降りしきる雪。
かやぶきの屋根が白く埋もれていく。
豪雪地帯として知られる…京都・大原からやって来たベニシアさん。
この地に憧れていた。
(ベニシア)すごいきれい。
この辺初めてですけどねでも本の中にこの場所の事…会津の事を読んだ事あるのね。
明治時代イギリスの女の人イザベル・バードという人がこの辺歩いてたの。
いつか同じ場所に行きたいなと思って今日来ました。
だから楽しみ。
自分と同じイギリス人の旅行作家がおよそ130年前に記した紀行文。
そこには懐かしい日本の原風景が描かれていた。
かつて会津と日光を結ぶ街道の宿場として栄えた大内宿。
50ものかやぶき民家が連なり当時の面影を今に伝えている。
古い家が残ってる。
へえ〜。
そのまま残ってるのかな。
こんな重たい雪を載せたら壊れやすいと思うからこれ初めて。
もうすごいがっちり。
これも面白いね。
この…雪が来ないように作ってるのね。
何で作ってるの。
雪国の暮らしに興味津々のベニシアさん。
あっこれいいアイデア。
すごい全然滑らない。
マットみたい。
ああ〜これまねしようかな。
いいですね。
こんにちは。
こんにちは。
何かあのこれが珍しいと思ったんだけど。
これはよしずっていって冬囲いにここら辺で編むんです。
そして雪吹雪とかからうちを守るために。
よしを刈ってきてそして冬になる前にこうやって雪降る前に編むんです。
すごく見た感じもきれいよね。
そうだね。
いやこれもすごい。
つらら?うんつららな。
あれもきれいやね。
子どもたちなんて取って剣みたくして遊んでる。
茶色くはなってっぺ?あれ。
あれは囲炉裏で火をたいたりいぶした煙がかやぶき屋根から通ってきて黄色くなるつららに。
かやぶき屋根は煙を通すと長もちすっから。
虫よけになるんだよな。
そうですね。
何か昔の知恵はいろいろすごい面白い知恵あるのね。
自然に寄り添って暮らす中で生まれてきた知恵。
雪に圧倒されながらも大内宿の町並みは守られてきた。
この土地ならではの生活が見てみたいとベニシアさん。
こっちかな。
大きな蔵が目印。
ここは会津の言葉でもてなしてくれるという宿。
すみません。
・
(浅沼)は〜い。
あの〜あっこんにちは。
予約したベニシアです。
あっどうもどうも。
会津生まれ会津育ちの浅沼さん。
どうぞ上がらっせ。
どうぞどうぞ。
でもすごい。
じゃあどうぞ。
上に囲炉裏あっから温まるしどうぞ。
囲炉裏は寒い日の何よりのおもてなし。
ええ〜すごいですね。
いや〜何か。
建物は300年以上たってっからな。
訪れる人に昔ながらの雪国の暮らしを感じてほしいと築300年の古民家を改装し宿を営んでいる。
はいはいどうもどうも。
うわ〜すごい。
やっぱ冬はな何する事ねえから漬物食ってやっぱお茶飲んで。
食べてみてタクアン漬け。
食べてみっせ。
うんおいしい。
農家もやってっから自給自足で全部こういうの秋さかのうちに漬けちまうのよ。
やっぱり日本人は和食。
やっぱ漬物が一番だもん。
(笑い声)あとこのカキ食べてみっか?これこのタクアン漬けのある程度食べたあとに1か月以上入れといてあとこれ自然に甘みが出てくんの。
タクアンの汁で渋抜きをすると甘みが増すという。
これにはベニシアさんもびっくり。
おいしい。
甘さがまず違うだよな。
全然渋さがないよね。
あってな…冷たい。
これ冷たい場所に置いてあるから。
ふ〜ん。
でも寒さに慣れてるでしょ?慣れてる慣れてる。
こういうの着てんだよいつも暖かいの。
着てみっかよこれ綿入れはんてんってつって。
私もはんてん持ってる。
あっ持ってる?着てみっか?浅沼さんベニシアさんに取って置きのはんてんを。
これはよそ行きのはんてん。
これは村の何か会合あったりなんかした時これ着てたの。
あっ特別なの?うん特別。
だから柄もいいべ?そうねかわいい。
花柄でな。
いいですね。
これ着たら温かいんだよ。
綿いっぱい入ってるから。
はんてんを着せてもらって和やかな気分。
この野菜は冬の間どうするの?凍らない?冬の間は凍らないように雪の中に入れとけるの。
わざと?うんわざと。
へえ〜。
これから行ってみますか?そこ見てきますか?どういう感じでやってるのか見たいよね。
つかの間やんでいた雪がまた降りだした。
頬かぶり。
するとしないのとでは大違いなのだという。
畑に行きます。
そこに冷蔵庫があるんです?そうそう。
寒さが厳しいこの時期お客さんが一人だけの日も珍しくない。
そんな時でも料理の度に畑へ野菜を取りに行くという浅沼さん。
野菜保存しておける場所。
どれがどれか…。
だからみんな棒で印しとけんの。
一番奥がハクサイなのね。
隣がネギ。
そしてこっちがゴボウとニンジン。
そしてこっちがダイコン。
ダイコンはもんもりとなってるよな。
すごいこれ昔からの知恵よね。
そう。
そうか。
うん。
雪が積もった畑は適度な温度を維持する天然の冷蔵庫。
子どもの頃から野菜の保存は雪の下が一番だと教わってきた。
土が見えてきた。
結構…あっ出てきた。
土が出てきたべ。
ほらダイコンも見えてきた。
よいしょ。
あっ出てきた。
すごい。
はいほれほれダイコン。
うわすごいやん。
はい今晩使う料理。
料理こうやって。
体が覚えている生活の知恵昔から当たり前にやってきた事。
つめてつめてな。
掘り出したダイコンを使って夕飯を作る。
やっぱあの普通に取ってあるダイコンと土の中から取ったばっかしのダイコンって全然甘みが違って…。
違うの?食べてもいい?食べてもいいよ。
あっおいしい。
確かに。
な?甘いべ?な?今日は懐かしさをやっぱみんなに味わってもらいたくてすいとん。
具はニンジンネギダイコンのみ。
冬場の限られた食材を生かした素朴な料理。
みそでシンプルに味付けする。
こんな感じで…飲んでみて。
う〜んおいしい。
なあ。
何でもかんでも入れちゃうと味と味がけんかしちゃうからホントに素朴な味でいい。
そうですね。
うんそう。
もう一品会津で親しまれている郷土料理小汁を作る。
材料はチクワナルト。
それに地元で取れた山菜や野菜。
これでダシとるの貝柱。
貝柱でダシとってあとはみんなその日その日の企業秘密の味付けで。
あっ家で。
家々で違います。
会津地方は全部この小汁っつうのはお祝い事には必ずつける。
あとは…。
糸コンニャクや豆腐もたっぷり。
かつて会津藩の祝いの席でも出されていたという。
塩をちょっと入れて…2つくらい入れっかな。
塩しょうゆみりんで味を調え最後に豆麩を入れれば浅沼さんの小汁の出来上がり。
これが小汁です。
ベニシアさん地元の料理で夕食を頂く。
小さめの器で楽しむから小汁。
ほかにも10品を超える料理が並んだ。
小汁食べてみてくんぜえ。
すごい優しい味。
あとこれは菊の花。
それは酢の物です。
秋いっぱい咲いてる頃採って一回熱いお湯で沸騰させて水切ってそれから今度冷凍庫さ入れとけんの。
そしてからまた自然解凍して酢の物にすんの。
これおいしい。
おいしい?ホントにお客さんに喜んでもらって食べてもらって。
ここの村私感動したのは古い家がそのまま建ってて残ってるでしょう?そういう守ってくれる地域が一番面白いのね見に行く時。
そうだよな。
大内宿ってのはホントにさんかの村で耐え忍んできた村だからやっぱみんなで助け合って生き延びていくっていうような形っていうのはだから結っつう形がみんなホントに持ってるしホントの日本の昔の生活の暮らしはこの大内宿にありだと思うのな。
そう感じると思うのね。
400年もの間人と人とが支え合い乗り越えてきた暮らしがここにある。
大内宿に今も残る助け合いの精神結。
一年の1/3は雪に覆われる。
かやぶき屋根の維持に雪下ろしは欠かせない。
今から始めますから。
ほんじゃ雪下ろし頼む。
分かりました。
高いから気を付けて。
気を付けてゆっくりやります。
かつてはじっちゃんが雪下ろしをしていた。
子ども心にすごいな〜と思っていた。
だから今頼まれたからではなく感謝の気持ちで屋根に上がる。
命懸けの雪下ろしの技はこうして受け継がれていく。
僅か180人ほどの小さな集落。
そこに芽生える確かなつながり。
いやいやどうもどうも御苦労さまでした。
安全に終わりました。
御苦労さまでしたね。
おかげさまに若い人にやってもらって。
大変だったべ?天気もよかったからね。
ちょっと雪下ろし日よりだった。
めっちゃ食ってる。
おいしい。
これみんなよう…。
ホントにおいしい。
うまい。
汗をかいたあとの何よりの褒美はばっちゃんとじっちゃんの笑顔だ。
ベニシアさん会津の中でも特に雪深い三島町間方を訪れた。
ここに是非会いたい人がいるという。
何かすごい私家具大好きでこの辺家具を作ってるって聞いて今日来ましたけどこの辺?あっあそこかな?こんにちは〜!
(菅家)おはようございます。
おはようございます。
菅家さんですか?そうです。
よかった。
見つかるかなとちょっと心配してた。
迎えてくれたのは…家具が大好きで。
ああそうですか。
中に入って見て下さい。
ありがとう。
あっお邪魔します。
うわ〜皆さん…。
いらっしゃいませ。
へえ〜いや〜すごいじゃないですか。
いや〜。
菅家さんの工房では近所の人たちが集まり思い思いの作品作りにいそしんでいる。
いろんな籠ありますね。
この辺昔から…。
そうですね昔からね。
技法っていうのは縄文の時代からあったといわれています。
縄文時代?はい。
ええ〜!間方では昔から生活で使う道具は自分たちで作り代々伝えられてきた。
中でも籠は代表的な工芸品だ。
ものすごいきれい。
これも何かちょっと珍しい。
この辺は昔から台所用具としてこれはお米をとぐ米とぐザルなんです。
材料はマタタビっていう材料なんですけども。
へえ〜いいですね。
マタタビ。
マタタビの…それがこの辺にある。
自生してますよいっぱい。
こちらのフナチさんって方やってるこれがマタタビが材料なんです。
それどこで見つけるんですか?これは山に行って沢のいろんな所の木に絡まってあるやつを採ってくる。
自ら山に入り材料を厳選し収穫する。
そして乾燥選定手間のかかる加工まで全て自分たちで行っている。
納得する材料で作る事が仕上がりの美しさへとつながる。
バッグ。
ああ〜いいですね。
これもおばあちゃんが作ったんですか?おばあちゃん…私やってるけど。
きれいに作ってるんやね。
まあワラもやってますしガマもやってるしいろいろなもので私は楽しんでます。
何でもみんな手作りなんです。
ホントに昔は何しろ全てが人間が動けば必ず道具が必要になりますよね。
それ全て手作りの道具で生きてきたんでしょうね。
すごい。
大感動。
間方の編み組細工は作り手の確かな技から生まれる今この素朴な美しさに籠を手にしたいという全国からの声が絶えない。
間方は三島町の中でも特に山深い場所に位置している。
そのため昔から冬場山に入るまたぎ猟が続けられてきた。
菅家さんもその一人。
二十歳で狩猟免許を取りまたぎ歴40年の大ベテランだ。
行くぞ。
(犬の鳴き声)狩猟犬2頭と共に山へと向かう。
じいちゃんもやってたしおやじもやってましたしまあ小さい頃からもう大きくなったらまあ私も鉄砲撃ちになって山で猟をしたいと思ってました。
自分で作ったかんじきを履く。
これがあれば雪深く歩きづらい山でも足を取られずにスムーズに歩く事ができる。
おやじと一緒にくっついて歩いてたからそういう分では山は全て覚えてます。
まあ春の山菜採りそれから秋のキノコ採りっていう事で一年中山歩いてますので大体この辺の山は全部知ってます。
自然豊かであって動物もいますのでホントにいい場所だなと思ってます。
山を知り尽くす菅家さん。
こうして生活を守ってきた。
自然に寄り添って暮らす菅家さんは編み組細工の名人でもある。
しっかりと編み込まれた山ブドウの籠にベニシアさんの目もくぎづけ。
微妙な色や形の違いがある山ブドウのツル。
皮の厚さ柄材質などを考えながら収穫してくるという。
色がちょっと違う。
やはり使ってて味わいが出てくるっていうところが魅力なんですよね。
私から見たらこれホントに上等やね。
編み方っていうのはこれ交互にこう起こしてね押さえたらまた次の2本飛んで2本上げてまた押してあげる。
また2本飛んで隣の2本をこう編んでく。
あともう一つはこの皮の厚さですね。
厚いのもあれば薄いのもありますね。
ある程度の厚さがあった方が丈夫ですね。
ホントに厚いやつはちょっとこういう作業でねナイフでこれ削ってあげるんです少しだけ。
あんまり削ると弱くなるので。
ああ〜。
こうして。
材料を削って厚さを均等にする事で表面の凹凸が無くなりきれいな籠に仕上げる事ができる。
こういう籠を作るのは子どもの時からいろんな人が作ってるの見たんですか?うちの集落の中でやってる方がいてその人のとこに遊びに行って作り方を見てたんですよね。
ここで生活するための道具っていうのは自然の中から採ってきてそして道具を作ったの。
やっぱり自給自足の生活という事で全部食べ物も保存食として残しておく。
こういう道具は今度は冬の冬期間にやはり農家んちにものを作って来年の春の農作業の準備をするっていうそういう回りでず〜っと来てたんです。
きめこまやかな編み目と色。
菅家さんだからこそ出せる味わい。
菅家さんに取って置きの山の恵みをごちそうになる。
スイッチ入れて。
うわ〜すごい。
ゴボウネギハクサイをヤマドリのダシで煮込んだ料理。
菅家さんの家族は…そして息子一家。
高齢者が多いこの集落では珍しく4世代がそろっている。
食卓もにぎわう。
頂きます。
おなかいっぱい食べて下さい。
頂きます。
今日はありがとうございました。
何かいろいろ教えてくれて。
う〜ん何か体温まる感じやね。
スープがおいしいですよ。
うんおいしい。
タクアンと同じぐらいの黄色い…。
ヤマドリの脂は黄色いんです。
主にヤマドリはブナの実とか実を食べるんですよね。
ブナの実っていうのはすごくこう油っこくてそういうブナの実の豊作の年はホントに脂がいっぱい乗ってなおおいしくなる。
(アイ子)これはゼンマイっていうのが春ほらもんでこう玉にしといて…。
おばあちゃん手作りのゼンマイ。
80歳の今でも収穫から料理まで全て自分でするという。
味付けは?
(アイ子)味付けはしょうゆだけでいいんです。
はい砂糖ちょっと入れてそれだけでいいんです。
どう?おいしい?うんおいしい。
ここの辺の皆さんすごい何か森の恵みっていうかいろんなもの使って作ってるのがすごい。
小さい時からそのブドウのツルを見てるから成長のしかたも見てるからだからいい材料だ悪い材料だってつまり身近にあるから知ってるんですよ。
自然の恵みで生活してる。
これが私は一番幸せな事だと思って。
家族がいるからみんなの次の世代に教えてするのね。
大きいファミリーはいいですね。
凍る寒さの雪国。
そこには優しい人のぬくもりがある。
長い冬を耐え忍ぶ人の強さがある。
何か白い世界はきれい。
こうやって毎日雪と生活してる。
結構大変かもしれないけどいつもでもきれい。
う〜ん面白いね。
日本のいろんな所行ったんだけどそれぞれ何かその所のよさあるからねそれすごい旅行してよかったと思う。
真っ白な雪に包まれて暮らす人々。
今しばらく春を待つ。
2015/03/08(日) 18:00〜18:30
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「雪国のぬくもり〜福島県会津地方〜」[字]
雪深い福島県会津地方の旅。宿場として栄えた大内宿、昔ながらのかやぶき屋根の街並みやいろりのあるあたたかな暮らしを知る。また、冬の手仕事の伝統工芸品に心打たれる。
詳細情報
番組内容
雪深い福島県会津地方への旅。江戸時代、会津と日光をつなぐ街道の宿場として栄えた大内宿、今も当時の風情を残すかやぶき屋根が連なる。民宿では名物おかみが笑顔で迎えてくれる。いろりで温かいもてなし、雪国の暮らしの知恵を知り、一緒に郷土料理を作る。そして三島町に行く、80人ほどの集落に会いたい人がいるという。編み組細工と呼ばれる伝統工芸品を作る菅家さんだ。山ブドウやヒロロを使う手作りの技を見て心打たれる。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
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