[PR]

 4年前に津波被害を受けた東北沿岸の各地で、地元を元気づけてきた仮設商店街の商店主たちに「2度目の移転」の決断が近づいている。新たなまちなみにあわせた「本設」の商店街づくりの構想もあるが、東日本大震災を機に人口減と高齢化は加速。廃業を考える人は少なくない。

■女川 かさむ家賃、再移転に二の足

 宮城県女川町の中心部では、ブルドーザーやパワーショベルが「ドドドド」「ガガンガガン」と音をたてて行き交っている。

 ここには、津波で全壊したJR女川駅が21日に新しくでき、12月には駅前に新商店街が完成する予定だ。構想では、幅15メートルの遊歩道が海岸にかけて延び、両側にスーパー、薬局など生活密着型の店のほか、ダイビングショップやギター工房など27店が並ぶ。

 商店街を運営する「女川みらい創造」によると、「半数は町の外から客を呼び込める店」だ。近江弘一専務は「観光客が趣味に没頭し、ゆったりと過ごせるように考えた。三陸観光のハブをめざす」と話す。

 1・5キロ西の高台には、被災した商店が移った「きぼうのかね商店街」がある。50店が入る平屋建ての長屋は3年前、県立高校の敷地に建てられた。震災直後、相次いで完成した仮設住宅の近くにできたが、仮設に住む人は減り始め、早ければ2年後に閉鎖される見通しだ。

 ここから新商店街に移ると決めた店は九つ。別の場所で再建をめざす店もあるが、およそ10店は廃業が取りざたされ、移転に二の足を踏む店主が多い。

 一角で理容店を営む深堀浩一さん(71)は「年齢を考えれば難しいね」とこぼす。ここで営業を終えるつもりだ。震災後、町の人口は3割減り、なじみ客の足も遠のいた。仮設商店街には国の復興予算や寄付があてられ、月2万円の共益費と光熱費で済むが、新商店街に移れば家賃もかさむ。

 靴店の店主(74)は「ここで商売をでき、本当にうれしかった。でも、いまはやめるために気持ちを整理する準備期間ですかね」とこぼす。(加藤裕則)

■大槌 8割が「後継ぎいない」

 岩手県大槌町で最大の商店街は、市街地の外れに立つ2階建てのプレハブ長屋の「福幸きらり商店街」だ。居酒屋や菓子店、レンタルビデオ店、建設会社事務所など約40店がひしめく。築3年余りで老朽化も目立ち、平日の人影はまばら。がらんとした駐車場に、災害FM放送の声が響く。