(花村乃里子)
私が加倉井肇という人と出会ったのは駅の構内で発生した暴力事件がキッカケだった
おら!弱いくせによ!悪いのはお前じゃないかよ!うるせえぶっ殺してやる!ぶっ殺すぞ!
(加倉井肇)ナイフを捨てろ!どけー!うわ…。
くっそー!鉄道捜査隊です。
暴力行為の現行犯で逮捕します。
さあ。
お願いします。
ご協力ありがとうございました。
お怪我はありませんか?
(加倉井)鉄道捜査隊だそうですね。
倉田警部はお元気ですか?えっ…?
(手塚真理絵)それにしても偶然ね。
犯人逮捕に協力した人が倉田さんの後輩だったなんて。
(倉田剛)いやー俺も驚いたよ。
花村君がこいつを連れて来た時には。
おい!3年ぶりぐらいになるか?いやもっとでしょう。
俺が警察を辞めてからでもそれぐらいになりますから。
(大沢次郎)倉田さんと同じ高校だったんですって?ええ。
柔道部の大先輩で…警視庁に入ってからも随分しごかれたもんです。
いやいやいや…。
しごかれたのはこっちだよ。
こいつさむちゃくちゃタフな男でね。
ついたあだ名が「不死身の刑事」っつうんだよ。
「不死身のデカ」?ああ。
いつだってね凶悪犯に正面から突っ込んでいくんだよ。
だけどいつも不思議と無事でな?
(大沢)そんなすごい人がどうして辞めちゃったんです?警察を。
いやそれはちょっと一身上の都合ってやつで…。
あっ…今はどんなお仕事を?申し遅れました。
こういう事務所をやってます。
(真理絵)まあ!探偵さん。
(真理絵)元刑事さんにはピッタリのお仕事じゃないですか。
ところで由美子さんはどうしてる?相変わらず愛妻弁当作ってくれるのか?あいつとは別れました。
別れた…?
(加倉井)ええ…いろいろあって…。
別れたのか…。
いやいや悪い事を訊いてしまったな。
いえ…。
(携帯電話)ちょっと失礼します。
はい。
今からですか?わかりましたすぐ行きます。
残念だったな今日はとことん飲もうと思ってたのに。
すみません急に仕事の依頼が入ったので…。
(加倉井)この埋め合わせは必ずしますのでその時は花村さんもご一緒に。
はい。
楽しみにしています。
それじゃ先輩失礼します。
あ…加倉井!はい。
あまりむちゃするなよ。
お前さんだってそう若くはないんだから。
わかってます。
でもご心配なく。
俺は不死身ですから。
(真理絵)ありがとうございました!
私が彼の姿を見たのはそれが最後だった…
(足音)
(広田功)加倉井さんですね?そうです。
あなたがこれの受取人?はい。
ご苦労さまでした。
よせー!
(銃声)やめろ…。
(銃声)えっ!あの加倉井さんが…射殺体で!?ああ…。
群馬県の桐生市内にある鉄道の駅で発見されたそうだ。
(三崎真弓)そんな…。
昨日はあんなに元気だったのに…。
(電話)はい倉田ですが…。
(本多英一郎)実は群馬県警から捜査協力の依頼があってね…。
はい承知しました。
それでは。
至急群馬県に行かなくちゃならん。
加倉井さんの件でですか?身元を確認する親族がいないんで代わりに行って来いと。
あっ君も一緒に来てくれるか?はい。
私たちは東京駅発の上越新幹線に乗り…高崎駅で両毛線に乗り換えて事件の捜査本部が置かれている桐生中央警察署へ向かった
(伊東警部)お願いします。
間違いありません。
後輩の加倉井肇です。
やはり…。
ご愁傷さまです。
胸と顔…2か所?
(原田刑事)犯人はまず胸を撃ち倒れた被害者の顔を至近距離からさらに1発。
そんな冷酷な殺し方をするなんて…。
相手はプロでしょうか?それともよほど加倉井を恨んでいたのか…。
いずれにしても絶対に許せん。
(伊東)これが遺体から摘出された銃弾です。
線条痕からの前歴は?前歴については照会中です。
現場に到着するまでの足取りはわかりますか?はい。
わたらせ渓谷鉄道の運転士に訊いたところ…。
(足立運転士)このお客さんなら確か…桐生駅発10時36分の列車に乗車されて11時7分に本宿駅で下車されました。
間違いないですか?ええ。
それじゃあその本宿駅で何か用事を済ませてすぐに戻るつもりだったんですね?ええ。
もしかしたら何か大事なものを手渡しする約束だったのかも…。
(原田)黒いアタッシェケースを提げていたという事ですから。
でそのアタッシェケースは?現場では発見されていません。
おそらく犯人が持ち去ったものと…。
加倉井さんの遺品はそこにあるだけです。
携帯電話を所持していたはずですが…。
いやそれは見つかっていません。
そういえば手帳も…。
わたらせ渓谷鉄道は群馬県の桐生駅から栃木県の間藤駅までの44.1キロを約1時間半で結ぶ第三セクターの鉄道である
愛称「わ鉄」というこの鉄道の沿線には渡良瀬川上流の風光明媚な景色が見られる上レトロな駅舎やトロッコ列車の運行などがあって鉄道ファンの人気がとても高いという
本宿駅ってのは無人駅だったんだなあ。
乗り降りする人も少ないようですし人目を避けて待ち合わせするのには絶好の場所ですね。
ゆうべ加倉井は急に仕事の依頼が入ったと言っていた。
ここへ来たのがその仕事だったのかもしれんな。
(加倉井)でもご心配なく。
俺は不死身ですから。
不死身だと言ってたのに…。
必ず敵は討ってやる。
こっちからのアプローチは無理だな。
犯人は階段を上から下りて来たと考えるべきだろうな。
ええ。
上はどうなっているのか見てみましょう。
国道122号線ですね。
ホシは車を使った可能性が高いな。
その場合ここに駐車したんじゃないでしょうか。
ひょっとしたら目撃した人がいるかもしれませんね。
(物音)ああ!?熊だ!
(江崎みどり)私は人間です!邪魔なんでちょっとどいてください!
(列車の警笛)ああ…。
なんだ鉄道マニアだったのか…。
近頃話題の鉄子さんですね。
何それ?鉄道マニアの男の人を鉄男さんって呼ぶでしょう。
最近は女性のマニアも多くて鉄子さんって呼ばれてるんです。
(カメラのシャッター音)
(みどり)あのちょっとすみませんすみません。
(カメラのシャッター音)
探偵業をしていた加倉井さんの事務所は新宿の繁華街にあった
(新井はるみ)すみません。
(真弓)主任!どうかしましたか?ああ…ううんなんでも。
こちらが管理人さんです。
どうぞ。
よろしくお願いします。
どうぞ。
あれ!?開いてますね!だ…誰か来たのかな?入っていいですか?ここが二重底に…。
何か隠してあったみたい。
うまく出来てますね。
知らない人なら全然わからない。
加倉井さんは人を使ってましたか?いいえお一人でやっておられたみたいですよ。
頻繁に出入りしていたような人は?そういえば…この半年あまり女性の方が。
どんな女性ですか?ああ若くてきれいな方でしたよ。
髪の長さはこれくらいできちんとした服装の…。
すみません。
そうか…加倉井の事務所はあまりはやっていなかったのか。
ええ。
このところ家賃も滞りがちだったとか…。
(立花広太郎)でもまったく仕事をしていなかったわけじゃないんでしょう?知り合いの弁護士さんなどから仕事を回してもらってたらしいのよ。
一番多かったのは浦中誠一という弁護士さんの事務所なので早速事情を聞きに行ってみたところ…。
加倉井さんとはいつからお付き合いを?
(浦中誠一)彼が刑事になってすぐでしたね。
単独で逮捕してきた暴力団員を私が起訴して刑務所に送り込んだんです。
えっ!?それじゃ浦中さんはヤメ…。
あ…いえ元検事さん。
ヤメ検でも構いませんよ。
ええ東京地検の捜査検事でした。
加倉井君とはウマが合うというか一緒に仕事もしたし酒もよく飲みましたよ。
それで探偵になってからもお仕事のお世話を?ええ。
どうぞ。
本当は大手の調査会社に依頼するほうが安心なんですが彼は急な用事でも引き受けてくれましたからね。
浦中さんは加倉井さんと親しかった女性にお心当たりありませんか?女性ですか?まだ若くてきれいな人だそうですけど。
もしかしてあの子かな?ご存じなんですか?行きつけの店で偶然一緒になった事が…。
そうだ確か写真があったはず…。
あ!これです。
すみません。
この女何者ですか?浦中さんの話では名前は新井はるみ。
職業は社長秘書。
加倉井との関係は?男女の仲ではなさそうだと。
社長秘書と言いましたがどこの会社ですか?大沼ビルディングの…。
えっ!?あの超一流企業の!実は加倉井さんの事務所のパソコンに大沼ビルディングの社長大沼安雄氏に関するデータが大量に保存してあったんです。
という事は何か…?加倉井は大沼社長の身辺を調査する目的で社長秘書に接近したって事か?その辺の事情を本人から聞き出すために三崎さんと望月君が大沼ビルディングの本社に向かっています。
大手の不動産ディベロッパー大沼ビルディング
都内だけでも50以上のテナントビルを保有
資産は数百億円に上るといわれる社長の大沼安雄氏は芸能界や文化人とも付き合いの深い有名人である
(受付)ええ…承知しました。
お待たせいたしました。
新井はるみという社員は退職したそうです。
ええ!?辞めたんですか?
(望月春樹)一体どうして?えっ!?大沼社長が直々に?
(真弓)ええ解雇を言い渡したんですって。
(望月)人事部も理由はわからないそうです。
大沼社長との間に何かあったのかしら?その辺りは私たちが探りを入れますから主任は彼女の自宅へ行ってみてください。
住所はわかる?住所!はい!えーと大田区…。
新井はるみさんですね?ちょっとお話を伺いたいのですがよろしいですか?あなたとは午前中もお会いしましたよね?えっ?加倉井さんの事務所でエレベーターから飛び出して来たでしょう?すみません。
私たち彼が殺された事件を調べています。
あなたとはどういうご関係だったんですか?どういうって…。
ただのお友達です。
ただのお友達なのに事務所の鍵を預かっていたんですか…。
えっ!?あの時あなたは合鍵を使って事務所の中に入り引き出しの二重底から何かを持ち出したんでしょう?もしかしてそれは黒い表紙の手帳?中には大沼ビルディングの社長さんに関する事が書いてあるんじゃないの?知りません。
私そんな手帳の事なんか全然。
じゃああそこへはなんの用事で?あなたは加倉井さんと組んで大沼社長の身辺を調べていたんじゃないの?違います!
(はるみ)そんな事してません!じゃあ大沼社長はなぜあなたを解雇したの?それは…セクハラをして恥をかいたからじゃないんですか?セクハラを?社長室にお茶を持ってったらいきなり来客用のソファに押し倒されたんです。
私思いっきり蹴飛ばして言ってやりました。
会社中に言いふらしてやるって。
本当です。
あいつ…人前では立派な経営者の顔してるけど実際は変態のろくでなしなんですから!もういいですか?失礼します。
(チャイム)
(大沼安雄)結局ビジネスは誠意ですよ。
(大沼)相手を出し抜こうとしたり駆け引きをしてる間は本物じゃありません。
誠心誠意お客さんに尽くす…それがすべてです。
いいお話伺わせていただきました。
最後に奥様にお伺いしたいんですが大沼社長は夫としては100点満点中何点ぐらいですか?
(大沼礼子)そうですね…。
100点って言いたいとこですけど95点かしら。
5点引いた理由は?寝相が悪いんです。
それにいびきも。
長い間どうもありがとうございました。
すみません。
どうもありがとうございました。
(大沼)ああどうも。
(真弓)すいません!
(真弓)大沼さんちょっとお時間をいただけますか?なんだね君たちは?飛び込みの取材はお断りだよ。
我々はこういう者なんですが…。
中で話しましょう。
玄関に回ってください。
しかしすごい美人だなあの奥さん。
当然ですよ売れっ子のモデルさんだったんですから。
(真弓)えーっ!そうなんですか!
(望月)大沼さんは加倉井肇という人物をご存じですか?
(大沼)加倉井肇…?
(望月)この人なんですが?知らないなあ。
何者ですか?
(望月)群馬の無人駅で発生した射殺事件の被害者です。
ああ…その事件なら新聞で…。
しかし私とどんな関係があるのかな?社長さんの身辺を探っていたらしいんですよ。
私も事業家の端くれだ。
商売敵に知られたくない企業秘密はありますが…。
ケチな私立探偵に嗅ぎ回られるような後ろ暗い真似はしてませんよ。
「ケチな私立探偵」ってどうしてご存じなんですか?それは君新聞に出てたよ。
刑事あがりの一匹狼で事務所の経営は思わしくなかったと。
新井はるみという女性はご存じですよね?社長室付の秘書の1人です。
先週解雇しましたが…。
お差し支えなければ解雇の理由をお聞かせ願えないでしょうか?理由は簡単ですよ。
社内の風紀を乱したからです。
風紀を乱した?あの女男癖が悪いというか見境なく色目を使う。
つい誘いに乗って離婚騒ぎになった社員もいるそうですよ。
すみません遅くなりまして。
ああどうぞお構いなく。
もう失礼しますので。
まあいいじゃないか。
家内の淹れたコーヒーはちょっとしたもんでね。
そこらの喫茶店よりずっとうまいですよ。
そんな事はありませんけど。
(礼子)あらこの人…。
(望月)ご存じなんですか?あ…知り合いの人かと思ったけど違いました。
知り合いだと思ったけど違ったと言ったのね?
(望月)ええ。
でも怪しいもんですよ。
何か知ってるのに旦那に口止めされてるって感じでした。
まあそれはともかく大沼社長は新井はるみの事を男癖が悪いと言ったんだな?はい。
見境なく色目を使うと。
なのに当人はセクハラされたと主張している。
ええ社長室でいきなり押し倒されたと。
まるっきり逆じゃないですかお互い言ってる事が…。
これじゃ藪の中だな。
(電話)私が!
(電話)はい鉄道捜査隊。
はい。
承知いたしました。
本庁の部長がお呼びです。
至急来るようにと。
よし。
(本多)例の群馬の事件だが君の部下たちが連日動き回っているようだね?はい。
それが何か?熱心なのはいいが少しやり過ぎではないのかな?しかし群馬県警からも協力要請を受けておりますので。
協力は君あくまで協力だ。
本業をおろそかにしてまでやる筋合いのものではない。
お言葉ですが被害者は元警察官しかも私の後輩です。
全力を挙げて犯人逮捕に努めるのが筋だと思いますが。
彼が退職した理由を知っとるのかね?いえ。
本人が言いたがりませんので。
当然だ。
暴力団関係者と癒着していたんだからね。
信じられません。
何かの間違いでは?群馬で殺されたのも当時の腐れ縁が絡んでるんだろう。
巻き添えを食わないうちに手を引くんだね。
部長の言葉には裏があると…?うーん。
どうも作為的なにおいがするなあ。
あれ!?ママまだ早いんじゃないですか?今日はもういいの。
これで落ち着いてお話が出来るでしょ。
ああそういう事。
これは失礼しました。
いつも悪いね気を使わせて。
何言ってんですか!水臭い。
さっもっと飲んで。
ああありがとう。
はいどうも。
大沼ビルディングの社長は政界とも太いパイプで繋がっていると聞いた事がある。
つまり政治家を通じて上層部に圧力をかけたという事ですか。
うーん三崎君たちに直撃された事がよほど気に障ったんだろうな大沼社長は…。
でもここまで介入してくるのは大沼社長自身が事件にかかわっているからじゃありませんか?倉田さん!まさか事件から手を引くんじゃないでしょうね?いやいやいや…ここで手を引いたらね死んだ加倉井が浮かばれませんよ。
こうなったらね逆に徹底的にやってやりますよ。
そうこなくっちゃ!万が一警察を追い出されたらここへ転がり込んでいらっしゃい。
やもめ男の1人ぐらい私が養ってあげますよ!いやーママのヒモになるのも悪くないけどね。
大丈夫ですよ!ちゃんと事件を解決すればクビになったりしませんから。
それじゃあ私のおごりでもう1本つけますからね!
(加倉井由美子)すみません今日はもう看板なんですよ。
由美子さん私です。
えっ!?あっ倉田さん…。
お久しぶりで…。
こちらこそご無沙汰して。
あっ花村君。
あのねこちら加倉井君の奥さんだった由美子さん。
うちの課で主任をしてる花村君です。
初めまして花村乃里子です。
由美子です。
よろしくお願いします。
あ…どうぞ。
ああはい…。
何かお飲みになります?じゃあビールもらおうかな。
君は?じゃあ私も同じで。
ビールを。
加倉井君の事は…知ってますよね?ええテレビのニュースで。
知らせてくれる人もいませんから。
(由美子)あの…。
やっぱり暴力団の人が関係してるんですか?いやそれはまだわからないんだけどね…。
由美子さん…あの頃加倉井は本当に連中と癒着していたんだろうか?私は違うと思います。
あの人組関係に知り合いは何人かいましたけど警察を裏切るような事までは…。
ご本人はなんとおっしゃってました?その事についてはあんまり…。
ただ時々人が変わったように荒れて…。
(グラスが割れる音)
(加倉井)くっそーあいつら俺をバカにしやがって!
(由美子)あなた!やめてお願いあなたやめて!うるさーい!俺はあいつらにハメられたんだぞ!顔に泥を塗られて事件から外されたんだ。
ちくしょう!だからその事はもう忘れて新しい仕事を探すって約束してくれたじゃない!うるさい!お前に何がわかる!
(由美子)ああっ!
(由美子の声)そんな事が度重なり私は耐えられなくなって家を出て結局離婚する事に…。
「俺はハメられた」「事件から外された」そう言ってたんだね?ええ。
荒れる時はいつもそればっかり。
その事件というのは?
(由美子)3年前にビルの電気室でモデルさんが殺された事件があったの覚えてらっしゃいますか?ああ…加倉井さんはあの事件に…。
(由美子)ええ初動捜査の段階から参加してました。
その事件の現場は副都心にあるビルの電気室だった
被害者はそのビルに事務所があるモデルクラブ所属のファッションモデル魚住リカ25歳
状況から見て犯人は性的暴行を加えようとしたが抵抗されて果たせず絞め殺してしまったものと判断された
ただちに捜査本部が設置され綿密な捜査が行われたがこれといった決め手がないまま捜査は難航
丸3年以上を経た今も未解決のままなのである
(由美子)あの人捜査本部の中でずっと浮いていたようなんです。
浮いていた?どうして?1人だけ違う容疑者を追っていたらしいんです。
それが捜査本部の方針と合わなかったんでしょうね。
失礼します。
課長…加倉井さんの狙いは間違ってなかったんじゃないでしょうか。
だからこそ何者かに疎んじられ濡れ衣を着せられて警察から追い出されたんだろう。
もしかして今回の事件ともとの…もとの根っこは同じかもしれんな。
私3年前の事件を洗い直してみます。
頼むよ花村君。
一緒に加倉井の敵を討ってやろう。
3年前のモデル殺害事件では浦中さんは捜査の指揮を執る立場にあったんですね?はい。
あれが捜査検事として最後の仕事になりました。
もしかして浦中さんも本部の方針に疑問を持っていたのでは?そのとおりです。
加倉井君と同様に別の容疑者を疑っていました。
大沼安雄…ではありませんか?実は…事件発生時刻大沼氏は現場付近にいた可能性があるのです。
それは仕事ですか?
(浦中)そうじゃありません。
モデル事務所から出て来る魚住リカを待っていたのだと思います。
被害者のモデルさんをですか?
(浦中)大沼安雄という人は知る人ぞ知るプレイボーイなんですよ。
(浦中)常に複数の女性と関係を持ちながら別の女性にアプローチする。
事件当夜もその目的で…。
(浦中)被害者を電気室に連れ込み強引に関係を迫っているうちに殺人に至ってしまったのではないかと…。
大沼社長に事情聴取はしたんですか?
(浦中)あの男まったく悪びれた様子も見せずに堂々と無実を主張しましてね。
付け入る隙がありませんでした。
おまけにアリバイまで用意してあったんですよ。
どんなアリバイですか?親しくしていた女性の1人が犯行時刻自分のマンションでベッドを共にしていたと証言したんです。
その女性どういう人なんですか?被害者と同じモデルです。
事件の半年後に大沼氏と結婚して引退しましたけどね。
大沼社長の妻大沼礼子はモデルを引退したあと夫が管理するビルの1つにブティックを開業したという
私は彼女に会いにその店を訪れたのだが…
大沼夫人は桐生に旅行中?はい。
オリジナル商品の打ち合わせのために2〜3日は戻らないと…。
課長!加倉井さんが撃たれた本宿駅って桐生市ですよ!これ偶然ですかね?まあそれはなんとも言えんな。
ちょっと待ってください。
えーっと確かこの辺に…。
あっ!見てください!やっぱりそうだ!何がやっぱりなの?
(望月)大沼ビルディングは桐生市にもビルを保有しています。
つまり大沼社長はあの辺に土地勘があるんですよ。
課長。
私もう一度桐生へ行って来ます。
いいだろう。
三崎君君も一緒に行ってくれ。
再び訪れる桐生市
昔から「西の西陣東の桐生」と言われ絹織物の産地として知られているが古い建物や遺跡と近代的な町並みが奇妙なバランスをとっている不思議な町である
こちらでお召しの織物とこちらで帯の織物を織ってます。
ご覧になってください。
この織物は非常に古いもので伝統的な柄のお召しです。
(礼子)うわーこの色合い素敵。
ワンピースにしたら若い人に受けるんじゃないかしら。
しかし同じものを再現するのはちょっと難しいかな…。
あ…そこをなんとかお願いしたいの。
ねえ社長さんお願い!私の夢かなえて!かないませんな奥さんには。
わあうれしい!じゃあ次は…。
次はねこれ!それじゃよろしくお願いいたします。
ありがとうございます。
お気をつけて。
あら!?こんにちは!
(礼子)こんにちは。
先日はコーヒーごちそうさまでした。
どういたしまして。
あのこちらの方は?鉄道捜査隊の花村です。
大沼です。
奥さんにお訊きしたい事があってお待ちしてました。
悪いけどこれからもう1軒訪ねる約束があるの。
それが終わったらいくらでもご協力出来るけど。
わかりました。
ではご用件が済みましたらご連絡いただければ。
それよりご一緒にいかがですか?
(礼子)そのほうが私も時間気にしなくて済むし。
花村さん!
(真理絵)花村さんじゃない!ママ!どうしたんですか?こんなところで。
見ればわかるでしょお買い物!私ね昔から桐生の織物が大好きで!でもちょっと今日買いすぎちゃったかな。
重くてね…。
(礼子)お知り合いの方ですか?ええ。
(礼子)あっよろしかったらご一緒にいかがです?のちほどどちらへでもお送りいたしますから。
いいんですか!あらまあじゃあお言葉に甘えちゃおうかしら。
すみませんちょっとトランク開けていただけます?
(真理絵)どうもすみませんねえ。
あっやりますよ。
(礼子)はいどうぞ。
(真理絵)本当助かります。
(真理絵)もう本当に…。
本当よかった!助かります。
ありがとうございます。
いいえ。
(礼子)こんにちは。
(真理絵)こんにちは。
(真理絵)わあいっぱい!そうなのよいっぱいあってね目移りしちゃうのよ。
あっねえねえこれなんかどうかしら?いいんじゃない!本当?あっ私も買っちゃおう!
(真理絵)すみませんこれ別々に包んでください。
ねえねえどっちがいいと思う?そうですねえ…。
えーと…。
ああ!私…私はねこっちがいいと思いますよ。
やっぱり!私たち気が合うみたい。
小物を選ぶのも手伝ってくださいね!もちろん喜んで!そうなのこれこんなにきれいな色…。
なんか友達同士のショッピング旅行みたい。
私は疑問を持ち始めていた
この無邪気な女性に殺人事件のアリバイを偽証出来るだろうか?
(携帯電話)ああそうだ…誰だ君は?何?新井はるみ?
(はるみ)加倉井さんを殺したのはあなたなんでしょ?何をバカな!私は無関係だ。
とぼけないで。
あなたが殺し屋を雇ったのはわかってるの。
いい加減にしろ!私は忙しいんだもう切るぞ!どうぞ。
その代わり私もこの手帳好きなように使わせてもらうから。
手帳…?加倉井さんが残してくれた手帳。
今まで調べてきた事が全部書いてある。
これが警察の手に渡ったら…。
(はるみ)「今度こそあんた無事で済まないわよ」それともマスコミに売ろうかな。
君は一体私に何をして欲しいんだ?やっとまともに話す気になりました?社長さん私と取引しましょうよ。
取引…?
(真理絵)よいしょ…。
(礼子)おかげさまでいいお買い物が出来ました。
ありがとうございました。
どういたしまして!楽しかったわ〜!ママ〜こんなにたくさんの荷物大丈夫ですか?平気平気いつもの事だから。
フフフ。
花村さんちょっと。
あの奥さんご主人とうまくいってないかも。
え…?どうしてそんな事が?さっき素敵なネクタイがあったから「ご主人のお土産にいかが?」って訊いてみたのね。
そしたら「あの人とは趣味が違うから」って見向きもしなかったのよ。
そう…。
(礼子)それで私に訊きたい事って何かしら?魚住リカというモデルさんが殺された事件であなたはご主人のアリバイ証言をされたそうですね。
ええそうよ。
その証言では事件が起きた時刻午後9時前後だったそうですがご主人はあなたのマンションにいた事になっています。
本当にそうだったんですか?
(真弓)奥さん話してください!いくらでも協力するって約束なさったでしょ?話したいけど私もよく覚えてないの。
覚えてない…?あの日は海外から戻ってきてひどい時差ぼけで夕方からベッドに入って眠ってしまったの。
夜中に目を覚ましたら隣に彼が寝ていた。
それじゃあ何時に来たかわからないんじゃ…?彼は8時半に来たって。
私がぐっすり眠っていたからお酒飲みながらビデオ観ていたって言ってたわ。
あなたはその言葉を信じたんですか?信じちゃいけない?あなたたちだって愛している人の言葉信じるでしょ?アリバイを証言した時も今と同じように説明したんですか?
(礼子)ううん。
ちょっとだけ違う。
時差ぼけで眠っていたんじゃなくてセックスしてたって。
アリバイ証言を聴取した刑事この人ですね?ええ。
やっぱり知っていたんだ。
加倉井さんを。
もしかして最近も彼と会ったんじゃないんですか?ええ。
それはいつ頃?ひと月ぐらい前だったかなぁ?もう一度あの夜の事を?
(加倉井)ああ。
最初から最後まで詳しく話してもらいたいんだ。
今さらどうして?あの事件は俺にとってまだ終わっていない。
だからこの1年間コツコツと事件の再調査をしたんだ。
この手帳にはそのすべてがメモしてあるんだが最後のページだけが埋まっていない。
最後のページ?
(加倉井)あんたの証言だよ。
3年前のは時間的な矛盾があるんでね。
大沼安雄が真犯人だという確証をつかみたいのさ。
つかんでどうするの?主人を逮捕するとでも?いやそんな事はしない。
だったらなぜ?大沼は政治家を利用して俺を警察から追い出した。
俺はこの手帳を使って埋め合わせしてもらうんだよ。
さあ奥さんこっちの質問に答えるんだ。
それでアリバイが嘘だって事を話してしまったんですか?だってこの人何もかも見抜いてるみたいで3年前と同じ事を言っても許してくれないだろうと…。
その事ご主人には話しました?ええその日の夜帰宅した時に。
ご主人怒ったでしょう?それが最後まで黙って聞いてお前は心配しなくていい。
何かあったら私が処理するって。
その夜私たちは礼子さんが定宿にしているホテルに泊まる事にした
(真弓)モデル絞殺事件の真犯人は大沼社長…。
加倉井さんはそれを立証しようとしていたんですね。
その過程で新井はるみさんと知り合い2人は手を組む事に。
でも大沼社長に気づかれて彼女は解雇されたんだわ。
加倉井さん大沼に埋め合わせをさせるって一体何をするつもりだったんでしょうね?
(ため息)多分…お金ね。
ゆすりですか?事務所の経営はうまくいかないし奥さんとは離婚。
おそらく借金もあったでしょう。
あの手帳と引き換えに口止め料を要求する計画だったと思うわ。
大沼もそれを察知して加倉井さんの口封じを…?プロの殺し屋に始末させたんですよきっと!課長。
礼子さんのアリバイ証言ですが偽証の可能性が出てきました。
それじゃあ大沼にアリバイはなかったのか?あれ…?あの人大沼社長じゃない?
(真弓)あ…本当だ!課長あとでかけ直します。
奥さんご主人が来るなんて言ってませんでしたよね?それになんだか人目を避けてるみたい。
何かあるわね。
こんばんは。
(2人)うわっ!びっくりした…!なんなのよ突然!大沼社長をつけてきたの?さすが主任いい勘してますね。
(チャイム)どうしたのあなたこんなに急に来るなんて…!仕事だ。
こっちで明日人に会う。
(礼子)誰?私の知ってる人?誰か来てたのか?ええちょっとお客さんが。
警察じゃないだろうな?違うわ!絹糸問屋の人。
私警察に疑われるような事していないから。
なんだその言い草は。
俺に当てつけてんのか?別にそういうつもりじゃ…あっ…!
(大沼)お前には好きなだけ金を使わせてやってる!せめて形だけでも女房らしくしろ!
(ドアの開閉音)
(伊東)お話はよくわかりましたが大沼氏のような有名人がそんな犯罪を犯すとは…。
社会的に地位のある人が悪事に走る例は限りなくあります。
お金や権力を利用するだけむしろ悪質です。
我々としては加倉井さん殺害はやはり暴力団絡みだと見ているんですよ。
根拠があるんですか?凶器の拳銃に前歴が。
5年前の抗争事件で使われていました。
まあそれはともかくこれを見てください。
(伊東)事件当日現場の上の国道を偶然写したものだそうです。
上の国道を…?ホシは車を使った可能性が高いな。
(伊東)それにこれを見てください。
(原田)撮影した時刻と犯行推定時刻がほぼ一致していますから犯人である可能性は高いですね。
これは…。
あの子ですよ。
《あの時の鉄子さんだ》
(伊東)江崎みどりさんといってこの辺りじゃ有名な鉄道マニアなんです。
東京から来た刑事さんに事情を聞かせてあげて。
事情と言われても駅の周りを撮った写真の中に…。
偶然シャッターを切っただけですので…。
この男性の顔は見ました?私男には興味ないんです。
(原田)この車ナンバーはわかりませんが車体にかなりの特徴がありますからそっちのほうから持ち主を割り出してみます。
よろしくお願いします。
あのタクシー追ってください。
おはようございます社長。
新井はるみ…!妙な場所を選んだもんだな。
ええ。
ここなら安全だから。
それじゃ始めましょうか。
5000万も支払ったんだ。
二度とこんな真似するな。
社長さんこそ私に危害を加えないでくださいね。
(携帯電話)あ立花君。
こっちは終わったけどそっちは?「驚いてください」大沼が接触した相手は新井はるみでした。
え…?はるみさんに?それで今はどこ?大間々駅です。
彼女わ鉄に乗るみたいです。
あなたはそのまま尾行を続けて。
私も次の列車であとを追うわ。
了解。
また連絡します。
出発進行。
(警笛)あここいいですか?どうも。
一人旅ですか?一人旅ですよね?僕もそうなんですよ。
いいですよねローカル線の一人旅。
うわきれい〜!わたらせケイタニ鉄道って最高!ああ僕鉄道マニアなんですけどわたらせケイタニ鉄道って初めてなんですよ。
「ケイコク」です。
は?わたらせケイタニ鉄道じゃなくてケイコク鉄道。
え…あそうなんですか?「ケイタニ」じゃなくて「ケイコク」…?知らなかったなぁ〜。
あご親切にどうもありがとうございます。
いえ。
殺人事件ですってね。
え?ホームにあった花束。
お知り合いですか?いえそういうわけでは…。
どうかしたんですか?あの男が怖いんですか?なぜ?あいつが何者か知ってるんですか?よし俺があいつの正体確かめてくる。
やめて!ここにいて。
ここでじっとしといてください。
「お待たせいたしました」「まもなく発車いたします」今だ!「ドアが閉まります。
ご注意ください」
(警笛)やった〜!これでひと安心だね!あ俺まだ自己紹介してなかったよね。
名前は立花広太郎職業は公務員よろしく。
どうも新井はるみです。
はるみさんか。
さっきのあいつ本当に何者か知らないの?…ええ。
知らない奴の事を怖がってたわけ?だってあの人今にも私を殺すような目つきで見てたから…。
君は誰かに殺されるような事してるの?
(携帯電話)あちょっとごめん。
(携帯電話)あ〜メールだ。
「至急連絡しろ」?うるさい上司でさぁズル休みするとすぐこれなんだよね。
風邪引いてる事にし〜ちゃおっと。
「連絡遅れてすいません」「現在神戸駅で新井はるみと食事中」「次の列車で合流します」食事中って…どうなってんの?そのバッグ重そうだね。
持ってあげようか?
(はるみ)ううんいいの。
何が入ってるの?私の運命を変えてくれるもの。
運命を…?どういう事?私ねずっと運が悪いの。
幸運に巡り合ってもすぐに悪いほうに変わってしまう。
そういう巡り合わせなの。
思い込みなんじゃないのそれは。
ううんホント!だから私は賭けたのよ。
賭けたって何を?今日無事に目的地にたどり着いたら今度こそ本当の幸せをつかめる。
でももし着かなかったらその時は…。
その時は?その時は立花さんが私の代わりにこのカバンを届けてくれる?え…俺が?そう。
賭けをしてる私が立花さんに出会ったのも運命なのよきっと。
う〜んしかし届けるってどこへ?それはその時になったら教える。
そろそろ次の列車が来る時間ね。
さっきはふざけた真似をしてくれたな。
行け!逃げろはるみさん逃げるんだ!立花さん…!
(銃声)ああっ…!ああ…!
(警笛)立花君気がついた?立花さん私がわかる?そりゃ毎日飽きるほど見てるからね。
ここどこですか?大間々の救急病院。
神戸駅の近くで倒れていたあなたを見つけて運び込んだのよ。
俺撃たれたんですよね?急所は外れていたけど最低1週間は寝てなくちゃダメですって。
はるみさんは?はるみさんは無事ですか?まだ行方がわからないの。
県警に頼んで捜索してもらってるんだけど。
一体何があったの?それが…。
(ノック)花村さんちょっと。
はい。
わかりました。
はるみさんらしい人が見つかったんですって。
(パトカーのサイレン)
(伊東)ご苦労さん。
(立花の声)だから俺が悪いんです!はるみさんは俺が殺したも同じなんです!
(真弓)立花さん!そんなに自分を責めちゃダメ!とにかく状況を説明してちょうだい。
あなたを撃った奴の顔を見たんですね?ええ見ましたよ。
顔はハッキリ覚えてます。
(銃声)そろそろ鑑識報告が上がってくる頃ですのでまたのちほど。
よろしくお願いします。
はるみさんは大沼社長から手帳と引き換えに受け取ったボストンバッグをどこかへ運ぶ途中だったのね?ええ。
もし目的地に着けなかったら俺が代わりに運んでくれと。
あのバッグどうなりました?現場にはなかったわ。
犯人が持ち去ったみたい。
やっぱりあいつの背後にいるのは大沼ですよ!取引に応じたと見せかけてはるみさんを殺し金を取り返したんです!そうかもしれないけど今のところ確証がないわ。
加倉井さんの時と同じ拳銃が…。
線条痕が一致したので間違いありません。
立花刑事と新井はるみを撃ったのも同一犯人と断定していいでしょう。
それでもまだ暴力団絡みだとお考えですか?いや…花村さんがおっしゃったように大沼ビルディングの社長に的を絞りますよ。
実を言いますとね新井はるみは昨日の午後この携帯で大沼社長と通話をしてるんです。
この携帯ちょっといいですか?構いませんよ。
でも何を?はるみさんの目的地。
アドレスを見れば何かわかるかもしれません。
携帯のアドレスに登録されている人の中に片岡勝利という人物がいた
住所は栃木県日光市足尾町上間藤
わたらせ渓谷鉄道の終点付近である
翌日私たちは足尾町に向かった
だけど主任どうしてそこが目的地だと?アドレスの中でわたらせ渓谷鉄道の沿線に住んでるのはその人だけだったの。
はるみさんはそこへ行くつもりだったのに違いないわ。
列車が進むにつれ沿線の景色が変わってきた
この辺りにはその昔日本一の銅山とうたわれた足尾銅山があったのである
(片岡勝利)そうですか…。
あの子はここへ来る途中で命を落としたと…。
連絡はなかったんですか?
(片岡)ええ…。
まったくありませんでした。
以前はよくここへ来てボランティアを手伝ってくれたんですよ。
最近はさっぱり。
あの…ボランティアといいますと?これです。
これなんです。
植木ですか?いや植樹です。
これから現地へ行くところなんですがなんでしたらご一緒に。
(片岡)お〜い!頼むよ〜!お〜い!頼むよ〜!
(片岡)お〜い!片岡さ〜ん!
(片岡)頑張ってね〜!はるみさんもああやって働いたんですね。
ええ。
山に緑を取り戻すために人一倍頑張ってたのに…。
どうしてそれほどまでに?
(片岡)あの子は元々この近くの生まれなんです。
幼い頃両親に死に別れて東京の親戚に育てられたんですがいつかはこっちへ戻ってきて暮らしたいと言ってました。
(真弓)はるみさん生まれ故郷に帰るつもりだったんですね。
多分それまでの暮らしに飽きてたのね。
まとまったお金を手に入れて新しい人生を。
(真弓)その夢が実現する寸前に命を失ってしまった。
(携帯電話)伊東警部からだわ。
もしもし。
え!?本当ですか?
(伊東)例の鉄子が写した写真の車を洗ってるうちに立花さんが協力してくれたこの似顔絵にそっくりな男が浮上してきましてね。
(原田)これが免許証写真を拡大したものです。
どういう人ですか?名前は広田功年齢30歳。
大学生の頃から海外と日本を行ったり来たりしていたようで定職には就いていません。
居所はつかめたんですか?
(原田)ええ。
県内のオートキャンプ場に長期滞在しているという情報がありまして。
(アラーム音)
(伊東)下がれ!
(カーステレオの大音響)
(花火と爆竹の音)
(原田)実にふざけた奴です。
異常と言う他ありません。
じゃあ広田はどうなったんですか?あそこに!
(伊東)ただし収穫もありました。
車の中に脱ぎ捨ててあったジーンズのポケットにこれが。
あっこれ…レア物のブランド品ですね。
(伊東)ナンバーを代理店に照会したところ銀座でクラブを経営してる女性が購入したものとわかりました。
(真弓)銀座のクラブ…?その女性に問い合わせたところ去年のクリスマスにお得意さんにプレゼントしたと…。
大沼社長ですか…?この時計ビジネスマンには派手すぎますからね広田に下げ渡したんじゃないですか。
いっその事大沼社長を任意で取り調べたら…?そうしたいのは山々だけど相手が相手だけに慎重を期さなければ。
とりあえず実行犯広田の身柄を押さえるのが先決ですよ。
群馬県警は広田功を全国指名手配し広範囲な捜索を行った
見かけたら連絡ください。
しかし1週間たっても成果は上がらず広田の行方はつかめなかった
(望月)広田って男とっくに消されてるって噂もありますよ。
(真弓)それはあり得る。
大沼の事だから別の殺し屋を雇って口をふさいだかもね。
おいちょっとみんなこれを見てくれ。
ほら。
(真弓)なんなのこれ!?すごいスクープじゃない。
こっちなんかもっとすごいぞ。
大沼社長の顔まで載ってる。
うわ…。
この情報一体どこから?群馬県警が公表するはずないし…。
まさかお前らがリークしたんじゃないだろうな?やめてください。
俺たちはそんな事はしません。
冗談も程々にしてください。
しかしまあこうなってしまった以上群馬県警が動かないわけにはいかないだろうなぁ。
課長の推察どおり群馬県警は急遽大沼社長を任意で取り調べる事に決めた
しかし…
(チャイム)
大沼社長を連行する事は出来なかった
では大沼社長の死因は…?自殺と断定しました。
誇り高い人だったようですから警察の尋問を受けて恥をさらすよりも秘密を抱いたままあの世へ行く事を選んだんでしょう。
結局射殺事件の主犯だという確証はつかめなかったわけですね。
(伊東)残念ながら…。
あとは実行犯の広田が捕まって大沼に殺人を教唆されたと自供するのを待つだけです。
その場合でも大沼は本人死亡につき書類送検。
(望月)なんだかむなしいですね。
(真弓)はるみさんから受け取った加倉井さんの手帳は見つかったんですか?
(伊東)庭に燃えかすが残っていました。
首をつる直前に焼却したのだと思われます。
(真弓)それじゃあ3年前の事件も立証出来ないんですね。
加倉井さんますます浮かばれないわ。
お前さんの疑問…聞かせてもらおうか。
一つ…大沼はなぜ加倉井さんとはるみさんを殺させたか。
モデル殺しの事実をつかまれて金をゆすられたから…。
まあ群馬県警はそう見ている。
でも危険な罪を犯すよりお金を払って口をつぐませたほうがリスクは少ないはずです。
確かにそうだな。
大沼は金に不自由していたわけじゃないからな。
一つ…実行犯の広田はなぜ大沼にもらった時計を車に残したか。
単に忘れたとは思えんな。
あれほど用意周到な男が…。
わざと見つかるように置いていったわけか…?一つ…週刊誌にリークしたのは誰?ハハ…もういい。
要するに君は大沼は犯人じゃないと言いたいんだな?ええ。
広田を利用していかにも大沼が主犯であるかのように工作した人がいる…という考えもあるのでは?実は俺もそう思っていたんだ。
花村君…。
大沼の自殺は偽装と考えていいようだな。
(鐘の音)
(礼子)花村さん…!?ご主人のためにお祈りを…?ええ…。
せめて天国に召されてほしいから。
ご主人が亡くなった日奥さんは桐生にいらっしゃったんですってね?ええ。
やっぱりこの車で?ううん。
今度は鉄道で。
(礼子の声)朝9時頃家を出て着いたのはお昼頃。
チャーターしたタクシーで仕入れ先を回って5時過ぎにはホテルにチェックインしたわ。
ご主人の死亡推定時刻午後10時頃は何をしていました?その時間はたいてい私はお風呂に…。
いやだ…どうしてそんな事訊くの?まるで私を疑ってるみたいじゃない。
それが私の仕事ですから。
だけど花村さんあの事件はもう終わったんじゃ…。
終わってません。
まだ実行犯の逮捕が残っています。
(扉の開く音)
(足音)誰だ?ほらお待ちかねのパスポートだ。
(広田)やっと出来たのか。
結構うまく出来てるじゃん。
(浦中)明日新潟港を出る船に乗ってもらう。
行き先はタイだ。
いいねぇ。
タイは好きだなぁ。
現地人のガールフレンドもいるし。
(広田)この金で贅沢三昧やっちゃおうかな〜。
あんまり派手に使うな。
あっちの警察だってバカじゃない。
インターポールに照会されたらおしまいだぞ。
わかったよ。
当分は目立たないようにする。
いい子だ。
それじゃ旅立ちを祝って乾杯するか。
君には世話になった。
元気でな。
浦中さんも。
乾杯。
乾杯。
浦中さん!花村さん…どうして!?ずっとあなたをマークしてたのよ。
いずれはその男に行き着くと思って。
あなたが広田功ね。
お利口さんに見えてもしょせんは使い捨てにされるタイプだわ。
どういう意味だよ?それ。
浦中さんに訊いてみれば?そ…そんな事よりもどうして私がこの男と会う事が…?大沼礼子さんが教えてくれたのよ。
なんだと…!?彼女急いで車を走らせたわ。
昨日私と別れたあとで…。
彼女の行き先は都心のホテル。
(チャイム)そこで待っていたのが浦中さんあなただった。
嘘だ!あなたは私を陥れようとしてありもしない事を…!いや…!花村君の言ってる事に間違いはない。
この人は君と不倫の関係にあった事を認めたよ。
そうだね?加倉井はお前さんにそそのかされて3年前のモデル殺害事件の再調査を始めたんだ。
さあ私にはなんの事かさっぱり…。
加倉井は金に困っていた。
だからこそ社長秘書をしていた新井はるみを誘って大沼社長の身辺を探ったんだ。
その調査が一応の成果を上げたのを見届けてお前は加倉井に仕事を依頼した。
金の入ったアタッシェケースを群馬の無人駅へ運ばせたんだ。
(浦中)離婚の示談金なんだが金を受け取るところを人に見られたくないらしいんだ相手の男は。
それで無人駅を指定してきたんですね。
うん…。
こんな面倒な仕事を頼めるのは君しかいないのでね。
よろしく頼むよ。
承知しました。
それが罠とも知らずに加倉井は本宿駅へ赴き無残に射殺された。
アタッシェケースの金はそのままお前のものになったんだな?ああそうだよ。
あいつは自分が殺されるための報酬を運んだのさ。
警察がその事件の捜査に着手すると同時にあなたも次の計画に着手したのよね?その第一段階として私に新井はるみという女性の存在を教えてくれた。
はるみさんを調査してみると有名な大沼ビルディングの社長が浮かんできた。
そしてその社長が3年前のモデル殺害事件に関与していた疑いも…。
そこで再びあなたに確かめたら…。
大沼安雄という人は知る人ぞ知るプレイボーイなんですよ。
常に複数の女性と関係を持ちながら別の女性にアプローチする。
あなたは必要以上に大沼社長の悪さを強調したわね。
しかし事実なんだ!大沼は3年前のモデル殺害事件の犯人に間違いないんだ!私たちはその事実を立証しようとしたわ。
でもその間にはるみさんは群馬の山中で殺されてしまった。
犯人はあなた。
その後自分の車を捨て姿をくらました。
でも車内から高価な時計が見つかり…。
それが大沼社長へプレゼントされたものだと判明してがぜん大沼社長への疑惑が強まったわ。
あの時計を家から持ち出したのは礼子さんあなたね?あなたたちの本当の目的は大沼社長の過去の罪を暴いた上で自殺に見せかけて殺す事だった。
週刊誌に大沼社長の疑惑をリークしたのも浦中さんあなたなんでしょう?ご主人が亡くなった夜あなたはホテルを抜け出した。
そしてこの人が運転する車で東京へ戻り帰宅するご主人を待ち受けた。
なんだ桐生に行ったんじゃないのか?行ったけど戻ってきたの。
なんだと…!?どういう事だ?話すから…そこに座って。
なんだお前!
(大沼)うああ…!その後あなたはまた桐生へ…。
ずっとホテルにいたふりをしていたのよね?くだらない話はもういい!俺は逃げる。
こいつらをバラして外国へ逃げるんだ。
(広田)浦中さんあんたも一緒に行こう。
あなた随分浦中さんを信用してるのね。
ああこの人は恩人だ。
昔ヤクを売って捕まった時に見逃してもらった恩義がある。
彼はその恩義に付け込んであなたをずっと利用してきた。
自分の手は一切汚さずにあなたに凶悪な犯罪を実行させておいて最後は裏切るつもりなのよ。
嘘だ!そんなはずはない。
それじゃあワインを飲んでもらったら?ワイン…?ええ。
あなたも乾杯するはずだったこのワイン…。
浦中さんさあどうぞ。
てめえ…汚ねえ!
(銃声)
(パトカーのサイレン)もう逃げられん!加倉井の恨みだ。
受け取れ!
(広田)うああ…!
(伊東)確保!おとなしくしろ。
よし連れてけ。
ご苦労さまです。
(伊東)よし行くぞ。
(真弓)それにしてもどうしてこんな事を…?大沼社長を殺せば莫大な財産が2人のものになるから?
(浦中)それもある。
だがもっと強い動機が…。
大沼には大きな恨みがあったんだ。
(真弓)恨みが…?私は自分の意思で検事を辞めたんじゃない。
加倉井君と同じように大沼の圧力で検察庁を追われたんだ!じゃあなぜ自分と同じ境遇だった加倉井さんを殺したの?仕方がなかったんだ…!彼は私と礼子が不倫してる事を知っていた。
それじゃはるみさんも…?知っていたはずだ。
だから2人を生かしておくわけには…。
(浦中)いずれは私たちが共謀して大沼を殺した事に気づいただろうからな。
あなたはこんな冷酷な男と知っていながら不倫したんですか?私には優しかったわ。
大沼なんかよりもずっと…。
あいつは一度だって本心から私を愛した事なんかなかった。
じゃなぜ大沼はあなたと結婚を…?偽のアリバイ証言をさせたから?そうよ。
結婚して手元に置いておけば安全だと思ったのね。
私は…人形なんかじゃないのに。
(礼子の嗚咽)あなたたち…。
もっと他に幸せになる方法があったはずよ。
どうしてそれを考えなかったの?見て見てー!ほら群馬県警からね感謝状と金一封!で金一封の一部はお花にしたんですがね。
残りはですねお饅頭がいいかどら焼きがいいかねこれから考えようと思うんですよ。
課長そんな事より先に言う事あるでしょう?おっなんだよ?課長。
立花さんにねぎらいの言葉。
やっと全快したんだから。
ああそうか〜。
立花いたのか?気がつかなかった。
ごめんごめん。
ハハ…。
良くなった?ああ良くなりました。
ああそうか良かったな〜。
良かった!あっ痛っ…!花村なんかちょっと言ってくれ。
それじゃ立花君のリハビリを兼ねてみんなでパトロール行きましょうか。
いえ無理ですよ。
こんなですから。
無理ですよ絶対パトロールなんか。
さあ行くよ。
痛い!じゃあね僕が…。
触るな!痛い痛い…!
(真弓)お大事に〜!2人で行こう。
痛いって…!いってきまーす!2015/03/08(日) 15:25〜17:25
ABCテレビ1
西村京太郎・鉄道捜査官スペシャル[再][字]
死を呼ぶ片道切符!わたらせ渓谷鉄道、不死身の男を殺した姿なき乗客…熊が見た!?無人駅殺人トリック
詳細情報
◇番組内容
花村乃里子は、ひょんなことから、かつて倉田課長の部下だった元刑事の加倉井と知り合う!!ところが、その加倉井が、わたらせ渓谷鉄道の無人駅で射殺されて!!大好評!鉄道捜査官シリーズ第10弾!渡良瀬川流域に広がる自然をバックに息をもつかせぬサスペンス!
◇出演者
沢口靖子、地井武男、金子昇、今村恵子、長谷川朝晴、山村紅葉、秋本奈緒美、前田亜季、林泰文、三浦浩一
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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