グレーテルのかまど・選「ボルドー・修道女たちのカヌレ」 2015.03.06


深い焼き色独特な姿のお菓子…外はカリッと香ばしく中はしっとり軟らかな食感。
ラム酒とバニラの香りが口いっぱいに広がる焼き菓子です。
このカヌレが生まれたのはワインで名高いフランス…そうワインとカヌレには深〜い関係があったのです。
カヌレはその昔ボルドーの修道女たちが考えついたお菓子だったそうで。
ご存じでした?今回はかつて修道女たちがどのようにカヌレを誕生させたのかを探りながらボルドーの人々がカヌレに込めた愛情をひもときます。
光る石をたどれば行き着く不思議な家にあのお菓子の家のヘンゼルとグレーテルの末裔が暮らしています。
彼らが振る舞うおいしいお菓子の物語をご賞味あれ。
あのね。
えっ?ゆうべお宅のお姉さんすごく飲んでたよ。
そうだよ。
何か今ワインにはまってるらしくて。
しかもボルドーのワイン限定で。
ボルドー。
来ましたか。
何か今朝もボルドーについて調べ物してた。
おお。
ボルドーの魅力に気付いちゃったみたいだね。
そうだよかまど。
あれ見てよあれ。
なるほど。
またワインの事じゃないの?これ。
また飲む気だよ姉ちゃん。
違うね。
えっ?あれだと思うよあれ。
何?本を見て下さい。
あれって…何だ?あれです。
ボルドーのあれといえば…。
あ〜!あれってこれか!今宵ひもとくのはボルドー・修道女たちのカヌレ。
世界有数のワインの産地ボルドー。
フランス南西部にあり古くから農業や貿易で栄えた町です。
この音何の音だと思います?実はカヌレを型から外す音なんです。
ボルドーの町のあちこちでこの音が聞こえます。
12の溝の入った専用の型で焼かれる独特のフォルムと中の生地は卵砂糖小麦粉バター牛乳を混ぜたカスタードプリンのような軟らかさが特徴。
時間をかけて焼き上げられます。
カヌレは町のパン屋お菓子の店カフェーなど至る所で見かけます。
ワインと並ぶボルドーの名物です。
地元の人たちはどんなふうにカヌレを楽しんでいるのでしょう?こちらはボルドーで人気のカヌレ専門店の一つ。
大きさや焼き加減を選べる店も多いんですって。
さすが本場。
この店では大きさのバリエ−ションは大中小の3種類。
焼き具合もやわらかめ普通かための3種類もあるそうです。
大きさとともに自由に組み合わせられるんですって。
ボルドー名物のお菓子カヌレ。
町の人々の日常に溶け込んだなくてはならないお菓子です。
へえ〜ボルドーってさワインしか知らなかったけどカヌレもボルドーが故郷のお菓子だったんだね。
初めて知ったよこれ。
地元の人たちに愛されて守られてきた大切なボルドーのお菓子なんですよカヌレ。
じゃあ早速作ろうよ。
はいじゃあ今日は本格的なカヌレを作りたいと思いますから味わいのキメテ言って下さい。
はい!よし!はいじゃあいってみましょう。
まずは牛乳に縦半分に裂いたバニラ。
それを入れます。
OK。
今日はやる気に満ちてるからね。
どんな事でもね。
そういう時ある。
そういう時ある。
何かテンション高い時ある。
それ入れて沸騰させます。
OK。
軽くかき混ぜてそのバニラの香りを全体に行き渡らせる。
止めるよ。
はい止めて止めて。
待っとってねバニラの香りさんという事でここでもう待っとってもらうでしょ?OKじゃあ次いこう。
じゃあオキテ言って下さい。
はい。
そのまま冷蔵庫で1日ねかして下さい。
それで終了。
牛乳沸騰させただけじゃん。
そうですよ。
あのねねかさないと焼いた時に型から噴き出しちゃったりしますから。
そりゃ駄目だね。
駄目でしょ?カヌレが世に出始めたのは18世紀。
誕生の舞台となったのはある修道院だといわれています。
ここがカヌレの元になったお菓子が作られたとされる…現在はボルドーのあるアキテーヌ地方の文化局本部となっています。
この修道院では20名ほどの修道女が共同生活をしていました。
彼女たちは酒造りや薬草などの知識を持ちまた食べ物を民衆に分け与えていました。
お菓子もその一つ。
素朴なお菓子を手作りし町へ出て貧しい人々に施したといいます。
カヌレの原型は一説には棒状のものだったとも伝えられますが滋養豊かなこのお菓子を人々はありがたく受け取った事でしょう。
修道院とお菓子。
その関係を探るため伝統的な規律を守る日本の修道院を訪ねました。
生活の中心は祈り。
40名ほどの修道女たちが共同で生活しています。
こうした祈りを一日7回。
そしてひたすら労働を続けます。
自分たちが食べるだけの野菜やお米を作り魚も池で養殖しています。
できる限り自給自足を目指す生活を営んでいます。
毎日のパンも手作りします。
一つのパンを何人かで切り分けて食べる事も神の教えに基づくものです。
お菓子作りも大切な労働の一つ。
ここではワッフルに似た形のクッキーを作り続けてきました。
修道女たちはお菓子にどんな思いを込めて作っているのでしょうか。
見えないんですけどお菓子の中にやっぱり祈りを込めてという。
お説教みたいなお話とかそういう事でなくって生活の中で味わって頂けるものがやっぱりお菓子という一つの形になるんじゃないでしょうか。
ボルドーの修道女たちも祈りの日々の中貧しい人々が救われるようにと身近な材料を使ってカヌレを作ったに違いありません。
ボルドーにはカヌレ作りを実現させる環境がそろっていました。
海沿いの河口付近の地形にちなんで月の港と呼ばれたボルドーは近隣諸国との貿易で栄えていました。
砂糖ラム酒香料などカヌレの材料が船で行き来していたのです。
更にワイン造りが盛んなボルドーではその製造過程である食材が残りました。
ワインのおりを取り除くのに使われたのが卵白。
卵白だけを使う事で卵黄が余りました。
その使いみちとしてカヌレの材料に生かされたとの事。
カヌレはボルドーという土地柄と修道女たちの営みから生み出されたお菓子。
いくつもの言い伝えが人々の愛着とロマンを一層かきたてています。
へえ〜カヌレってさボルドーの修道院で生まれたなんて俺知らなかったよ。
知らなかった?修道女たちが貧しい人たちにカヌレを分け与えていたなんて彼女たちもお菓子の力をよ〜く分かっていたのね。
そうだね。
ちょっとさかまど。
あっかまど様。
何でしょう?あの〜1日たちましたけどもうよろしいでしょうか?よろしいですけどまずその前に準備しといてもらいたいものがあるんですよ。
えっ何?焦がしバター。
よし!すごい気合いだけど。
じゃあねバターを中火にかけて下さいな。
OK。
ハシバミ色になるまで煮詰めて。
そんな色聞いた事ないよ。
何?ハシバミ色?何それ。
ちょっと簡単に言うとヘーゼルナッツ色?ヘーゼル…茶色っぽい色って事ね。
ちょっと焦げたような。
ヘンゼル色じゃないよ。
ヘーゼルナッツ色。
分かってるよ。
分かってるねごめんなさい。
さっきよりも若干だけど色がついてきてるよ。
きたでしょ?ハシバミってきたでしょ?これハシバミってきてるよ。
これは。
そういう事ですよ。
わっ一気にハシバミ…ハシバミ色に…。
そういう使い方はないから注意して。
ないか。
これかまどまだ?そろそろいいです。
そろそろ…火止めて下さい。
ハシバミハシバミ言ってるとえらい事になった。
次は薄力粉と強力粉を合わせますよ。
これの組み合わせを混ぜる事によりボルドーで使われてる粉にすごく近づくんですね。
あっそうなの。
グラニュー糖はこれが入る事によってだまになりにくいですからね。
ほうほうほうほう。
バニラのさやごと入れちゃう。
ごと入れる。
入れちゃう。
あんまりぐるぐる一生懸命やると今日はちょっとテンション高いからちょっと心配なんだけどあまりぐるぐる混ぜると粘りが出過ぎちゃうので軽い感じで。
粘りが出ちゃ駄目って事ね。
卵黄卵白一緒にして入れてちょうだい。
古いね私も。
はいはい。
ラム酒。
ラム酒いいですね。
ラム酒にさっき焦がしバターねハシバミ色の。
よいしょ。
すごい色が。
ハシバミったね。
ラム酒と焦がしバターの。
いい匂いしない?風味が…うん。
あの〜バターで油がちょっとあるでしょ?その油がしっかり混ざるまで混ぜて。
よいしょ。
はいじゃあそれでおしまい!終了!え〜うそでしょう?はい1日ねかせます。
また?オキテは?もう一回どうぞ。
「焦るな!待つべし!」。
はい。
そうだったね。
修道院で作られていたカヌレですが19世紀ごろになると腕利きの菓子職人たちがそのユニークさに魅せられ次々と進化させ現在のような姿になりました。
日本にもカヌレのユニークさに取りつかれたパティシエがいます。
フランスの郷土菓子を追求してきた第一人者…1967年河田さんは菓子職人を目指しパリへと渡りました。
日本人パティシエの先駆けです。
しかし洗練されているものの重くてくどいと感じたパリのお菓子に1年で嫌気がさします。
菓子職人への情熱もなくし修業も一旦やめてしまいます。
フランス中を放浪する毎日。
ボルドーのブドウ畑で慣れないながらもブドウの収穫を手伝っていました。
とある休日町の小さなお菓子屋さんで見つけたのがカヌレ。
非常に衝撃的だったんです。
まず形色それと味。
ともかく真っ黒ですから。
黒くてそれが山になって積んである訳ですからこれが菓子屋として存在してんのかってとこでびっくりしましたね。
パリでは見た事のない武骨なカヌレ。
その独特の存在感にお菓子作りへの意欲をかきたてられたのです。
河田さんは再び菓子職人として働く決意をし修業を再開。
さまざまなお菓子を作りながらも気になるのはカヌレの事。
なんとかしてそのレシピを知りたい。
しかし誰も教えてはくれませんでした。
ボルドーで食べたそこのお店には僕はもう…随分通いました。
何回も。
食べて食べて食べて。
その前にもいろんな本見てますからカヌレの事なんて出てるの一個もないですから。
その度ごとにいろんな事をなんとか探ろう探ろうと思って。
型の出どころだとか作り方だとか全然教えてくれませんし。
手がかりは店で売られているカヌレのみ。
とにかく食べに食べ試行錯誤を重ねました。
その中で河田さんが心血を注いだのは小麦粉の配合。
あの独特の食感を生み出すために強力粉と薄力粉の微妙なバランスを何十回も試しました。
更に焼く時にどうしても生地が吹きこぼれてしまう。
それを解消するには日数をかけて生地を休ませる事が大切だと気付きました。
型はボルドーの店で使っていたカヌレ専用の銅製を手に入れました。
その時のものを今でも30年以上使い続けています。
1年かけてとうとう河田さんはあのボルドーで食べた味のカヌレを作り上げました。
カヌレへの追求から郷土菓子にフランスのお菓子の奥深さを見いだしたのです。
カヌレというのは僕にとっては自分を修正してくれたお菓子です。
僕の人生ですね。
生き方ですね。
気付かされたというのは。
独特な存在感を放つ郷土菓子カヌレ。
河田さんにパティシエとして生きていく自信をくれたお菓子でした。
一人の菓子職人の人生を変えたカヌレすごいなあ。
すごい重い響きですね。
どれだけの情熱と月日を注いだんだろうかと思いますね。
そうだね。
そうだかまど!そろそろ生地いいんじゃない?いい頃だと思います。
よいしょ!実は今日作ってるカヌレは河田シェフ直伝なのよ。
そうなんだ。
じゃあボルドーの本場の味なんだね。
すごいでしょ?よし!俺も頑張るぞ!そこに型があるでしょ?銅で出来たのとかシリコンで出来たのとかフッ素樹脂加工のものとかがあるんですけどね。
今回はボルドーから来た正式な型という事で。
銅だね!はい!じゃあここでオキテ!どういう事?型に生地を入れる時に空気が入ってしまうと焼き色にムラが出るので空気を入れるなって事です。
分かった。
指につけて薄くね。
どのぐらい…このぐらい?こういう事でいいのかな?バターをぬっております。
薄くだもんね?全面にね。
これはバターがちょっとこう取れないように。
バターの上からって感じね?うんうん。
薄くぬって下さい。
半分ぐらい入れて置いといて。
型に入れていくと。
型の八分目ぐらいの所まで入れて。
このぐらいか?そして空気が入らないように型を軽くコンコンコンココンと。
それ大事ですね。
OK!ではオーブンへGO!はい。
これね200℃で1時間ほど入れます。
結構長い時間やるんだね。
そうなんですよ。
さっきのオキテ何だった?「焦るな!待つべし!」。
べしべしべし…。
何だろ今の。
(オーブンの音)おお!焼けたんじゃないの?何?びっくりするわもう。
ごめんごめん。
ちょっと…。
カヌレだよ。
じゃ〜ん!おお!いい感じじゃない?来たね〜。
ちょっとすごいね。
カヌレを作るってすごいね。
すごいよこれ。
ちょっとひっくり返してみようかな。
出来てるかな?うまい具合に。
ちょっと熱いからね。
カヌ〜レ?カヌ〜レいくよ!
(2人)カヌ〜レ!いい色じゃん!すっごいうまく出来てる!
(インターホン)おっ!姉ちゃん帰ってきた!姉ちゃんお帰り〜!ボルドーのあれ出来てるよ〜。
3日をかけて作ったボルド−生まれのカヌレ。
重厚感と存在感にあふれています。
外側はカリッ。
中はふんわり。
バニラとラム酒のいい香りが絶妙のバランスです。
カヌレは1980年代以降ボルドー以外の場所にも広がり日本でも次第に知られる事に。
しかし今もカヌレを作る専門業者はボルドーを中心とした地域に集中しその数600に上るといいます。
ボルドーの人々にとってカヌレは今も誇るべき郷土菓子。
ここ日本でもその独特な存在を愛する人によってカヌレの伝統とその魅力が守られています。
僕としてはおいしいし好きだしだから作ってるんであって。
作っていく中にはやっぱりそこでやたらな…情報を入れずにただ一途に作ってるだけがそれでいいんじゃないかなと僕は思いますけど。
うん。
とってもおいしいよ。
かつて修道女たちが祈りを込めて作ったカヌレ。
今その味を愛する人々によって一途に守られています。
今日の「グレーテルのかまど」いかがでしたか?修道院で生まれたカヌレ。
ボルドーの人たちの郷土菓子に対する愛を感じました。
そしてここ日本でもその味を守り伝えようとする人がいる。
そんなたくさんの人々の思いの詰まったスイーツでした。
ではまたこのキッチンでお目にかかりましょう。
ではちょっと失礼して。
頂きます!おっ!硬っ!お〜!うわっ。
いいねえ。
モギモギって感じだった。
ちょっと頂きます。
う〜ん!いい音してますね。
聞こえる?かまど。
聞こえる。
この外はカリッ中はふわっふわの。
この食感!いいね!後ろに多分グレが飲み干したワインがありますけれども。
そうなんだよ。
またカヌレ作れって言うんだから。
カヌレ作れ!うん。
あっ「カヌレツクレ」韻踏んでない?かまどにもオクレ〜だよ。
2015/03/06(金) 21:30〜21:55
NHKEテレ1大阪
グレーテルのかまど・選「ボルドー・修道女たちのカヌレ」[字][デ]

黒褐色で外はカリっと香ばしく、中は柔らかいラム酒がきいたカスタード風味の生地。フランスの郷土菓子カヌレのふるさとはあのワインの産地ボルドーだった。その魅力とは?

詳細情報
番組内容
繊細で洗練された美しさのフランス菓子の中でひときわユニークな存在のカヌレ。黒々として武骨ともいえる独特のフォルム。長い年月を通してワインの産地・ボルドーで愛され続けてきた郷土菓子だ。中世の修道女たちが、祈りと慈愛に満ちた暮らしの中から地元の素材を生かして生みだしたお菓子と言われている。パティシエ・河田勝彦氏は今から40年以上前に現地で修業をする中、カヌレに出会い、菓子作りの魅力に目覚めたと語る。
出演者
【出演】パティシエ…河田勝彦,瀬戸康史,【語り】キムラ緑子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
バラエティ – 料理バラエティ

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