どうもお話ありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(三笑亭夢之助)どうも大変にお遊びの多い中本日は東京落語会をお選び頂きまして御礼を申し上げます。
噺家は見栄の商売でございましてねお金の無いくせにかけるところに目いっぱいかけるんでございますよ。
特に着物のお好きな奥様にはちょっとよく見て頂きたいんでございますがこの着物は京都の本場西陣で1年かけて織りました生地を石川県は金沢に送りまして加賀友禅で色を染めたという着物とは何も関係ございませんこんな物はね。
(笑い)ええ。
もうなんです浅草のとあるお店で羽織と着物で2万円でございますね。
生地のほうがポリエステルという…。
(笑い)捨てたくなるような名前が付いてるんでございますが。
日本のもの作りいわゆる伝統工芸品ですね漆を使った物金粉金箔を使った物などこの技術を教える親方と教わるお弟子さん。
このお弟子さんは親方の所に365日寝泊まりしてその技を習得するという事を聞きますが我々落語家も師匠の家に365日住み込みで修業する内弟子と外にアパートを借りて朝師匠の所へやって来る外弟子と2つに分かれておりますが私の場合は外弟子でした。
アパートの6畳1間をすぐ上の兄弟子と2人で借りましてその6畳の畳を3枚ずつ使うんですが借りた時に兄弟子が「お前窓側使っていいうん。
俺はね奥の畳3枚使うから」って言ってくれましてねうれしかったんですね。
あ〜そらぁそうです。
夜景を見ながら食事をする所でも窓側がいい。
列車も窓側がいいに決まってますから「あっありがとうございます」感謝の気持ちを込めて寝ておりましたら夜中にフッと気が付いた。
2人ともお金に余裕がありませんから両方でカーテンを買ってなかったんですね。
案の定東京日の出朝6時17分時間どおりに日光がこれでもかというぐらいに入ってきましてもう顔がまぶしいというより痛くて寝てられないんですね。
で兄弟子のほうを見ましたら奥の薄暗い所でそのグッスリと何の心配もなく仏様のような寝顔を見た時に「あ〜この兄弟子とズ〜ッとやっていくんだな」という何とも言えない覚悟というのが芽生えたんでございますが。
外弟子というのは基本的には師匠の家に泊まる事はないんですが師匠が地方の落語会等で帰りが深夜になる時には布団を敷いて泊まります。
その時には長い紐が用意されておりましてでこの紐で手首を縛ってその先のほうをこう廊下へ出して寝るんですね。
夜中に師匠が帰ってきて廊下に出てる紐を引っ張りますと手首が振られますから「あ〜師匠が帰った」って急いで起きて「お帰んなさいませ」。
鞄から着物を出して掛ける。
枕元には煙草盆水を用意するという事をするんですがたまに変わった事があります。
例によって紐を廊下に出して寝ておりましたら夜中振られましたんでね急いで起きていくと紐の先に猫がぶら下がってましてね。
(笑い)これぶら下がっているというよりも縛られてるんですね。
これはもう兄弟子の悪ふざけ。
これをもう何回もやられますともう寒い日はいちいち布団から出ていくのが面倒ですから「あっそうだ自分は布団の中に入ってて出てる紐をこっちから引っ張ってきて猫をほどけばいい」という事を考えます。
ある時寝ておりましたら振られましたんでね「あ〜やられたな」と思って紐をツ〜ッと引っ張ってきましたら紐の先に師匠がついてきましてね…。
(笑い)もうえらく怒られたんでございますが。
でこの修業期間を落語界では前座時代と申しますがこの時代は全くお金が入りません。
従って三度三度の食事は師匠の家で頂くという事になりますが頂くったって師匠と弟子じゃお菜がこんなに違いますからね。
我々が毎日食べておりましたのは御飯味噌汁前の日に残った一品お漬け物です。
私も覚えがございます。
前座の頃兄弟子と一緒に師匠の家で朝御飯を頂いて掃除をしておりましたら師匠が起きて参りましてね「これからお客が来る。
ついては寿司屋から刺身を3人前取ってあるから来たら冷蔵庫へ入れとけよ」って出かけたんですね。
「分かりました。
行ってらっしゃいませ」。
見送りました。
しばらくしたらお寿司屋さんが「どうもお待ち遠さん」とお刺身の入った飯台をテーブルに置いていきました。
これを横目でフッと見たらまあ〜このお刺身のおいしそうなことね。
マグロの中トロから始まって天然のハマチヒラメ厚切りのアワビ鮮度のいいボタンエビなどがダ〜ッと並んでおりました。
これを見た瞬間「エ〜ッ考えたらこんなおいしい物って何年も食べてない。
何年も食べてない割にはこんなにあるんだからね一切れぐらいは盗み食べたいな」と思いました。
飯台を覗いている兄弟子の顔フッと見ましたら兄弟子も私と同じ事を考えてる目でね誰言うとなく食べましたがまあ〜頬っぺたが落ちる。
あの事でございますね。
いまだにこの味は忘れておりません。
そうしましたら兄弟子が二切れ目を口に入れてるんですね。
(笑い)それで私も二切れ目をこう口に。
そうしたら兄弟子が「お前は弟弟子のくせに生意気だ」と言って三切れ目を食ってるんですね。
「何もこんな時ね兄弟子も弟弟子もないでしょ?」。
私が三切れ目を食べましたら「ばか野郎10年早いぞ」と言って四切れ目。
「じゃあ私も」。
あっという間に無くなりました。
若い頃覚えがあると思いますがカ〜ッと夢中になってたら後先分かりませんものね。
これ食べたあとですけどね「どうしよう?」。
とてもじゃないけど2人合わせたって買えるような金額じゃございませんから「いや困ったな〜」と思ったら世の中うまくできておりますね。
その当時うちの師匠のおかみさん奥様。
この方が先程登場致しました猫が好きで猫好きで4匹飼ってたんでございますよ。
(笑い)この話の先は早いと思いませんか?
(笑い)刺身は我々が食べてなくて猫が4匹いたらこれ誰だって同じ事を考えますこれね。
「これ猫に申し訳ねえけどよ猫が食った事にしよう」。
「兄さん。
そうしよう」。
話が決まりました。
師匠が帰ってきて聞きます。
「刺身どうした?」。
「師匠。
すみません。
兄弟子と二階掃除してたら不注意で猫が来て食べちゃって申し訳ありません」って謝った。
「そうか猫食ったんじゃしょうがない」。
「えっ?」。
「猫食ったんじゃしょうがないよ。
飯台見せろ」って言うから「あっいいですよ」。
空になった入れ物を見せましたらその空になった入れ物をうちの師匠がジ〜ッ。
5分ぐらい見てましてね終いに「これ猫食べたんじゃない。
お前たち食ったな?」。
びっくり致しましてね嘘がばれるとくびになりますから「いや。
猫が食べたんですよいえ猫が食べたんですええ猫が。
師匠。
どうしてこれ我々が食べたって分かるんですか」ったら「猫はワサビつけて食わねえだろうお前」。
(笑い)一発でくびですね。
それから雨が降ろうが槍が降ろうが玄関ところへジ〜ッとしてると大体10日ぐらいで師匠から「そんなにやりてえんならもう一度やり直せ」という声がかかってまた修業が始まります。
で肝心な噺の落語稽古これも2つに分かれます。
自分の師匠からじかに教わるのと他の師匠の所へ出かけていくいわゆる出稽古の2つですね。
弟子は師匠の芸に惚れて入ってきてますから自分の師匠から落語を教わる時にはもう一言一句見逃さない。
終いには息する呼吸までもが師匠そっくりになります。
とせっかく噺を教わってもこれ師匠の真似になってしまいますね。
で初めは真似でいいんですがズ〜ッと続けているとそらぁ同じ噺を2つ並べたら本物の師匠のほうがいいに決まってますから弟子としてはなかなかうだつが上がっていきません。
そこで他の師匠の呼吸も必要になって出稽古に行くという事になりますが私が前座の頃は橘ノ圓師匠の所へよく出稽古に行きました。
で「やってごらん」ってんで教わった噺をしていると圓師匠も当時30歳後半。
若かったですから小さいお子さんと私が落語している最中でも遊んでまして。
噺を聞いてくれてんだか聞いてないんだか分からないぐらいに夢中になって遊んでます。
で噺が終わりますと「はいご苦労さん。
今娘と遊んでたお手玉散らばってるから集めてこっち持ってきておくれ」。
「はい」。
「幾つある?」。
「ええ師匠10個ありますが」。
「10個?うん。
今ねお前さんが話をした一席の中にその数だけ間違いがありますからよく考えて下さいよ」と言われますね。
でどことどこがとはすぐに教えてくれません。
でそれから自分なりに噺の間ですとか声の強弱目配り仕草等を考えてやっていくとお手玉の数がどんどん減っていきます。
これが何ともうれしかった事を覚えておりますが。
でこの出稽古は噺以外にも実になる事があります。
先代の圓遊師匠の所へ伺った時には大きさの違う扇子を5本から6本師匠が常に持っておりました。
でその落語の演目によって使う扇子が変わります。
ご存じ「時そば」という落語の時には身幅の細い扇子を使っておられました。
蕎麦を食べる割り箸に見立てますから細い扇子のほうが蕎麦を食べる時の仕草がとてもこうきれいに映ります。
反対にお侍が出てくる落語の時には幅の太い扇子を使います。
というのも武士が煙草をのむ時の煙管はズシッとこう重くて太いんですね。
その太い羅宇の所をまぁこういう形でもって吸っております。
いつ何時敵に襲われて振りかかる太刀も手首を返してバシッとこう受け止めるというまぁ守りの武器にも使われていたという事ですから幅の太い扇子を使ってお侍の武張った姿をまぁ出していきます。
扇子の使い方一つでその時代背景が分かるというのもまぁ落語の面白さかもしれません。
でうちの師匠の場合にはお風呂が好きですから弟子たちに稽古をつける時には師匠がお風呂へ入ってで弟子はその前の板の間に座って対面する形で「師匠。
よろしくお願いします」と言うと頭に手拭いを載っけた師匠がお風呂から首顔が出てますから一席ぶつという事になります。
と噺の途中で師匠の肩がこうやたら動くんですね。
と弟子としてはその仕草が気になりますから「あれっ?一体どういう仕草してんだろう?」ってんで一斉にお風呂の中を覗きますと師匠がただ股ぐらを掻いてるだけだったという…。
(笑い)まぁそんな事もあったんでございますが。
で常々稽古の時に仰っておりました言葉は「硬いと駄目。
言葉はとにかく軟らかくする。
で軟らかくするからお客様がお笑いになる。
だから言葉で遊んでごらんなさい」と言うんですね。
「あ〜違う言い回しはないのか?」。
「あ〜なるほどこれだな」という出来事がございました。
随分前に昭和の落語界を引っ張ってきました四天王とまで言われたある師匠ですがご自分の落語会で一席噺をしておりましたら前の席で堂々といびきをかいて寝ているお客様がいる。
この師匠喧嘩っ早いところへもってきてプライドの高い師匠ですから我慢できなかったんでしょう。
噺をやめて舞台の上から寝てる人に向かって「金を返すから今すぐ出ていけ」とやったんですね。
で言われたほうだって「何だその言い方は。
お客に対して失礼だろう」。
「どっちが失礼だ。
出ていけ」。
「出ていけとは何だ」というこの事件が翌日スポーツ新聞に載るわ朝のテレビのワイドショーで取り上げられるわもう大変な騒ぎになりました。
この寝ているお客様に対して噺家が「金を返すから出ていけ」というこの言葉をそれでは師匠の言う違う言い回しでやったらどうなるのかちょっとやってみたいと思いますが。
寝てる人に向かって噺家が舞台の上から「お客さんそこの人あなた。
いびきをかいてると出てってもらいますよ」。
起こされてびっくりした人が「何だよいきなりよ〜。
俺のいびきのどこが悪いんだよ」と言ったら噺家が「ええあなたがいびきをかきますとね他のお客様が起きますから」というね。
(笑い)言葉が遊びますと周りの雰囲気も変わってくるようでございますが。
「はいはいはい皆さん集まってくれましたか?あ〜遠慮しないでねこっち入っとくれ」。
「そうですか。
じゃあみんな上がろうじゃねえか。
ね?大家さんこんちは」。
「こんちは」。
「こんちは大家さん」。
「大家さんこんちは」。
「こんちは大家さん」。
「大家さんこんちは」。
「こんちは」。
「こんちは…」。
「はい。
どんどん入ってなで奥行ったら順に順に座っておくれよ」。
「へいへい。
座ろうじゃねえ。
ええ。
何です?大家さん話があるからみんな集まってくれって何です?」。
「いえ大した話じゃないんですよ。
表の長屋角の所なしばらく空き店になっておりましたが今度おかげさんで豆腐屋さんが入ってくれました。
で私ゃこの豆腐を使った木の芽田楽が大好きでねそこでお前さんたちにもせっかくこの長屋で商売をしていこうという豆腐屋さんだ。
これからよろしくという事でねその私の好きな木の芽田楽を皆さんにご馳走しようと思ってな。
辰っつぁん。
お前さん木の芽田楽は好きかい?」。
「結構ですね木の芽田楽いいですね。
木の芽田楽って何です?」。
「何?何?何?知らないで返事してるのかい?木綿豆腐を四角いお餅のように薄く切って串を刺してそこに甘い味噌を塗って焼いたあと山椒の粉をパラパラッと振りかけますとね味噌の焼けた香ばしい匂いと山椒の香りでええ何ともおいしいもんですよ」。
「こんちは〜。
角の豆腐屋ですがご注文の木の芽田楽お持ちしました」。
「あ〜来た来た。
うんこっちへ持ってきておくれ。
はいはいはいご苦労さん。
どうです?これが木の芽田楽」。
「ハア〜ッ大皿に山盛りですね。
どのくらいありますかね?」。
「そうだねザッと見ただけでも120〜130本はあるでしょう」。
「カア〜ッなるほどおいしそうな匂いしてますからじゃあ頂き…」。
「ちょっと待ち…。
いいえ手を出さない手を。
どうだろうね?これを皆さんの頭の数だけ均等に分けて食べるというのも芸がありませんからひとつ『ん廻し』というのをやりましょう」。
「ん廻し?ヘエ〜。
何です?大家さんそのん廻しって」。
「人間運が付き物。
運のいい人そうでない人これもまた人生です。
昔ね唐土にと言いますから今のお隣中国でそれはそれは目の覚めるような美しい姉妹がいたそうです。
どちらも甲乙つけがたいという大変な美人。
ある時この姉と妹が湖の畔で何を思ったか二人とも一糸まとわぬ姿で寝ていたそうです」。
「アラッ?一糸まとわぬ?」。
「そうですそうです。
一糸まとわぬというのはどういう事かといったらね湖湖面に顔を出した亀とスッポンがその二人を見て驚いた。
特にスッポンはびっくりしてポンと跳ねた。
これがいわゆるスッポンポンというやつでしょうな。
ええええ」。
(笑い)「そこへね国を司る偉い大臣が輿に乗ってお通りになる。
裸の二人を見た大臣はスッポンどころの騒ぎじゃない。
カ〜ッとなってボ〜ッとなって一目惚れというやつで妹のほうを娶ってお妃にしたという。
まぁこれが妹の持っている運でしょう。
「ヘエ〜じゃあ姉のほうはどうなったんです?」。
「姉はただそこで風邪をひいただけだというね」。
(笑い)「まぁこれもその人の人生です。
そこでね皆さんにも『ん
(運)』のついた言葉を考えてもらって『ん』が1つ入っていたら1本2つ入っていたら2本というように『ん』の数だけ田楽が食べられるという言葉遊びですよ。
ええ。
米さん。
お前さん一番初めに手出そうとした。
じゃあお前さんからいきましょう『ん』だよ『ん』」。
「えっ?あらっ私から?あ〜そうですか。
ええつく言葉?え〜どうも。
つく言葉ったってねどうもええいきなりですからねすみませんすぐにはできません」。
「できてますよ。
ええ。
『すみませんすぐにはできません』と『ん』が2つ入ってます」。
「えっ?あ〜入ってますね。
えっ?じゃあこれ2本ですか?じゃあ頂きます」。
「はいはい。
そのお隣は?」。
「ええ私の故郷で会津磐梯山ってなぁ如何でしょうか?」。
「あ〜いいですねはいはい。
会津ばんだいさんとあなたも2本ですね。
取って下さいよ」。
「大家さん。
あの〜これはどうです?」。
「あ〜清さんかい?何かできましたか?」。
「昔ね金持ちの旦那が隅田川で深川の芸者衆40人を貸し切って舟へ乗せましてねいわゆる舟遊びってやつですよ。
持ち込んだ酒肴で楽しくやってたんですがね猪牙舟の定員が10人のところへ40人も乗せたもんですからね想像以上に舟が沈みましてそこへ横からド〜ンと大波が来たからたまりませんよあっという間に舟がひっくり返って乗っていた芸者衆が40人が水を飲んだり岸へ頭ぶつけたりして大けが。
ところが旦那だけはかすり傷一つしないという無傷。
ええ?女性陣全員がけがをして男だけ助かったんだ。
ええ。
『何でだ』って旦那に聞いたら『たまたまついていた』と言うんですがね」。
「何だい?そりゃ」。
(笑い)「いえ何だいって運のいい人でしょ?その旦那運がいいと思うんですがね」。
「あの〜清さんねここで運のいい話をしてくれって言ってんじゃないんですよ『ん』のつく言葉を言って下さいって言葉遊びなんですから。
そこで手が上がってますね。
はいはいお願いしますよ」。
「人参大根ってのは如何でしょうか?」。
「そうそうそう。
それでいいですそれで。
ええ。
にんじんだいこんとあっ3つ入ってます。
3本取って下さいよ。
はいそのお隣は?」。
「ピーマンレンコンインゲン」。
「おうおう。
人参大根のあとがピーマンレンコンインゲンとあらっ5つ入ってます。
5本取って下さいよ。
はいそのお隣は?」。
「なすびキューリトマト」。
(笑い)「何?」。
「なすびキューリトマト」。
「何だい?そらぁ」。
「いえ何だいってあいつが人参大根でしょ?でこれがピーマンレンコンインゲンですから私はなすびキューリトマト」。
「あっ芳さんね気持ちはよく分かりますがね八百屋さんの前で品物を並べてんじゃないんです。
みんな『ん』がついてるでしょ?お前さんの今言ったのは『ん』がついてない」。
「えっ?人参?ええ大根?あっあっそういう事?アア〜ッじゃあ言い直します」。
「ああ。
言ってごらんなさい」。
「ええ。
なすびん」。
「な…なすびん?」。
(笑い)「キューリントマトン。
これ私大変好きあるよ」。
「何だい?そらぁ。
駄目駄目。
後回し。
ちゃんと考えてからお願いしますよ」。
「あの〜大家さんお光ですが」。
「お光っちゃんかい?何かできましたか?」。
「こんなんでいいんでしょうか?」。
「いやいや『ん』がついてたら何でもいいんですよ。
言ってごらんなさい」。
「はい。
神田にいる伯父さんの名前が八右衛門で伯母さんはおせんなんですが」。
「オ〜ッいいですね。
頂きましょう。
ええ。
かんだのおじさんええはちえもんおばさんおせんとあっ5つ入ってます。
5本取って下さいよ」。
「はいはい大家さん。
あの〜半二ですが」。
「あ〜あ〜半さん?はいはい棟梁。
何かできましたか?」。
「ええ。
これからね私の好きな浪花節ええ。
浪曲を語りますからその中に『ん』ってぇ言葉が入ってますんで大家さん恐れ入りますが両手の指をちょいとお借りしたいんですが」。
「あれっこりゃうれしいね。
ええ。
とにかくね皆さんにたんと食べてもらいたいですから両手の指を貸してくれはうれしい。
うんうん。
で何を聞かせてくれるんだい?」。
「へい『ん』が入っているのは広沢虎造『清水次郎長』です」。
「あ〜そうですかはいはいはい。
じゃあお願いしますよ」。
「へい」。
「いや〜あなたには恐れ入ったばかに詳しいね」。
「ええ。
私は侠客博打打ちが好きですからね」。
「どうです?どこの侠客がいいでしょう?」。
「そりゃ関東でしょうええ関東。
甲州上州武州といったら結構な博打打ちがおりますからね。
でも頭数が多いのは東海道。
東海道にはいいのが居るね。
寺津間之助西尾治助見附の小和田友蔵藤枝長楽寺清兵衛伊豆の大場久八富士郡宮島歳三雲風亀吉といったらすごいからね」。
「すごいからねって棟梁まだ『ん』が1つも出てませんよ。
『ん』が出て…」。
「大家さん。
このあとええ。
その東海道数ある博打打ちの中で駿河の国は安倍郡清水湊有渡町に住む山本長五郎通称清水次郎長。
これが街道一の親分よってぇの。
大家さん親分の『ぶん』で1本お願いします」。
(笑い)「何だいそりゃ。
あきれたね〜。
棟梁ねそういう時にはね『清水の次郎長親分で1本下さい』って言やぁそれでいいんですよ。
ね?何が『東海道にはいいのが居るね』だよ。
皆さんもそうですよ。
余計な事言わなくていいですからね。
『ん』のつく言葉を言って下さい。
言葉遊びなんですから」。
「へえへえへえ。
大家さん。
こういうのは如何でしょうかね?」。
「あ〜留さんかい?いやいやしばらくでしたね。
もう体のほうは大丈夫なんですか?」。
「ええ。
もう年ですからねええいろんな所がギシギシ痛みましてねこの間も病院へ行ったら関節炎だと言われましていきなり表へ出たもんですから鼻炎になりましてねもらった薬が合わなかったんでしょうじんま疹が出まして…」。
(笑い)「で最後が口内炎で終わりました」。
「そりゃ随分大変でしたね。
何です?かんせつえんびえんええじんましんでこうないえん。
あらっ6本ですね。
取って下さいよ。
それにしてもまだ病院には行ってるんですか?」。
「ええ。
もう結構行きつけの病院はありますから」。
「留さんね行きつけの病院って飲み屋じゃないんですから病院の場合には掛かりつけの病院と言わなきゃいけませんよ。
行きつけの病院なんて言ってるから常連になっちゃう。
しょっちゅう病院行く事になるんですからしっかりして下さいよ」。
「大家さんできましたんでお願いします」。
「あ〜加代さんかい?はいはいできましたか?」。
「旅行が好きなんでそれでやらせてもらいたいんですが」。
「あっ旅行?あ〜そうですかはいはい。
じゃあお願いしますよ」。
「はい。
山陰本線電車運賃3万3,333円でお願い致します」。
「おやおやおや随分出ましたね。
何々?さんいんほんせんでんしゃうんちんさんまんさんぜんさんびゃくさんじゅうさんえんとあらあらっ全部で15本ですね」。
「いえ。
30本です」。
「30本?何で?」。
「往復料金なんですこれ」。
「あっ」。
(笑い)「往復ですか。
若いのにしっかりしてますな」。
「大家さん。
これ愚痴なんですがよろしいでしょうか?」。
「愚痴?ええまぁそりゃいいんですけどもねさっきの棟梁みたいのは駄目ですよ。
さんざんお喋りして1本ってのは」。
「大丈夫です。
『ん』は結構入っとります」。
「あっそうですか。
ああ。
じゃあ『ん』が入ってんならじゃあその愚痴というのを聞きましょう」。
「ありがとうございます。
私思いますに昔は御飯でも芋でもお腹が膨れたらそれだけで幸せだったんですが今はおいしい物があり過ぎます。
ついつい食べ過ぎて太るなと言うほうが無理な世の中になりました。
焼き肉屋へ行っても『ん』がつく物ほどうまいときてます。
タン塩ビビンバ。
この『ん』のつく…。
家の女房一緒になった時は体の細い人でしたが今じゃもう全身パンパンです。
この間家の伜が小学校で剣道二段になりましたから『お前偉いな』ったら家の伜が『僕よりお母さんのほうが偉い』っつう。
どうしてだって聞いたら『僕剣道二段だけどお母さんの腹は三段だから』っつって」。
(笑い)「全部で11本です」。
「な何だい?そらぁ。
愚痴言いながら数えてたの?すごいねどうも。
取って下さいよ」。
「大家さん。
できました」。
「あ〜芳さんかい?さっきのなすびんキューリンああいうのは駄目だよ」。
「大丈夫。
今度はちゃんと考えましたから」。
「あ〜そうかい。
じゃあ考えたのを言ってごらんなさい」。
「へえ。
え〜動物園キリンペンギンライオンです」。
「あらっまた随分かわいいの出しましたね。
何何?動物えんキリンペンギンええライオンとあ〜全部で5本ですね?」。
「それにあと10本足して下さい」。
「10本も?何で?」。
「そこにライオンが入ってますでしょ?ライオンは動物の中でも猛獣です」。
(笑い)「何?」。
「イヒヒヒヒ。
ライオンは猛獣
(もう10)なんですがね」。
「ハ〜ハ〜こらぁうまかったね。
あ〜なるほどライオンだけにもう10かい?結構結構。
10本取って下さいよ」。
「大家さん。
ちょっと算盤算盤お願いしたいんですが」。
「算盤?ウエ〜ッすごい人が出てきましたよヘエ〜ッ。
はいはい用意しましたよ」。
「あ〜そうですか?じゃあ参ります。
ええ。
せんねんしんぜんいんのもんぜんげんかんばんにんげんきんべんがんめんげんうんきんこつきょうじんしんじんさんねんえんだんばんこんあんざんさんにんちんちんしんぜんいんもんぜんかんばんきんかんばんぎんかんばんひょうたんかんばんたてかんばんきんかんばんこんこんまんきんたんぎんかんばんこんこんはんごんたんひょうたんかんばんきゅうてんたてかんばんもんしんおうしんそうだん」と88本です」。
「88…」。
(笑い)「何?それ今のそれ何です?」。
「いえあの〜せんねんしんぜんいんのもんぜんげんかんばんですから千年以上の都京都に神泉院という所がありましてねそこに玄関番をしてるおじさんが居りましてにんげんきんべんがんめんげんうんきんこつきょうじんこのおじさん人間的には非常に真面目でよく働くもんですからがんめんげんうん顔の色も玄雲玄い雲のように真っ黒。
おまけに筋骨強靱体がガッチリして丈夫でしんじんさんねんこのおじさん大変信心深い人でして『自分は50歳を過ぎてもまだ独り者。
誰かいい人が現れますように』と3年願をかけましたらえんだんばんこんあんざんさんにんちんちんいい縁談がありまして晩婚なのに安産3人チンチン3人の男の子に恵まれましてね」。
(笑い)「で神泉院門前看板金看板銀看板瓢箪看板立て看板と門の所に4つの看板がありまして右側の金看板には根々万金丹と薬の名前が書いてありまして左っ側の銀看板には根々反魂丹とこれも薬の名前が書いてありましてぶら下がっている瓢箪看板には灸点『家ではお灸もできます』なんという事が書いてありまして立て看板にはもんしんおうしんそうだん問診『こちらに来たら話を聞きましょう』往診『なんならそっちへ出向いてって体を診てあげましょう。
どちらも相談にのりますよ』ってんで88本なんですよ」。
「ハア〜ッ驚きましたね。
あっけにとられてね算盤入れるの忘れちゃったんでもう1回もう1回お願いします」。
「あ〜そうですか。
じゃあ参ります。
ええ。
千年神泉院の門前玄関番人間勤勉顔面玄雲筋骨強靱信心三年縁談晩婚安産3人チンチン神泉院門前看板金看板銀看板瓢箪看板立て看板金看板根々万金丹銀看板根々反魂丹瓢箪看板灸点立て看板問診往診相談とエヘヘヘどうも」。
(拍手)「2回ですから160本にまけます」。
「ばかな事を言って」。
「ん廻し」でございます。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2015/03/07(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「ん廻(まわ)し」[解][字][再]
落語「ん廻(まわ)し」▽三笑亭夢之助▽第666回東京落語会
詳細情報
番組内容
落語「ん廻(まわ)し」▽三笑亭夢之助▽第666回東京落語会
出演者
【出演】三笑亭夢之助
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:17799(0x4587)