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葬儀や仏壇用、墓参りといった仏花の活用が多い菊やスターチスの主産地が、新しい需要の掘り起こしに懸命だ。婚礼などの祝い事やギフト、普段遣いを提案。品種や色の豊富さなどを訴えながら、小売店や消費者の意識改革に向けた産地の挑戦が始まっている。
・産地 スターチスを婚礼に スプレイ菊でお祝い
花トレンドの発信地ともいえる東京都中央卸売市場大田市場で1月中下旬、一風変わった展示が相次いだ。19日の週が「スターチスde(デ)ウエディング」のテーマで和歌山県のJA紀州が主催。26日の週は「スプレーマムパーティ」と題して日本花き生産協会スプレーぎく部会が展示した。
スターチス、スプレイ菊とも、流通量の多くが仏花として使われる。展示では従来と異なる結婚式などでの使用を提案。期間中、それぞれの生産者代表が同市場に出向き、買参人らに用途の拡大を呼び掛けた。田中正俊JA紀州スターチス部会長は「水持ちが良く、多彩な色がある」と特徴を売り込んだ。
菊やスターチスはこれまで、葬儀や仏花用として売り上げを伸ばしてきた。しかし、最近の葬儀では、洋花を使うなど多様な切り花の活用が進む。家に仏壇のある家庭も減少傾向だ。石井茂行日本花き生産協会スプレーぎく部会長が「葬儀、仏花需要は先細り傾向」と言うように、産地で危機感が強まり、仏花以外の提案に動いた。
仏花の代表格である白輪菊の主産地、福岡県のJAふくおか八女も、菊のイメージチェンジに力を注ぐ。結婚式のウエディングブーケを提案したり、地元で開くスポーツ大会の優勝者にビクトリーブーケとして提供したりするなど行っている。
・小売り・卸 色の豊富さ再評価 固定観念破り 地道な提案
産地の新しい提案を仲卸業者や小売店は好意的に受け止める。
「スターチスdeウエディング」で行ったアレンジメントのコンテストには、大田市場の仲卸業者14社が参加。花嫁の頭に飾る花冠や、花部分だけを活用し結婚式用にハート型に詰めたものなど、趣向を凝らしたアレンジメントが数多く展示された。
参加した仲卸の一つ、プランツパートナーの本間明子さんは「真逆の提案に最初は戸惑ったが、十分に飾れる花。リースを中心にブーケやアレンジメントで活用したい」と評価する。加えて、産地に対して「オレンジ色の暖色系や、くすんだ色の中間色系など、今以上にカラーバリエーションを豊富にしてほしい」と要望する。
「スプレーマムパーティ」では、神奈川県で生花店を営み、結婚式などもデザインする飯野正永さんが、普段遣いやギフトを意識して展示紹介した。飯野さんは、スプレイ菊は日持ちに優れ、色が豊富で表情(咲き方)も豊かで使いやすいと評価。「見た目が菊とは思えないかわいらしい品種が増え、若い世代の評価は高い。一部の流通業者や小売店は仏花としての固定観念が強いので、産地には地道な提案を続けてほしい」と期待する。
生産・販売にかかわる産地への要望では、「茎が短いものの流通増や、上位等級で複数品種を組み合わせたミックス販売などがあると、さらに使いやすくなる」と話す。
展示に協力した大田花きは「仏花以外の需要を開拓する動きは、菊やスターチスにとどまらず、リンドウやストックなどさまざまな品目である。産地とともに多様な売り方を提案したい」と方向性を示す。(島村一弘)