ダーウィンが来た!セレクション「動物たちを守れ!前代未聞の保護プロジェクト」 2015.03.08


「はじめまして。
私って『こぐま』みたいでしょ。
何て名前だかご存じかしら。
声がヒントよ」。
「叫び声が悪魔のようだから『デビル』って名付けられたの。
ひどい!」。
今回の主人公タスマニアデビルがすんでいるのはオーストラリアのタスマニア島。
今恐ろしい病気がタスマニアデビルを襲っています。
それは…命をつなぐために欠かせない食事や繁殖行動が病気を広めるんです。
わずか20年足らずで80%以上も数が減り絶滅が心配されています。
「デビルを救え!」。
島じゅうの研究者と市民が保護に立ち上がりました。
逆境の中たくましく生きるタスマニアデビルの物語です。

(テーマ音楽)オーストラリアのタスマニア島。
北海道よりやや小さい島は野生動物の宝庫。
オオカンガルーです。
けんかを始めています。
まるでボクシング。
カンガルーはこうしてお互いの力関係を確かめ合っているんだそうです。
茂みの向こうにも何かいます。
あっ真ん丸!ヒメウォンバットです。
あれ?お尻のほうから赤ちゃんが顔を出しましたよ。
ここに袋があります。
おなかの袋で子育てをする哺乳類そう有袋類なんです。
タスマニア島では20種類近い有袋類が暮らしています。
今日の主人公タスマニアデビルも有袋類です。
でも夜行性の上病気で数が激減。
簡単には出会えません。
30年間タスマニアデビルを見続けてきた…プロウライトさんに案内してもらい深い森の中までくまなく探します。
ここは島の北西部。
手付かずの自然が残されています。
タスマニアデビルの「最後の聖地」と言われています。
探すこと2時間半。
海岸近くで手がかりを見つけました。
しばらく待っていると…。
何か出てきました!これはもしや…。
そう!胸の白い模様がチャームポイントですね。
頭からお尻まで60cm体重は8kgほど。
タスマニアデビルはふだん単独で行動します。
1km先まで利くという鋭い鼻を頼りに広い範囲を歩き回ります。

(タスマニアデビルの鳴き声)森からおどろおどろしい声が聞こえてきました。
いました。
何だかキョロキョロ。
何かを探しているようです。
視線の先にもう一匹います。
動物の死骸を食べています。
先に食べていたほうが大きな体。
後から来た小さいほうは羨ましそうに見ています。
あれ?近づいていきますよ。
あっ!小さいほうが激しくうなっています。
(鳴き声)先にいた大きいほうを追い払おうとしているようです。
このうなり声こそ森の外まで聞こえたおどろおどろしい声です。
やりました!小さいほうが獲物を奪い取りました。
タスマニアデビルはいったん動物の死骸を見つけると余すことなく食べ尽くします。
(かみ砕く音)鋭い牙で骨ごとかみ砕きます。
体重当たりのかみ砕く力は地球上の哺乳類の中で最強とも言われています。
わずか30分で自分の体重の40%近い獲物を食べてしまうこともあるといいます。
おどろおどろしい声でいがみ合い動物のなきがらを骨まで食べ尽くす。
これこそ人々が「デビル」つまり「悪魔」と名付け今もそう呼んでいるゆえんです。
おや大きいほうのデビルが戻ってきました。
抜き足差し足。
そうっと近づきます。
でも小さいほうは…。
気付くと…。
(鳴き声)ものすごいけんまくです!今度は大きいほうが小さいほうを追い出そうとしているんでしょうか。
いやよく見ると大きいほうはしきりにお尻のほうから近寄っていきます。
どうにかして食べる場所を確保したいだけなんです。
実は小さくて荒っぽいのが若いメス。
一方大きくて穏やかなのは年上のオスです。
「あっち行って!私の分なんだから」と独り占めしようとする若いメスに年上のオスが「そう言わずに僕も一緒に食べさせてよ」と言っているような状況です。
こうした関係はタスマニアデビル一般によく見られます。
あらあら若いメスがオスを追いかけ始めました。
この隙をついて近づいてきたのは別のデビル。
いとも簡単に獲物にありつきました。
気付いた若いメス。
こちらも追い払おうとしますが…その隙に左奥から1匹。
右奥からも1匹。
こうなるとさすがにお手上げです。
「もう好きにしてちょうだい!」。
若いメスは叫ぶのをやめまずは食べることにしたようです。
一見いがみ合ってばかりいるタスマニアデビル。
結局のところいつもこうして獲物を分け合って食べるんです。
しばらくすると別の動物がやって来ました。
オオフクロネコです。
タスマニアデビルと同じ肉食の有袋類。
獲物を狙っています。
デビルに近づき今にも戦いを挑もうとしています。
少しずつ距離を詰めます。
あっ!追い払われてしまいました。
オオフクロネコの2倍の体重があるタスマニアデビル。
恐れる動物は島にはいません。
最強の肉食動物としてタスマニアの自然に君臨しています。
ちょっと待った!「最強」とか「君臨」とか大げさすぎますよ。
大騒ぎして死骸を食べているだけじゃないですか。
かっこいい狩りでも見せてほしいもんですな。
いいえそれは無理です。
タスマニアデビルは主に動物の死骸を食べていて生きている動物の狩りをすることはほとんどないんです。
ふ〜んがっ狩り…なんちゃって…あ。
でもね死骸を食べることこそ重要なんですよ。
どういうこと?野生動物の宝庫タスマニアではその死骸もたくさん出ます。
デビルはそれを寄ってたかって一晩できれいに食べ尽くしてしまいます。
こうしてさまざまな病気の発生を防ぎ貴重な動物たちを守っているんです。
ほう森の掃除屋さんということか。
はい。
更にデビルはあるやっかいな動物が増えるのを防いでいます。
えっ何それ?それはタスマニアの自然に問題を引き起こすこちらネコです。
人に飼われていたものが野生化しました。
鳥の卵やヒナはもちろんタスマニアの貴重な動物の子どもも食べてしまいます。
こちらのネコ動物の死骸を食べています。
よ〜く見て下さいね。
うん?あ何か後ろを気にしてますな。
あ逃げた!あデビルだ!はい。
デビルはネコより強いんです。
森にデビルがいるおかげでネコが増え過ぎるのを防ぎ結果的に森の動物たちを守ってくれます。
こうしたことから人々に「森の守り神」とも言われているんです。
なるほどデビルの大切な役割よ〜く分かりましたぞ。
「悪魔」と呼ばれてもあくまでも「森の守り神」なんですな。
近年その「森の守り神」が絶滅を心配される事態に陥っています。
今から11年前新聞に衝撃的な記事が載りました。
「恐ろしい病気が貴重な動物タスマニアデビルを襲う」。
正体はがん。
それも他の動物ではほとんど例がない伝染するがんです。
感染すると顔や首に悪性の腫瘍が出来ます。
がんの進行は速く腫瘍が口や目を一気に塞いでしまうため食べ物を取れなくなって餓死してしまうのです。
更に「伝染する」という性質がタスマニアデビルを絶滅の危機にまで追い詰めました。
このがんが最初に発見されたのは1996年。
当時10万匹以上いたデビルの数がわずか20年足らずで20%を切るまで激減しました。
デビルはもともと南西部を除く島全体に生息していましたがこの伝染するがんは瞬く間に広がりました。
感染したデビルが見つかっていないのは今北西部だけです。
30年前からタスマニアデビルを見続けてきたプロウライトさんも心を痛めています。
がんの伝染がこれほどまでに速く進んだのはタスマニアデビルならではの行動に原因があるといいます。
その一つが集団で行う食事です。
腫瘍が剥がれ落ち獲物を通して伝染するのです。
硬い骨をかみ砕くデビルの口の中は傷だらけ。
この傷から腫瘍を取り込んでしまいます。
はるか昔から獲物を分け合って食べてきたタスマニアデビル。
生きるために欠かせない食事が命を脅かしているのです。
第2章ではタスマニアデビルの激しい恋に密着。
そこにも病気が広まってしまう秘密が隠されていました。
そしてついにデビルを救おうと人々が立ち上がります。
オーストラリアタスマニア島。
カンガルーやウォンバットなど珍しい動物がたくさんいる自然の宝庫です。
しかし一方で動物が交通事故に遭う被害が後を絶ちません。
こうして親が交通事故やさまざまな原因で死んだ後にみなしごたちが残されます。
そんなみなしごを自宅で育てているのが「ケアラー」と呼ばれるボランティアです。
その一人ケアラー歴30年のベテラン…レノックスさんは今2匹のタスマニアデビルの子どもを預かり育てています。
生後7か月。
今はとても元気な子どもたちです。
しかし預けられた経緯は悲しいものでした。
がんで死んだ母親のおなかの袋から救い出され一命を取り留めたのです。
当時の体重は45gしかありませんでした。
ボランティアのケアラーは食事代も自ら負担します。
今デビルの子どもたちが好きな食べ物はやっぱり肉。
体重が3kgを超えたデビルたち。
繁殖できる2歳近くまでレノックスさんに育てられその後保護施設に引き取られます。
がんへの感染が心配されるため野性には帰せないんです。
森に帰せる時がきっとまた来る。
そう願う市民に支えられ小さな命が引き継がれていきます。
タスマニアデビルを襲う伝染性のがん。
伝染の原因となる行動は集団で行う食事のほかにもう一つあるといいます。
デビルが森からほとんど出てこなくなりました。
タスマニアデビルは岩の下や木の洞穴などわずかな隙間を巣穴にします。
今は繁殖の季節。
一度カップルになって巣穴に入ると3日3晩時には1週間以上も出てこなくなるといいます。
そのため繁殖行動の詳しい様子は明らかにされていません。
そこでデビルの保護施設を訪ねて観察することにしました。
こちら巣穴から顔を出したのは4歳のオスノーチです。
近づいてきたのは3歳のメスミーポーです。
ミーポーがノーチのいる巣穴の前をうろうろしています。
ノーチはミーポーを巣穴に招き入れたがっているようです。
でもミーポーはそれを知ってか知らずかそっけない態度。
このようにタスマニアデビルの恋愛は初めはオスのほうが積極的です。
ふだんは単独で暮らすデビルがカップルになれるのはこの季節だけ。
ノーチはたまらずミーポーに近づきます。
でもミーポーは身を伏せたまま。
ノーチに関心がないようです。
あっ!ノーチがミーポーの首筋をかんで捕まえちゃいました。
ちょっと手荒いエスコートのように見えますが…。
これがタスマニアデビルの恋の作法。
激しいんですね〜。
巣穴の中でもノーチはミーポーの気を引こうと懸命です。
あっかみつき合っています。
このかみつき合いこそがデビルならではの愛情表現なんです。
夜もかみつき合いは続きます。
実はこの独特の繁殖行動もがんが伝染する原因だと考えられています。
かんだ所からがんがうつるんです。
子孫を残す営み。
そして食事。
こうした命をつなぐために欠かせない行動が逆に命を奪う原因になる。
今タスマニアデビルは出口の見えない袋小路に入り込んでいるんです。
おお〜それじゃタスマニアデビルがかわいそすぎますよ。
好きな相手と愛し合ってもみんなで肉を食べてもがんがうつるなんて。
何か治す方法ないんですかね?そうですよね。
研究は盛んに行われているんですがまだ治療法は見つかっていません。
それじゃもう絶望的ってこと?でもねヒゲじい希望もあるんですよ。
は?どういうこと?こちらはがんになったデビルを8年間にわたって調査してきた…博士はおととし目を疑うようなデビルを見つけたんですよ。
えっどんな?一度口の中に出来たがんが3か月後に治っていたんです。
博士は今まで400匹以上を調査し6匹が自然に治っていたことを突き止めました。
えっ自然に治ったってどういうこと?はい。
博士はこのように説明しています。
免疫力があれば他のデビルからがんをうつされてもやっつけてくれるというんです。
そりゃすごい!でもまだ見つかったのは6匹なんでしょ?やっぱり心配ですなぁ。
そうですよね。
でもねこの免疫力があるデビルを繁殖させ増やしていけば絶滅は防げるかもしれません。
治療法を見つけるだけでなくこうした研究も始まっているんです。
なるほど。
新しい研究が進み病気が克服される日までデビルくん頑張って下さいね!応援しとりますぞ〜!今タスマニアデビルを絶滅から救う大きなプロジェクトが始まっています。
がんになっていない健康なデビルを集め別の島に移住させるんです。
選ばれたのはモライア島。
タスマニア本島の東に浮かぶ南北20km東西13kmの島です。
島には豊かな原生林が残っています。
デビルにとって暮らしやすい環境のはずです。
ここにがんに感染していないデビルを放し新たな生息地にしようというのです。
プロジェクトが始まったのは2年前。
今まで2回にわたりデビルが連れてこられました。
筒の中にはケアラーの家庭や保護施設などで大切に育てられたデビルが入っています。
これまで28匹が放されました。
無事に島の自然になじみ暮らしているでしょうか。
今年4月追跡調査に同行しました。
放したデビルには全て識別用のICチップが埋め込まれ名前が付けられています。
調査では一度放したデビルを捕まえ体の大きさや体重をはかるほか病気やストレスはないかなど詳しく調べます。
島で放した28匹のうち27匹の無事が確認されました。
そして1匹のメスのおなかの袋の中。
赤ちゃんです!乳首にしっかり吸い付いています。
更にうれしい出会いがありました。
いつものようにICチップを読み取ろうとすると…。
反応がありません。
ということは…この島で生まれたデビルに違いありません。
男の子でした。
お母さんの袋を離れてほぼ半年。
もう独り立ちして暮らしていたんです。
新天地で新たな命をつないでいたタスマニアデビル。
小さなでも確かな希望の光です。
世界中でタスマニアにしかいないタスマニアデビル。
絶滅の危機が迫る中それぞれが懸命に生きています。
がんを防ぐ方法が見つかるまで無事に生き続けることを願わずにはいられません。
眼下に広がるのはイタリアの美しい田園地帯。
鳥と人が一緒に飛んでいます。
実はこれ渡りを忘れたハイイロガンに人が渡りを教えているところ。
名付けて渡り鳥復活プロジェクト。
水の都ベネチアを越えて南へ。
ここに至るまでたくさんの苦労がありました。
ある時は優しい母となりまたある時は熱血コーチとなってヒナたちを大空へと導きます。
でもヒナたちは自由気まま。
訓練は一筋縄ではいきません。
山あり谷あり笑いあり。
固い絆で結ばれたガンと人の物語。
さああなたも鳥になってイタリアの大空へ!
(テーマ音楽)イタリア北東部アドリア海沿岸に200種類もの野鳥でにぎわう水鳥の楽園があります。
干拓されて畑になっていた湿原を15年ほど前に復元しました。
今日の主人公ハイイロガンです。
開発で住みかを追われイタリアからは一時姿を消していました。
この公園が出来た時人の手で連れてこられたんです。
渡り鳥復活プロジェクトが動きだしたのは去年4月。
プロジェクトのリーダー鳥類学者のペルコ博士です。
博士がやぶを下りていきます。
その先には…ハイイロガンの巣。
ペルコ博士卵を見ていますが…籠に入れて…あっ持って行っちゃいました!この卵には仲間に渡りを教えるという重要な役目があるのです。
親鳥が子育てを続けられるよう卵は少しずついくつかの巣から取ります。
ハイイロガンは渡り鳥ですがこの公園のガンは渡りをしません。
ヒナのうちに連れてこられたので本来親から教えられる渡りを知らないんです。
あとで詳しくご説明しますが渡り鳥が渡りをしないと大変な事になります。
そこで人が教えようという訳です。
ハンググライダー操縦の第一人者アキッレさん。
親代わりとなってヒナを育てます。
無事に成長したら一緒にイタリア縦断の旅に出ます。
ヒナの足が見え始めました。
頭が…出ました!ヒナは卵から出てきて最初に目にした大きくて動くものを親だと思い込む習性があります。
これを「刷り込み」と言います。
アキッレさんは自分を親と思わせるためにその瞬間をじ〜っと待っていたんです。
アキッレさんのガンの母親としての暮らしが始まりました。
昼間はヒナを外に連れ出します。
ヒナと遊ぶアキッレさん。
遊びも大切な刷り込みの一環です。
一緒にいる時間が長ければ長いほどヒナとの絆は深まります。
特に最初の数週間が肝心。
できるだけ一緒に過ごすんです。
こちらが今回の計画です。
渡りの時期は10月。
コーナ島自然公園からベネチアを経由して海岸沿いに南下。
越冬地のアンコーナまで500kmの道のりを人が鳥を連れて渡ろうという壮大なプランです。
鳥たちに渡りを教えられるほど自分にハンググライダーの技術があるのか不安はあります。
でもやるしかありません。
頑張ります。
さあ日課の散歩に出発です!野生の母鳥と同じようにヒナたちを連れ歩いて体を鍛え新しい世界を教えます。
「ママ!待って待って!」。
アキッレ・ママがヒナを収穫の終わった畑に連れてきました。
ヒナたちに葉っぱを差し出します。
ハイイロガンは植物の葉や穀物などを食べます。
食べられる草を教えているんです。
上空に天敵のノスリが現れました。
(笛の音)逃げろ!逃げろ!天敵を教えヒナを安全な場所に導くのもママの大切な役割。
突然散歩中の犬が飛び出してきました。
犬をつないで!犬をつないで下さい!アキッレ・ママがいち早く見つけて注意してくれました。
ありがとう!お休みの時間です。
大変な事になっています。
勘弁してくれよ〜。
布団の上にフンをしちゃいました。
寒さに弱いヒナのため一緒に泊まり込み。
いや〜渡り鳥のママになるのも大変ですね。
ダメダメ。
ダメ!乗っちゃダメ!痛いじゃないか…。
翌朝。
アキッレ・ママが妙なものを出してきました。
モーターハンググライダー。
もちろんまだ飛ぶ訳ではありません。
まずは一緒に走る訓練。
小さいころからハンググライダーの姿や音に慣れておかないと臆病なガンはついてこないからです。
ハンググライダーが走りだすとヒナたちも後を追って駆け出しました。
ママを信じているから恐れずについていくんです。
訓練は順調な滑り出し。
我らがヒナはこんなに大きくなりました。
ふ化から60日。
いよいよ飛行訓練が始まります。
さあハンググライダーを発進させてみましょう!あれ?どうも反応がよくありません。
成長して体が重くなったヒナは動きが緩慢になります。
何度もヒナの前を走ってみせるアキッレさん。
その時です。
横から強い風が吹いてきてヒナたちの体が浮かびました。
この日はここまで。
少〜しずつ飛ぶ感覚をつかんでいきます。
1週間後。
必死に羽ばたきながら走るヒナたち。
あっ飛んだ!飛び立ちました!3羽です。
ついに初飛行に成功!おっと…まだ飛んでいます!ヒナを励ますアキッレさん。
高度1m。
飛行距離400m。
初飛行にしては上出来です。
たくさん練習して翼の筋肉を鍛えれば高く飛べるようになるでしょう。
楽しみです。
初飛行から1か月がたちました。
たくましく羽ばたいています。
全ての鳥が無事飛べるようになりました。
アキッレさんの指導のおかげです。
いや〜「おめでとうございます」と言いたいところですがちょっと待った。
どうしました?ヒゲじい。
指導のおかげなんて言ってますが鳥なんだからわざわざ訓練しなくても自然に飛ぶようになるんじゃないですかね?確かに飛ぶようにはなります。
でも訓練しなければ渡りができるほど高く遠くまで飛べるようにはなりません。
じゃあ野生の渡り鳥も親鳥が訓練してるんですか?いいえ。
親鳥は渡りのルートを教えるだけ。
野生では天敵が訓練をしてくれるんです。
天敵?はい。
キツネやイタチアナグマなどハイイロガンを狙う動物はたくさんいます。
あ〜はいはい。
ガンは天敵の気配を感じる度に飛んで逃げます。
それを何度も何度も繰り返していたら翼の筋肉も鍛えられますよね?あっ確かにね。
さらにハイイロガンのねぐらは食事場所から遠く離れている事がしばしば。
寝込みを襲われないよう天敵が近づきにくい湖の小島や川の中州で眠ります。
毎日食事場所とねぐらを往復するうちに自然と鍛えられ遠くまで飛べるようになるんです。
なるほど。
野生では天敵がいる事でてんて〜き…えっ?てんて…てんて〜き的に鍛える…あれ?ヒゲじい今日ちょっと調子悪くないですか?ダジャレがうまくいきません。
ダジャレを忘れたヒゲじいに誰かダジャレを教えてちょうだい!第2章ではアキッレさんの猛特訓が続きます。
そしていよいよ渡りに出発。
水の都ベネチアを越えてイタリアを縦断!旅の行く手に果たして何が待っているのか?渡りを忘れたハイイロガンに渡りを教える今回のプロジェクト。
渡り鳥の保護に結び付く大切な役割があります。
1つは病気対策。
1か所に固まって暮らしていると病気で全滅してしまうおそれがあります。
でも渡りをすればそれを防げます。
さらに病気の鳥は過酷な渡りについてこられず健康なものだけが残ります。
また渡りによって他の群れと合流し繁殖相手を見つける事ができます。
こうして多様な遺伝子を持つ強い子孫を残す事ができるんです。
今回の計画の先にはペルコ博士の壮大な夢が広がっています。
ハイイロガンで成功したら他の渡り鳥にも役立てたいと考えているんです。
イタリアで絶滅してしまったクロヅルやコウノトリ。
それらの卵を他の国の繁殖地からもらい受けイタリア国内で渡りをするように教える計画です。
イタリアで渡りを復活させる事で種の保護をはかりたいのです。
この小さなヒナたちに渡り鳥の未来が懸かっているんです。
我らが勇者たち頑張って!ハイイロガンの飛行訓練は壁にぶつかっていました。
高度が上がらないんです。
せいぜい20mの高さにしか達しません。
高い建物や大きな丘などを越えて渡りを成功させるには100m以上の高さが必要です。
このままでは2か月後の渡りに間に合いません。
さらに悪い事に翌日からは強風が続きました。
風に弱いハンググライダーこれでは飛べません。
しかたなくバイクで訓練を行います。
でもガンたちはついてきてくれません。
食べ物を与えて気を引きます。
それでもやっぱり言う事を聞いてくれません。
(アキッレ)ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!アキッレさんが声をからして叫んでも見向きもしません。
実はこの年イタリアは記録的な猛暑。
「この暑いのに飛ぶなんて無理!」とでも言いたいようです。
ガンとアキッレさんの間に険悪なムードが漂ってきました。
果たしてこのままで渡りに間に合うんでしょうか?ガンたちのストライキに困り果てたアキッレさん。
思い切って気分転換をはかる事にしました。
やってきたのは山の中の涼しい湖です。
まずはガンたちとスキンシップ。
鬼コーチから優しいママに戻ります。
目線の高さが同じになったせいかぐ〜っと親密になった感じ。
ガンたち少しは機嫌が直ったかな?じゃあこの涼しい場所で飛行訓練を再開しちゃいましょう!アキッレさんまずお手本になって湖にダイブ!今度は…?ちょっと飛びました!ガンたちがまた飛び始めました。
結局一夏をここで過ごしたガンたち。
遊びながら筋力をつけて助走なしでも飛び立てるようになりました。
旅立ちの日が近づいた10月。
ガンたちは目覚ましい進歩を遂げていました。
見て下さい!この力強い羽ばたき。
課題だった高さも…ほら地面があんなに遠くに見えます。
合格ラインの100mまでもう一息です。
プロジェクトリーダーのペルコ博士が視察に来ました。
(ペルコ)だいぶ上手に飛べるようになってきました。
これなら渡りに出ても大丈夫でしょう。
500kmの長旅を無事に飛びきる事ができるか期待して見守りたいと思います。
出発の朝です。
霧が出ているものの風は無く上々の渡り日和。
元気に飛び立ちました。
ガンたち順調に上昇しています。
この日目指すのは40km先の街ピアンカーダ。
初の長距離飛行にアキッレさんも神経を使います。
GPSで進行方向を確認しながら気流を読みガンたちの飛行位置にも気を配ります。
ここでガンたちの飛び方にご注目。
ハンググライダーの後ろに列を作って飛んでいますよね。
飛んでいるハンググライダーのプロペラの左右には空気の渦が出ています。
渦の外側には上向きの気流が生まれます。
ガンたちはこの気流に乗って楽に飛ぼうとしているんです。
実は羽ばたく鳥の翼からも同じような渦が出ています。
こんなふうに隊列を組んで飛ぶ渡り鳥を見た事ありませんか?長距離を楽に飛ぶ省エネ飛行術。
これは誰から教えられる事なく身につくものなんですね。
さらによ〜く観察すると後ろを飛んでいたガンが前に出てきて入れ代わりました。
ほらここでも。
実は上向きの気流はプロペラに近いほど強いので疲れると前に来たくなるんです。
譲り合いながら群れの中で疲れを分散しているみたいです。
あっガンたちが突然下がり始めました。
予想外の行動です。
必死にガンを呼び戻すアキッレさん。
ガンがまた高度を上げ始めました。
アキッレさん一安心です。
出発してから1時間。
初日の目的地まであとわずかです。
ところが再び霧が出てきました。
視界が悪くなるとハンググライダーでの飛行は危険です。
どうにか初日の目的地に到着。
でも後ろを飛んでいたガンたちが降りてきません。
用心深いガンたち。
初めての場所を警戒しているようです。
するとアキッレさん「降りろ〜降りろ〜」と叫びながら地面にしゃがみ込みました。
群れのリーダーが地面に伏せているのを見ると安心して降りてくるんです。
初日の飛行はわずか1時間。
でもアキッレさんとガンたちにとっては長い長い1時間でした。
2日目の目的地は海沿いの街カオルレ。
3日目の目的地はカポシーレ。
旅は順調に続いています。
そして4日目。
水の都ベネチア上空にやってきました。
運河に沿って飛んでいきます。
眼下に見えるのはベネチアの中心大聖堂と宮殿が並ぶサンマルコ広場。
地上の人々もこの光景にびっくりです。
ベネチアを越えた時突然ガンたちがアキッレさんに近づいてきました。
どうしたんでしょう?うわ〜たくさんの水鳥!初めて見る鳥の大群に驚いたようです。
でも近づきすぎると危険です。
アキッレさん手で制します。
渡りを通してアキッレさんとガンの絆は一層深まりました。
コーナ島をたって10日目。
渡りの終着地が見えてきました。
ガンたちはついに500kmの長旅を飛びきったんです。
Dialogue:0,0:53:50.13,0:54:01.90,Defa2015/03/08(日) 02:42〜03:38
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!セレクション「動物たちを守れ!前代未聞の保護プロジェクト」[字]

これまでの「ダーウィンが来た!」から前代未聞の野生動物保護プロジェクトを紹介。タスマニアデビルを絶滅から守る活動と人の手でハイイロガンに渡りを教える壮大な計画。

詳細情報
番組内容
これまでの「ダーウィンが来た!」から前代未聞の野生動物保護プロジェクトを紹介。オーストラリアにすむタスマニアデビルは珍しい「伝染するがん」で数が激減した。絶滅の危機にありながらたくましく生きる姿と保護に取り組む人々を追う。また、イタリアでは渡りを忘れたハイイロガンに人が渡りを教えるプロジェクトに密着。愛情を込めて育てられた鳥たちがモーターハンググライダーに導かれ、イタリア縦断500キロの旅に出発!
出演者
【語り】首藤奈知子,龍田直樹,豊嶋真千子,近田雄一

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:19226(0x4B1A)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: