記事詳細
【衆院選2014】
注目区を歩く(中)県内最大の激戦 神奈川16区
かつて、農林水産相を務めた亀井善之氏=自民=を9期にわたって衆院に送り出し、「保守王国」とされてきた県央地区。その中心である16区(相模原市西部、厚木市、伊勢原市、愛川町、清川村)では、自民と民主が火花を散らし、「県内最大の激戦」を繰り広げている。
「ここに来ているのは(民主前職、後藤祐一氏の出身校の)厚木高校OBがほとんど。地元の力で何とか押し上げてみせる」
先月19日、厚木市内で開かれた選挙事務所の開所式に集まった厚木高校OBは、こう自信を見せた。
民主への逆風が吹き荒れた2年前の前回、後藤氏は自民新人だった義家弘介氏を追い詰めるも、8077票及ばなかった。「落下傘候補」だった義家氏に僅差で敗れ、比例代表での復活に甘んじた苦い記憶があるからこそ、小選挙区での当選には並々ならぬ思い入れがある。
雪辱を期す後藤氏の最大の強みは、地元の名門・厚木高校のOBらが中心となった後援会組織だ。
街頭では「対案をしっかりと提示する野党を育て、安倍晋三政権にブレーキをかける」と、“反自民”の姿勢を強調する後藤氏だが、ある支持者は「普段は自民を支持しているが、後藤氏が厚木高OBである以上は応援する」と、党派を超えた支援を誓う。
選挙区内の隅々に張り巡らされた卒業生のネットワークをフル活用し、地元のイベントにこまめに顔を出すなど「どぶ板選挙」を徹底、自民の強固な地盤を切り崩す構えだ。
後藤氏は、平成21年の衆院選で「政権交代」の追い風を受け、亀井氏の息子、善太郎氏=自民=を破って初当選。善太郎氏の引退を受け、自民は参院議員だった義家氏を送り込んだ。
後藤氏陣営の幹部は「今回は極端な風が吹いていない。後藤氏が地盤を確立できるかどうかの正念場だ」と気を引き締める。
公示後の今月初旬。伊勢原市内の児童館で行われた義家氏のミニ集会には、約70人の支持者が詰めかけた。かすれた声を絞り出すように、義家氏はこう切り出した。
「皆さんに支えられ、この選挙戦、マイクを握り続けてまいりました。つぶれてしまった声は、またよみがえります」
「ヤンキー先生」としての高い知名度を背景に、前回は「教育再生」を掲げて初当選した。当選後は文部科学委員会理事など「教育畑」の重要ポストに就いたほか、北海道の高校で教鞭(きょうべん)をとるなど、全国各地を飛び回る多忙な日々を過ごしてきた。
前回の辛勝をめぐり、「地元での活動不足」を指摘する声も上がっていたため、今回の選挙戦では“地元密着”を強調。「地方創生を打ち出して、正々堂々と戦う。(さがみロボット産業特区など)国家プロジェクトが日本で最も集中しているのは地元・伊勢原だ」と、地元に身近な政策で有権者に語りかける。
後藤氏と義家氏。両陣営ともに「地元」を強調する選挙戦は、終盤に入って激しさを増している。
自民、民主との違いを強調しているのは、共産新人の池田博英氏だ。
「共産党が唯一、消費増税中止と言っているんです」
池田氏は「自民でも民主でも政治は変わらないという思いが国民の間にある。そうした層が、『共産に託してみよう』と考えていただければ、この選挙区で食い込んでいける」と気を引き締めている。
◇
▽16区(3人)
後藤 祐一45☆元内閣委理事 民 前
池田 博英52 党地区委員長 共 新
義家 弘介43☆元文科政務官 自(町)前 【公】
(上から届け出順、☆は比例と重複)