の八百屋を妻に任せ猟に通い詰めた。
だからこれはもう本当に…山本さんは16年前妻を心筋梗塞で亡くした。
それ以来年金と坂網猟で得た収入で独り暮らしを続けてきた。
去年山本さんに予期せぬ出来事が起きた。
すい臓の難病と大腸ガンが相次いで見つかり手術を受けたのだ。
半年で体重は20キロ減った。
今も薬を手放せない。
そんな体になっても坂網猟を辞める事は考えていない。
その気力やわいね気力が。
久しぶりに現れた夕日。
絶好の猟日和になった。
山本さんがここまで捕ったカモは僅か5羽。
例年なら10羽は捕れている。
今シーズンまだ調子が出ない。
今日こそはと意気込んでいた。
準備は万端。
いざ勝負。
カモが飛び始めた。
山本さんの読みどおりのコースだ。
反応が遅れた。
今度は早すぎた。
体が言う事を聞かない。
こんなシーズンは初めてだった。
それが打てない。
打てない打てない。
おはよう。
1月末加賀地方に伝わる独特の食文化を紹介するイベントに全国から人が集まった。
用意されたのは坂網猟で捕れたカモ肉を使った郷土料理。
山本さんは語り部役を頼まれていた。
…乾杯と致します。
乾杯!
(一同)乾杯!しぶしぶ引き受けたが参加者から猟について質問されると…。
語り尽くせない坂網猟の魅力。
久しぶりに笑顔が戻った。
いきますよ〜。
はいチーズ!寒い。
ハハハハ…。
山本さんがいつもより早く番小屋にやって来た。
若手の猟師たちに網の手入れを教えるためだ。
そういう事やわいね。
技術は先輩から盗むもの。
そう思ってきた山本さん。
これからは自分から伝えていこうと考えるようになっていた。
猟期も残すところ2週間。
山本さんを奮い立たせる出来事があった。
お〜よかったよかった。
胃ガンで入院していた仲間が帰ってきたのだ。
退院したその足で猟に出るという。
それは…。
ほらやっぱりな。
そやろ?せやさかい猟師ってあんた何のために行くんやって言うけど…負けてはいられない。
互いに背中を押し合う。
山本さんはこの日も猟場を目指していた。
いつものようにカモの気配に神経を集中。
勝負の瞬間をじっと待つ。
猟場に上がれる限り網を投げ続ける。
覚悟を決めた78歳の冬。
もう一勝負!東日本大震災から4年。
2015/03/08(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「猟場(やま)が呼んでいる〜石川県 片野鴨池〜」[字]

静寂に包まれた池の周りで息をひそめる男たち。突如、薄暮の空に現れるカモの群れ。頭上に迫った瞬間、網を投げ上げカモを仕留める。加賀地方で300年続く坂網猟に密着。

詳細情報
番組内容
ロシアから3000羽のカモが飛来する片野鴨池。毎年冬の3か月間、坂網猟が行われる。この道54年の山本武雄さんは、カモが飛び立つ方向を読む名人。猟師仲間から頼りにされるベテランだ。そんな山本さんに去年夏、ガンが見つかった。闘病で体重は20キロ落ち体調は今もすぐれない。網が上がらない日もある。「動けなくなるまで猟場(やま)へ行くよ」なにが満身創痍(い)の78歳を駆り立てるのか。老猟師の勝負の日々に迫る

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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