(ハドソン夫人)・「タララッタッタッタ〜」
(ワトソン)「事件は解決したのでした」と。
(ホームズ)それを貼り出すの?そりゃあ壁新聞だからね。
ハドソン夫人もうちょっとしっかり押さえていて下さい。
クッキーがもうすぐ焼き上がるんだけど〜!もうすぐ終わりますから。
読む人間がいるとは思えないけどね。
何か書いてくれって編集委員のストランドに頼まれたんで君の扱った事件の事を言ったらとっても喜んでくれた!「学園の名探偵シャーロック・ホームズ」。
絶対ウケるって!面白かったわよ!このターナー夫人っていうのは私の事でしょう。
ヘヘヘヘッ。
差し障りがあるんで名前は変えてあります。
さあできた!ふう〜うんうん!ふうん…。
僕が書いたホームズの最初の冒険物語はハドソン夫人の窮地を救った例の事件についてだ
それが僕の作家デビューだった
ヘヘッ。
はあ…はあ…。
おっ…ん…。
コンコンコン。
壁新聞を読ませてもらった。
ホームズ君。
君は若いのになかなかやるじゃないか。
ありがとうございます。
実はそんな君に力になってほしいのだ。
ただ非常にデリケートな問題なんでね顔を明かす訳にはいかんのだ。
この姿で勘弁してもらいたい。
もう分かってますから。
校長先生でしょ。
いや…私は校長先生ではない。
目だけ隠したってバレバレですよ。
ねえワトソン。
絶対校長先生です!フフッ。
ああ…バレちゃしょうがないな。
私が校長先生です。
用件を伺いましょう。
オルムシュタイン校長先生の持ち込んできた話というのは…
(オルムシュタインの声)私には妻と3人の子供がいる。
かわいい子供たちと美しい妻。
実に幸せな家庭生活だった。
ところが校長先生は別の女の人を好きになってしまったんだ…。
奥さんがいるのにですか!?お恥ずかしい話だ。
誰にも言っちゃ駄目だぞ。
相手は誰なんです?
(オルムシュタインの声)保健のアイリーン・アドラー先生はもちろん知ってるね?
(ワトソンの声)あのきれいなアドラー先生。
(オルムシュタインの声)校長先生はあの人が好きになってしまったんだなあ…。
奥さんがいるのにですか!?いちいちうるさいな君は。
だって!奥さんがいるのに…。
大人になれば分かる。
人間はたま〜にそういう間違いを犯すものなんだ。
アドラー先生は校長先生をどう思ってるんですか?もちろん彼女も校長先生を愛してくれていた。
(オルムシュタインの声)放課後になるとアイリーンと校長先生は校長室でいろんな事をして遊んだ。
回想校長先生は分かった。
こっちだね。
ハハハハッ。
(オルムシュタインの声)ところがだ…。
回想
(アイリーン)さあはっきりしてちょうだい。
これが最後よ。
(オルムシュタインの声)アイリーンは私と結婚したいと言い出した。
しかし私には家族がいる。
校長先生は結婚できないと彼女に言った。
すると彼女は怒った。
そして私の妻に2人の関係をバラすと言い出した。
回想ああ…。
そんな事をされたら校長先生はおしまいだ。
校長先生は遊びのつもりだった。
まさかアイリーンが本気になるとは思わなかったんだ。
奥さんにはおつきあいなんてしてないってうそをつくしかありませんね。
アイリーンは妻に手紙を書くと言っている。
手紙くらいじゃ証拠にはなりません。
2人で撮った写真がある!写真があるんですか?はい…。
じゃあ無理ですね…。
ホームズ!だから君の所へやってきたんじゃないか。
どうか校長先生を助けてくれ。
アイリーンが写真を妻に送りつける前に奪い取ってほしいんだ!分かりました…!必ず写真は奪い取ってみせます。
ありがとうホームズ!期待しているよ!一つだけ質問を。
アドラー先生の自宅には行った事がありますか?校長先生は…ない。
正直に答えて下さい。
校長先生は…ある。
その時鍵はどうしてましたか?正直に。
校長先生は…合鍵を持ってます。
奥さんがいるのに!?うるさい!う〜ん。
ふう…。
ん?最低の校長先生だね。
最低の校長先生だが依頼人の頼みは聞いてやらないと。
だけどどうやってアドラー先生から写真を奪うの?校長先生は家の合鍵を持っている。
という事は写真は自宅には置いてない。
留守中に入られたらアウトだからね。
はあ…じゃあどこだろう。
フフッ。
(ハリソン)ではレストレード君この方程式を解いてみて。
(レストレード)はい先生。
次の日ホームズは授業に出なかった
ホームズ何があったんだ?別に。
別にじゃないだろ。
すごくうれしそうだよ。
君のそんな表情は初めて見た。
ちょっと面白い事があっただけさ。
何があったんだよ。
教えてくれよ。
今日僕は保健室のベッドで横になっていた。
回想はあ…はあ…。
はあ…はあ…。
熱はどうでしたか?はい。
結構熱っぽいわね。
顔も少し赤いみたい。
咳は出る?多少は。
(咳)今日は薬を飲んでゆっくりここで寝てなさい。
ありがとうございます。
はあ…。
(アイリーン)さあ飲んで。
あとで飲みます。
今飲みなさい。
見られてると恥ずかしくて。
いいから飲みなさい。
あ…はい。
シャーロック・ホームズ君ね。
はい。
壁新聞に書いてあった子ね。
名探偵なんですって?あれはまあ…ある事ない事…。
お大事に。
(ワトソンの声)じゃあアドラー先生とずっと2人きりだったの?
(ホームズの声)そうだよ。
何か?いや別に…。
ちょっと羨ましいかなって。
確かにアドラー先生はとても女性的で優しくてそしていい匂いがした。
でもそれだけ。
僕には何の興味もない。
ふ〜ん…君は変わってる。
午後になってちょっとした事件が起こった。
回想
(アイリーン)フフッさあできた。
(ノートン)ハッハッハこれはないよ。
絶対私の方が似てるって。
(ノートン)僕は美術の先生だよ。
僕の方が似てるに決まってるじゃないか。
じゃあ審査員の先生に決めてもらいましょうよ。
ホームズ君。
あ…。
ホームズ君ちょっといい?んん…何ですか?寝たふりなんかしなくていいから。
どうせ立ち聞きしてたんでしょ?意味が分からない。
彼は?朝から風邪で寝てるんだけどどうせ仮病だから。
ちょっと待って下さい!いいのよ。
ここにやってくる生徒の99%は授業が嫌になった人。
早くこっちに来て。
じゃあ仮病って分かっていて風邪薬を飲ませたんですか。
あれは風邪薬じゃないから安心して。
ただの酔い止め。
ああ…。
美術のノートン先生は知ってるわよね。
どうも。
うん。
ホームズ君私の絵とノートン先生の絵とどっちが似てるかジャッジしてくれる?僕が決めるんですか?あなたが審査員。
さあ選んでちょうだい。
どっちの絵が校長先生に似てるか。
ん〜…。
う〜ん…。
こっちかな。
味があって好きです。
私の勝ち!くっそお…。
こっちの方はデッサン力はあるけどただそれだけ。
(ノートン)君に絵の事は言われたくない。
ありがとうホームズ君。
どういたしまして…。
・
(鐘)今夜のディナーはおごってもらいますからね。
しょうがないな…。
それじゃあ放課後。
いつもの場所で。
それじゃあ僕も。
またいつでも遊びに来なさい。
失礼します。
あ先生。
何?ノートン先生とはその…おつきあいしてるんですか?ご想像に任せますわ。
まず間違いない。
あの2人はつきあってる。
という事はどういう事?アドラー先生は校長先生からノートン先生に乗り換えたんだ。
恋多き人だなあ。
魔性の女だよ。
でもだとしたらもう校長先生の写真はいらないって事?そうとは限らない。
愛は冷めてもゆするネタにはなる。
そうなの?油断するな。
相手は魔性の女だ。
でもこれではっきりした。
写真はまず自宅にはない。
新しい恋人に見られたら大変だからな。
保健室にあるのはほぼ確実だ。
あとはどうやって見つけるか…だね。
簡単だよ。
アドラー先生自身に教えてもらう。
まさか!先生が教えてくれる訳ないじゃないか。
フフフッ。
何か作戦でもあるの?もちろん。
君にも手伝ってもらうよ。
アドラー先生ちょっと目が…。
(ホームズの声)僕はこれからもう一度保健室へ行く。
今度は本当なの?はい。
(ホームズの声)僕はしばらくアドラー先生と話をしてそして良きところで廊下にいる君に合図を送る。
すると君はこれに火をつけて投げ「火事だ!」と叫ぶ。
火事だ!
(アイリーン)あ…大変!
(ホームズの声)人は身の危険を感じると本能的に一番大事な物の所へ飛んでいくんだ。
特に女性はね。
そこまで!
(アイリーン)あ…。
なるほどね。
全ては君の演技力にかかっている。
よろしく頼むよ。
ワトソンメモ
オルムシュタイン校長。
困った大人だけど憎めないちょっと変な人。
保健室のアイリーン・アドラー先生。
すっごくきれいですっごく優しい。
そしてものすっごく頭がいい。
僕たちは放課後アドラー先生に挑戦した。
名付けて「大事なもの作戦」
(鼻歌)ホームズ君また具合でも悪くなったの?いつでも来ていいって言われたから。
ごめんね私もう帰るところなの。
何だか喉が痛くてホントに風邪をひいたみたいです。
本当に風邪をひいた時の一番の対処法は早く寝る事。
診察してくれないんですか。
明日になっても治らなかったらまたいらっしゃい。
・火事だ!
(アイリーン)え…。
あ…。
あ…。
あれだ!ホームズ!どういうつもり?写真はこの中ですね?写真?あなたが校長先生と写っている写真です。
あなたはそれで校長先生を脅迫しようとしている。
面白い事を言うのね。
人は身の危険を感じると本能的に一番大事な物の所へ飛んでいく。
特に女性はね。
誰に教わったの?僕はあなたの目の動きを見逃さなかった。
写真はこの中です。
ホームズ君いい事教えてあげる。
いつも自分が一番賢いと思わない事。
はい?人は火事を見た時ホントに「火事だ!」と叫ぶかしら?叫んだとしても「逃げろ」とか「危ない」とか普通はあとに続く言葉があるものよ。
あなたのお仲間に芝居の勉強をするように言いなさい。
見抜いていたというんですか?大人をばかにしちゃいけないわ。
ではなぜこの箱に目をやったんです?もちろんあなたを引っ掛けるために決まってるでしょ。
では写真は?中には入ってないわ。
うそだ!うそだと思うなら自分の目で確かめなさい。
あああ…。
(アイリーン)校長先生はあの壁新聞を見てあなたに依頼したのね。
ばかな人。
残念でした。
あなたの負けよ。
そうでしょうか。
え?何も入ってない箱を机の上に置いておくほど不自然な事はない。
僕がこの学園で学んだ唯一の真理はどんなものにも裏がある。
あ…。
おっと…。
写真は頂きました。
ホームズ君見るだけでは駄目。
観察しなくちゃ。
え?よくご覧なさい。
それはあなたが探していた物ではありません。
あ…!
(アイリーン)あなたは半分正しくて半分間違えてる。
確かに私は一番大事な物を見たわ。
でも私にとって一番大事な物は校長先生との写真じゃない。
(アイリーン)あなたの想像どおりよ。
私とノートン先生はおつきあいをしています。
どうしてこんな所に隠しておいたんです?はあ…頭を働かせなさい。
校長に見つかったら大変でしょ。
最初から校長をゆするつもりなんかなかった。
あの人の態度が冷たくなったからちょっとからかっただけ。
私が愛しているのはノートン先生。
近々結婚するつもりです。
あなたの負けよ。
シャーロック・ホームズ。
負けじゃない。
引き分けだ。
どっちでもいいわ。
さあもう帰りなさい。
待って下さい。
じゃあ校長先生との写真はどこにあるんです?あんな物いつまで持っててもしょうがないでしょ。
とっくの昔にあの人にお返ししておきました。
どういう事だ…。
恐らくこの部屋のどこかにあるはずです。
この部屋?これかな…。
それは校長先生の家族の写真だよ。
どんなものにも裏がある。
何をするんだ。
(オルムシュタイン)おお…。
回想
(オルムシュタイン)アイリーンどこどこ…。
(アイリーン)どこかしら。
(ホームズの声)あの人のやりそうな事だ。
はい。
ありがとう…。
では失礼します。
行こうワトソン。
うん。
あ校長先生は何かお礼がしたい。
何でもよろしいですか?何でも言いなさい。
その写真を僕に頂けませんか。
これを?今回の事件の記念に。
秘密は守ります。
おお…う〜ん…。
持っていきなさい。
これがオルムシュタイン校長先生にまつわる事件の一部始終だ
あ…。
アイリーン・アドラー先生は特別な存在になった。
彼女はホームズが敬意を込めて「あの人」と呼ぶ唯一の女性である
2015/03/08(日) 17:30〜17:51
NHKEテレ1大阪
シャーロックホームズ・選「困った校長先生の冒険」[字]
三谷幸喜が推理小説の古典を学園ミステリーとして脚本化。15歳の少年・ホームズとワトソンが学園内で起こる奇妙な事件のなぞを解く。今回の依頼人はなんと校長先生。
詳細情報
番組内容
三谷幸喜が推理小説の古典を学園ミステリーとして脚本化。15歳の少年・ホームズとワトソンが学園内で起こる奇妙な事件のなぞを解く。深夜、人目を忍ぶようにホームズとワトソンの部屋にやってきたのは、なんとこの学園の校長先生。とある女性から写真を取り返してほしいという依頼だった。その写真に写っていたものとは?ホームズとワトソンは二人でその女性に心理戦を仕掛け、写真を取り返そうとするが、果たして結果は?
出演者
【声】山寺宏一,高木渉,堀内敬子,江原正士,岸尾だいすけ,三瓶由布子,中村梅雀,宮沢りえ
原作・脚本
【脚本】三谷幸喜
ジャンル :
アニメ/特撮 – 特撮
ドラマ – その他
趣味/教育 – 中学生・高校生
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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