バキッバキッ…。
ん?足元から聞こえるこの音何だ?これ実は氷の道が鳴る音。
地球にはこんな道があるんです。
カナダ極北につくられる世界一長い氷の道アイスロードです。
ああいるいるいる!めちゃくちゃいるじゃないですか!う〜ん…道って一体何だろう?今回の舞台は…州都イエローナイフを起点につくられるアイスロードは総延長およそ2,000キロ。
世界一長い氷の道です。
氷の道は何をもたらしているのか?俳優の中島歩さんが極寒の地を訪ねました。
寒っ!歯が痛いですね。
前歯が痛いです。
キンキンします。
中島さんは連続テレビ小説「花子とアン」で脚光を浴びた26歳。
早速アイスロードを探しに町へ。
顔がもうちょっと凍って…表情が…。
中島さんが訪れた1月の平均気温は氷点下30度。
Hi!Excuseme.寒くて大変ですね。
アイスロードを僕たち日本から見に来たんですけどこの近くで見れるとこありますか?なるほど分かりました。
Thankyou.You’rewelcome!Thankyouverymuch.You’rewelcome!Bye!かわいかった。
フフフフフ!かわいかったですね。
うわうわすげ〜!向かった先は町が見渡せる展望台。
町の隣には琵琶湖の43倍の広さを誇るグレートスレーブ湖。
すっかり凍りついています。
ここにアイスロードがありました。
あっ本当だ。
車走ってますね。
うっそ〜。
ちなみに同じ場所から見た10月の様子はこんな感じ。
本当に湖なんですね。
氷の道どんなふうになっているんでしょう?もうこれ氷の上じゃないですか。
あ〜すげえ!これ穴開いちゃいますかね。
これもうひび入ってる…大丈夫なんですかね?これ。
あっ。
大丈夫だハハハ。
こんにちは。
ここの道はよく使うんですか?このアイスロードは。
夏の間湖凍ってない時はどうしてるんですか?Thankyouverymuch.氷の道。
滑って怖そうですが氷点下30度以下になるとスリップの原因となる水の膜は出来ません。
つまり滑りにくいんです。
このアイスロードは大きく2つに分けられます。
一つは鉱山の輸送路もう一つは先住民の村々と町を結ぶ生活道です。
しかしそれは冬の3か月以外は存在しません。
なぜなら冬が終わるとこの地域は広大な湿地帯に姿を変えてしまうからです。
無数の湖や沼が道路の建設を阻みます。
冬を迎え間もなくアイスロードが開通する村があるといいます。
行ってみる事にしました。
こんな荷物もろなんですね。
町とその村をふだんつないでいるのはこの12人乗りのプロペラ機。
運賃は片道220ドル。
結構高いですねえ。
向かうはイエローナイフから北西へ200キロワティという小さな村です。
到着したのは午後5時。
辺りはもう真っ暗です。
この時期カナダ極北の日没は午後3時半だそうです。
どえらいとこ来たなっていう感じです。
暗くてまだ大して散策もできてないのでまだよく分かりませんがただ空が広くて星がすごい見えます。
アイスロードの開通を待つワティ村。
村民はおよそ500人。
1万年前からこの地に住み始めた先住民の子孫トリチョ族が暮らしています。
人がいないな。
(犬の鳴き声)犬しかいないな。
おっやっと人に会えましたねえ。
是非見せて下さい。
OK!あっでっかい!でっかい。
Sobig!Thankyou.これカリブーの肉の燻製です。
頂きます。
うん…酸っぱい!酸っぱいですね。
酸っぱいとスパイシー…なるほど。
カリブーはこの地域に多く生息する野生のトナカイ。
自給自足で暮らしてきたトリチョ族の大切な食料です。
狩りでしとめたカリブーは大きな冷蔵庫に保存し村人同士で分け合って食べる。
伝統的な暮らしの名残です。
アイスロードの開通はやっぱり楽しみなものですか?ワティ村にあるお店は1軒のスーパーだけ。
レストランも娯楽施設もありません。
4ドル19セント高いですね。
日本でこのぐらいの値段だったら違うスーパー行きますね。
商品は全てあのプロペラ機で空輸されるため物価はイエローナイフより3割から5割も高めです。
飛行機の欠航が続くと食料はたちまち底をつきます。
それでも1つしかないお店はいつも大繁盛です。
おねえさんアイスロードが開通した時の楽しみは何ですか?ワティ村から最寄りの高速道路までつくるアイスロードは全長103キロ。
その建設作業は残り数キロを残すだけとなっていました。
アイスロードはどうやってつくられるのか?その工事現場を見に行きましょう。
連れていってくれるのはジョージさん。
ワティ村で生まれ育ったアイスロードの建設作業員です。
ふだん一般の人は工事現場に入る事はできません。
今回特別に見せてもらう事ができました。
えっ?湖の氷が割れたらって…大丈夫ですかねえ?現場は村から30キロの凍った湖の上です。
迎えてくれたのはアイスロード建設10年以上のキャリアを持つベテランコンビ。
氷割れないですか?工事中の一番の危険は氷が割れる事。
急激な気温の変化や重機の振動によって出来る氷の割れ目が原因です。
過去には作業員が亡くなる事故も起こりました。
まさに命懸けの作業なのです。
アイスロードの建設に欠かせないのがこのスノーキャットという重機です。
この重機で氷の上へ最初の道筋をつけていきます。
重さはおよそ9トン。
氷は重機の重さに耐えられるのでしょうか?作業員が最も緊張する一瞬です。
50メートルほど進んだ所で突然作業員が重機を止めました。
ドリルで氷に穴を開け始めました。
これは氷の厚さを測る作業です。
アイスロード開通の条件とされる氷の厚さは60センチ。
果たしてどうでしょうか?うん!問題ないようです。
開けた穴はあっという間に凍り始めます。
氷の厚さが条件を満たした場所から500メートル先まで重機で道を延ばします。
そこでまた氷の厚さをチェック。
この作業を延々と繰り返します。
ほんと地道な作業ですけど…。
最初の道筋をつけたら次は重さ11トンの除雪車の出番。
道の表面に雪がたまるとスリップの危険が増します。
そこで氷を少しでも多く露出させるため道幅を30メートルまで広げていきます。
基本的には雪取り除いて厚さ測ってOKなら広げて本当に…レストランも娯楽施設もないワティ村。
中島さん退屈そうですねえ。
何でもこの村ではお酒が飲めないんだとか。
その苦い経験を経て…見かねたジョージさん外に連れ出してくれました。
ここは村の公民館。
何だ?これは…何が始まるんですかこれは?それはお酒を飲まない彼らトリチョ族に伝わる伝統の遊びです。
使うのはこのおはじき。
2つのチームに分かれ片方のチーム全員が左右どちらかの手におはじきを隠します。
それを相手チームがどちらの手に持っているかを推理。
当てられた人は脱落です。
これを両チーム交互に繰り返します。
(太鼓の音と掛け声)この木の棒が点数代わり。
当てた人数分の点数を獲得しどちらかのチームの棒が無くなるまで続きます。
僕も見よう見まねで参加してみました
(太鼓の音と掛け声)
相手が推理したのはこっちの手。
セーフ!しきたりに倣って相手を挑発します
参加できるのは男性だけ。
なぜならこれはただの遊びではないらしいんです。
(太鼓の音と掛け声)ハンドゲームは1,000年以上前から続いているといわれています。
トリチョ族の人々は長い間このハンドゲームで土地や食料の分配を決めていました。
かつては狩りで暮らしていた人々。
リーダーには鋭い勘と洞察力が求められました。
(太鼓の音)ハンドゲームはトリチョ族に欠かせないものとして代々受け継がれてきたのです。
(太鼓の音と歓声)彼らトリチョ族はもともとは1つの家族から始まったといわれています。
およそ200年前いくつかの家族が食料を求め新たな土地に移り住みました。
そうして出来たのがワティ村をはじめとする6つの村です。
道がない暮らしでは一度離れ離れになった人々は会う機会が少なくなっていきました。
そんな中1896年ノースウエスト準州で有望な金の鉱脈が発見されます。
鉱山を開発する物資を運ぶためにアイスロードがつくり出されました。
その実用性が認められアイスロードはトリチョ族の村々と町をもつなぐようになったのです。
村には物資が届きかつてはなかった電気がともされました。
そして学校や病院も造られるようになりました。
アイスロードが出来る前トリチョ族の人々はどんな生活をしていたのか?今でも村のかつての暮らしを大切にしている人がいます。
ワティ村で生まれ育った…いや〜広いご自宅ですね。
2階がありますね。
テレビも大きいのが…プロジェクターもありますね。
アイスロードが出来る前の暮らしっていうものはワティ村はどういったものだったんでしょうか?ジョセフさんは現在60歳。
7歳の時からおじいさんに育てられ昔ながらのトリチョ族の生活を送りました。
この村で結婚し44歳の時鉱山に職を見つけます。
生活は豊かになりました。
しかし一度鉱山へ行くと最低2週間時には3週間家に帰れません。
6人の娘に2人の息子。
8人の子どもは皆成人しました。
特にかわいがって育てたのが末っ子のアラン君現在二十歳です。
去年高校を卒業しましたが就職も進学もせず村にとどまっています。
いわゆるニートです。
隔絶した先住民の村では都会の暮らしに踏み出せない若者が少なくありません。
う〜ん…。
ジョセフさんは仕事が休みの日は湖へ魚を取りに行きます。
必ずアラン君を連れていく事にしています。
仕掛けの網のある場所まではおよそ5キロ。
あれがサインですか。
あの目印の下に網が仕掛けてあるそうです。
ジョセフさんの漁はトリチョ族が昔から行ってきたのと同じやり方です。
何年かかるんですか?これ。
昔ジョセフさんはおじいさんからよく言われました。
「自分の力で生きる術を見つけなさい」。
以前は漁を見ているだけだったアラン君。
近頃は率先して作業を手伝うようになりました。
(水音)おい〜!きた〜!これ落っこちちゃう…。
すげえすげえハハハ!さあ今引っ張って…ああ網出てきましたね。
あっいるいるいる!めちゃくちゃいるじゃないですか!うわうわうわ!取った魚はたちまち凍ってしまいます。
トラウト…マスの仲間。
フナっぽいですねこれは。
それでも鉱山で働くジョセフさんはもう伝統を守るだけでは生きていけない事を知っています。
うんおやじとしてはそう思うよなあ。
(口笛)
(手をたたく音)
(口笛)
(手をたたく音)
(口笛)ワティ村の人々にうれしい知らせが入ってきました。
今日の5時にアイスロードが開通するというメッセージがインターネットで届いたのです。
アイスロード開通の時が迫っていました。
Hi!開通の時には必ず村人が看板の設置に立ち会います。
これは村の大切な道。
そうした思いが込められているのです。
Thankyou.アイスロード開通直後早速1台の車がやって来ました。
CanIasksomequestions?
(笑い声)初めて通った方なので声かけさせて頂きました。
(笑い声)Congratulations!Thankyou!Wheredoyougo?そうなんですねじゃあ気を付けて行ってきて下さい。
Thankyou.むちゃくちゃ笑ってましたね。
すぐに2台目もやって来ました。
Whereareyougoing?あのカリブーを食べさせてくれたおじさんです。
がっつり!1リットル当たり50円も安く手に入るガソリンを買いに行くそうです。
Haveasafetrip!OK!翌日アイスロード開通を受けてワティ村役場も動き出しました。
Hi!Goodmorning!Yeah.村のイベントの準備で買い出しに行くという職員のドリーンさん。
中島さんも乗せていってもらう事にしました。
いや〜久々に遠くに行けるので楽しみですよ。
手伝いで行くというドリーンさんの同僚も一緒。
3人でイエローナイフまで3時間のドライブです。
出発したのは朝9時。
ようやく朝日が昇ってきました。
あっ氷の上走ってます。
だいぶ平らになりますね道がやっぱ…。
走りやすそうです。
やっぱ視界がバッと開けて揺れも穏やかになりましたね。
うわうわうわうわすごいな。
違う星ですよこれ。
同じ地球とは思えないですね。
うん本当ですねぇ。
途中ドリーンさんが車を止めてくれました。
遮るものが何もない。
想像っていうか写真も事前に見てたけど見るのといるのは全然違うから…。
こんな景色あるんですね。
ああすごいな〜。
太陽に照らされ青く輝くアイスロード。
その美しさからブルーハイウエーとも呼ばれています。
Youhungry?レストランがないワティ村の人にとって都会に出た時の大きな楽しみは外食です。
ドリーンさんこのために朝食を抜いてきたそうです。
楽しそうですねえ。
ドリーンさんたちたっぷり1時間余りランチを堪能しました。
うんうまいっすよ。
腹ごしらえを済ませたらさあ仕事です。
大量に買い付けた食べ物や飲み物を車に積み込みます。
明日村では子どもたちが集まるイベントが開かれる事になっていました。
そこで振る舞うおやつを運ぶのです。
以上?アハハハハ!Sure!トラックいっぱいのジュースとポテトチップス。
ワティ村の子どもたちが待ってるぞ。
翌日。
ワティ村の集会場に子どもたちが集まってきました。
離れた村々に住むトリチョ族の子どもたちです。
アイスロードが開通したおかげでやって来れました。
Whereareyoufrom?今日は毎年恒例子どもたちのハンドゲーム大会です。
大人たちも集まってきました。
誰を応援に来たんですか?お孫さんが…。
息子と孫が目の前にいました。
100キロ離れた村からアイスロードを通ってやって来たのです。
(笑い声)久しぶりの再会でおばあちゃんうれしそう。
孫のデイビン君はレイ村から参加したチームのキャプテンです。
(太鼓の音と掛け声)ふだんは見られない孫の活躍におばあちゃんも大喜び。
(拍手と歓声)トリチョ族の4つの村から100人以上が集い大会は大いに盛り上がりました。
(歓声)
(拍手)
(太鼓の音と掛け声)
ハンドゲームに興じる子どもたちの姿に僕はトリチョ族の魂が今も確かに息づいている事を感じました
(太鼓の音と掛け声)
命懸けでつくる氷の道。
それによってつながれる大切なものを見つけた気がしました
(太鼓の音と掛け声)決勝戦。
(歓声)ああ残念!デイビン君負けてしまいました。
ハハハハハハ!どうでした?活躍ぶりどうでした?お孫さんの。
誇らしいと。
大会が終わったあと一人のお年寄りが突然立ち上がりました。
伝えたい事があるといいます。
(拍手と歓声)湖に連れていってくれたジョセフさんの家に小さな変化がありました。
息子のアラン君がイエローナイフに行きたいと言いだしたのです。
町に出たのは1年ぶり。
向かったのは本屋でした。
カナダ極北アイスロード。
そこに暮らす人々の喜びと希望が行き交う氷の道。
ひときわ輝いていました。
2015/03/05(木) 22:00〜22:50
NHK総合1・神戸
地球イチバン「世界一長い氷の道」[字]
1年で極寒の3か月だけ現れる道がある。カナダ極北に造られる「アイスロード」。総延長約2千キロ、世界最長の氷の道だ。その開通で外界とつながる先住民の村の冬物語。
詳細情報
番組内容
カナダ極北の広大な湿地帯に点在する先住民の村々。1年の大半は人や車が入れない“陸の孤島”だ。その一つ、ワティ村は約500人が暮らす小さな村。平均気温が氷点下30度となる1月、村人たちによるアイスロード建設が終盤に入っていた。氷の割れる危険が伴う命がけの作業を繰り返し、ようやく開通にこぎ着ける。村人たちは次々と車で町へ買い物に。そして、周辺の村々から訪ねてきた同じ民族の仲間たちと歓喜の再会を果たす。
出演者
【ナビゲーター】役所広司,【旅人】中島歩
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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